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BTS「Dynamite (DayTime/NightTime Version)」:太陽に照らされ、夜に忍び込むエレクトロニック・サウンド
BTS「Dynamite (DayTime/NightTime Version)」:太陽に照らされ、夜に忍び込むエレクトロニック・サウンド_b0078188_21041999.jpg
BTS방탄소년단)の「Dynamite」がリリースされた後、8種類のリミックスが発表されました。それらは2つのRemixesにまとめられ、一方はDayTime Version、もう一方はNightTime Versionという名を冠しています。



BTS – Dynamite -Poolside Remix-

DayTime Versionには、すでに公開されていたAcoustic RemixとEDM Remixに加え、Tropical RemixとPoolside Remixが収められました。全体的に明るいサウンドで構築されているのが特徴です。Acoustic Remixがオリジナルの音を踏襲しているのに対して、他の3つのリミックスはパーティー・ソング系のエレクトロで飾られています。

DayTime Versionの音からは、太陽が照らす夏の海やプールがイメージされます。水しぶきをあげて遊ぶ人々、パラソルの下に寝転ぶ人々。とはいうものの、それだけではない空気をPoolside Remixに感じます。その音は冒頭から鳴っており、軽快に響くダンサブルな音のなかで哀愁を漂わせます。昨日とは違う太陽の角度に、終わり始めた夏を感じる…そんなイメージを抱きました。



BTS – Dynamite -Slow Jam Remix-

NightTime Versionを貫くのは、やや穏やかな雰囲気のエレクトロニック・サウンドです。夜といってもパーティーや繁華街のような喧騒とは異なり、静かなバーや寝る前のひとときをイメージさせます。Slow Jam Remix、Midnight Remix、Retro Remix、Bedroom Remixに分かれていて、アレンジの方向性は共通しているものの、各曲で微妙に異なる空気を漂わせます。

どのリミックスも雰囲気があって良いのですが、なかでも特に好きなのがSlow Jam Remixです。味わい深いベースの音が印象に残ります。腰を据えてじっくり聴くのも良し、ゆったりと踊るのも良し。身体に染み込むように響くサウンドが、K-POP LoverもDance Music Loverも同じエレクトロニック・サウンドの魅力に包み込みます。
2020.11.17
# by mura-bito | 2020-11-17 21:06 | Music
TM NETWORK「KISS YOU」:地球から宇宙に接続し、宇宙から世界を俯瞰するダンス・ミュージック
TM NETWORK「KISS YOU」:地球から宇宙に接続し、宇宙から世界を俯瞰するダンス・ミュージック_b0078188_20542968.jpg
1987年はTM NETWORKが躍進し、活動が拡大した年です。シングル3枚、アルバム2枚、ベスト盤1枚、ツアー2回、初の武道館公演。そうしたなかで、11月にリリースされたアルバムが『humansystem』、リード・シングルが「KISS YOU」です。ヒット・シングル「GET WILD」の後に発表された「KISS YOU」は、アプローチを変えてTM NETWORKの幅の広さを見せつけます。コンサートにおける定番曲となり、節目のライブでセット・リストに名を連ねてきました。

「KISS YOU」にはオリジナル、アルバム・バージョン、リミックスの3種類が存在します。カラーは異なるものの、すべてを貫く要素がファンクなのではないかと思います。オリジナルではファンキーなギターが全体を引っ張り、ホーン・セクションの音が彩りを添えます。アルバムに収録された「KISS YOU (More Rock)」では、ファンクを軸にしつつもロックに寄せたアレンジが素晴らしく、重くて鋭いギターが印象的です。1989年には、Bernard Edwards(Chicのベーシスト)によるリミックス「KISS YOU (KISS JAPAN)」が発表されました。ファンクのなかにメランコリックな冷たさを感じるサウンドが第三の印象を生み出します。

サブタイトルは「世界は宇宙と恋におちる」。ここでいう「世界」とは地球上の国々であると同時に、地球そのものと捉えることができます。宇宙から見た地球の姿、地球からイメージする宇宙は、歌詞のテーマやビデオの演出として表出します。揺れ動く世界の姿を俯瞰しつつ、二人だけの世界で ♪I kiss you♪ と歌う。視点は行きつ戻りつ、やがて交わります。また、イントロに加えられたノイズのような声は、地球と宇宙との交信を思わせます。相手はスペース・シャトルの仲間なのか、あるいは宇宙のどこかから来た生命体なのか。



TM NETWORK – KISS YOU ~世界は宇宙と恋におちる~

「KISS YOU」といえば思い出すのが、2012年の〈TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-〉です。コンサートの序盤から中盤に入るあたり、「LOVE TRAIN」の演奏中に突如「機材トラブル」が起きました。明るくなったステージから三人が姿を消し、スタッフが慌ただしく動きます。その様子を見守る観客のざわめきが会場を満たします。

この演出の意図について、後に小室さんは『Keyboard magazine』で語りました。強制的にライブを中断し、会場の熱気がリセットされた状態で、またゼロから盛り上げることが目的だったそうです。そんなことをよく考えつくものですが、別の曲でも観客を驚かせる演出があり、「ファンの予想を裏切るTM NETWORK」の面目躍如といえます。

