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BTS「Boy With Luv [feat. Halsey]」:ボーカルはグラデーションを描き、ラップは鮮やかな色を放ち、ワールドワイドに駆け巡る
K-POPというカテゴリーを越えて、今やBTS(방탄소년단)はポップ・ミュージックを牽引する存在のひとつとなっています。彼らの新曲「Boy With Luv」は、2019年4月にリリースされた新しいアルバム『MAP OF THE SOUL: PERSONA』のリード・トラックです。
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BTSのボーカルとラップに、アメリカ出身のシンガー・ソングライターであるHalseyのボーカルを加えています。また、BTSのチームやHalseyだけではなく幾人かの作家が作曲に参加しており、Billboardの記事にはMelanie Joy FontanaとEmily Weisbandというソングライターのインタビューが掲載されています。ふたりとも、書いている時点でHalseyの参加を知らなかったそうな。

Halseyは自身のアルバムで結果を残しつつ、The ChainsmokersやJustin Bieberなどとのコラボレーションも実現させており、素晴らしい歌声の持ち主であることを証明しています。BTSとのコラボレーションである「Boy With Luv」も素晴らしい作品です。BTSの持ち味である美しくタフな歌声のアンサンブルに、ソフトだけども芯の太いHalseyの歌声が混ざり、より間口の広い、親しみやすい曲に仕上がりました。



BTS – Boy With Luv [feat. Halsey]

サウンドの特徴は身体を動かしたくなるノリの良さ、軽快さでしょう。その中でも印象に残るのが、ファンクらしさを全開にしたギターの音です。前に出たり後ろに下がったりして、全体を通して大きなプレゼンスを示します。特にRMがラップを披露する部分ではギターの刻む音がダイレクトに届きます。

BTSのボーカルには七人それぞれのカラーが出ており、しかもそれは七色どころか、それ以上の色が見える気がします。歌声のポジションは目まぐるしく変わり、その色はグラデーションを描いて変化します。対して、間に差し込まれるラップはビビッドな色を主張します。ボーカルは美しく繊細に染め上げられた布が風になびくようで、ラップは翻る旗のごとく自己の存在を示します。



BTS – Boy With Luv [feat. Halsey] (Music Video “ARMY With Luv” Version)

アルバムのリリースと同時に「Boy With Luv」のミュージック・ビデオが公開されました。1980年代(あるいはそれよりも前)のアメリカを思わせるセットを組み、その中で息の合ったシャープかつ流麗なパフォーマンスを披露します。ポップという要素を突き詰めて、多くの人に届くであろうその表現は、BTSというチーム全体の自信を表わしている気がします。一見してold-fashionedな演出であっても、今という時間に組み込み、呑み込んで今の表現に仕上げている。圧倒的に「今」を感じるのがBTSなのです。

「Boy With Luv」はBillboard Hot 100で初登場8位を獲得しました。これまでの躍進を知っていれば、チャート上位に食い込むことを予想するのは特に難しいことではありません。それでも実際にその結果を見ると、勢いというか追い風というか、BTSが生み出すムーブメントの強さを感じます。Grammysの記事では “K-POP Kings” と書かれており、その言葉が大袈裟ではないと思えるほど、BTSはポップ・ミュージックの最前線で存在感を示しています。
2019.04.30
by mura-bito | 2019-04-30 18:23 | Music | Comments(0)
AVICII「SOS [feat. Aloe Blacc]」:AVICIIの遺作で再び実現したAloe Blaccとのコラボレーション ◢ ◤
スウェーデン出身のDJ/producerであるAVICIIことTim Berglingがこの世を去ってから約一年。家族の意向により、AVICIIが遺した曲を集めたアルバムが2019年6月にリリースされることとなりました。先行して「SOS」という新曲を聴くことができます。
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アルバムの制作にあたり、AVICIIの仕事仲間であるプロデューサーたちが各曲を仕上げました。「SOS」の制作に携わったのはKristoffer FågelmarkAlbin Nedlerです。二人はAVICIIとともに「Pure Grinding」という曲を制作したことがあり、この曲はAVICIIのアルバム『Stories』に収録されています。

