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音楽と物語に関する文章を書いています。
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タグ:Tetsuya Komuro ( 147 ) タグの人気記事
TM NETWORK「STILL LOVE HER」:歌はロンドンの記憶を切り取り、メロディは人々の記憶に残る
TM NETWORKのアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』がリリースされたのが1988年12月。アルバムの最後を飾る「STILL LOVE HER ~失われた風景~」もまた、30周年を迎えました。

ベースから始まり、シンセサイザーが重なるイントロがとても温かい。小室さんが弾くピアノと、木根さんのアコースティック・ギター。ウツのボーカルを中心として重なり合う三人の歌声。メロディは優しく漂い、歌声はモノローグのようでもあり、語りかけるようでもあります。音と歌から滲み出る柔らかい雰囲気が心を和ませます。
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TM NETWORKの曲において、「STILL LOVE HER」は「GET WILD」に続く知名度を誇ると思います。ともに「シティーハンター」のエンディング・テーマとして使われたためです。曲名を耳にして、あるいはイントロやサビのメロディを聴いて「あの曲か」と思う人は、他のTM NETWORKの曲より多いのではないでしょうか。

多くのファン、そしてこの曲だけは知っているという人々の中でも「STILL LOVE HER」に抱くイメージはほとんど同じだと思います。優しい、穏やか、柔らかい。ライブの度にアレンジが変わるのがTM NETWORKの特徴ですが、オリジナルのアレンジを踏襲し続けている曲もあり、そのうちの一曲が「STILL LOVE HER」です。リミックスされてもいません。オリジナルの世界を今に伝え続ける曲です。

そうした曲であるためか、2000~2001年の〈TM NETWORK Tour Major Turn-Round Supported by ROJAM.COM〉では、「穏やかな日常」の空気を作り出す役割を担い、その後に演奏される30分超の大作「MAJOR TURN-ROUND」との落差を印象づけました。観客の意識に刻まれた「STILL LOVE HER」のイメージを利用し、表層から深層に潜り込むような「MAJOR TURN-ROUND」の世界に導きました。



TM NETWORK – STILL LOVE HER (Live from TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA)

「STILL LOVE HER」は2015年のライブ〈TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA〉でも演奏されました。このライブでは『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の曲を抜粋してリメイクした組曲「CAROL2014」を中心に据えた構成だったこともあり、「STILL LOVE HER」もうまくハマりました。12弦アコースティック・ギターを弾いて、ハーモニカを吹き、コーラスを重ねる木根さんの姿を観ることができます。

「STILL LOVE HER」に欠かせない音といえば、やはり木根さんが吹くハーモニカでしょう。間奏で響くハーモニカの音は、冬の冷たい空気の中でも心地好い温かさを届けてくれます。ライブでは、間奏に入るとウツが木根さんを示し、流れるように木根さんがハーモニカを披露します。木根さんを照らすスポットライト、会場を包み込む柔らかい音色。
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歌詞には、アルバムを制作していたロンドンで目にしたであろう風景が登場します。もちろんただ風景を描写しているのではなく、その風景を眺める姿を通して「別れた恋人のことを思い出す」というテーマをもとに、ロンドンの風景を織り込みます。心ここにあらずの彼の横を「二階建てのバス」が通り過ぎたり、夜空に浮かぶ「12月の星座」から昔交わした会話を思い出したり。主人公の心とロンドンの街並みが交差する歌詞です。小室さんは「フィクションでもありノンフィクションでもあり」と語っています(『Keyboard magazine』1989年1月号)。

「GET WILD」をはじめとして変わり続けてきたTM NETWORKの一方で、「STILL LOVE HER」のように同じ姿を保ち続けてきたTM NETWORKが存在する。変わり続けることが宿命のようなグループですが、こうして変わらない要素に改めて触れると、変わらないことにもまた大きな価値があると思えました。30年前に吹き込まれた曲を聴きながら、「変わる」と「変わらない」のバランスについて考えています。

2018.12.19
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by mura-bito | 2018-12-19 22:03 | Music | Comments(0)
TM NETWORK「A DAY IN THE GIRL’S LIFE/CAROL (CAROL’S THEME I)」:音は物語を綴り、物語は音を奏で、少女は世界を救う
最初の音が鳴った瞬間、イメージの中で世界は切り替わり始め、目の前でグラデーションを描きます。響く音、響く歌声が聴く人の手を取り、その向こうへと導く。黒く塗りつぶされた森の中に足を踏み入れ、奥へ奥へと歩みを進めると、やがて現実から切り離された意識は物語の世界に溶け込んでいきます。
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1988年12月、TM NETWORKのアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』がリリースされました。「キャロル」という名の少女が異世界を旅する物語をつくり、その物語に関連する曲を中心にしたアルバムです。アルバムを軸にしたツアーではミュージカル風の演出が盛り込まれ、観客の目と耳を通して物語を描き出しました。僕はこのステージを生はもちろんのこと、映像でも観たことがありませんが、タイムマシンがあるのなら時間を巻き戻し、観客のひとりになってその世界に潜り込みたい。

