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タグ:Tetsuya Komuro ( 141 ) タグの人気記事
[PART1] PANDORA – Blueprint
ひと言では語れない音、音、音。PANDORA小室哲哉/浅倉大介)が4曲入りのアルバム『Blueprint』をリリースしました。シングルとしてリリースされた「Be The One [feat. Beverly]」と「proud of you [feat. KAMEN RIDER GIRLS]」のリミックスに加え、イベントで披露された曲「Shining Star」と「Aerodynamics」が収録されています。トータル4曲ながら30分ほどのボリュームがあります。また、初回盤には2人のインタビューを収めた冊子も同梱されています。
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「Be The One」と「proud of you」のリミキサーであるDave Fordは、これまでにも小室さんが関わる曲のミックスやリミックスを数多く手がけてきました。例えばTM NETWORKでは、2004年の『NETWORK -Easy Listening-』や2014年の『DRESS2』と『QUIT30』に参加しました。この2曲でもDave Fordらしいサウンドを聴くことができます。彼の音はクリーンなものが多いという印象を僕は持っています。それは今回のリミックスでも同様であり、ダブステップなどのEDMというよりは、トランスに寄っている感じですね。



「Be The One」のリミックスで好きなところは、インタールードで見せる音の抜き方です。音の浮き立たせ方と言うこともできますが、どの音を聴かせたいかということが明確です。フィーチャーされた音がダイレクトに聴き手に向かってきます。また、ボーカルの処理についてもオリジナルとは変化していて、歌が立体的に聞こえてきます。Beverlyの歌声は素敵だと改めて思わせてくれるし、サビのメロディが心地好いということを実感するリミックスです。

「この曲で始めたい、終わりたい」と思わせるような1曲、1フレーズがあったほうがもしかしたら今の時代には存在意義があるかもしれないですよね。

小室哲哉
『Blueprint』PANDORA INTERVIEW

一方、「proud of you」では、オリジナルに感じた重さは緩められ、比較的ポップで聴きやすくなっていると感じます。こちらがシングルに収録され、シングルに収録されていた方がリミックスとして発表されたとしても違和感がありません。また、アウトロの雰囲気はオリジナルから変化していて、気に入っているポイントです。オリジナルと同じ音を使っても印象が変わるのが不思議です。

リミックスでは、基本的にオリジナルの素材を使用するわけですが、それでも印象が変わるのは熟練のエンジニアだからこそでしょうか。オリジナルの良さや雰囲気を残しつつ、異なる印象を与えるというのは難度の高いことだと思います。言うなれば「光の当たる角度や聴き手の視点を変える」といったアプローチであり、曲は新たな表情を見せてくれます。オリジナルとリミックス、オリジナルとカバーなど、違いを楽しむというのも音楽の魅力のひとつですよね。
2018.02.20
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by mura-bito | 2018-02-20 21:45 | Music | Comments(0)
PANDORA – proud of you [feat. KAMEN RIDER GIRLS]
2018年1月24日に、PANDORA小室哲哉/浅倉大介)のシングル「Be The One」がリリースされました。2人がPANDORAとして最初に制作した曲は「Be The One」ですが、その次に作ったのが「proud of you」という曲です。シングルの2曲目に収録されており、ダウンロードやストリーミングでも聴くことができます。
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『Sound & Recording Magazine 2018 MARCH』に掲載されたインタビューによると、軽井沢のホテルでPANDORAの撮影を行なったときに、小室さんが作った音から「proud of you」が生まれたとされます。小室さんは「自分の仕事の大部分は音作り」と語りますが、このときはreFX社のソフト・シンセ「Nexus2」で音を作ったとのことです。Nexus2はソフト・シンセを導入した頃から使い続けていますね。なお、小室さんはソフト・シンセのベスト3としてTONE2社「Electra2」、Reveal Sound社「Spire」、IK Multimedia社「SampleTank」を挙げました。

ソフト・シンセの音は一定間隔で追加され、アップデートされていきます。小室さんは増え続ける音からそのときに必要な音を選んでから、自分のイメージに近づけるために時間をかけて調整を重ねます。メロディや詞よりも音作りに時間を割く姿は、音作りの職人です。従来の作曲家、作詞家、キーボード・プレーヤー、プロデューサーという面ももちろん持ち合わせていますが、ソフト・シンセを導入してからは音作りへの探究心が高まっているようです。先述のインタビューでも、音作りの可能性に言及していました。なお、最初に作った音は「平歌」(イントロの後からサビの前まで)で聴ける、と大ちゃんは語ります。