AVICIIのエレクトロニック・サウンドは、とても親しみやすく、キャッチーで聴きやすいのが特徴です。もちろんそれだけではないにしても、耳に残る、記憶に残る、そして心に残るフレーズを生み出してきたことは、彼の音楽の大きな魅力だといえます。「SOS」の音を聴いたときも、『True』や『Stories』といったアルバムを聴いたときの感動と同じものがこみ上げてきました。テーマ・メロディを届ける音は、時に軽やかに流れ、時にリズム・パートと絡み合って濃厚に響きます。



AVICII – SOS [feat. Aloe Blacc]

「SOS」でボーカルをとるのはAloe Blaccです。AVICIIが書いた歌を彼が歌うという「Wake Me Up」や「Liar Liar」以来のコラボレーションが実現しました。特に「Wake Me Up」はAVICIIの代表曲といっても過言ではなく、そのヒットに彼の歌声が貢献したことも間違いないと思います。この組み合わせを再び体験できるのは嬉しいことです。

Aloe Blaccの素晴らしい歌声が「SOS」に刻み込まれた言葉に光を当てます。言葉は表情を変え、音の中で流れるように移ろいます。ソウルフルに歌い、優しく歌い、ファンキーに歌う。AVICIIの死にはいくつもの憶測が絡みつきますが、それでも、それを受け止めながらも、ひとつの音楽を完成させる。曲に生命を吹き込む画竜点睛ともいうべきAloe Blaccの歌声が心に響きます。

2019.04.26
by mura-bito | 2019-04-26 21:55 | Music | Comments(0)
ORESAMA「OPEN THE WORLDS」:扉を開けて飛び込むORESAMAワールド、飛び出す新しいORESAMAサウンド
軽快に響くピアノの音。ORESAMAぽん/小島英也)の新曲「OPEN THE WORLDS」がリリースされました。YouTubeで公開されるミュージック・ビデオが曲の一部であることが多いのに対して、ORESAMAは海外の曲のように、いわゆるフル尺を公開してくれます。シングルを制作するたびに、曲の世界をミュージック・ビデオで表現し、毎回楽しませてくれます。
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ミュージック・ビデオやジャケットを通じて、ORESAMAはオリジナルの世界を徹底して追求しています。「OPEN THE WORLDS」の扉を開くと僕らの目の前に広がるのは、ORESAMAの音楽、うとまるが描く世界中に散らばる物語のイラスト、NONELVENPLAY)による腕や手の動きで曲を表現する振付、これらが形作るORESAMAワールドです。



ORESAMA – OPEN THE WORLDS

ORESAMAの音はファンキーに刻む小島英也のギターが特徴的です。そこに鍵盤、特にシンセサイザーの音がよく加わります。「OPEN THE WORLDS」で聴けるピアノの音は、縦横無尽に駆けて曲のスピード感をぐいぐい上げています。僕は音が音に連なってスリリングに展開するジャズ・ピアノをイメージしました。もちろんジャズではしっとり聴かせるピアノもありますが、この曲からは勢いよくテクニカルに奏でるジャズ・ピアニストの姿が思い浮かびます。

曲全体がネコのように跳ねる感じがして楽しい。音に乗って響く歌声は柔らかく、毛並みの綺麗なネコを思わせる…というのは奇妙な喩えですが、ぽんの歌声の柔らかさがあるからこそ、このアレンジが活きるのかもしれません。ジャズというかファンクというか、あるいはクロスオーバーでもいいのですが、そういったものを感じさせる音にぽんの歌声が加わり、ORESAMAの音楽世界が立ち上がります。またひとつ新しいORESAMAの姿を見ることができて、とても嬉しい。
2019.04.24
by mura-bito | 2019-04-24 20:48 | Music | Comments(0)
藍井エイル『FRAGMENT』:明るく咲いた歌声、拾い集めたカケラ、浮かび上がる新しい道
2019年4月、藍井エイルのアルバム『FRAGMENT』がリリースされました。前作『D’AZUR』が発表されたのは2015年なので、オリジナル・アルバムとしては4年近いインターバルがあったということになります。『FRAGMENT』は、再始動後にシングルとしてリリースされた3曲およびアルバム用に録音された8曲の全11曲で構成されています。アルバムを聴き続ける中で感じたことを、カケラを拾い集めるようにまとめて、書き残しましょう。
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ずっと変わらない藍井エイルの魅力は、その綺麗な歌声です。クリアであり、エモーショナル。そして彼女が再び歌い始めてから、歌声がより厚みを増したのではないかと思いながら、この一年に発表された曲を聴いてきました。さらに『FRAGMENT』を聴くと、その歌声から感じたのは明るい雰囲気です。綺麗でありながら厚みがあり、あたたかい光を投げかける、懐の深い歌声を聴かせてくれます。