アルバムの1曲目と2曲目に配置されているのが「A DAY IN THE GIRL’S LIFE ~永遠の一瞬~」「CAROL (CAROL’S THEME I)」です。前者のエンディングは後者のイントロにつながっており、ひとつの曲と考えることもできます。制作初期の構想では、物語に関わる曲をつなげて30~40分のトラックにしようとしていたそうですが(『Keyboard magazine』1988年9月号・1989年1月号)、このつながりはそのアイデアの名残りなのかもしれません。
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「CAROL」という物語をモチーフにして書かれた曲は全部で6曲あります。その制作は、小室さんが語るところによると「A DAY IN THE GIRL’S LIFE」から始まりました(『キーボード・ランド』1989年1月号)。アルバムの核であり、物語に関わる曲の源流といえるでしょう。「A DAY IN THE GIRL’S LIFE」の吸い込まれるようなイントロの音は、ただの空気の振動ではなく、物語の最初のページをめくる役割を担います。

『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』を制作する前に、小室さんは映画「ぼくらの七日間戦争」の劇伴を担当し、その後は音楽座ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」や映画「天と地と」でも音楽を担当します。ステージや映像が先にあり、そこに音楽を加えていくという役割。物語を意識しながら音楽作品として世界を作り上げていくミュージシャンおよびプロデューサーとしての役割。ふたつの役割が交差しながら生み出されたのが『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』なのだろうと思います。



TM NETWORK – A DAY IN THE GIRL’S LIFE
(Live from TM NETWORK 30th 1984〜 QUIT 30 HUGE DATA)

「A DAY IN THE GIRL’S LIFE」も「CAROL (CAROL’S THEME I)」も、ウツの歌声が大きな魅力のひとつであることは間違いありません。その一方で、ストリーミング・サービスで配信されている『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』のインストゥルメンタルを聴くと、バックトラックの魅力をダイレクトに感じることができます。ふと思い立って聴いてみたのですが、それまで強く意識しなかった音が、これまでとは異なる響きをもって僕の中で鳴り始めました。

「A DAY IN THE GIRL’S LIFE」は、ボーカルの裏で鳴っているシンセサイザーやギターの音がとてもリリカルで美しい。歌メロとは異なる角度から響くメロディが胸を打ちます。その感動は、次の「CAROL (CAROL’S THEME I)」にも波及しました。ピアノ、ストリングス、ギターが奏でるメロディに心を揺さぶられます。驚くほど奥が深く、そして懐の深さ、包み込むような壮大さを感じるアレンジです。リアルタイムではないにせよ何度も聴いてきたアルバムであり、曲なのですが、感動に震える余地が充分にあったことに驚きます。
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『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』はロンドンで録音され、ドラムやパーカッションは海外のミュージシャンを起用し、Anne Dudleyが指揮したフル・オーケストラの音も加わりました。改めてオリジナルの音を聴くと、オーガニックな響きが印象に残ります。シンセサイザーの音すら丸みを帯びて、ロンドンに響く音と溶け合います。このアルバムを聴くたびに1988年のロンドンの空気が漂うかのようです。

2014年には「CAROL」関連の曲が新たにレコーディングされました。音も演奏も録音技術もスタジオも別物なので比較しようがないのですが、リメイクで印象が大きく変わったのはウツの歌声だということはいえると思います。歌声の存在感がより大きくなり、そしてより前に出ている。その痕跡は、2015年のコンサート〈TM NETWORK 30th 1984〜 QUIT 30 HUGE DATA〉におけるパフォーマンスに残されています。
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「A DAY IN THE GIRL’S LIFE」から「CAROL (CAROL’S THEME I)」へとつながるところは、オープニング・テーマの終了からそのまま物語が始まり、プロローグとして日常が描かれるイメージが浮かびます。ロンドンでいつもの生活を送る少女キャロル。彼女は少しずつ自分の周りの変化に気づき、その違和感はやがて大きく膨らみ、焦燥感となって彼女の背中を押します。そしてSOSにも聞こえる音に導かれ、その世界に飛び込んでいくのです。

