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LINKIN PARK「Forgotten」:歌とラップの交差、乱舞するスクラッチが生み出したバンドの核
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LINKIN PARKのアルバム『Hybrid Theory』は、デビュー作にして出世作、そして代表作です。2000年のリリースから20年が経ちますが、まったく色褪せません。アルバムのカラーがはっきりしている一方で、各曲の個性も強く打ち出されています。全体としても個としても引き立つ、矛盾しがちな要素を両立させたパワフルなアルバムです。

『Hybrid Theory』を代表する曲といえば何か。リスナーによってさまざまでしょうが、真っ先に「In The End」を挙げるファンは多いはずです。それを含め僕は、初めて聴いたときから特に好きな4曲、自分にとっての「四天王」があります。「In The End」、「Points Of Authority」、「Pushing Me Away」、そして「Forgotten」。このなかから「Forgotten」をピックアップして、その魅力を言葉にしてみましょう。



LINKIN PARK – Forgotten

Chester BenningtonのボーカルとMike Shinodaのラップが交差し、Mr. Hahnのスクラッチが響く。それはLINKIN PARKの本質ともいうべき音楽スタイルです。なかでもChesterが歌う “At the core I’ve forgotten” というところが好きです。キャリア初期ならではの熱と勢いを凝縮した、バンドのコアに触れることができます。

冒頭からアップダウンの激しい曲ですが、終盤になると、さらに落差の大きい展開が待っています。一度バンドの音が途切れたかと思うと、ベースを主体にした薄い音のなか、スクラッチに乗ってラップが徐々に熱を帯びます。そしてラップは攻撃性を増して加速し、その背後で美しいコーラスが響く。この部分でMikeとChesterの声が織り成すコントラストに魅せられました。タフで荒々しく、それでいて美しいというLINKIN PARKらしさを存分に味わえます。

2020.10.07
# by mura-bito | 2020-10-07 21:07 | Music
藍井エイル「I will... (THE FIRST TAKE)」:メロディの輪郭を描く歌声、触れて熱を感じるTHIRD IMPRESSION
藍井エイル「I will... (THE FIRST TAKE)」:メロディの輪郭を描く歌声、触れて熱を感じるTHIRD IMPRESSION_b0078188_20485662.jpg
藍井エイルがTHE FIRST TAKEで「I will...」を披露しました。今年の夏にリリースされた「I will...」は、起伏のある展開が特徴的ですが、さらに表情豊かで叙情的なメロディもこの曲の魅力です。メロディがいかに魅力的かということを改めて感じたのが、このTHE FIRST TAKEです。これまでライブや音楽番組で目にしたパフォーマンスとは違う切り口で披露されたことで、そのメロディに意識が集中しました。



藍井エイル – I will... (THE FIRST TAKE)

ピアノの伴奏で歌い始め、パーカッションとベースとアコースティック・ギターが静かに加わります。やがて音が跳ねるように明るくなり、リズミカルに響く。その後も音は緩急をつけて聴き手を導きます。心地好い音の流れのなかで全体を貫くのがエイルの歌声であり、いつも以上にタフな印象を受けました。それはアコースティック・スタイルの音だからか、THE FIRST TAKEの緊張感からか、あるいは両者が絡み合っているのか。
タフな歌声によって、僕のなかでメロディの存在感が大きくなります。「I will...」は音楽番組やオンラインのライブでも歌われましたが、同じ生のパフォーマンスであっても、それらとは異なる独特なものを感じました。メロディに物理的な形があるとすれば、その表面に触れて熱を感じる、いうなれば「メロディとの距離がぐっと縮まった」感覚を抱きます。特に心が震えたのが ♪ねえ どれだけの 時間があったとしても♪ の部分です。THE FIRST TAKEを観たあとで改めて「I will...」を聴くと、メロディは以前よりも叙情的に感じられ、さらに、そのメロディに以前よりも強く惹かれていることを自覚しました。
初めて聴いたときの印象をfirst impression、インストゥルメンタルを通して曲を違う角度から捉えた記憶をsecond impressionとするならば、THE FIRST TAKEのパフォーマンスで受けた衝撃がthird impressionです。「I will...」の新たな面に接するたび、印象が刷新されます。それは、新しい音楽を知るのと同じくらい魅力的で、それとは別の方向に世界を拡げてくれる素晴らしい音楽体験です。

