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ORESAMA「あたまからモンスター -Dressup cover-」:音の実験室で追究するORESAMAスタイルのエレクトロ
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ORESAMAのリメイク企画「Dressup cover」で、「迷子のババロア -Dressup cover-」からバトンを受け取ったのは「あたまからモンスター -Dressup cover-」です。Dressup coverはこれで7作目を数えました。

オリジナルの「あたまからモンスター」は、「迷子のババロア」と同様に、アルバム『oresama』で聴くことができます。レトロゲームを思わせる電子音を散りばめたアレンジが特徴的です。ジャンプしてブロックを叩いたらコインが出そうな感じがします。



ORESAMA – あたまからモンスター -Dressup cover-

「あたまからモンスター -Dressup cover-」は、抑制的なエレクトロニック・サウンドで構築され、なかでも粘り気のあるベースやキックの音が魅力的です。21世紀以降のエレクトロという感じであり、EDMの要素も楽しめます。EDMといってもクラブやスタジアムを沸かせるような派手なものではなく、緻密な音の組み合わせを味わえるタイプです。

「Dressup cover」企画の目的は、過去の曲を刷新するリメイクというだけではなく、エレクトロニック・サウンドの実験も含んでいるのではないでしょうか。「あたまからモンスター -Dressup cover-」に限らず、前作の「迷子のババロア -Dressup cover-」や、3作目の「カラクリ -Dressup cover-」を聴くと、どういうタイプのエレクトロがORESAMAの歌やメロディに合うのか、模索しているように思えます。予想を越えて継続するこの企画で、今後どのようなサウンドに出会えるのか、楽しみは尽きません。
2020.12.09
# by mura-bito | 2020-12-09 22:30 | Music
TM NETWORK『SPEEDWAY』:時間を巻き戻すモノローグの旅、過去から現在にシフトするACTION
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2007年12月にリリースされたTM NETWORKのアルバム『SPEEDWAY』。そのタイトルは、TM NETWORKを組む前に三人が所属していたバンド「スピードウェイ」に由来します。スピードウェイはデビューして2枚のアルバムを出すもののあまり売れず、TM NETWORKの結成に伴ない活動を停止しました。2007年に二十数年の時間を巻き戻し、その名前がTM NETWORKの歴史に顔を出します。

初めて『SPEEDWAY』を聴いたとき、TM NETWORKの作品のなかでもポップで聴きやすい音だと思いました。エレクトロニック・ミュージックの要素を抑え、先端的というよりは古き良きポップスといえます。前作の『NETWORK -Easy Listening-』がトランスに傾倒し、ある意味では多くのファンを置き去りにしたこともあって、その落差が意外でした。TM NETWORKに課せられた「極端なことをやる」というテーマを外したとすら思えます。

それは何故でしょうか。時期が時期だけに憶測はいくらでも重ねられますが、木根さんのエッセイや小室さんのインタビューを勘案すると、「小室さんは歌詞に注力したかった」というのが、個人的には腑に落ちる理由です。今作で小室さんはほとんどの曲の詞を書いており、言葉に強い関心を持っていたことを窺わせます。「曲は木根に任せる」と言っていたそうですが、約半数が木根さんの作曲であることを考えれば、ただの冗談には聞こえません。
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各曲の歌詞には、人生を振り返るかのような言葉が並びます。30年以上の痕跡をたどり、『SPEEDWAY』は小室さんのモノローグをつなぎます。モノローグが向かうのは1990年代後半です。「ハリウッド」という言葉が飛び出す「RED CARPET」「MALIBU」というインストを通して、プロデューサーとして名を馳せた時代が思い出されます。さらに遡ると、TM NETWORKの軌跡が浮かび上がります。「WELCOME BACK 2」には「GET WILD」などの曲名が歌詞に登場し、さらに「ロンドン」や「1991」というワードが『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』を思い起こさせます。

独白の旅は、TM NETWORKを飛び越え、アマチュアでプロを目指していた頃にまでたどり着きます。そのひとつが、ファースト・テイクのピアノによるインスト「YOU CAN FIND」です。19歳の小室さんが友人(プロのミュージシャンになったが事故で早逝)に書いた曲で、歌詞とタイトルが残っていました。メロディは見つからず、小室さんは当時の自分が書いた歌詞を見ながら、ピアノを弾きました。