2018.12.09
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by mura-bito | 2018-12-09 09:30 | Comments(0)
TM NETWORK「RHYTHM RED BEAT BLACK」:交差する赤と黒の世界、交錯するロックとハウス
トーキング・モジュレーターで歪ませたギターが響くTM NETWORKの曲と言えば「RHYTHM RED BEAT BLACK」です。1990年にTMNとして最初にリリースしたアルバム『RHYTHM RED』に収録され、のちにシングル・カットされました。トーキング・モジュレーターとはキーボードやギターの音を「口で反響」させて変化を加えるエフェクターの一種です。
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「RHYTHM RED BEAT BLACK」の特徴は、メインのフレーズを繰り返すシンセサイザーとギターです。このループがとても気持ち良くて、ロックでありながら、ハウスでもある。そこにトーキング・モジュレーターを通した音やスクラッチ・ノイズを織り交ぜ、キックやベースが色気を醸します。音と音が艶っぽく絡み合い、ロックとハウスが交錯する。

1991年には、ボーカルとバックトラックを一新したリミックス “Version 2.0” を発表しました。歌詞はすべて英語になり、サウンドからはギターをなくし、オリジナルよりハウスの色を強めたアプローチといえます。さらに、1993年のリミックス・アルバム『CLASSIX 1』には “house sample foods mix” という名称のリミックスが収録されました。オリジナルのボーカルとサウンドを土台として、ラップのようなコーラス、金属的なシーケンサーの音を重ねて厚みを持たせています。



TM NETWORK – RHYTHM RED BEAT BLACK
(Live at Yokohama Arena in 2015)

基本的なカラーは共通するものの、ライブのたびに「RHYTHM RED BEAT BLACK」のアレンジは変化しました。YouTubeには、2015年のライブ〈TM NETWORK 30th FINAL〉の映像がアップロードされています。小室さんは三方に配置したソフト・シンセをリアルタイムでコントロールしながら、背後にセッティングしたRoland社のJD-XAを弾き、太くて厚い音を響かせます。サビ前のブリッジやアウトロで登場するJD-XAの音は、ギターと火花を散らしながら音の宴を彩ります。

ギターをメインで弾くのは「葛G」こと葛城哲哉ですが、「RHYTHM RED BEAT BLACK」といえば葛Gというくらい密接な関係にあります。この曲が演奏されたすべてのライブに参加し、トーキング・モジュレーターを駆使した演奏を披露しました。ノイジーな音で空気を震わせるそのパフォーマンスは、赤と黒が交わる世界に観客を引きずり込みます。

歌詞を書いたのは、1990年代のドラマを象徴する脚本家、坂元裕二です。装飾的な歌詞は現実感を歪ませて、フィクショナルな世界を描きます。『RHYTHM RED』を貫くテーマのひとつにデカダンス(退廃的)がありましたが、その要素を「RHYTHM RED BEAT BLACK」に強く感じます。煌びやかな言葉の連なりは音と絡み合って、聴き手を惑わせます。「光と闇が揺れる隙間」に潜り込み、終わらない夜の中で終わりに向けて進み続ける。どこにもたどり着かない閉塞感が漂います。華美な言葉を積み上げた先に待っているのは崩落か、夢見た世界か。

2018.10.16
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by mura-bito | 2018-10-16 22:37 | Music | Comments(0)
TM NETWORK「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」:“存在感のある音” を追究するTMNスタイル、その始まりを告げたロック・パフォーマンス
1984年にデビューしたTM NETWORKは、1990年に名称をTMNと改めます。この改称を彼らは「リニューアル」と呼びました。グループ名を変えただけではなく、それまでに構築したTM NETWORKの音楽スタイルを解体し、新しいスタイルを立ち上げるという意思が込められています。リニューアルの少し前に、TM NETWORKの名義でリリースされたシングルが「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」です。
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1988年から1989年にかけて、TM NETWORKはプログレとミュージカルの要素を掛け合わせたシアトリカルなステージを展開しながら、同時にユーロビートへのシフトを見せました。これらの活動に区切りがつくと、TM NETWORKは最初の休眠期に入ります。1990年になって「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」をリリースしてTM NETWORKは覚醒し、TMNへのリニューアルを宣言すると、ハード・ロックに振り切ったシングル「TIME TO COUNT DOWN」とアルバム『RHYTHM RED』を発表しました。

「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」のアレンジはギターの音が際立つロック・スタイル。シンセサイザーの音も太くて厚みを増し、そして荒々しさを感じます。アルバム『RHYTHM RED』に収録されたバージョンでは雰囲気が変わり、ベースの音が際立ちます。アルバムの音は粘り気があって、絡みつく感じでしょうか。シングルの音からは「上昇する」イメージを抱き、一方でアルバムを聴くと「沈んでいく」イメージが浮かびます。ライブではアルバム・バージョンを基にしたアレンジで演奏されてきました。



TM NETWORK – THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
(Live at Tokyo International Forum Hall A in 2014)