2020.10.01
# by mura-bito | 2020-10-01 20:51 | Music
ORESAMA「Morning Call -Dressup cover-」:カラフルな音は歌を乗せて流れ、ポップでクールな物語を映し出す
ORESAMA「Morning Call -Dressup cover-」:カラフルな音は歌を乗せて流れ、ポップでクールな物語を映し出す_b0078188_21452188.jpg
ORESAMAが自身の曲をセルフ・カバーする企画「Dressup cover」は、一枚のアルバムが作れそうな数が生まれています。最初の頃は3曲ほどをYouTubeにアップして終わる企画かと思い、第4弾の「Morning Call -Dressup cover-」が公開されたときはextended playとして配信するのかなと思いました。ところが、その後も新たなDressup coverの発表が続いているため、リメイク・アルバムができそうです。

「Morning Call -Dressup cover-」の雰囲気はポップでクール。軽やかな音を前面に押し出したエレクトロで始まり、やがて音がいくつも組み合って膨らみ、厚みを増します。間奏からはシンセサイザーとギターの競演が鮮やかに響き、パーカッションとベースを効かせたアプローチも加わります。表情の異なる音がリレーのようにつながる流れが心地好くて、ずっとループして聴いていたいと思わせてくれます。



ORESAMA – Morning Call -Dressup cover-

Dressup coverでのボーカルは、音と同じレイヤーで響く感じがします。サウンドに近づき、溶け込んでいるボーカル、それがこの曲のポップでクールな雰囲気を生み出す要素のひとつになっていると思います。

オリジナルの「Morning Call」が収録されているのは、2015年に発表されたアルバム『oresama』。全体を貫くギターの音が印象に残るアレンジです。また、歌詞からはパーソナルな関係で育まれる心地好さを感じました。そうした空気は、音が変わったDressup coverでも継承されていて、穏やかな優しさが見え隠れします。
2020.09.29
# by mura-bito | 2020-09-29 21:50 | Music
村野真朱・依田温『琥珀の夢で酔いましょう』:新しいビールとの出会いで生まれた言葉が、多様で自由な世界を描く
村野真朱・依田温『琥珀の夢で酔いましょう』:新しいビールとの出会いで生まれた言葉が、多様で自由な世界を描く_b0078188_09584672.jpg
クラフトビールを題材にした漫画『琥珀の夢で酔いましょう』(原作:村野真朱、作画:依田温、監修:杉村啓)の第3巻が刊行されました。主役の三人が主催するイベントを軸にした巻です。個々のビールの魅力や料理とのペアリングについて、芝居仕立てで、ときにコミカルに、ときにシリアスに紹介します。

『琥珀の夢で酔いましょう』では、創作料理とクラフトビールを提供する店「白熊」を中心に物語が進み、ときに外に飛び出して京都の各所を舞台に展開します。それはビールを紹介するだけにとどまりません。ひとつのビールが生まれた経緯やブリュワーの姿勢などをストーリーに丁寧に織り込み、登場人物の思いや生きざまに重ねます。



琥珀の夢で酔いましょう 1

イベントの名称は「十月はたそがれのビール」。三人の知り合いや常連客、そしてビール好きの呑兵衛が「白熊」に集まり、ビールを楽しみます。仮面を被って未来人を演じたのは、三人の共通の知り合いであり、名の知れた俳優です(準主役というべきか、もはや主役のひとりというべきか)。彼女はグラスを片手にビールについて語り(ときに歌い)、参加者に問いを投げかけます。ビールに抱くイメージ、初めて口にするビールの味。彼女はパズルのピースを拾うように、人々が語る言葉を集めます。

イベントでは、ビールが苦手な大学生の視点が重要な役割を果たします。彼女は友人の後について大学生活を送ってきて、「白熊」にも誘われるままにやってきました。ところが、その友人が来られなくなります。放り出された彼女は気後れしながらもイベントに参加し、そしてビールに対して思うことを問われると、「『ビールの味』が無理」という本音を口にします。すると我が意を得たりといわんばかりに、「ビールの味」がしないビール(京都醸造のクリーム・エール「後ろめたい秘密」)が彼女の前に出されます。

他にもふたつのクラフトビールが提供され、その個性を料理とともに味わいながらイベントは進みます。そのなかで浮かび上がるのが、ビールを通して「多様性」や「自由」を捉えるメッセージです。ビールを楽しむためのガイドとして読むもよし、物語の奥行きを味わってみるもよし。もともと両方の要素を持つ漫画ですが、このイベントでは特に色濃く出ており、メッセージにも力が込められています。