アルバム全体を通して印象に残る音は、やはりギターの音ですね。分厚くてノイジーな音が生み出すロック・スタイルから、さまざまなメロディが飛び出します。その一方で存在感を示すのがピアノです。いくつかの曲では、ピアノの音が曲に陰影をつけ、立体的に照らします。ギター・ロックの中で輝く凛としたピアノの響きが心地好い。

藍井エイル『FRAGMENT』

約束|SINGULARITY|流星|UNLIMITED
グローアップ|螺旋世界|パズルテレパシー
FROATIN’|アイリス|今|フラグメント
アルバムの幕を上げる曲は、再始動の宣言と同時に公開された「約束」です。再び歌うことを決め、それを伝える言葉が、美しいメロディとともに響き渡ります。続いて、アルバムにおける最初の新曲「SINGULARITY」が飛び出します。ストレートに飛び込んでくる音が心地好く、爽やかさを感じる曲です。「約束」と「SINGULARITY」ではストリングスの四重奏が加わり、曲に膨らみを持たせていますね。

「流星」は2018年4月に配信(6月にはシングルとしてリリース)され、「UNLIMITED」はアルバム発売の一ヶ月前に先行して配信されました。どちらもアップテンポですが、タイプが異なる曲であり、いうなればハード・ロックとオルタナという感じでしょうか。「グローアップ」は思春期らしい反発や隠し切れない本音を歌詞にして、攻撃的な音でコーティングして歌う、これまでとは一風変わったアプローチの曲です。

「螺旋世界」のイントロやサビ、間奏ではギターが曲を引っ張り、中毒的にループするフレーズを聴かせます。また、ピアノの存在も大きく、特にBメロでは鮮やかに響きます。さらに最後の間奏では、ジャズ・ピアノを思わせる演奏が心をぎゅっと締め付けます。エンディングではギターが前に出てきて、曲を締めます。弦と鍵盤が生み出すメロディに震え、その虜になります。



藍井エイル – FRAGMENT (Album Trailer)

ギターのアンサンブルが魅力的な「パズルテレパシー」。エレクトリック・ギターとアコースティック・ギター、それぞれの音の良さが交差します。跳ねた感じのリズムも心地好い。「FROATIN’」はボーカルに加えて、ギターの音もまたエモーショナルで、心が揺さぶられます。歌が切ないから音が切なく聞こえるのか、その反対か、あるいは互いに引き合うのか。

「アイリス」では厚みの増した歌声が聴けます。シングルとしてリリースされたとき、歌の雰囲気が変わったような気がしたものですが、後にそれは歌声の厚みなのだろうと思い至りました。続く「今」の特徴は、ポップなメロディが特徴で、ボーカルも親しみやすさを前面に出しています。からりとした空気、穏やかな光に包まれている気がします。

『FRAGMENT』の最後を飾る曲は、アルバムの表題曲ともいえる「フラグメント」です。ダイナミックに響くギターと、鮮やかに、そして高らかに鳴るピアノの音。歌も音も詞も軽やかで、聴いていて心地好い。初夏の風が吹いてくる気がしました。気持ちも身体もふわりと軽くなって駆け出したくなります。

◆◆◆

藍井エイルのオリジナル・アルバムをリリース直後に聴くのは『FRAGMENT』が初めてです。彼女の曲を聴き始めたのは『D’AZUR』がリリースされてから一年後でした。当時は活動休止に至るとは思いも寄らず、その後は次のアルバムを聴ける日が来ることを期待してはいけないと思っていました。だから再始動の知らせは驚いたし、とても嬉しかった。

こうして新しいアルバムを聴けることに感動しながら、歌に音に耳を傾け、心を預けます。新しい音楽をリアルタイムで体験できることはライブで音楽を浴びることに匹敵する、素晴らしい音楽の楽しみ方だと思います。すべての新曲はやがて日常に溶け込むにしても、この瞬間に抱いている感動は今という時間に刻みたい。

