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藍井エイル「負けないで」「糸」「白日」:歌声はメロディの輪郭を際立たせ、夢の入口に導く
全国的にライブやイベントが延期・中止になる中、藍井エイルのツアー日程も変更され、各地を巡る予定だった5月がぽっかり空きました。そのなかで、ピアノの伴奏に乗せて歌うカバーがYouTubeで発表されました。年代もジャンルもばらばらな三曲が、彼女の歌声で新たな生命を吹き込まれます。ピアノを弾くのは、エイルバンドでキーボードを担当する重永亮介です。
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カバー企画のテーマは、外出制限によって心身のリズムが崩れ、うまく眠れなくっている人々に向けた「子守唄」。少しでも気持ちが和らぎ、心地好く眠りについてもらいたい。心にすっと入ってくる穏やかなアレンジや歌い方で、今回のカバー曲は彩られています。



藍井エイル – 負けないで (Cover)

最初に公開されたのはZARD「負けないで」です。オリジナルは1993年にリリースされ、当時もその後もJ-POPを代表する曲のひとつとして、多くの場面で紹介されてきました。リアルタイムでなくとも、サビの一節を耳にしたことのある人は多いと思います。藍井エイルは語りかけるように歌います。ピアノのシンプルな音に乗ることで、歌声の輪郭がくっきりと見え、メロディの良さをストレートに伝えます。馴染みのある曲の新たな一面を見ました。



藍井エイル – 糸 (Cover)

次は中島みゆき「糸」。これも多くの人が知る曲であることは言わずもがなですが、この選曲は意外でした。これまでの藍井エイルのカバーでは、いわゆるJ-POPにカテゴライズされる曲が選ばれていたので、カラーの異なる「糸」を歌う姿に驚きました。そしてその驚きは、新鮮さを生み、新たな感動を呼びます。新しいパフォーマンスを見せてくれるたび、歌声の表情は豊かになって、新しい世界を見せてくれます。



藍井エイル – 白日 (Cover)

最後は、前の二曲から時代は一気に下り、最近の曲をカバーしました。King Gnu「白日」です。心に抱えたものを外に出さぬよう抑えているかのような歌。こうした歌い方は藍井エイルのオリジナル曲では少ないので、このカバーで、また新たな一面を見ることができて新鮮でした。音が増えて壮大になっていく部分を含めたフルレングスをエイルバンドで聴いてみたい。一曲の中で感情が揺れ動くドラマのようなダイナミックな展開は、聴き手の心を揺さぶり、虜にします。

2020.05.30
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by mura-bito | 2020-05-30 21:09 | Music | Comments(0)
藍井エイル「ゆらり」「JUMP!!!」「幻影」:エモーショナルなロック・ソングを通して、心に刺さる美しいメロディ
藍井エイル『D’AZUR』は、2015年にリリースされた3枚目のオリジナル・アルバムです。代表曲の「IGNITE」をはじめとして「ラピスラズリ」や「ツナガルオモイ」といった、近年のライブでも頻繁に演奏されるシングルが収録されています。
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アルバムだけに収録された曲もシングル・カットされた曲に負けず劣らず素晴らしい。とりわけ僕は「ゆらり」「JUMP!!!」「幻影」が好きで、この3曲をプレイリストで並べて聴いています。いずれの曲も僕は、初めて参加したライブ〈Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 “D’AZUR-EST” FINALE〉で一度聴いた限りですが、機会があればまたセット・リストに名を連ねてもらいたいものです。



藍井エイル – D’AZUR (Trailer)

ギターとオルガンが全体を引っ張るアレンジが格好良い「ゆらり」。分厚いロック・サウンドのなかで歌声がまっすぐに響き、メロディが聴き手に届きます。特にインパクトが大きいのは、サビ頭の ♪まだゆらり ゆらゆらら 揺れているよ♪ という部分です。このメロディには、サビの後半に向けた盛り上がりを後押しする力があります。そして間奏後のサビでは一段と強く、エモーショナルに響く。心にぐるぐると巻かれた鎖を断ち切るような開放感を抱きながら、曲の終わりを迎えます。