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「proud of you」の音の特徴は「重さ」と「歪み」です。「Be The One」と比べると重く、歪んでいます。重心が低いというべきか、ずしりとした重みを感じます。厚い雲に覆われたようなイメージが浮かび、光よりは陰を感じます。音は途中で厚みを増したかと思うと一転して雰囲気を変え、さらに歪み、それまでとは異なる光景が見えます。白昼夢のような異世界に放り込まれ、やがて渦を思わせる音の歪みの中から歌声が聞こえてくると、元の世界に戻ってくる感覚を覚えます。そしてアウトロでは、雲の隙間から一筋の光が差し込んできます。

ボーカルとして参加しているのは「KAMEN RIDER GIRLS」と名乗る4人(井坂仁美/秋田知里/鷲見友美ジェナ/黒田絢子)です。仮面ライダーの放送開始40周年を記念して結成されたグループであり、歌によって「仮面ライダーの世界観を広める」とのことです。「proud of you」の曲調やテンポは、歌い手にとってけっこう難しかったのではないかと思います。勢いでは歌えないというべきか。彼女たちの歌を何度か聴いているうちに、「渦の中に沈んでいくような音の中で光を捜し求めるような歌声」というイメージが浮かびました。
2018.02.01
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by mura-bito | 2018-02-01 21:01 | Music | Comments(0)
[PART2] PANDORA「Be The One [feat. Beverly]」:音をつないでトップスピードで駆け抜けるフルサイズ・バージョン
PANDORA小室哲哉/浅倉大介)が最初の曲「Be The One」を配信したのは2017年9月です。オープニング・テーマとして使われている「仮面ライダービルド」の開始に合わせてのことでしたが、配信されたのは番組で使用するサイズ(約80秒)でした。その先を聴きたいと思い続けて数ヶ月が経ち、やがて2018年が始まると、ついにフルサイズ・バージョンが公開されました。ダウンロードあるいはストリーミングで聴くことができます。
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フルサイズ・バージョンでは新しい音とメロディが加わり、Beverlyが歌う部分も増えて曲の厚みが増しました。オーソドックスな意味での緩急をつけていない構成だと思います。ドラムを抜いたりボーカルを強調させたりするような「緩い」部分がないのにもかかわらず、単調ではありません。厚みを維持したまま、雰囲気の異なる音を差し込んで前後をつないだり、前の音を引き継ぎながら体感速度を上げたりするというアプローチが、「落差によるものではないダイナミックな展開」を生み出しています。

イントロからAメロに入り、ダブステップ系の音を挟んでサビへつなげ、間奏ではサビの音を引き継ぎながら別の音を重ねて駆け抜けて、2番のAメロに突入します。2番のサビ以降は、サビから間奏、そしてヴォコーダー処理された音声(“3, 2, 1” と聞こえる)を瞬間的に挟んで突入する最後のサビまで、下がることなく上がった(勢いを維持した)まま突き進みます。音とともに、聴き手の気持ちもまた高揚し続けます。



PANDORA – Be The One [feat. Beverly]

イントロから生産・蓄積されてきたその勢いに拍車をかけるのが、最後のサビに乗って聴き手に畳みかけてくる英語のフレーズです。リズミカルに流れる英語の響きがメロディや音、そして歌声と組み合わさり、曲はスピードを落とすことなくエンディングを迎えます。アウトロはないため、歌とともに曲が終わります。空気を震わせる音や声の余韻から、僕は「目の前に真っ白な光が広がる」というイメージを抱きました。

新たに加わった部分で心に引っかかったのは ♪未来へつなごう 過去をいたわろう♪ という歌詞です。「過去を労わる」という言葉は独特で、小室さんが書いたものと思われますが、思い出すのはTM NETWORKが2014年に発表した「Always be there」という曲です。この曲に ♪思い出をうやまう♪ という歌詞が出てきます。過ぎ去った時間に向けた優しい眼差しとでもいうべき言葉です。昔を懐かしむというより、肯定してその延長線上に今が、そしてこの先があることを示す言葉だと思います。
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今後は「Be The One」のCDが発売され(「proud of you」という曲も収録されます)、インストゥルメンタルを含む数曲を収録したアルバムもリリースされるそうです。PANDORAという名の「どこに行くか分からない小室さんとバランスを取りつつ悪ノリしそうな大ちゃんとのコラボレーション」がさらに楽しめることを嬉しく思います。期待は膨らむばかりですね。
2018.01.18

