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LINKIN PARK『Hybrid Theory (20th Anniversary Edition)』:20年の時間を解体し、Hybrid Theoryの軌跡をたどる
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LINKIN PARKのデビュー・アルバム『Hybrid Theory』がリリースされたのが2000年10月。2回目のDECADEを記念して、アルバムの “20th Anniversary Edition” がリリースされました。収録曲のデモ音源やライブ音源、初期の未発表曲、改名前に制作した曲、前身バンドXeroで制作したデモ音源などが収録されています。

先行して「She Couldn’t」という未発表曲と「In The End」のデモ音源が公開され、その後すべての曲がリリースされました。これまで何かしらの形で公表されていたデモ音源もあれば、存在が噂されていた未発表曲もあり、さらに、耳聡いファンですら知らなかった音源も含まれているのではないでしょうか。キャリア初期、ひいてはバンド誕生の前まで時間を巻き戻し、『Hybrid Theory』の痕跡をたどります。



LINKIN PARK – Hybrid Theory 20th Anniversary Edition

今作にまとめられたデモ音源は、マテリアルの状態に過ぎないものと、歌メロや音の大部分が固まっているものに分かれます。特に後者は、アルバムに収録された最終形と異なる部分から、曲が変化したプロセスを見ることができます。

個人的に待ち望んでいたのは「Points Of Authority」、「Forgotten」、「In The End」のデモ音源です。これらは僕が『Hybrid Theory』の中で最も好きな4曲なので(もう1曲は「Pushing Me Away」)、ほんの一部であっても、好きな曲の裏側を知れたことはとても嬉しい。さながら工場見学のような、曲が仕上がる前のレアな姿に感動します。



LINKIN PARK – Points Of Authority (Demo 1)

「Points Of Authority」は、“Forfeit the game...” から始まるMike Shinodaのラップを特徴とし、冒頭をはじめ、随所に登場します。この曲については、3つのデモ音源が公開されました。この曲名になってからのデモは2種類あり、加えて「Oh No」というタイトルが付けられた音源があります。

「Oh No」にはボーカルもラップも入っておらず、曲というよりはフレーズを少し長めに録音したマテリアルです。少なくともウワモノの音は最終形で使われているように思えず、そうと言われないとデモとは気づかなかったと思います。よく聴くと、途中のリズムが「Points Of Authority」を感じさせる…というていどの理解しか僕にはできません。具体的なフレーズというよりは、曲の土台が「Oh No」から踏襲されているように思います。



LINKIN PARK – Oh No (“Points Of Authority” Demo)

対して、他の2種類のデモ音源は最終形に近いものの、「リリックは同じだが構成が異なる」(Demo 1)と、「構成は同じだがリリックが異なる」(Demo 2)という違いがあります。最終形ではDemo 2の構成でDemo 1のリリックを使っており、両方のバージョンを混ぜて最終形が完成したとも考えられます。

最終形の構成(Verse・Pre-Chorus・Chorus)をもとにすると、Demo 1はChorusに当たる部分がありません。このバージョンだけのラップが加わっていることもあって、ヒップホップの色が濃いバージョンといえます。Demo 2では、“Forfeit the game” から後のリリックが異なっています。言葉のつなぎ方や切り方も変わり、それがラップに鋭さや勢いを与えています。各バージョンに見られた特徴は最終形でカットされましたが、いずれも魅力的で、どこを使っても格好良いのは流石です。



LINKIN PARK – Points Of Authority (Demo 2)

「Forgotten」はアルバム収録曲のなかで、最初期に制作されたデモ音源のひとつです。Xeroで制作したときのタイトルは「Rhinestone」。曲が “From top to bottom” から始まる、後半がMr. Hahnのスクラッチで始まるといった曲の構成は最終形と共通しており、違いといえば一部が長くなっている点です。

「Rhinestone」の段階では大部分の歌詞が異なっており、なかでも最終形で “At the core I’ve forgotten” であるところが “At the core of the rotten” となっています。この部分がChester Benningtonが加入してデモを録りなおしたときに変わり、曲名にも影響を与えたと思うと、化石を見つけたかのような興奮を覚えます。