その様子はドキュメンタリー番組で放送され、カメラの前で小室さんが語ります。19歳の自分に「終わったと思ってんじゃないの?」と怒られた、と。僕は最初、亡き友に宛てたレクイエムと捉えていましたが、このインタビューを観てからは、2007年の自分に向けて弾いた曲だったのかもしれないと思うようになりました。ピアノの音の向こう側で、複雑な思いが混ざり合います。
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けれども、この旅は遡るだけでは終わりません。アルバムの1曲目である「ACTION」に、決意と呼べるものが込められました。曲はアップテンポで、追い風を受けるように力強い演奏が印象的です。音符から溢れそうなほどに詰め込まれた言葉は、もがきながらも前向きさを感じさせ、沈みそうな独白に覆われたアルバムの中で一筋の光を放ちます。

それから5年後、TM NETWORKが本格的に再起動した〈TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-〉で、「ACTION」は新たな意味を持ちます。『SPEEDWAY』から唯一セット・リストに加わり、Virus Indigo 2 Redbackで厚みを増したサウンドとともに披露されました。サビでは小室さんもマイクに手を添え、コーラスを重ねます。そこにモノローグの影は見当たらず、言葉を交わし合おうとするダイアローグが浮かび上がっていました。

具体的な歌詞というよりは、音や歌に対する向き合う姿から、〈TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-〉こそ「ACTION」に相応しい場所だったと思います。『SPEEDWAY』が残したものをたどると、さまざまな思いがよぎり、後ろ向きになることもありますが、2012年に「ACTION」を聴いたときの感動がそれを前に向けてくれます。過去を背負いながらも前に進んだという点で、『SPEEDWAY』で最も重要な曲は「ACTION」だといえるのではないでしょうか。

2020.12.05
# by mura-bito | 2020-12-05 14:55 | Music
BTS『BE』:ふたつの顔で世界を歌い、2020年の記憶を刻む
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BTS방탄소년단)のアルバム『BE』がリリースされました。夏に発表された「Dynamite」を含む8曲で構成されています。アレンジの種類や曲の配置に関してバランスが良く、僕にとっては聴きやすい作品です。

『BE』はリード・トラック「Life Goes On」から始まり、会話を録音したトラック「Skit」で折り返し、63rd Grammy AwardsのBest Pop Duo/Group Performanceにノミネートされた「Dynamite」で終わります。前半はミディアム・テンポのポップスやバラードで穏やかな空気を作り上げ、一転して後半では、ヒップホップやファンクといった身体に響く曲を前面に押し出す。前半と後半で雰囲気が変わるため、まるでレコードをひっくり返して聴いている感覚を抱きます。

「Life Goes On」は、聴き手の気持ちをケアするかのような歌い方が心に残ります。それを包み込むサウンドは心地好く、特にベースの音が好きです。また、2020年の状況を反映した歌詞や、ミュージック・ビデオで見せる彼らの表情が印象に残ります。2020年でなければ生まれなかった曲といえます。

オルガンの音が心地好いポップス「Fly To My Room」から、哀愁漂うアコースティック・ギターが寄り添うバラード「Blue & Grey」という流れのなかで、胸に沁みる歌が響き渡ります。前者は穏やかな陽だまりのような、後者は冷えた朝の空気のようなイメージが浮かびます。最初の3曲を続けて聴くと、ゆっくり時間をかけて心をほぐしてくれます。



BTS – Life Goes On

メンバーの会話が流れる「Skit」を挟み、アルバムは後半へ。「Telepathy」、「Dis-ease」、「Stay」とアッパーな曲が続きます。軽やかに音が響く「Telepathy」が身体を疼かせ、アルバムの雰囲気もまた変わっていきます。

「Telepathy」の韓国語の曲名は「잠시」であり、これはmomentなどを意味するハングルです。このように韓国語と英語の曲名が乖離することは、BTSではときどき見られます。そこにも彼らの意図があることは明白で、それを歌詞などから推測するのもファンの楽しみなのかもしれません。また、「Dis-ease」という曲名は「病」と「easeの否定」のダブル・ミーニングなのでしょうか。

「Dis-ease」はヒップホップの色が濃く、同時に、絡み合うカラフルな音に魅せられます。ファンキーに刻むギター、切れ味鋭いスクラッチ・ノイズ、曲を彩るホーン。特に、ぐいぐい盛り上がる終盤の展開は素晴らしく、熱くさせてくれます。心を満たしていた音は、最後は簡素になり、余韻を味わうかのように響きます。音が消えても、もっともっと聴きたいと思わせる演奏です。