◆追記
「“3, 2, 1” と聞こえる」と思っていた箇所は、“Be The One“ です。一度 “3, 2, 1” だと思い込むと、そうとしか聞こえなくなりますね。まあ、“One” は合っていたということで、どうかひとつ…

2018.01.28
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by mura-bito | 2018-01-18 18:08 | Music | Comments(0)
[PART1] PANDORA「Be The One [feat. Beverly]」:デュオというスタイルから生まれるTKDAエレクトロニック・ミュージック
PANDORA小室哲哉/浅倉大介)というプロジェクトが立ち上げられたのは、小室さんがThe Chemical Brothersのステージを観たことがきっかけです(『Keyboard magazine 2017 AUTUMN No. 398』より)。「曲を制作して、ステージでミキサーを操作しながらパフォーマンスする」という手法は新しいものではありませんが、それを「デュオ」という形式で行なうことが重要だったようです。そのイメージを実現するにあたり、自分と同じメロディ・メーカーでありキーボード・プレーヤーでありDJ/プロデューサーであり、そして気心も知れた人物ということで、大ちゃんとのコラボレーションがベストだと考えたのでしょう。
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AVICIIとNicky Romeroなど挙げたらきりがありませんが、エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーどうしが組むという活動スタイルは世界的に馴染みのある光景です。また、Axwell Λ Ingrosso、Dimitri Vegas & Like Mike、Grey(Kyle Trewartha/Michael Trewartha)、KUURO(Jordin Post/Luke Shipstad)など、デュオとして活動するケースもありますし、David GuettaとAfrojackのような師弟コラボレーションもあります。PANDORAもまたハイレベルな師弟デュオのひとつと言うことができるかもしれません。

「DJ/プロデューサーのデュオ」というスタイルに至ったのは、小室さんにとって自然な流れです。というのも、TM NETWORKの原点は木根さんとの「作曲デュオ」とでもいうべきスタイルだからです。木根さんの回想によれば、「2人で曲を書いて、シンセサイザーで音を作るグループ」というのが小室さんの構想だったようです。



PANDORA – Be The One [feat. Beverly]

当時、小室さんは「3人組が音楽を制作する最小単位だ」と考え、3人という構成を重視していました。音楽的にもビジュアル的にもボーカリストは不可欠だったと思いますが、そもそもボーカリストのいないグループという発想が生まれる余地があったのかどうか。最初は海外出身のボーカリストを据えようとしましたが、諸事情あってウツに声をかけたという話はよく知られています。メロディとシンセサイザー(あるいは打ち込み)と歌は自分たちで担当して、他の音は他のミュージシャンに任せていました。

けれども、当時から「フィーチャリング」という手法が存在していれば、TM NETWORKはボーカリストのいない2人組になっていたとも考えられます。まあ、そこには「木根さんがコンピューターやシンセサイザーに詳しい」という条件が付くのですが。そのため、その条件を満たす大ちゃんがいたからこそPANDORAは誕生しました。もしかしたら存在していたかもしれない過去を35年後の未来で実現したのがPANDORA、などという想像をしてみるのも楽しい。
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制作環境やリスニング手段の変化、EDMムーブメントによるエレクトロニック・ミュージックの再興など、いくつかの要因が絡み合ってPANDORAのような活動スタイルが無理なく成立するようになりました。まだまだ増えていくものと思われます。エレクトロニック・ミュージックにとって今は、ブームとは少し違った「層が厚みを増す」プロセスなのかもしれません。
2018.01.16

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by mura-bito | 2018-01-16 21:56 | Music | Comments(0)
[PART3] TM NETWORK「MAJOR TURN-ROUND」:32分21秒の音楽体験、過去と現在と未来の交錯、刷新される音の記憶
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FIRST IMPRESSIONの音がカット・アウトすると、間を置かずにSECOND IMPRESSIONのドアが開き、そこから響いてくるメロトロンの音が聴き手を招き入れます。緩やかなテンポで「MAJOR TURN-ROUND」の中で最も重厚なバンド演奏が繰り広げられます。音の塊はやがて小さくなっていき、荒れた水面から波がすっと引くような、静かな雰囲気の音になります。小室さんが弾くピアノが静謐な響きを紡ぎ、木根さんが爪弾くアコースティック・ギターは過去の記憶を探して彷徨います。そしてバンドの音が戻り、「MAJOR TURN-ROUND」の中で最もスリリングな演奏が始まります。途中まではピアノとベースとドラムのトリオ演奏です。それぞれのスタイルを存分に見せつけながら音が展開していき、やがてギターの音が重なります。