会場が再び暗くなると、このコンサートのために作られたエレクトロニック・サウンドが流れ、スネアの音が重なります。宇宙との交信ボイスが会場に浸透したところで、サウンドが分厚くなって「KISS YOU」のイントロに接続します。その流れがとても格好良く、ライブが途切れて困惑していた気持ちに再び火が点きました。小室さんの狙いどおりというべきか、気持ちのgo downからgo upへの変化を見事にコントロールされた、心地好い驚きと感動の体験でした。そんな記憶が残る曲です。

2020.11.11
# by mura-bito | 2020-11-11 20:55 | Music
岩波新書 シリーズ 中国の歴史:多元的な中国社会の変遷を知り、複雑さに向き合う視点を得る
岩波新書 シリーズ 中国の歴史:多元的な中国社会の変遷を知り、複雑さに向き合う視点を得る_b0078188_17015883.jpg
岩波新書の「シリーズ 中国の歴史」を読みました。2019年11月から2020年7月にかけて刊行された全五巻のシリーズです。新書なので短めかつ平易に書かれているものの、随所に専門的な内容が盛り込まれ、そして著者の専門領域では詳細な記述が張り巡らされています。専門書ではないが入門書でもなく、個人的には読み応えのある内容・構成であり、知的好奇心が刺激され続ける読書体験でした。
第1巻「中華の成立 唐代まで」(著:渡辺信一郎)では、古代中国の社会・政治の仕組みが綴られています。歴史とは王朝名が入れ替わるだけではなく、社会における複雑で多層的な変化の積み重ねであることを改めて思いました。なかでも印象的だったのは王莽の影響です。王莽は、単なる簒奪者ではなく、後世に受け継がれるシステムの開発者といえます。例えば、前漢から権力を移譲して新を建てた禅譲。この手続きは、のちに魏の建国でも用いられたことで、「漢魏故事」として以降も手本とされます。

続く第2巻「江南の発展 南宋まで」(著:丸橋充拓)では、江南の歴史が主に政治的・経済的な面からまとめられており、この地の中国史における役割を知ることができます。東晋に始まる南朝のシステム(中華王朝の正統性を確立する制度設計や経済の発展)が北魏~隋・唐に影響を与えたことは、江南が持つ意味の大きさを感じられます。また、唐後期から五代十国時代を経て北宋に至る時期は、北方遊牧国家に対抗するため、中原の国家が江南の経済力を求めました。華北と江南は、統一されていなくても取引を通じて有機的につながっていたことが分かります。
第3巻「草原の制覇 大モンゴルまで」(著:古松崇志)がカバーするのはユーラシア大陸の東側です。モンゴル高原~東トルキスタン・チベット~華北・江南~インドシナ半島をひとつの地域概念として設定することで、中国文明を中心とした視点から離れ、広くユーラシアの一部として中国を見つめます。

この地域を捉える軸のひとつが遊牧王朝と中国王朝の対峙であり、それは匈奴と秦・漢に始まります。6~9世紀はウイグルや突厥と隋・唐、10~12世紀は契丹と五代・北宋、12世紀は金と南宋、14~16世紀はモンゴルと明。また、両者は対峙するだけではなく、交易や移住によって交わります。その混淆は、中国王朝の統治体制を取り込んだ遊牧王朝が中国の一部または全体を支配することで、より深まります(鮮卑拓跋部の北魏~隋・唐、沙陀の五代~北宋、モンゴル帝国など)。遊牧王朝と中国王朝の「対峙と混淆」が中国を形作ってきたといえます。
複数の時代をまたいだこれまでの視点と異なり、明朝というひとつの時代を綴ったのが第4巻「陸海の交錯 明朝の興亡」(著:檀上寛)。14世紀後半に成立した明朝は、多様性・流動性の高い中国社会が一元化・固定化され、社会の隅々まで国家が統制した時代です。このシステムを洪武帝が作り上げ、永楽帝が継承しました。

そのシステムが崩れる要因のひとつが「銀」です。15世紀半ばから税の銀納化が認められると、現物経済から銀経済に移行し、それを16世紀後半からの日本銀・メキシコ銀の大量流入が後押しします。その結果、現物経済を基盤とした明初のシステムが揺らぎ、国家の統制力が低下します。明朝は国家が人々をコントロールする他律的な社会を作り上げたものの、それが溶解して流動性が高まるなかで滅んだ。この時代ならではの社会と国家の関係であり、中国社会の本質的な部分がよく分かる時期です。
最終巻の第5巻「『中国』の形成 現代への展望」(著:岡本隆司)は、清朝の成立から習近平政権に至る流れを概観します。清朝の歴史は勝者の歴史というより、明末から続く多元的な状態の東アジアをどのように統合するか苦心した痕跡に思えました。