LINKIN PARK – Forgotten (Demo)

そして、曲名が「Forgotten」になった後のデモ音源も聴けます。歌詞は最終形に近くなったものの、まだ完成していません。曲の構成は「Rhinestone」を引き継いでいますが、音がブラッシュアップされ、ボーカル表現やラップのクオリティも上がりました。

最終形と異なる部分のうち、特に印象に残るのがエンディングです。それまでの攻撃的で分厚い音から一転してシンプルで穏やかな音のなか、歌が静かに響きます。言葉がどこかに飲み込まれていくかのようにして、曲が終わります。最終形では最後までChesterが歌いますが、デモ音源では最後だけMikeが歌います。この部分がとても好きです。



LINKIN PARK – In The End (Demo)

代表曲「In The End」のデモ音源について、アレンジの方向性は最終形と同じですが、この曲の要諦であるリリックが異なります。特にリリックの冒頭 “One thing, I don’t know why. It doesn’t even matter how hard you try.” は何度聴いてた分からないほど耳にしているため、ここが違っていると違和感がとても大きくて驚いたのですが、しかし同時に新鮮でした。

曲の構成は、終盤の一部が長い点が最終形との違いです。“I’ve put my trust...” のリフレインが1回多くなり、Chesterは同じメロディを3回繰り返します。最初は音に溶け込みそうな雰囲気で歌い、次は声量を抑えつつも味わい深く歌う。そしてバンドの音とともに力強さを増して歌うと、そのまま最後のChorusに突入します。最終形と比べて、この部分の落差が大きいため、一層ドラマチックに響きます。デモ音源も最終形も甲乙つけがたく、どちらが良いか選ぶのは難しい。そんな嬉しい悩ましさを含め、素晴らしいものを見せてもらった喜びで満たされています。Celebrate the 20th anniversary of Hybrid Theory.
2020.10.27
# by mura-bito | 2020-10-27 21:49 | Music
村野真朱・依田温『琥珀の夢で酔いましょう』:過去から今に至る道が導く「いろんな味がする」読後感
村野真朱・依田温『琥珀の夢で酔いましょう』:過去から今に至る道が導く「いろんな味がする」読後感_b0078188_21332111.jpg
『琥珀の夢で酔いましょう』(原作:村野真朱、作画:依田温)の第3巻では、クラフトビールのイベントが四回にわたって描かれ、この巻の大きな山となっています。イベント編だけでも充分に読み応えがありますが、最後に収録された第16話「帆影と共に去りぬ」も強く印象に残り、ずしりと響くものがありました。

第16話の主役は、物語の主要メンバーのひとりである「芦刈鉄雄」です。彼が高校時代の友人「仲本さち」と再会したところから、話は始まります。登場するビールはFull Sail Brewing Co.(オレゴン州)が提供する「Full Sail Amber」。二人はFull Sail Amberを片手に学生時代を振り返り、そしてそれぞれの今について語ります。

どのような味がするのか確かめたくて、Full Sail Amberを取り寄せてみました。飲んだ瞬間は苦くて、「自分には無理な味か?」と思ったものの、すっと苦味は引き、マイルドな味わいが広がります。作中でFull Sail Amberは「いろんな味がする」と表現されており、なるほどそれは確かにいえる、と。甘いともいえるし、どこか酸味も感じます。飲み続けるとその独特の苦さが心地好くなってきて、するすると飲めました。

この話から僕が感じ取ったテーマは「諦めること」です。理不尽な目に遭って夢を諦めた人の視点と、諦めた人を前にした人の視点が交錯します。理不尽なことは、それを課した人以外の人々に出口のない問いを背負わせます。一刀両断できれば苦労はしませんが、そうもいかず。

学生時代にピアノに打ち込んでいた「さち」は、音大で留学の切符を同級生と争いました。しかし、選考会で「女性だから」などの理由で落とされ、ピアニストの夢を諦めます。理不尽な目に遭って、反発できずに、呑み込んで、諦めてしまった経験。一方、「鉄雄」もまた高校時代の陸上部で、理不尽に扱われた記憶がよみがえります。彼は納得できないことを表に出していたものの、不自然なことを不自然なまま受け入れ我慢している同級生とぶつかります。客観的には前向きなはずの言葉でさえも、相手に届かないもどかしさ。