ビールが苦手な人であっても、自分に合ったものを探す楽しみがクラフトビールにはあります。一方、ビールが好きな人は、苦手な人でも飲めるクラフトビールを知ることで、これもまたビールなのだという新しい視点を得ます。ビールの種類だけ魅力があり、「ビール」という言葉の定義を変えるのではないかと思うほどのカラフルな世界が広がります。

アルコールに弱く、特にビールを避けていた僕が、今や京都醸造のビールを定期的に通販で購入するほどのファンになったのは、間違いなく『琥珀の夢で酔いましょう』がきっかけです。ビールの捉え方が変わり、量は飲めずとも、自分に合ったビールを味わうという楽しみ方を知りました。背中を押されて新しい世界に踏み込んだら、次の一歩を自分の意思で踏み出す。そういう体験ができたことを嬉しく思います。

さて、先述の大学生は「十月はたそがれのビール」を通して、何を思い、どのように変わったのでしょうか。イベントが進み、新しいビールを口にするたび、彼女のなかに新しい言葉が生まれます。イベントの最後に語ったこととは何か、それを確かめるのもこの巻の魅力です。
2020.09.22

# by mura-bito | 2020-09-22 10:10 | Visualart
quasimode TAKES ME TO A NEW JAZZ WORLD playlist
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僕がquasimodeを知ったのは2008年です。あるイベントの出演者リストにquasimodeが載っていて興味を持ったのですが、イベントには行けなかったので、彼らの音楽を聴く機会はしばらく後になりました。そこに記された「クラブ・ジャズ」という言葉がずっと気になっていた僕は2009年のあるとき思い立ち、カバー・アルバム『mode of blue』を購入しました。ずっとクラブ・ジャズをエレクトロの一派だと思い込んでいた僕は、勘違いしたまま『mode of blue』を聴き始めます。

いつまで経ってもアルバムは僕の想像する音楽を再生せず、最後の曲が終わってようやく、クラブ・ジャズの「クラブ」はエレクトロの意味でのクラブ・ミュージックではないと把握しました。ハウスやテクノだけではなく、ジャズのレコードを流したり演奏したりするクラブもあると知ったのは後のことですが、これをきっかけに僕のなかの「ダンス・ミュージック」にジャズが加わります。しっとりと聴くだけがジャズのすべてではない。勘違いから始まったものの、これが「踊れるジャズ」を標榜したquasimodeとの出会いです。

Catch The Fact (oneself - LIKENESS, Finger Tip E.P., Four Pieces)
The Man From Nagpur (The Land of Freedom)
Jeannine (SOUNDS OF PEACE)
Finger Tip (Finger Tip E.P., SOUNDS OF PEACE)
Afrodisia (mode of blue)
Ghana (mode of blue)
All Is One (daybreak)
Relight My Fire (daybreak)
Lush Life (Magic Ensemble)
So What (Whisky’s High)
Slow Motion (Soul Cookin’)
Hi-Tech Jazz (Hi-Tech Jazz)

2006年にデビューしたquasimodeは、2009年にBLUE NOTEレーベルに移籍してオリジナル・アルバム『daybreak』を発表しました。その後もコンスタントにアルバムを出すものの、2015年に活動を休止します。僕は何度もライブに足を運び、嬉しいことにメンバーと話をする機会にも恵まれました。クラブ・ジャズのムーブメントが大きくなっていく様子を肌で感じ、そのムーブメントを牽引するバンドの姿を目の当たりにしました。さまざまな角度から「踊れるジャズ」を表現するquasimodeの音楽をリアルタイムで楽しみました。

ジャズに対する僕のイメージを刷新し、ジャズの楽しみ方を教えてくれたquasimode。僕が好きなquasimodeの「踊れるジャズ」を12曲選びました。思い出に浸るだけではなく、今もなお聴いて心と身体が熱くなる曲です。



quasimode – The Man From Nagpur

「Catch The Fact」はデビュー・アルバム『oneself - LIKENESS』の最初と最後に収録された曲です。ひとつの曲のイントロまたはエンディングを抜き出した感じです。のちに、テーマを加えて録音したフルレングスが発表されました。イントロからエンディングまでどこを聴いても美しいフレーズが響く「Catch The Fact」は、僕のiTunes Storeで再生回数のトップを走り続けました。2012年には、ベスト盤『Four Pieces』にて、フルレングスの再録版が発表されました。当時のライブでも披露され、ライブで聴けたことに無上の喜びを感じたことを覚えています。