「MAJOR TURN-ROUND」のリズムを構築するのは、Simon PhillipsとCarmine Rojasです。Simon Phillipsのドラムは、CDとは思えないほどの迫力を感じさせます。僕は彼のプレイを上原ひろみのコンサートで聴いたことがありますが、実際に生で体験できる喜びと、期待を遥かに上回る格好良さに震えたのを覚えています。一方、Carmine Rojasは、David Bowieのツアーでバンドを統率したこともあるベーシストです。「MAJOR TURN-ROUND」は多くの音が交錯する曲ですが、ベースの音が全体を包み込んでいるのではないかと思うほど、ずしりと重く、厚い音で存在感を示しています。

ドラムとベースに支えられ、小室さんのピアノが走ります。このソロはKeith Jarrettを意識したと、後に小室さんは語りました。小室さんとプログレを結びつける人物として最初に挙がるのはKeith Emersonでしょうが、実はジャズ・ピアニストのKeith Jarrettをイメージしたという話には驚きました。その後も、自身のソロ作品でもKeith Jarrettについて言及する場面がありました。とはいえ、特にピアノの演奏スタイルについては、むしろRick Wakemanの影響の方が大きいのではないかと思います。Rick Wakemanが参加したYesの大作「Close to the Edge」やソロ・アルバム『The Six Wives of Henry VIII』を聴いていると、そう感じます。
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最後のパートであるTHIRD IMPRESSIONが始まると、音は少し明るめに響き、ポップな色に染まります。THIRD IMPRESSIONの前半で聴ける音は、ハウスというべきか、あるいは小室さんが傾倒していたトランスというべきか、プログレでは使われないであろうダンス・ミュージックのループ・サウンドです。そうした音が呼び込んだのかもしれませんが、歌詞はこれまでのパートより前向きなものになります。FIRST IMPRESSIONを現在、SECOND IMPRESSIONを過去とするなら、THIRD IMPRESSIONは未来に向かっていく音や言葉を発しています。

音は目まぐるしく、ダイナミックに展開します。地を這うようなベースとキックが鳴り終わると、曲はがらりと雰囲気を変えます。葛城哲哉が弾くギターの音は哀愁の色を帯び、音が紡がれるたびにその色は濃くなります。他のパートでも印象的なギターを披露していますが、THIRD IMPRESSIONでは心をぐっとつかむ音を鳴らしています。バンドの演奏を背にして、ウツの歌もエモーショナルに曲を彩ります。

メロトロンが鳴り響き、終着点に向かう曲を導きます。過去に吹き込まれた音が時間を越えて呼び戻され、空気を震わせます。録音されたものを聴く限りでは、他の音とのバランスを取っているのか、メロトロンは後ろの方に位置しています。ライブでは、小室さんが弾くメロトロンはストリングスとコーラスを鳴らし、前に前に出てきて、ベースやドラム、ギターを率いて壮大な雰囲気を醸しながらクライマックスを迎えます。32分という長大な曲の幕が閉じると、記憶のあちこちに音が残っているのが分かります。その欠片を拾い集めようとして最初から「MAJOR TURN-ROUND」を聴くと、音の記憶は刷新されていくのです。
2017.12.07
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by mura-bito | 2017-12-07 21:02 | Music | Comments(0)
[PART2] TM NETWORK「MAJOR TURN-ROUND」:重なる三つの「印象」を通り抜けながら体験する音の世界と記憶の揺らぎ
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「MAJOR TURN-ROUND」の収録時間は32分を超えます。いわゆる組曲の形式ですが、全体は3つのパートに分かれており、それぞれFIRST IMPRESSION、SECOND IMPRESSION、THIRD IMPRESSIONと名付けられています。この構成と命名は、Emerson, Lake & Palmerのアルバム『Brain Salad Surgery』に収録された「Karn Evil 9」の構成(1st Impression~3rd Impression)に沿っている…というより、そのままですね。