明るく爽やかな音がストレートに響き、その軽快さが心地好いポップ・ロック。「JUMP!!!」では、音に乗る歌声も伸びやかで、楽しそうにメロディを操っています。爽やかに吹き抜ける初夏の風という感じでしょうか。そのなかでも特に印象的なのが、Bメロで ♪もっと♪、♪きっと♪、♪ずっと♪ と歌う、ポップで跳ねた感じのメロディです。この部分があることで曲の流れが変わり、ぐっと引き込まれます。ささやかではありますが、僕にとっては大事なポイントであり、この曲を第一印象で好きになった理由でもあります。

オルタナティヴ・ロックの雰囲気を醸す「幻影」は、激しい音に揉まれながら、力強く言葉を吐き出すボーカル・スタイルが特徴的な曲です。曲はサビから始まり、最初から相当な声量と肺活量を要求され、力を振り絞り全力で声を出しています。エネルギッシュな歌声に乗ってメロディが聴き手に届きますが、届くという言葉では弱く、肩をつかまれて揺さぶられるようなインパクトがあります。赤い光に染まったステージで、叫ぶように歌う姿が記憶に残っています。
2020.05.26
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by mura-bito | 2020-05-26 07:56 | Music | Comments(0)
DEPAPEPE「GUILTY」:モノクロームに染まるアコースティック・ギターの音色
2020年4月、DEPAPEPEのアルバム『Seek』がリリースされました。アルバムのリード・トラックであり、ミュージック・ビデオも制作された曲が「GUILTY」です。ふたりのテクニカルな面は言うまでもないとは思いますが、その技術に裏打ちされたメロディの表現に感動します。淀みなく筆を動かし、カンヴァスに生み出す絵画のようです。ギターの響きを聴いて、その美しさを噛み締める時間はささやかな幸せを感じる、そういう音でありメロディです。
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ギターの音が包むメロディはとても美しく、特に終盤になって転調する瞬間が好きです。その美しさをモノクロームの映像が引き立てます。最初はカラフルな映像の方が効果的なのではと思いましたが、否、これはモノクロだからこそ音が際立つのかもしれないと考えを改めました。「GUILTY」を聴いた人は、音や映像から、どのような色を思い浮かべるのでしょうか。聴いた人の数だけ色がある。それらが集まれば、初夏の花々のように色鮮やかな世界が広がることでしょう。



DEPAPEPE – GUILTY

DEPAPEPEのふたりが弾くアコースティック・ギターは、それだけで素晴らしいアンサンブルを生み出します。ふたりの音を引き立てるのが他の音です。たとえば、ベースを弾いている須長和広(quasimode)は、ジャズの他にもポップス、ロック、K-POPのコンサートにも参加しており、ジャンルを越えて活躍しています。彼の音は「GUILTY」をボトムで支えながら、ときとして顔を覗かせて存在感を示します。

2020.05.21
by mura-bito | 2020-05-21 07:07 | Music | Comments(0)
Kygo, Zara Larsson, Tyga「Like It Is」:エレクトロニック・サウンドの波間に漂う歌声
Kygoの音に加わるZara Larssonの歌とTygaのラップ。絶妙にレトロな雰囲気を醸しながら、身体を刺激する心地好いダンス・ミュージックが生まれました。タイトルは「Like It Is」です。
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Kygoの曲に対して、僕はポップというイメージを持っています。Selena Gomezが歌う「Ain’t Me」や、AVICIIとのコラボレーション・ソング「Forever Yours」などを聴くと、その音に間口の広さを感じます。「Like It Is」も聴きやすくて、シンプルに組み立てられたサウンドはそれぞれの音が際立ちます。僕は特にベースの音が印象に残りました。曲のボトムを支え、全体をまとめる役割。心の一部を委ねられる、そんな音なのではないかと思います。重なった音の隙間から、アンビエント・ミュージックにも似た穏やかな雰囲気が漂います。