小室さんにとって「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」はどのような位置づけだったのか。それは1993年に刊行されたエッセイ集『告白は踊る』(角川書店)の250ページに記されています。「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」から「TMNの音は始まっている」と小室さんは語りました。シングルの名義はTM NETWORKでしたが、実質的にTMNのファースト・シングルであり、この後にリリースされた曲のサウンドを予告する役割を担います。続けて「その時点からTM NETWORKとは多少なりとも違った独自性を持ったと意識している」と述べており、この曲はターニング・ポイントともいうべき重要な意味を持ちました。

1989年までのTM NETWORKの活動で追究してきたシンセサイザー・ミュージックやファンタジックでシアトリカルなステージ演出から離れ、TMNはよりリアルなイメージの表出、バンドの音を表現するようになりました。TMNとしてリリースしたアルバム『RHYTHM RED』はロック、『EXPO』はハウスといったようにジャンルは異なりますが、体温の高い、生々しいサウンドやステージ演出が共通しています。『告白は踊る』のページを再び繰ると、「(前略)“存在感のある音” を強く意識し始めた。それはある種の重さであり、意義でもある」という一節が目に留まります。その意識が形になった最初の曲が「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」なのです。
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節目に生まれた曲だからか、その後の10周年、20周年という節目のライブのセット・リストに名を連ねます。そして2014年に敢行されたライブ・ツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」でも披露されました。久しぶりに「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」を生で聴きましたが、音も歌も色気に満ちて、ぐっと深みを増していると感じました。リズムが身体に染み込んでくる感じが心地好くて、ずっと聴いていたいと思わせるパフォーマンスでした。YouTubeにアップロードされている公式の映像はこのライブだけです。スリルでマッドな音を体験するにイントロからアウトロまでフルで観てほしいと思いますが、公開されている範囲だけでも曲の魅力を味わうには充分でしょう。その世界に絡め取られて、沈んでいきます。

2018.09.26
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by mura-bito | 2018-09-26 21:57 | Music | Comments(0)
TMN EXPO/CLASSIX PLAYLIST
TM NETWORKがTMNという名義で活動していた時期のアルバムから12曲をピックアップし、プレイリストをつくって聴いています。1991年には『EXPO』、1993年には『CLASSIX 1』と『CLASSIX 2』の2枚がリリースされました。『EXPO』はハウス・ミュージックを中心に、ロック、フォーク、ラテン・ミュージック、プログレなどを含む雑食性の高いアルバムです。『CLASSIX』は当時のテクノ・サウンドでリミックスした曲を多く収録したリミックス・アルバムです。
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この時期のTM NETWORKの音はロックからハウス・ミュージックへ移り、そしてテクノ・スタイルへの傾倒を見せます。先述のアルバムには、こうしたジャンル以外の曲も入っていますが、ロック、ハウス、テクノを標榜した音で括ってみます。深く考えずに曲を選んでプレイリストに加えていくと、各ジャンルの曲数が4曲になっていました。直感で選んだ割には意外とバランスがいい。

ハウス系は「WE LOVE THE EARTH」、「JUST LIKE PARADISE」、「RHYTHM RED BEAT BLACK」、「あの夏を忘れない」。ロック系は「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」、「69/99」、「TOMORROW MADE NEW」、「JUST ONE VICTORY」。そしてテクノ系は「DIVE INTO YOUR BODY」、「U.K. PASSENGER」、「WILD HEAVEN」、「HUMAN SYSTEM」です。

TMN EXPO/CLASSIX PLAYLIST

WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-
JUST LIKE PARADISE -expo overdub mix-
RHYTHM RED BEAT BLACK -house sample foods mix-
DIVE INTO YOUR BODY -extended 12' version mix-
THE POINT OF LOVERS’ NIGHT -rhythm red version-
69/99 -rhythm red version-
U.K. PASSENGER -u.k. lap techno mix-
WILD HEAVEN -extended hard core mix-
TOMORROW MADE NEW
あの夏を忘れない
HUMAN SYSTEM -café de paris mix-
JUST ONE VICTORY -single 7' version-

「WE LOVE THE EARTH」はシングルとアルバムで雰囲気が大きく変わります。ここで選んだのはアルバム・ミックスです。というかこのミックスを起点にして、この時期の音でまとめられそうな曲を組み合わせてこのプレイリストを作成しました。次にピックアップしたのが「RHYTHM RED BEAT BLACK」です。もともとトーキング・モジュレーターやスクラッチを盛り込んだハウス系トラックでしたが、このリミックスで派手な音が加わって、より熱く、クールな曲になりました。この2曲をつなぐのが「JUST LIKE PARADISE」のリミックスです。最初はオリジナル・ミックスを置いてみたものの、この2曲をつなぐためには音に厚みのあるリミックスの方がフィットしました。