「Karn Evil 9」での意味合いは分かりませんが、「MAJOR TURN-ROUND」で各パートの名称にIMPRESSIONという言葉を採用したのは、この曲がテーマとして持っている要素のひとつが「記憶」だからだと思います(あるいはIMPRESSIONから「記憶」というテーマが生まれたのかもしれませんが)。impressionという語は印象・感銘という意味ですが、これは「心に残る痕跡」とでもいうべき現象です。心に刻み込まれて残り続けるもの、それは記憶と呼ぶこともできるのではないでしょうか。例えば、FIRST IMPRESSIONは「第一印象」というより、無数に存在して眠っている記憶の中で最初にアクセスする記憶のことなのではないか。

音を変えて多くの言葉を散りばめることで、「MAJOR TURN-ROUND」は「記憶とは何か?」というテーマにアプローチします。小室さんがこの曲について「最後の方になると、最初の部分がどのようなものだったのか記憶は曖昧になる」と語ったように、人間の記憶はそこまで強固なものではなく、時間とともに薄れていくものです。メディアに記録された音は揺るがないものですが、それを聴く人間の記憶はファジーであり、揺るがないはずの音は記憶の中で揺らぎます。記憶の揺らぎをひとつの曲の中で体験することで、誰もが知っている「記憶は揺らぐもの」という事実が身体的に刻み込まれます。
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「MAJOR TURN-ROUND」の開幕を告げるのは、壊れた換気扇が鳴らす乾いた音です。水面に落ちた墨がじわりと広がっていくようにベースとドラムが音の世界の輪郭をゆっくりと描き、シンセサイザーの音が聴き手をFIRST IMPRESSIONの中に取り込んでいきます。僕らの意識は音もなく音の中に沈んでいきます。さまざまな音が重なり、交錯します。チューブラー・ベルズの乾いた金属音が響き、ギターがテーマ・メロディを運んできます。音の世界は、ウツの歌声によって立体的に立ち上がり、小室みつ子さんの書いた歌詞によって陰影が生まれます。

曲は表情を次々と変えます。FIRST IMPRESSIONの中でもパート分けができるくらいに、浮き沈みの激しいダイナミックな展開を見せます。展開が徐々に切り替わるのではなく、急上昇や急転直下で音がいきなり変わるのが特徴です。途中で「オペラ座の怪人」を彷彿とさせるメロディが顔を覗かせ、不穏な雰囲気を醸しますが、その前の演奏が力強いために闇は一層濃く目に映ります。音の変わりようから、太陽が月に呑み込まれる日蝕のイメージが浮かびました。メロトロンに記録されたストリングスの音がメランコリックに空気を震わせます。

FIRST IMPRESSIONの終盤になると、それまで溜め込んだエネルギーを発散しながら、音が音を巻き込み、曲は勢いを増していきます。アスファルトにタイヤを切りつけながら走る車のように、ぐいぐいとスピードを上げて駆け抜けていく。スネアやハイハットの音が鋭く大きく力強く響き、他の楽器を煽ります。また、ライブで顕著だったのですが、この部分ではハモンドの音が強烈な存在感を示しており、荒々しいロック・オルガンが曲を強靭なものにしています。音が交差して主張し合う中で、ウツのボーカルはノイズと混ざり合いながら、異なる空間からのメッセージのように響きます。
2017.12.06
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by mura-bito | 2017-12-06 21:31 | Music | Comments(0)
[PART1] TM NETWORK「MAJOR TURN-ROUND」:プログレに新しい生命を吹き込み、21世紀の扉を開いたキーボード・サウンド
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TM NETWORKのオリジナル・アルバム『Major Turn-Round』がリリースされたのは、世紀が変わる直前の2000年12月です。アルバムはプログレッシヴ・ロック(プログレ)という音楽ジャンルで制作されており、その特徴を決定づけているのが表題曲の「MAJOR TURN-ROUND」です。アルバムに収録された「WORLDPROOF」、「IGNITION, SEQUENCE, START」、「PALE SHELTER」、「CUBE」などの曲も異なる角度からプログレらしさを見せますが、やはりアルバム収録時間のほぼ半分を占める「MAJOR TURN-ROUND」が中心となっています。