Kygo, Zara Larsson, Tyga – Like It Is

Zara Larssonの歌声は、彼女にしかない色を見せます。自身の「Lush Life」や「All The Time」、David Guettaとの「This One’s For You」、BTSとの「A Brand New Day」など、低めの声を活かしたエレクトロ系のポップスは聴いていてとても心地好い。その雰囲気は「Like It Is」でも変わらず、音と溶け合って新しい価値を生み出します。そして、そのボーカルの間に差し込まれるTygaのラップがアクセントになり、各自の声が互いを引き立てます。曲の後半では、彼女によるコーラスとボーカルが絡み合い、美しい氷像を鑑賞しているかのような、心地好い歌声のインスタレーションを堪能できます。
2020.05.11
by mura-bito | 2020-05-11 18:56 | Music | Comments(0)
舞台『ねじまき鳥クロニクル』:壁を抜けるために下りた井戸、闇の中で記憶したバットの感触
役者の身体から流れ出る言葉の奔流、曲線と直線が入り乱れるパフォーマーの身体表現、ダイナミックに形を変えてステージを彩るセットと照明と生演奏の音楽。村上春樹の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』を原作とした舞台が2020年に上演されました。休憩をはさみ3時間に渡った公演は、演劇とコンテンポラリー・ダンスとミュージカルが混ざり合って多彩で多面的な表現を通して、この複雑な物語の中に観客を呑み込みました。
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「岡田トオル」は猫を探して路地をさまよい、井戸のある空き家の敷地で「笠原メイ」と出会い、穏やかで奇妙な会話を交わす。妻の「岡田クミコ」が姿を消し、謎の女性から電話がかかってきて、義理の兄はクミコと縁を切るように通告する。「間宮中尉」から戦時中のノモンハンで体験した出来事を聞かされ、「加納クレタ」からは痛みに関する彼女の半生を聞かされる。彼は梯子を使って井戸の底に下り、眠るようにして考えを巡らせる。笠原メイは梯子を取り去り、井戸にふたをする。



ねじまき鳥クロニクル

井戸から出た彼は、「赤坂ナツメグ」と「赤坂シナモン」と出会い、いつの間にか顔に現われた痣を通して、数々の女性に一時の救いを与えることになる。義兄の使いと称する「牛河」が猫を抱いて現われ、その導きで、シナモンの部屋から彼はどこかにいるクミコと言葉を交わす。物語はクライマックスに向かい始める。彼は井戸の底に下りて壁を抜けると、バットを持って暗闇の中を歩く。その世界で、かつて電話で話した女性と言葉を交わし、そして誰かの助けを借りて、然るべき場所にたどり着く。彼はバットを両手で握りしめ、然るべきものに向けて何度も振り下ろす。
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主人公を渡辺大知成河というふたりの役者が演じ、一方の影のように同時に登場したり、同じ人間の別の顔を見せるために交代して演じたりしました。同じ「岡田トオル」という名前を持っていても役割が切り換わり、そして世界も切り換わる小説の展開が表現されていたと思います。

一方、笠原メイを演じたのが門脇麦です。原作では主役級のキャラクターではありませんが、この舞台では準主役ともいうべきポジションを与えられました。陰鬱なエピソードが絡み合う物語の中で風を吹かせるのが笠原メイの清涼感であり、その役割を果たすのに門脇麦の明るい声が貢献していました。笠原メイは天真爛漫のように見えて闇も抱えていますが、それでも主人公を光で照らします。そしてこの物語そのものも照らし、会場に張り詰めた緊張が和らぎ、最後に救いのようなものを与えてくれたのではないかと思います。

2020.05.04
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by mura-bito | 2020-05-04 14:15 | Visualart | Comments(0)

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