今は音楽教室の教師をしている「さち」と、写真家として活動している「鉄雄」。彼はもう一度彼女のピアノが聴きたいと言い、その舞台を整えようとすらします。けれども、彼女は「またいつか 弾けたらいいな」(「いつか」に傍点)という言葉と笑顔を残して去ります。このシーンが特に強く印象に残りました。シンプルで軽そうに見えるのに、手にするとずしりと重い。

村野真朱・依田温『琥珀の夢で酔いましょう』:過去から今に至る道が導く「いろんな味がする」読後感_b0078188_21361877.jpg
この話の中で、イベント編に登場した「“不自由” に一つ一つ気づいて それに苦しむ人が解放されて はじめて “自由” って言えるのかも」という言葉がピックアップされます。イベントとは別の角度で、ある意味ではもっとリアルに響いたといえる言葉です。

イベントの成功は、解放に向かって一歩を踏み出す力を、参加者にも主催したメンバーにも与えました。けれども、その「陽」の部分が際立てば、それだけ今回のエピソードの「陰」が目立ちます(太陽の光が強ければそれだけ影は濃くなる)。「不自由」に苦しんでいても、代償を払ってまで抵抗したり主張したりして「自由」を求める人は、多いとはいえないのではないか。そんなことを思いました。

もちろん解釈はひとつだけではなく、この話のどの部分から何を思うかは千差万別。読む人の数だけ捉え方があり、さらに、ひとりの中でも多様な味わいをもたらす話だと思います。読後感を表現するならば、まさしく「いろんな味がする」です。
2020.10.22
# by mura-bito | 2020-10-22 21:36 | Book
ORESAMA「Gimmme!」「夜行ノ雨」:音は夢の世界を巡り、歌は雨降る夢に色を重ねる
ORESAMA「Gimmme!」「夜行ノ雨」:音は夢の世界を巡り、歌は雨降る夢に色を重ねる_b0078188_21274135.jpg
ORESAMAぽん/小島英也)のシングル「Gimmme!」がリリースされました。表題曲が先行してストリーミング配信され、その一週間後にCDとしてリリースされました。

最初に「Gimmme!」を聴いたとき、ORESAMAの持つポップさが強調された音だと思いました。ここ数ヶ月、Dressup cover企画でファンクやエレクトロに寄せたアレンジを聴き続けてきたこともあって、「Gimmme!」のアレンジがストレートなものに感じられます。途中でオルゴールを模した音が夢に導くような柔らかさを出しますが、しかし大部分のサウンドからは爽やかに吹き抜ける風を感じ、足取りを軽やかにしてくれます。



ORESAMA – Gimmme!/夜行ノ雨

シングルには「夜行ノ雨」というミディアム・テンポの曲が収録されています。雨の音で始まり、エレクトリック・ピアノの音を効かせたサウンドに包まれて、ぽんの歌が響きます。バラードの雰囲気を感じさせながらも、一方で心を弾ませるポップさもあり、最後は静謐な空気に包まれる曲です。

ORESAMAで披露してきたバラードと比べて、一層美しく、一層切なく響くボーカルです。「秘密」や「SWEET ROOM」など似た雰囲気の曲はありましたが、歌声の質が異なる気がしました。いつになくエモーショナルな歌い方が「夜行ノ雨」のメロディにぴたりとはまり、聴き手の心をぎゅっと締め付けます。雨に濡れた秋の夜に響く美しい歌声です。



ORESAMA – Gimmme!