「DIVE INTO YOUR BODY」のリミックスは『CLASSIX 1』におけるテクノ化を象徴する曲です。固い感じのシーケンサーと、今でいうならボーカロイドのようなサンプリング・ボイスを短く刻んで重ねているのが特徴的ですね。オリジナルと同時期に制作された「DIVE INTO YOUR BODY -12'' Club Mix-」(ベースの印象を強くしたり間奏を長くしたりしたリミックス)を下敷きにしつつ、1993年の音を被せています。

「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」「69/99」は『CLASSIX』に収録されたバージョンですが、これらはリミックスではなく、オリジナル・アルバム『RHYTHM RED』に収録されたものの音圧を上げた感じです。プレイリストをハウスとテクノでまとめると単調になったので、ロックの要素を注入したら、ぎゅっと締まりました。同じアルバムに収録されていいるもののタイプの異なる2曲を、こうして並べてみるとTMロック・スタイルの振れ幅を楽しむことができます。ちなみに「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」は、まっちゃん(松本孝弘)が好きと言っていた曲です。彼がサポートを続けていて、この曲でも弾いていたらどのような雰囲気になったのか興味があります。
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「U.K. PASSENGER」はオリジナルのアウトロでカットされていた部分をフィーチャーして、分厚いベースとテクノ系のシーケンサーを重ねたものです。ファンクを感じるホーン・サウンドとエレクトロニック・サウンドが混ざり合います。ラップを入れているのは後にmassive attackを結成するメンバーです。オリジナルが録音されたのは1986年ですが、スタッフが六本木で会って意気投合した彼らをレコーディングに呼んだそうですが、当時らしいというべきか、とんでもないエピソードです。

「WILD HEAVEN」のリミックスでは『CLASSIX 2』で最もテクノに寄った音を聴くことができます。もっといえば、『CLASSIX』という企画においてテクノの要素が最も強く反映されています。その最大の特徴は、8分半のうち3分半に及ぶアウトロですね。別のインストゥルメンタルをつなげているようなものです。この部分に、小室さんがやりたかったテクノを感じます。ここで聴けるシンセサイザーのリフは、この後もよく耳にした気がします。

「TOMORROW MADE NEW」と「あの夏を忘れない」はアルバム『EXPO』の曲です。「TOMORROW MADE NEW」は、ハード・ロックを標榜した前作のツアーで披露され、アレンジを変えて『EXPO』で録音されました。オルガンの響きが1970年代ロックの匂いを漂わせます。「あの夏を忘れない」には『CLASSIX』に収録されたリミックスもありますが、リズムを抜いたり音数を減らしたりしているので、バランスとしてオリジナルの方が合うと思いました。オリジナルの厚すぎないハウス・サウンドや哀愁漂うギターが、ロックとテクノをつなぐこの位置にフィットするのです。

ミディアム・テンポの「HUMAN SYSTEM」は、オリジナルにはバンド演奏ならではの柔らかさがありました。リミックスで差し替えられたリズムは分厚い、とても分厚い。音の厚みとメロディの柔らかさが対照的ですね。スポットライトを浴びたサックスのソロも叙情的に響きます。このリズムの雰囲気はそれから20年後のコンサート(2013年の「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」)でも踏襲されました。キックの音が太く厚いほど、そこに乗るボーカルやシンセサイザーのメロディが胸に沁みます。

プレイリストを締め括るのは「JUST ONE VICTORY」の1993年バージョンです。アルバムからシングル・カットされた1989年バージョンを下敷きにしており、音の密度がさらに大きく感じられるのが特徴です。スネアが身体に響いてきて、ロックの熱を感じます。アウトロがフェイド・アウトしない点が、この位置に配置した理由です。もともと組曲の最後を飾っていた曲なので締め括りとしては最適なのですが、こうして音だけで構成したプレイリストでも最後をぎゅっと締めてくれますね。ステージが光に包まれて、幕が下ろされるイメージが浮かびます。
2018.06.27
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by mura-bito | 2018-06-27 22:50 | Music | Comments(0)
PANDORA – Be The One [feat. Beverly] -Let’s start experiment!! MIX-
始まりがあれば終わりがあるのは当然ですが、そこには何かしらの必然性が欲しい。どのような事情があったとしても、ストーリーがあってこそ終わりの瞬間が輝きます。歌でたとえるならイントロが流れて1番が終わった瞬間にカット・アウトしてしまったような感じといいましょうか。PANDORA小室哲哉/浅倉大介)のアルバム『Blueprint』が2月にリリースされてから、余韻も何もない、もどかしさだけが残っていました。
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そんな中、突如としてPANDORAの音が届けられました。2017年9月に先行して一部が配信され、2018年1月にフルサイズがリリースされた「Be The One」のリミックスです。ボーカルとして参加したBeverlyがリリースする予定のオリジナル・アルバムに、ボーナス・トラックとして収録されるようです。