2019.04.22
by mura-bito | 2019-04-22 21:59 | Music | Comments(0)
BLACKPINK『KILL THIS LOVE』:世界中の音楽ファンを巻き込み、螺旋を描いて大きくなる四つの歌声
2019年4月、BLACKPINK(블랙핑크)のEP『KILL THIS LOVE』がリリースされました。リリースが迫ったころ、YouTubeでは四種類のティザー映像が公開されました。表題曲「Kill This Love」のミュージック・ビデオの一部を切り取り、ひとりずつその表情をピックアップした映像です。ティザー映像で垣間見えた要素だけでも、この曲の雰囲気をつかむことができました。
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「Kill This Love」の音はダイナミックに荒々しく、アレンジはリズムを中心にマーチ(行進曲)を思わせます。音に煽られたのか、四人のボーカルやラップもまたアグレッシブでとても力強い。もともと僕はBLACKPINKに甘い歌を歌う(あるいはアイドルのような)イメージを持っていなくて、「Kill This Love」を聴いたことで、さらに甘さから遠ざかった感があります。BLACKPINKを含めK-POPスターがアイドル的な人気を博しているのも事実であり、それもまた魅力のひとつではありますが、アイドル的なイメージを破壊する曲を発表するところにK-POPのおもしろさがあります。



BLACKPINK – Kill This Love

EPには、シンセサイザーのリフを強調したEDMらしい展開が魅力の「Don’t Know What To Do」、ボーカルもラップもリズミカルに響く「Kick It」、ギターとベースに乗せて切々と歌うバラード「Hope Not」、ならびに「DDU-DU DDU-DU」をダブステップに寄せたリミックスも収録されています。特に「Kick It」が好きですね。メロディの流れ方や言葉の置き方がとても心地好い。アレンジも工夫されていて、重く響くベースやキックとアコースティック・ギターの対比あるいは落差に心を揺さぶられます。

BLACKPINK makes history on the Billboard Hot 100 chart (dated April 20), as the group’s new single “Kill This Love” becomes the highest-charting Hot 100 hit ever by a K-pop girl group.

The song debuts at No. 41, breaking the record previously held by BLACKPINK’s own “DDU-DU DDU-DU,” which debuted and peaked at No. 55 in June 2018.


Billboard – BLACKPINK’s ‘Kill This Love’ Makes K-Pop History on Hot 100 & Billboard 200 Charts

総じて(…というのは乱暴すぎるとは思いますが)、アメリカのポップ・ミュージックを強く意識しているように感じられるEPです。特にBillboardチャートはポップスの他にヒップ・ホップが大きな割合を占めるので、BLACKPINKの曲が加わっていても違和感がありません。なお、「Kill This Love」は最新のBillboard Hot 100で41位を獲得し、女性K-POPグループにおける最高位を記録したとのことです。すでにシングルを発表すればチャートに顔を出す存在となっており、まだまだ続くワールド・ツアーでさらに大きな存在になることでしょう。
2019.04.17
by mura-bito | 2019-04-17 21:35 | Music | Comments(0)
[EN] BLACKPINK – As If It’s Your Last
How far will K-POP extend? I focus on the spread of the collectivity called K-POP at the same time as the activity of each group after listening the music. The word K-POP is more like a tag on the Internet, rather than a genre, and it is a really easy-to-understand symbol for music lovers around the world. After one group gets attention, another group gets its attention in a derivative way.
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BLACKPINK (블랙핑크) is one of the K-POP groups I am interested in. I have listened to their original songs such as Playing With Fire and Forever Young, and Kiss And Make Up with Dua Lipa. It can be appreciated that their fans are increasing not only in Korea and Japan but also in other Asian countries, Europe and the United States because of their impressive vocals and raps, song arrangement, and directing of music video.



BLACKPINK – As If It’s Your Last

Their single As If It’s Your Last is a pop song filled with various charms. The song has an irregular structure, and it is a toy box that you look forward to what will pop out of. There are moments when I feel the atmosphere of Latin music like samba or EDM. It gives me a bright impression.

One of the things that stand out is how good the melody is. The goodness works well with pop-colored music video. Especially, the melody in the chorus is brighter and more refreshing and comfortable to the ear. It can be said that it is the attraction of the members in charge of vocal. Their singing voices convey the beauty of the melody straight, and will make you want to listen to this song repeatedly.