これまで僕は、清朝は異民族が漢民族を抑圧する国家で、弱体化したところに列強に進出されて滅んだと捉えていたのですが、そう単純な話ではないと知りました。辛亥革命は単なる政権の交代ではなく、現在にまで続く一元化の動きが始まったターニング・ポイントといえます。そう考えれば、清朝は多元的な国家だったという説明が腑に落ちます。清朝は明末に高まった多様性を統合したのではなく、引き継いだのであり、それはむしろ中国社会における伝統的な振る舞いといえるのかもしれません。
江南の発展や異民族との混淆など、中国社会には流動性を高め、維持してきた要素がいくつもあります。この100年は流動性を抑える方向で進んできたものの、今は、その「不自然さ」に抗う波が来ているのでしょうか。来し方が行く末をすべて決めるわけではなくとも、痕跡が示唆するものは少なくありません。歴史を知ることは新たな視点を得ることです。読めば読むほど視点は増え、同時に分からないことも増えますが、その複雑さも含めて、根気よく歴史のページを繰ります。

2020.11.07
# by mura-bito | 2020-11-07 17:08 | Book
ORESAMA「秘密 -Dressup cover-」:冷たい肌触りのDressupが霧の中に誘い込む
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ORESAMAのセルフ・カバー企画「Dressup cover」の第5弾は「秘密 -Dressup cover-」です。第4弾までのポップな感じの曲とは方向性が変わり、今回はバラードの「秘密」が選ばれました。

「秘密」は初期のころからあった曲だそうですが、リリースされたのは2019年1月。ピアノの音を中心にしたアレンジで、ささやくような歌声が印象的でした。終盤に至り、ストリングスが加わり、リズムが分厚くなると、一気に曲は盛り上がり、歌もまた気持ちが込められ、抑えていたものを吐露するように力強く歌います。物憂げな夜が通り過ぎて朝を迎えたような、前向きな気持ちで曲が終わります。



ORESAMA – 秘密 -Dressup cover-

「秘密 -Dressup cover-」で最初に印象に残るのは、地を這うようなベースや物憂げに爪弾くギターの音です。哀しげというべきか、寂しげというべきか。光の届かない場所で、ぼんやり佇んでいる感じがします。

全体的に音はメランコリックなトーンで奏でられ、ボーカルも感情を乗せずに(あるいは封じ込めて)淡々と響きます。後半になるとストリングスの音やエレクトリック・ピアノらしき音が重なり、目の前が明るくなります。しかし、2019年のバージョンでは盛り上がっていった最後の展開も、Dressup coverでは抑え目。わずかな間だけ晴れて、再び濃くなる霧をイメージしました。

オリジナルとのアレンジの違いもさることながら、Dressup coverを続けて聴いていると、これまでとの違いも印象に残ります。他のDressup coverにおける煌びやかな雰囲気とは異なり、ひやりとした冷たさを感じるアレンジが聴き手の印象を刷新します。
2020.11.03
# by mura-bito | 2020-11-03 14:27 | Music
TM NETWORK「Alive」:タイムマシンから降り立った音楽家は、2014年の音で音楽をデザインする
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TM NETWORKのオリジナル・アルバム『QUIT30』がリリースされたのは2014年10月29日。2012年から始まった一連の活動を総括した作品であり、2015年のゴールに向けた最後の活動の嚆矢として発表されました。

『QUIT30』の冒頭に配置され、アルバムの幕を開ける曲が「Alive」です。アルバムの最後にはリミックス「Alive -TK Mix-」が収録されていて、『QUIT30』の始まりと終わりを「Alive」のメロディが飾ります。



QUIT30 album trailer

最初に「Alive」を聴いたとき、メロディの雰囲気やウツの歌い方が、TM NETWORKにおける最初のDECADEに近い気がしました。グループの青春時代、すなわち1980年代の空気を感じます。けれども、レトロスペクティブな空気は曲の終盤に入ると霧消します。紛れもなく2010年代の曲であることを決定づけるのが、最後のサビにフェード・インしてくるシンセサイザーの音です。

Aメロをもとにデザインされたこのフレーズ(あるいはここからAメロが生まれた)は、ヨーロッパやアメリカのEDMに匹敵する中毒性を持ちます。それまで広がっていたポップスの世界をEDMに塗り替え、聴き手の印象を刷新する音です。このフレーズはTK Mixにも登場し、オリジナルの音より太く厚くなって、EDMの色を一層濃くしています。



Music video by TM NETWORK performing Alive

「Alive」のミュージック・ビデオでは、〈TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30〉ツアーで使った映像が編集されています。断片的に映る三人の姿は抽象的で、ツアーの内容や3年間の活動を知っていればともかく、単体では何を示しているのか分かりません。それならばいっそ当時の文脈から離れて、イマジネーションの海に漕ぎ出してみるのもおもしろそうです。

タイムマシンから降りてきたのは、ひとりの音楽家。1987年から2014年に移動してきて、そのまま「Alive」を書き、2014年の音を吹き込むと、またタイムマシンに乗って消えます。次の行き先は未来なのか、過去なのか。その姿を見かけないときは、きっとどこか別の時代に降り立っているのではないか。そこで音楽をデザインして、その時間を生きる聴き手に届けているのかもしれません。

2020.10.29
# by mura-bito | 2020-10-29 21:12 | Music

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