PANDORA – Be The One [feat. Beverly] -Let’s start experiment!! MIX-

手がけたのは大ちゃんですが、小室さんとも話をしたそうな。序盤は音の素材を試すかのような薄い構成です。音を複雑に重ね合わせるというよりは、ミニマルな感じで音の原型をさらしています。しばらくすると音が加わって厚みを増し、その後さらにダイナミックになってEDMらしいサウンドが展開されます。『Blueprint』ではイギリスのエンジニアDave Fordがリミックスした「Be The One」を聴くことができますが、この新しいリミックスでは別の表情を見せてくれます。
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『Blueprint』に付属していた映像には、PANDORAの2人が音を作ったりフレーズを練ったりする様子が収められていました。断片に過ぎなかった音やフレーズが少しずつ形になっていく。それは曲として成立するプロセスのほんの一部、映画なら数カットですが、PANDORAの創作スタイルを目の当たりにし、僕は音の実験室という印象を強く受けました。実験室での試行錯誤が似合う2人です。

リミックスに付けられた名前は “Let’s start experiment!!”。“start” という言葉が入っているのが嬉しいですよね。あんなことやこんなことを期待してしまいますが、もちろんすべてが叶うとは思いません。それでも、僕らの目に触れないところで2人の「実験」は進んでいるような気がします。そしてその結果は、断片的に予告なく公開されるのかもしれない…そんなことを思います。
2018.05.29
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by mura-bito | 2018-05-29 22:03 | Music | Comments(0)
[PART1] PANDORA – Blueprint
ひと言では語れない音、音、音。PANDORA小室哲哉/浅倉大介)が4曲入りのアルバム『Blueprint』をリリースしました。シングルとしてリリースされた「Be The One [feat. Beverly]」と「proud of you [feat. KAMEN RIDER GIRLS]」のリミックスに加え、イベントで披露された曲「Shining Star」と「Aerodynamics」が収録されています。トータル4曲ながら30分ほどのボリュームがあります。また、初回盤には2人のインタビューを収めた冊子も同梱されています。
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「Be The One」と「proud of you」のリミキサーであるDave Fordは、これまでにも小室さんが関わる曲のミックスやリミックスを数多く手がけてきました。例えばTM NETWORKでは、2004年の『NETWORK -Easy Listening-』や2014年の『DRESS2』と『QUIT30』に参加しました。この2曲でもDave Fordらしいサウンドを聴くことができます。彼の音はクリーンなものが多いという印象を僕は持っています。それは今回のリミックスでも同様であり、ダブステップなどのEDMというよりは、トランスに寄っている感じですね。



「Be The One」のリミックスで好きなところは、インタールードで見せる音の抜き方です。音の浮き立たせ方と言うこともできますが、どの音を聴かせたいかということが明確です。フィーチャーされた音がダイレクトに聴き手に向かってきます。また、ボーカルの処理についてもオリジナルとは変化していて、歌が立体的に聞こえてきます。Beverlyの歌声は素敵だと改めて思わせてくれるし、サビのメロディが心地好いということを実感するリミックスです。

「この曲で始めたい、終わりたい」と思わせるような1曲、1フレーズがあったほうがもしかしたら今の時代には存在意義があるかもしれないですよね。

小室哲哉
『Blueprint』PANDORA INTERVIEW

一方、「proud of you」では、オリジナルに感じた重さは緩められ、比較的ポップで聴きやすくなっていると感じます。こちらがシングルに収録され、シングルに収録されていた方がリミックスとして発表されたとしても違和感がありません。また、アウトロの雰囲気はオリジナルから変化していて、気に入っているポイントです。オリジナルと同じ音を使っても印象が変わるのが不思議です。

リミックスでは、基本的にオリジナルの素材を使用するわけですが、それでも印象が変わるのは熟練のエンジニアだからこそでしょうか。オリジナルの良さや雰囲気を残しつつ、異なる印象を与えるというのは難度の高いことだと思います。言うなれば「光の当たる角度や聴き手の視点を変える」といったアプローチであり、曲は新たな表情を見せてくれます。オリジナルとリミックス、オリジナルとカバーなど、違いを楽しむというのも音楽の魅力のひとつですよね。
2018.02.20
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by mura-bito | 2018-02-20 21:45 | Music | Comments(0)
PANDORA – proud of you [feat. KAMEN RIDER GIRLS]
2018年1月24日に、PANDORA小室哲哉/浅倉大介)のシングル「Be The One」がリリースされました。2人がPANDORAとして最初に制作した曲は「Be The One」ですが、その次に作ったのが「proud of you」という曲です。シングルの2曲目に収録されており、ダウンロードやストリーミングでも聴くことができます。
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『Sound & Recording Magazine 2018 MARCH』に掲載されたインタビューによると、軽井沢のホテルでPANDORAの撮影を行なったときに、小室さんが作った音から「proud of you」が生まれたとされます。小室さんは「自分の仕事の大部分は音作り」と語りますが、このときはreFX社のソフト・シンセ「Nexus2」で音を作ったとのことです。Nexus2はソフト・シンセを導入した頃から使い続けていますね。なお、小室さんはソフト・シンセのベスト3としてTONE2社「Electra2」、Reveal Sound社「Spire」、IK Multimedia社「SampleTank」を挙げました。