プログレが隆盛を誇った1970年代前半、中高生だったTM NETWORKの3人はその音楽をリアルタイムに体験しています。特に小室さんはプログレのバンドを組んでいたこともあり、少なからず影響を受けたと思われます。プログレは1984年のデビュー以降は活動の中心にはならなかったものの、「VAMPIRE HUNTER D」や「THINK OF EARTH」といった小室さんのソロの要素が強い曲、ライブでのキーボード・ソロではプログレが意識されていました。プログレの作品と言えそうなのはアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE-』でしょうか。当初は30~40分の曲をメインに据えるプログレのアルバムを構想していたものの、最終的には複数の曲に分割され、そして物語を軸にした音楽とライブは演劇やロック・ミュージカルに近かったと言う方が適しています。

こうしたプログレへのアプローチが散見される中で、徹底的にプログレに取り組んだのが『Major Turn-Round』です。メジャー・レーベルから撤退して、自らのインディー・レーベル「ROJAM Entertainment」からリリースされました。アルバムの中でも特に「MAJOR TURN-ROUND」のテーマやサウンドには、YesやEmerson, Lake & Palmer、Pink Floydなどの影響が色濃く見えます。後に小室さんが語った言葉を借りれば「遊びの極致」。アマチュア時代を思い出すことでそういう言葉が出てきたのでしょうが、実にミュージシャン的で良いと思います。なお、2014年にはソフト・シンセの音を多用した「QUIT30」というプログレの曲を作り、先端的な4Kの映像とともにライブで披露しました。
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「MAJOR TURN-ROUND」の特徴は、かつて隆盛を誇ったプログレ・サウンドに再び生命を吹き込むキーボードの音です。オールド・シンセサイザーの名器であるミニ・モーグ・シンセサイザーやメロトロン、オーバーハイムに加え、ロック・オルガンの代名詞であるハモンド、ジャズやフュージョンで使われるローズ・ピアノなど、プログレらしいキーボードの共演が実現しました。絡み合うキーボードの音は、僕にとってすべてを聞き分けることは難しいのですが、それでも「音の重なりや交差」や「ひとつの楽器の音が屹立する瞬間」を楽しむことができます。

特筆すべきはメロトロンです。メロトロンはいうなればテープレコーダーであり、音が記録されたテープが内蔵されていて、鍵盤ひとつひとつに連動しています。各テープにはコーラスやストリングス、フルート、ブラスなどが録音されています。和音の種類や音の消滅(音の出る時間が約8秒と、テープの長さに依存している)の組み合わせで、ある程度バリエーションのある表現が可能な楽器です。サンプラーやソフト・シンセが発達した今では化石にも等しい存在ですが、当時の音を知っているミュージシャンにとって本物を弾けるのは特別な体験のようです。

1996年にtk-trapというプロジェクトのライブで小室さんが「CAROL」組曲を披露したとき、キーボードの配置はYesのキーボード・プレーヤーであるRick Wakemanを参考にしたといいます。このときに、できればメロトロンも使いたいと語ったそうですが、実現しませんでした。ほとんど生産されておらず、中古でもなかなか手に入らない代物だったそうで。しかし、2000年に「MAJOR TURN-ROUND」を録音したときは中古のメロトロンを手に入れ、ライブではさらに新品を加えて2台のメロトロンを弾きました。「遊びの極致」とは言いながらも、「MAJOR TURN-ROUND」の制作は「ミュージシャンとしての本領発揮」といえることは間違いないでしょう。
2017.12.05
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by mura-bito | 2017-12-05 21:51 | Music | Comments(0)
[PART2] TM NETWORK『EXPO』:夜空に螺旋を描くエレクトロニック・サウンド
ハウス系TMサウンドに焦点を当てたとき、アルバム『EXPO』の中でも重要なポジションを占める曲が「JUST LIKE PARADISE」です。身体を揺らすのに最適なテンポで、心地好いエレクトロニック・サウンドが流れます。その音は「夜の陰に紛れている」とでもいうような、境界線の曖昧な感じがします。クールであり、シニカルな部分も見え隠れする。表には見えない、隠された色気のような魅力がある曲です。

歌詞はすべて英語で書かれており、ループするサウンドに絡ませた言葉のインスタレーションが目の前に広がります。歌とラップとポエトリー・リーディングが入り混じり、言葉を散りばめ、交差させ、重ねます。それは愛の囁きにも聞こえるし、地球を俯瞰したメッセージにも聞こえます。地上で交わす言葉、宇宙から届く言葉。視点はダイナミックに移ろいます。