2019.04.13
by mura-bito | 2019-04-13 21:11 | Music | Comments(0)
[EN] Steve Aoki and Monsta X – Play It Cool
The new collaboration between Steve Aoki and K-POP has arrived. Steve Aoki and the septet Monsta X (몬스타엑스) have released the single Play It Cool. You can listen to this song on streaming music services, and watch the music video which features their lip-sync and sharp dance.
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Especially, I am fascinated by the rich sounds of bass and bass drum in Play It Cool. Steve Aoki is also good at electronic music that lets you feel the margins like this song, as well as the EDM style that stacks heavy sound. White spaces in Aoki sound highlights the crystal-clear vocals of Monsta X, and involves all the listeners in the world of their singing voices.



Steve Aoki and Monsta X – Play It Cool

Steve Aoki has already made three collaborations with BTS: The Truth Untold feat. Steve Aoki, MIC Drop Steve Aoki Remix, and Waste It On Me feat. BTS. These collaborations helped to expand the world of K-POP. Play It Cool that follows them will also play a role in expanding the K-POP market. Co-authoring with an artist who has a presence in the American music market will increase the possibility that K-POP extends beyond the high wall in the United States.

Naturally, K-POP itself has the power to expand. There is a wave of ups and downs in the popularity of each group, but when you look at the unit called K-POP, new artists are born one after another and a new wind blows. I listened to BLACKPINK taking a cue from BTS, and then I knew Monsta X in this collaboration with Steve Aoki. Thickness and depth of K-POP are amazing.
2019.04.11
by mura-bito | 2019-04-11 21:18 | Music | Comments(0)
Kazuo Ishiguro『An Artist of the Floating World』:浮世を描いた画家は、やがて浮世に呑み込まれる
2019年3月、Kazuo Ishiguro(カズオ・イシグロ)の小説『An Artist of the Floating World』(邦題:浮世の画家、訳:飛田茂雄)がNHKでドラマ化されました(脚本:藤本有紀、主演:渡辺謙)。放送の数週間前にEテレの番組「日曜美術館」でドラマ化を知り、ドラマを観る前に原作を読んでみました。

彼の著作を読むのは『Never Let Me Go』(邦題:わたしを離さないで)、『Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall』(邦題:夜想曲集 ~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語~)に続き3作目です。僕は新刊を常にチェックする熱心な読者ではありませんが、何かしらのきっかけで急に読みたくなって手に取る、そういう不思議な吸引力を持った作家です。
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敗戦から数年後の東京。『An Artist of the Floating World』は、主人公である「小野益次」が、今の生活における家庭の問題を端緒に、自らの画家人生のさまざまな場面を回想する物語です。次女の縁談が成功するか否かは自らの過去が影響すると、遠回しに長女から忠告され、つらつらと過去を思い返したり、過去に親交のあった人々を訪ねる。その過程で読者は、彼が画家として考え成してきたこと、そして今もなお抱えているものに触れます。

「浮世」と訳された “floating world” とは一体何を指すのか。いわゆる浮世絵が示すような、小野の師匠「森山誠治」が描いた美しい世界と考えられ、そしてそれは小野が捨てた世界であります。その一方で、森山から離れて小野が描いた世界、すなわち小野が傾倒した軍国主義や国威発揚に加担する空気という解釈も可能です。“floating world” に翻弄されたのは、果たして森山なのか、それとも小野自身なのか。視点が違うと、物語から浮かび上がる陰影も変わり、異なる世界が姿を現わします。
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芸術、それも絵画の世界を舞台にした物語ということもあり、ドラマは映像美に力を入れていました。「日曜美術館」が特集したのは、作中で重要な役割を担う三枚の絵です。小野、森山、そして小野の弟子である「黒田」、これらすべての画家が架空であり、小説では当然ながら言葉だけで絵の様子が描写されています。ドラマのために三人の画家が筆をとり、作中の言葉からイメージを膨らませて、三者三様の世界を立ち上げました。

僕が最も強く印象に残ったのが、宮﨑優という画家が描いた女性の絵です。彼女は、師匠としてさまざまな点で主人公の作風に影響を与えた森山の絵を描きました。その絵がドラマで映った時間はほんのわずかでしたが、刹那ともいえる時間の中で、僕はその絵が持つ美しさや儚さ、静謐さや脆さを感じました。漂うのは色気なのか諦観なのか、あるいは空虚なものに過ぎないのか。夜の闇は朝の光にとけますが、昼を照らす太陽も傾き夜に呑み込まれます。喰らい喰らわれ、巡り巡る。画家もまたその奇妙な循環の一部なのかもしれません。