ソフト・シンセの音は一定間隔で追加され、アップデートされていきます。小室さんは増え続ける音からそのときに必要な音を選んでから、自分のイメージに近づけるために時間をかけて調整を重ねます。メロディや詞よりも音作りに時間を割く姿は、音作りの職人です。従来の作曲家、作詞家、キーボード・プレーヤー、プロデューサーという面ももちろん持ち合わせていますが、ソフト・シンセを導入してからは音作りへの探究心が高まっているようです。先述のインタビューでも、音作りの可能性に言及していました。なお、最初に作った音は「平歌」(イントロの後からサビの前まで)で聴ける、と大ちゃんは語ります。

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「proud of you」の音の特徴は「重さ」と「歪み」です。「Be The One」と比べると重く、歪んでいます。重心が低いというべきか、ずしりとした重みを感じます。厚い雲に覆われたようなイメージが浮かび、光よりは陰を感じます。音は途中で厚みを増したかと思うと一転して雰囲気を変え、さらに歪み、それまでとは異なる光景が見えます。白昼夢のような異世界に放り込まれ、やがて渦を思わせる音の歪みの中から歌声が聞こえてくると、元の世界に戻ってくる感覚を覚えます。そしてアウトロでは、雲の隙間から一筋の光が差し込んできます。

ボーカルとして参加しているのは「KAMEN RIDER GIRLS」と名乗る4人(井坂仁美/秋田知里/鷲見友美ジェナ/黒田絢子)です。仮面ライダーの放送開始40周年を記念して結成されたグループであり、歌によって「仮面ライダーの世界観を広める」とのことです。「proud of you」の曲調やテンポは、歌い手にとってけっこう難しかったのではないかと思います。勢いでは歌えないというべきか。彼女たちの歌を何度か聴いているうちに、「渦の中に沈んでいくような音の中で光を捜し求めるような歌声」というイメージが浮かびました。
2018.02.01
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by mura-bito | 2018-02-01 21:01 | Music | Comments(0)
[PART2] PANDORA「Be The One [feat. Beverly]」:音をつないでトップスピードで駆け抜けるフルサイズ・バージョン
PANDORA小室哲哉/浅倉大介)が最初の曲「Be The One」を配信したのは2017年9月です。オープニング・テーマとして使われている「仮面ライダービルド」の開始に合わせてのことでしたが、配信されたのは番組で使用するサイズ(約80秒)でした。その先を聴きたいと思い続けて数ヶ月が経ち、やがて2018年が始まると、ついにフルサイズ・バージョンが公開されました。ダウンロードあるいはストリーミングで聴くことができます。
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フルサイズ・バージョンでは新しい音とメロディが加わり、Beverlyが歌う部分も増えて曲の厚みが増しました。オーソドックスな意味での緩急をつけていない構成だと思います。ドラムを抜いたりボーカルを強調させたりするような「緩い」部分がないのにもかかわらず、単調ではありません。厚みを維持したまま、雰囲気の異なる音を差し込んで前後をつないだり、前の音を引き継ぎながら体感速度を上げたりするというアプローチが、「落差によるものではないダイナミックな展開」を生み出しています。

イントロからAメロに入り、ダブステップ系の音を挟んでサビへつなげ、間奏ではサビの音を引き継ぎながら別の音を重ねて駆け抜けて、2番のAメロに突入します。2番のサビ以降は、サビから間奏、そしてヴォコーダー処理された音声(“3, 2, 1” と聞こえる)を瞬間的に挟んで突入する最後のサビまで、下がることなく上がった(勢いを維持した)まま突き進みます。音とともに、聴き手の気持ちもまた高揚し続けます。



PANDORA – Be The One [feat. Beverly]

イントロから生産・蓄積されてきたその勢いに拍車をかけるのが、最後のサビに乗って聴き手に畳みかけてくる英語のフレーズです。リズミカルに流れる英語の響きがメロディや音、そして歌声と組み合わさり、曲はスピードを落とすことなくエンディングを迎えます。アウトロはないため、歌とともに曲が終わります。空気を震わせる音や声の余韻から、僕は「目の前に真っ白な光が広がる」というイメージを抱きました。