続く「Stay」の特徴はEDM。ポップスと混ざり合ってからのEDMというべきか、アンダーグラウンドから世界中に飛び出たEDMの要素が加わりのハイブリッド・スタイルを聴くことができます。ポップなメロディと気持ちを熱くさせるシンセサイザーの音が組み合って、追い風のように聴き手を包む。「Stay」で高揚した気分は、そのまま「Dynamite」に接続します。僕らはファンクの楽しさを存分に味わいながら、アルバムの最後を駆け抜けます。
2020.12.02
# by mura-bito | 2020-12-02 20:41 | Music
Fort Minor「Believe Me」:バンドと異なる色で新しい模様を描いたヒップホップの要塞
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LINKIN PARKの存在を知ったとき、まず僕が聴いたのはFort Minorのアルバム『The Rising Tied』です。Mike ShinodaのプロジェクトであるFort Minorは、バンドのデビュー以後は控えめにしていたヒップホップを前面に押し出しています。アルバムを聴いて、最初に好きになった曲が「Believe Me」です。

「Believe Me」では、Styles Of BeyondとMikeによるラップとボーカルが交互に差し込まれます。特筆すべきは歌メロの美しさであり、まず僕が惹かれたのもその点です。そして聴くたびにMikeのラップを好きになりました。それまで僕が聴いたものとは異なり、Mikeのラップにはクールさやインテリジェントさがあると感じました。ラップといえば世の中を斜めに見てふざけたり荒々しく振る舞ったりするイメージを持っていたのですが、それが崩されました。ラップやヒップホップに対する印象を刷新するきっかけとなったのがこの曲です。



Fort Minor – Believe Me [feat. Bobo and Styles Of Beyond]

LINKIN PARKを聴く機会が再び増えた2020年、Fort Minorを改めて聴くと、いくつか新たな発見がありました。そのうちのひとつ、当時は意識しなかった「Believe Me」の要素がパーカッションです。Bobo(Eric Bobo)はBeastie Boysなどに所属していたパーカッショニストであり、間奏でティンバレスを叩いています。軽やかで乾いたティンバレスの音は、重厚なリズムのなかで異彩を放ち、曲を一際輝かせます。

パーカッションの魅力を知ったのはFort Minorを聴いていた頃から数年後のことです。改めて「Believe Me」を聴いてみると、パーカッションという観点から楽しむことができる。昔は気づけなかった魅力に出会えるのは、いろいろな音楽を聴いてきたからこそのギフトといえるでしょう。

当時行なわれたFort Minorの配信ライブにStyles Of BeyondとともにBoboが参加しており、その音源はApple Musicでも聴くことができます。「Believe Me」ではイントロから格好良い演奏を聴かせてくれます。ヒップホップのなかで屹立するティンバレスに魅せられ、この曲をもっと好きになりました。

2020.11.25
# by mura-bito | 2020-11-25 18:30 | Music
ORESAMA「迷子のババロア -Dressup cover-」:街の陰に迷い込み、ぶつかり形をなくすエレクトロニック・ミュージック
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ORESAMAが自身の曲を再解釈する「Dressup cover」企画。その6曲目は「迷子のババロア -Dressup cover-」です。Dressup coverの対象になるのはアルバム『oresama』の収録曲が多めであり、「迷子のババロア」もそのひとつです。

「迷子のババロア -Dressup cover-」は、ORESAMAがいくつか持つ顔のうち、EDMの要素を強く押し出したアレンジです。ベースやシンセサイザーの音が印象に残ります。2020年10月のライブでは、このアレンジで披露されました。それ以前から「迷子のババロア」が演奏されるときは、Dressup coverを思わせるアレンジでした。ライブでのアレンジをブラッシュアップして、Dressup coverとして発表したのでしょうか。



ORESAMA – 迷子のババロア -Dressup cover-

歌詞は、壊れやすい心をババロアにたとえて描きます。街の中に迷い込み、喧騒に呑みこまれ、ぶつかり崩れ、やがて自分の位置すら分からなくなり、形を失っていきます。最後は自分の存在を消してほしいとまでいう。明るいとは言いがたい歌詞に、地を這うようなエレクトロニック・サウンドが絡み合い、言葉の陰鬱さが引き立てられます。

ORESAMAを聴いていると、「綺麗なものばかり」や「密告テレパシー」など、ネガティブな言葉が印象に残ることがあります。特に「陰」や「毒」の部分が目立つのがに「迷子のババロア」です。とはいえDressup coverの音で包まれると聴きやすく、つるっと飲み込めます。飲み込んだあと、言葉に内側から侵食されるのかもしれませんが。
2020.11.22
# by mura-bito | 2020-11-22 14:48 | Music

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