できることなら、自分の目で直接その絵を観てみたい。テレビの画面越しに見るときとは異なる感覚が生まれるのではないでしょうか。印象的な絵を目の当たりにしたとき、その場に縛り付けられる感覚に陥ることがあります。眼前に広がる世界に呑み込まれ、心を奪われる。この絵についても、そういった印象的な体験が訪れるのかどうか興味があります。

2019.04.08
by mura-bito | 2019-04-08 21:53 | Book | Comments(0)
BLACKPINK「As If It’s Your Last」:ポップさが際立つメロディ、カラフルに移り変わる音
K-POPはどこまで拡張するのでしょうか。K-POPを聴くようになってからというもの、個々のグループの活躍と同時に、K-POPという集合体の広がりに注目しています。K-POPはジャンルというよりは、インターネットにおけるタグのようなものです。ひとつのグループが注目されると、派生的に他のグループにも注目が集まる。K-POPはその構成要素を追加・刷新しながら、ワールドワイドに拡張し続けます。
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僕が興味を持っているK-POPグループのひとつがBLACKPINK(블랙핑크)です。オリジナルの「Playing With Fire」や「Forever Young」、Dua Lipaと共作した「Kiss And Make Up」などの曲を聴いてきました。歌やラップの構成、曲のアレンジ、ミュージック・ビデオの演出などからすれば、韓国や日本のみならず、アジア各国、ヨーロッパやアメリカにファンが増えているのも頷けます。



BLACKPINK – As If It’s Your Last

シングルとして現時点では最新の「As If It’s Your Last」もまた、さまざまな魅力に満ちたポップスです。曲の展開が起伏に富んでおり、移り変わる音のカラフルさから、僕は明るい印象を受けました。具体的な音というよりは雰囲気という意味ですが、サンバのようなラテン・ミュージックやEDMを感じる瞬間もあります。あまり定型的な構成ではなく、表情を変える展開がおもしろいと思います。何が飛び出すか楽しみなトイ・ボックスとでもいいましょうか。

その中でも際立つのはメロディの良さですね。ポップな色合いを散りばめたミュージック・ビデオにも合います。特にChorus部分のメロディは一段と明るくて爽快感があり、耳に心地好い。それはボーカルを担当するメンバーの魅力だということもできます。メロディの良さをストレートに伝えてくれる歌声、繰り返して聴きたくなる伸びやかな歌声です。

2019.04.04
by mura-bito | 2019-04-04 21:51 | Comments(0)
Steve Aoki and Monsta X「Play It Cool」:音の余白に広がる歌声のアンサンブル
新たに誕生したSteve AokiとK-POPのコラボレーション。彼と7人組グループMonsta X(몬스타엑스)が組み、「Play It Cool」という曲を世に送り出しました。Monsta Xのリップシンクや切れ味鋭いダンスをフィーチャーしたミュージック・ビデオも公開されています。
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Steve Aokiは、重厚な音を積み重ねるEDMスタイルの一方で、「Play It Cool」のように余白を感じさせるエレクトロニック・ミュージックも得意としています。濃厚なベースとキックの音に魅せられ、音の輪郭をなぞって味わいたい。音の余白は、Monsta Xの透き通ったボーカルを強調し、彼らの歌の世界にすべての聴き手を巻き込みます。



Steve Aoki and Monsta X – Play It Cool

BTS「The Truth Untold [feat. Steve Aoki]」、BTS「MIC Drop -Steve Aoki Remix-」、Steve Aoki「Waste It On Me [feat. BTS]」など、Steve AokiはすでにBTSとのコラボレーションをいくつか実現させ、K-POPの拡張に一役買いました。それらに続く「Play It Cool」もまた、K-POPのマーケットを広げる役割を担うことでしょう。アメリカのマーケットで存在感を示すアーティストとの共作によって、K-POPがアメリカという高い壁を越えて拡張する可能性が高まります。

もちろん、K-POPはそれ自体が拡張する力を持っています。個々のグループの人気には波がありますが、K-POPという単位で見ると次々と新たなアーティストが生まれており、新たな風を吹かせます。僕はBTSをきっかけにBLACKPINKを聴き、そしてこのコラボレーションでMonsta Xを知りました。K-POPの層の厚さには驚くばかりです。

2019.04.03
by mura-bito | 2019-04-03 18:13 | Music | Comments(0)

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