2007年のアルバム『The Land of Freedom』の中心といえば「The Man From Nagpur」です。僕が観たライブのなかでは、最初や序盤に演奏される曲でしたし、ライブ盤でも序盤に演奏されていました。追い風のような力強さがあり、会場はヒートアップし、ライブに勢いがつきます。キラキラと光が弾けるように、音が軽快に跳ねる感じが心地好い。

『SOUNDS OF PEACE』では、Duke Pearson「Jeannine」がカバーされました。疾走するピアノが渦を巻き、聴き手を取り込みます。また、このアルバムに収録されている「Finger Tip」はロング・バージョンが「Finger Tip E.P.」で聴けます。先述の「Catch The Fact」が収録されたE.P.ということもあり、この時期のquasimodeに底知れぬ勢いを感じました。当時のライブを実際に体験していないものの、音を聴くだけでも勢いがあったことが想像できます。



quasimode – Finger Tip

『mode of blue』のなかで気に入った曲は「Afrodisia」と「Ghana」です。Kenny Dorham「Afrodisia」はライブでも何度か演奏され、重厚かつ軽快な音が楽しかった記憶があります。一方、Donald Byrd「Ghana」はピアノの哀愁漂う美しい音が好きです。もっと深いところまで知りたくなって『Byrd In Flight』で原曲を聴くと、quasimodeによるカバーがさらに好きになりました。カバーの楽しみ方が広がった体験です。

僕がリアルタイムで聴いた初めてのオリジナル・アルバムが『daybreak』であり、初めて観たライブもこのアルバムのリリース・パーティーです。このアルバムの最初に収録されているのが「All Is One」。ピアノが奏でるイントロで会場は盛り上がります。また、その直後に入ってくるキックの音も印象に残っています。四つ打ちを感じたというべきか、ボトムを重厚に支える音にわくわくしました。

「Relight My Fire」は『daybreak』の中心的な曲で、シングルとしてもリリースされました。Dan Hartmanの曲のカバーであり、ボーカルは有坂美香がとりました。ライブではこの曲の前にU2の「Vertigo」を配し、「Vertigo」から「Relight My Fire」につなげる瞬間が盛り上がるというひとつのパターンを生み出しました。そして有坂美香は歌で盛り上げながら、メンバーにマイクを渡して歌わせたこともありました。ライブに「遊び」を入れ込んだ曲です。



quasimode – Hi-Tech Jazz

2010年後半~2011年のquasimodeはポップスに大きく接近しました。ポップな色が濃くなったことで、僕らとバンドの距離が近づいたと思います。この時期で好きな曲が「Lush Life」と「So What」です。「Lush Life」はモントゥーノの部分が心地好くて、このセクションがずっと続けばいいのに思いながら毎回聴いています。ライブではコーラスが入ることもありました、一方、「So What」はいわずと知れたMiles Davisの曲であり、あえてホーンを入れず、四人の音で勝負したところが好きです。〈東京ジャズ〉でも演奏されました。

土岐麻子をボーカルに迎えた「Slow Motion」は、モータウンのリズムが心地好く、アルバム『Soul Cookin’』のなかでもポップさが際立ちます。軽快なイントロから音の世界に没入し、彼女の歌が聞こえると、ふわりと温かみが広がります。ストリングスを加えたquasimodeの演奏に溶け込みながら、歌声は少しずつ表情を変えます。目の前にスクリーンが広がり、穏やかで儚く切ない物語が映し出されます。

「Hi-Tech Jazz」GARAXY 2 GARAXYの曲のカバーです。最初、『SPUNKY! - mixed by Takahiro “matzz” Matsuoka (quasimode)』に収録され、のちにイントロの加わったバージョンが12インチ盤としてリリースされました。今では、2017年に発売された『Past and Future』というコンピレーション盤で聴くことができます。イントロはドラムとパーカッションの演奏から始まり、このループする音がquasimodeのライブの始まりを想起させます。「どの曲が始まるんだろう?」と思わせてくれる、高揚感が生まれる一歩手前の期待。ライブの感動を思い出します。

2020.09.19

# by mura-bito | 2020-09-19 21:56 | Music

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