新たに加わった部分で心に引っかかったのは ♪未来へつなごう 過去をいたわろう♪ という歌詞です。「過去を労わる」という言葉は独特で、小室さんが書いたものと思われますが、思い出すのはTM NETWORKが2014年に発表した「Always be there」という曲です。この曲に ♪思い出をうやまう♪ という歌詞が出てきます。過ぎ去った時間に向けた優しい眼差しとでもいうべき言葉です。昔を懐かしむというより、肯定してその延長線上に今が、そしてこの先があることを示す言葉だと思います。
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今後は「Be The One」のCDが発売され(「proud of you」という曲も収録されます)、インストゥルメンタルを含む数曲を収録したアルバムもリリースされるそうです。PANDORAという名の「どこに行くか分からない小室さんとバランスを取りつつ悪ノリしそうな大ちゃんとのコラボレーション」がさらに楽しめることを嬉しく思います。期待は膨らむばかりですね。
2018.01.18

◆追記
「“3, 2, 1” と聞こえる」と思っていた箇所は、“Be The One“ です。一度 “3, 2, 1” だと思い込むと、そうとしか聞こえなくなりますね。まあ、“One” は合っていたということで、どうかひとつ…

2018.01.28
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by mura-bito | 2018-01-18 18:08 | Music | Comments(0)
[PART1] PANDORA「Be The One [feat. Beverly]」:デュオというスタイルから生まれるTKDAエレクトロニック・ミュージック
PANDORA小室哲哉/浅倉大介)というプロジェクトが立ち上げられたのは、小室さんがThe Chemical Brothersのステージを観たことがきっかけです(『Keyboard magazine 2017 AUTUMN No. 398』より)。「曲を制作して、ステージでミキサーを操作しながらパフォーマンスする」という手法は新しいものではありませんが、それを「デュオ」という形式で行なうことが重要だったようです。そのイメージを実現するにあたり、自分と同じメロディ・メーカーでありキーボード・プレーヤーでありDJ/プロデューサーであり、そして気心も知れた人物ということで、大ちゃんとのコラボレーションがベストだと考えたのでしょう。
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AVICIIとNicky Romeroなど挙げたらきりがありませんが、エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーどうしが組むという活動スタイルは世界的に馴染みのある光景です。また、Axwell Λ Ingrosso、Dimitri Vegas & Like Mike、Grey(Kyle Trewartha/Michael Trewartha)、KUURO(Jordin Post/Luke Shipstad)など、デュオとして活動するケースもありますし、David GuettaとAfrojackのような師弟コラボレーションもあります。PANDORAもまたハイレベルな師弟デュオのひとつと言うことができるかもしれません。

「DJ/プロデューサーのデュオ」というスタイルに至ったのは、小室さんにとって自然な流れです。というのも、TM NETWORKの原点は木根さんとの「作曲デュオ」とでもいうべきスタイルだからです。木根さんの回想によれば、「2人で曲を書いて、シンセサイザーで音を作るグループ」というのが小室さんの構想だったようです。



PANDORA – Be The One [feat. Beverly]

当時、小室さんは「3人組が音楽を制作する最小単位だ」と考え、3人という構成を重視していました。音楽的にもビジュアル的にもボーカリストは不可欠だったと思いますが、そもそもボーカリストのいないグループという発想が生まれる余地があったのかどうか。最初は海外出身のボーカリストを据えようとしましたが、諸事情あってウツに声をかけたという話はよく知られています。メロディとシンセサイザー(あるいは打ち込み)と歌は自分たちで担当して、他の音は他のミュージシャンに任せていました。

けれども、当時から「フィーチャリング」という手法が存在していれば、TM NETWORKはボーカリストのいない2人組になっていたとも考えられます。まあ、そこには「木根さんがコンピューターやシンセサイザーに詳しい」という条件が付くのですが。そのため、その条件を満たす大ちゃんがいたからこそPANDORAは誕生しました。もしかしたら存在していたかもしれない過去を35年後の未来で実現したのがPANDORA、などという想像をしてみるのも楽しい。
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制作環境やリスニング手段の変化、EDMムーブメントによるエレクトロニック・ミュージックの再興など、いくつかの要因が絡み合ってPANDORAのような活動スタイルが無理なく成立するようになりました。まだまだ増えていくものと思われます。エレクトロニック・ミュージックにとって今は、ブームとは少し違った「層が厚みを増す」プロセスなのかもしれません。
2018.01.16

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by mura-bito | 2018-01-16 21:56 | Music | Comments(0)

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