ライブでは、オリジナルの音をもとにしながら発展させたアレンジが特徴的でした。ライブでのアレンジは、1991年にかけて1992年に行なわれたホール・ツアーと、アリーナクラスの会場で実施したアリーナ・ツアーで、部分的に音が異なっています。ホール・ツアーでは、サビでアクセントとしてループしていた音を前面に押し出し、一方でアリーナ・ツアーでは曲の終盤で小室さんがソロを弾いて、会場を盛り上げました。切なさを呼び起こすメロディを繰り返しながら音の高さを上げていくことで、どんどん高揚していく、強烈なリフレインです。
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ハウス系の曲として忘れてはならないのが「あの夏を忘れない」ですね。起伏の少ない展開で単調とさえいえるのですが、中毒性はかなり高い。キラキラとした光をイメージさせるシンセサイザーの音が淡々とループを続け、ベースやギターの音と絡み合います。ゆるりとしたテンポに包まれて、指先で肌をなでるようなメロディに、情熱的な言葉が重なります。言葉の奔流が止まると、淡々とした音が再び聴き手を抱きすくめる。

音は円を描きながら、イメージの中で螺旋を描きます。それも上昇するのではなく、下降するスパイラル。同じところをぐるぐる回っていたようで、いつの間にか下に下に落ちていた。僕が曲名や歌詞からイメージするのは、太陽の下で過ごした眩しい記憶を真夜中の片隅でぼんやり思い返している人間の姿です。止まった時の中に留まり続けるメランコリックな一夜は、ただの眠れない夜ではなく、何も見えない闇の中を彷徨い歩く時間です。

1993年のリミックス・アルバム『CLASSIX 1』では、大胆に音を削ぎ落とした「あの夏を忘れない」を聴くことができます。リズム・セクションを抜き、シンセサイザーの音も前に出さないリミックスであり、ボーカルの存在感が一層強まっている。分厚い音を重ねていくダンス・ミュージックの概念はひっくり返され、静謐な空気の中でエレクトロニック・サウンドの「粒」を感じさせます。ここまでサウンドをスリムにされると、オリジナルでも使われていた音が異なる響きを持ち、より深みのある哀愁が漂います。

2017.10.11
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by mura-bito | 2017-10-11 21:45 | Music | Comments(0)
[PART1] TM NETWORK『EXPO』:季節の移ろいに溶け込むエレクトロニック・サウンド
秋に聴きたくなるアルバムを挙げるとすれば、TM NETWORKの『EXPO』を選びます。アルバムに収録されているいくつかの曲が、夏が終わり始めてから秋らしくなってグラデーションのように変わっていく空気に溶け込むような気がするからです。それも、太陽が沈んで夜になって空気がさらに冷たくなるあの感じがよく似合う。

『EXPO』はハウス・ミュージックを中心として、ロックやフォーク、ラテン・ミュージックの要素も含む、雑食性の高いアルバムですが、音、メロディ、歌詞が、それぞれに哀愁を漂わせる要素を含んでいます。秋といえば哀愁や切なさを強く感じる季節なので、そうした気持ちを『EXPO』の曲が呼び起こし、間接的に秋を感じるのだろうと思います。もちろん、聴く人によって何をイメージするか、どのような気持ちを呼び起こされるかは異なります。

とはいえ、『EXPO』の曲が哀愁を感じさせるという点は多くの聴き手に共通することなのではないかと思います。そして、それは音に依るところが大きい。アルバムにおける大きな音楽的テーマはハウス・ミュージックです。ループするエレクトロニック・サウンドを使って中毒的な快感を呼び起こす、ダンス・ミュージックの一種ですが、『EXPO』ではTM NETWORKの感性と混ざって独特のサウンドを作り上げました。そんなハウス系TMサウンドで構築された曲を3つ挙げて、三角形をつくってみましょう。
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ひとつ目は「WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-」です。シングルとは異なる音でリミックスされたバージョンです。シングルでは春や初夏のようなキラキラした華やかさを感じますが、このリミックスで感じるのは秋の風が運んでくる濃密な哀愁です。それでも寂しさやメランコリックな雰囲気ではなく、涼しげな空気が漂います。キックやベースの音は色気に満ちていて心地好く、さらに曲をぐいぐい引っ張るパワーがあります。加えて、高く抜けていくスネアの音が重なり、曲の印象を立体的にしています。