夢や眠りをモチーフにしたシーンを散りばめた「Gimmme!」のミュージック・ビデオには、ORESAMAのライブをサポートするメンバー(MONICO三浦光義大松沢ショージ)が加わった演奏シーンも収録されています。そのパフォーマンスはずっと5人で活動してきたバンドのようです。

2019年後半のライブから、従来のDJとベースにキーボードを加えたことで、ぐっとバンドらしくなりました。2020年8月の〈ORESAMA ONLINE STUDIO LIVE〉でも同じ顔ぶれで演奏し、「Gimmme!」のビデオに全員が出演。こうした流れを見ると、このスタイルでORESAMAのライブのサウンドをつくっていくことを意味しているのかなと思います。

2020.10.20
# by mura-bito | 2020-10-20 21:28 | Music
Zedd and Jasmine Thompson「Funny -Breathe Carolina Remix-」:原曲の魅力に磨きをかけ、聴き手との距離を縮めるリミックス
Zedd and Jasmine Thompson「Funny -Breathe Carolina Remix-」:原曲の魅力に磨きをかけ、聴き手との距離を縮めるリミックス_b0078188_08415892.jpg
ZeddJasmine Thompsonのコラボレーションで生まれた「Funny」のRemixesが配信されています。Marc BejaminとEllisというDJ/producerによるリミックスに加え、Breathe Carolinaというバンドが手掛けたリミックスが収録されています。なかでも特に印象に残ったのがBreathe Carolina Remixであり、プレイリストに加えてよく聴いています。



Zedd and Jasmine Thompson – Funny -Breathe Carolina Remix-

Breathe Carolinaで惹かれるのは、「いかにもソフト・シンセ」という音です。今やソフト・シンセだけで音楽を作るのは当たり前です。しかしながら僕は、生の楽器に近づけた音よりは、生っぽくない、しかしチープには聞こえない、ソフトウェアならではの音が好きです。このリミックスの音を聴きながら、2010年代前半、ソフト・シンセがアップデートを繰り返していたころを思い出しました。

もちろん、音そのものだけではなく、音の強弱、抜き差し、レイヤーの構成など、さまざまな工夫が琴線に触れます。特に裏で鳴るアルペジエーターが心地好い。原曲が持つポップさをBreathe Carolina Remixが膨らませ、磨きをかけています。甘さも加わった感があり、それはJasmine Thompsonの歌声と聴き手の心の距離を縮める役割を果たしているのではないでしょうか。
2020.10.18
# by mura-bito | 2020-10-18 08:44 | Music
BLACKPINK「Lovesick Girls」:聴き手の心を鮮やかな色に染めるPOPS/EDM
BLACKPINK「Lovesick Girls」:聴き手の心を鮮やかな色に染めるPOPS/EDM_b0078188_21402273.jpg
BLACKPINK블랙핑크)がアルバム『THE ALBUM』をリリースしました。アルバムのリード・トラックと位置づけられ、リリースと同時にミュージック・ビデオも公開された曲が、「Lovesick Girls」です。

ポップスとEDMをブレンドしたサウンドは、ポップで聴きやすく、同時に身体を熱くさせます。ベースの音がぐいぐい引っ張るところや、アコースティック・ギターの音を効かせているところが印象に残ります。歌メロもキャッチーで耳に心地好く響き、特にChorus冒頭の “We are the lovesick girls” が好きです。ビビッドな色を思わせるこういうメロディや、言葉が滑らかに流れる詞の乗せ方は素晴らしい。



BLACKPINK – Lovesick Girls

Selena Gomezとの共作「Ice Cream」やCardi Bが加わった「Bet You Wanna」のように、目を引くコラボレーションがこのアルバムの魅力のひとつです。そこには、David Guettaが参加している「Lovesick Girls」も含まれます。この曲のソングライティングに加わっているのは彼だけではありませんが、その名前を見つけたときは自然と期待が膨らみ、実際に聴いてみるとお気に入りの一曲になりました。

このDECADEでEDMはポピュラリティを獲得して、ポップスと領域を共有するようになり、その結果を「Lovesick Girls」のメロディやサウンドに見ます。ポップスともいえるし、EDMともいえる、そういう音楽が好きです。4人のボーカルとラップがカラフルに絡み合い、軽やかに音に乗り、緩急をつけて、聴き手の心を鮮やかな色に染め上げる「Lovesick Girls」。K-POP loverもEDM loverも一緒に盛り上がりましょう。

2020.10.14
# by mura-bito | 2020-10-14 21:41 | Music

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