キックの響きは、2010年代のEDMとは異なった感じで存在感を示します。EDMでは主役と呼べるほどに存在感を放つことが多く、身体にぶつかってくるようなタフさがあります(TM NETWORKで例示すれば「金曜日のライオン 2014」)。「WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-」のようなハウス・ミュージックでのキックは「身体に浸み込む」感じがありますね。音に反応する快感のセンサーもいろいろあり、EDMにおけるキックとハウスにおけるキックは違ったタイプの刺激を与えるのだと思います。どちらも心地好い。

Ooh, Ah, Ah, Mixという名称もいいですよね。意味深というか、生々しいというか。TMN時代の曲やライブは、わりと色気を感じさせる、あるいはセクシュアルな要素を前に押し出すのが特徴でした。RHYTHM REDツアーの「KISS YOU」や『EXPO』での「CRAZY FOR YOU」の演出は分かりやすくセクシュアルです。『EXPO』を軸にしたツアーでもこのリミックスをもとに「WE LOVE THE EARTH」が披露されましたが、イントロに散りばめられたサンプリング・ボイスの一部で “Ooh, Ah, Ah” という声が繰り返し響きます。…まあ、そういうことです。

2017.10.10
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by mura-bito | 2017-10-10 21:40 | Music | Comments(0)
TM NETWORK – GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition
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2017年5月に『GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition』が配信されました。4月にCD・配信でリリースされた『GET WILD SONG MAFIA』のうち2012年以降に録音されたライブ・テイクをまとめ、さらにavexが権利を管理するカバーやリミックスを加えたコンピレーション・アルバムです。

本作に収録された曲の中で特徴的だと思うのは、2011年のライブ配信「DOMMUNE」で披露された「GET WILD ’89」、2013年に配信された「GET WILD (2013 SUMMER)」、石野卓球によるリミックスの別バージョン「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Remix-」です。

GET WILD ’89 (DOMMUNE #332 TETSUYA KOMURO Liveset)

2011年に小室さんはDOMMUNEに出演し、ソロやglobeのリミックス、1990年代にプロデュースした曲を披露しました。TM NETWORKの曲も含まれており、そのひとつが「GET WILD ’89」です。リアルタイムにシンセサイザーの音を重ねるパフォーマンスは、キャッチーな音や荒々しくノイジーな音を響かせながら、インターネットを介して多くの人のもとに拡散しました。

「GET WILD ’89」は1989年にリリースされました。1980年代のダンス・ミュージックの象徴であるユーロビートの音でリミックスされた曲です。制作を手掛けたのはPete Hammond(ユーロビートの代表格であるPWLというチーム)というプロデューサーです。1989年の音に2011年の音と感性を重ねたのがDOMMUNEでのプレイです。20年離れた時間が交錯する瞬間を味わうことができます。

GET WILD (2013 SUMMER)

2013年は小室さんがソフト・シンセを本格的に導入した時期であり、「EDM (Electronic Dance Music)」というキーワードを重視していました。globeやtrfなどの曲をEDMにリミックスした『DEBF EDM 2013 SUMMER』に、「GET WILD (2013 SUMMER)」も収録されています。ライブ「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」で使った音を整理しつつアップデートして、リズムやボーカルを加えています。

「GET WILD」がEDMの要素を取り入れた最初のバージョンであり、「いかにもソフト・シンセ」という音が聴けます。大きな特徴のひとつはイントロですが、本作に収録されたものではイントロの大部分がカットされています。そのため、『DEBF EDM 2013 SUMMER』を聴いた方が、よりEDMらしさを感じることができます。ダブステップの特徴であるワブル・ベースが使われているイントロやBメロを聴いて、「これまでの『GET WILD』とは違う」と思ったものです。

GET WILD -Takkyu Ishino Latino Remix-

「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Remix-」は、『GET WILD SONG MAFIA』に収録された「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Acid Remix-」を基にしたリミックスです。ループする音に、ボーカルのサビ部分をサンプリングして重ねます。

Latino Remixの特徴はLatino Acid Remixからアシッドの音が抜かれていること…と書くとなんだか間抜けですが、注意深く聴き比べると印象が異なります。アシッドの裏でメインの「ミ・レ・ド(=♪Get wild and tough♪)」を奏でていたシンセサイザーがよく聞こえるようになりました。天ぷらの衣をはがした感じ…という表現が適切かどうかは分かりませんが。僕の耳と知識では判別できるのはそのあたりですが、大きな違いはそれだとすれば、なかなかにマニアックな差です。




2017.09.19

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by mura-bito | 2017-09-19 21:53 | Music | Comments(0)

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