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[PART2] 木村俊介 – 善き書店員
善き書店員

善き書店員

木村俊介


[PART1] 木村俊介 – 善き書店員

『善き書店員』を読んだのは随分前のことです。思いつくままに感想を書き留めて、ひとつにまとめることはせずにいました。そんなときに、2016年4月から始まったドラマ『重版出来!』を観ました。生瀬勝久が演じる営業部長が、覇気のない部下に向かって静かに、けれども力強く言います。自分たちが売っているのは物だが、届けているのは書店員、人だ、と。確かに人だよね、と首肯しました。その瞬間、『漫画編集者』* という本とともに本書を思い出しました。

改めて『善き書店員』のページを繰ります。書店に勤める人々の言葉に触れ、その行間にある思いを想像してみると、それぞれのでこぼこした話の中に、その人の日常が垣間見えます。本と読者をつなぐインターフェースとして過ごす日々。書店とはただの本を並べる場所ではなく、そこには人がいて、喜怒哀楽や深い思慮があるわけですね。本書に登場する人々が発した思いは、それぞれのフィルターを通して、独自の言葉として紙に印刷されます。

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広島の書店に勤める藤森真琴さんが「本そのものが好きだから本屋にくるという人は、多数派ではないだろう」と語る場面があります。当たり前のように思えますが、言われなければ気づかないことです。書店を訪れる人が揃いも揃って本の虫ならば、Amazonも電子書籍も必要性を失って、そもそも存在すらしていませんよね。本屋は本を買うためのチャンネルのひとつなのですから。また、「自分が好きで『いいな』と思っているだけではない、人に仕事で『本っていいですよ』と伝えられるに足る意味を、どこかで切実に探しています」とも語ります。情報にアクセスできるチャンネルが増え、激しい移り変わりもある中、本でなくてはならない理由が必要になっている。

『善き書店員』では、藤森さんに限らず、それぞれが書店について改めて考え、言葉にしています。それらは新聞記者や評論家のような第三者による分析ではなく、書店員から吐露された言葉であり、書店の本棚から染み出して書店員を媒介して姿を見せたようにも思えます。本書で僕らが目の当たりにするのは、「書店の意味を捉えなおすプロセス」なのだろうと思います。書店の意味は変わりつつある、あるいはすでに変わっているのかもしれません。本書を読む前と後では、書店に足を踏み入れるときの感覚が少し変わるかもな…なんてことを思いました。

* 『漫画編集者』については、noteに「『漫画編集者』:5人の漫画編集者にフォーカスした、それぞれの肉声を伝えるインタビュー集」という文章を書きました。『重版出来!』の編集を務める山内菜緒子さんをはじめとして、漫画編集者たちの言葉が記された著作です。

2016.04.27
by mura-bito | 2016-04-27 18:29 | Book | Comments(0)
[PART1] 木村俊介 – 善き書店員
善き書店員

善き書店員

木村俊介


「趣味は何?」という質問に対して、昔から「音楽と読書」と答えていました。それほど多読ではなく、時として乱読に溺れたい時期が来るものの、気に入った本を読みたいときに読むことが多い。その本はどこで買うかと問われれば、書店で買うと答えます。なぜなら、特定の作家の新刊を買うという目的を果たすためです。時にはTwitterのタイムラインで見かけた本を探しに行ったり、何も決めずに本棚の前に立って物色したりします。

頻繁に足を運ぶのは丸善や有隣堂のような大型書店です。選書や内装で勝負する小さな本屋も興味はあるのですが、僕にとって決定的に欠けているものがあります。本棚の迷宮を歩き回って、あの圧倒的な量の本の中から求める本を抜き取る、そういうことができるかどうか。それが楽しいというよりは、習慣化しているだけのことで、大抵の場合は書店を出る頃に疲労でぐったりしているのですが。それにしても、本棚から受ける圧迫感は独特ですよね。

***

ということもあり、書店というのは「本がたくさん置かれていて、買う場所」と認識してきました。特別な思い入れがある場所というよりは、特定の機能を持った場所であり、それ以上のものではなかった。その程度の認識でいたのですが、視点を変えてみると、それまで見えなかったものが目に飛び込んできます。書店とは本が売り買いされる場所に留まらず、そこで考えて動く人がいる、ユニークな、生きた場所だと気づきます。そのきっかけを与えてくれたのが、2013年に刊行された木村俊介さんの『善き書店員』という本です。

『善き書店員』は6人の書店員にフォーカスしたインタビュー集です。本書に登場する方々は、それぞれに異なる環境で異なる考えを持って、本と人に接しています。大型書店に勤めている方もいれば、街角の本屋を切り盛りする方もいるし、あるいはインディペンデントな書店の経営者も含まれています。ここで語られるのは「各人が書店員として何を考えて生きているのか」というシンプルなことです。それぞれの言葉は、それぞれの思いを乗せて、一冊の本に刻み込まれています。それらが語るものは何か。ページをめくり、ひとつひとつの言葉を追いましょう。

[PART2] 木村俊介 – 善き書店員

2016.04.26
by mura-bito | 2016-04-26 21:52 | Book | Comments(0)
Ariana Grande – Be Alright


Ariana Grande – Be Alright (Audio)

Ariana Grandeが次にリリースするオリジナル・アルバム『Dangerous Woman』から、「Be Alright」という新曲が公開されています。表題曲「Dangerous Woman」* ではギターを主軸に据えた太い音を披露していますが、「Be Alright」で聴けるのはシンプルなリズムと薄く響くシンセサイザーで構成された音です。

絞り込まれた数の音の上を、軽やかに言葉が舞います。華やかなショー・ビジネスの中で生きる彼女ですが、こうしたシンプルな曲を聴くとスキャンダラスな業界の雰囲気は薄れ、アーティスティックな表情を見ることができます。「Dangerous Woman」で見せたアプローチにも驚きましたが、彼女の音楽家としてのスタンスは、とても柔軟で、とてもカラフルです。これからどのようなアーティストになっていくのでしょうか? 興味は尽きません。

* inthecube: Ariana Grande – Dangerous Woman

2016.04.24
by mura-bito | 2016-04-24 10:49 | Music | Comments(0)
30th FINAL 08: A DAY IN THE GIRL'S LIFE
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


物語「CAROL」の扉を開くのは「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」という曲です。「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」から始まる組曲「CAROL」は、2014年のオリジナル・アルバム『QUIT30』でリメイクされました。

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オリジナルは1988年にリリースされたアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に収録されています。物語「CAROL」に関する曲はロンドンで録音され、現地のミュージシャンやエンジニア、そしてアン・ダドリーなどの世界規模で活躍する音楽家が参加しました。

オリジナルの「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」は、重くのしかかるような音から始まります。太陽の光を遮る重く暗い雲が聴き手の頭上に広がります。低くくぐもった男性の声が響き、重さは増し、暗さは濃くなります。その雲を、TM NETWORKを中心としたコーラスが鋭く切り裂きます。相手を押し潰してすべての音を奪い取ろうとする負の勢力「ジャイガンティカ」、それを押し返して光、そして音を取り戻そうとする「ガボール・スクリーン」。主人公「キャロル」はこの世界に導かれ、ガボール・スクリーンのメンバーとともに最後の音を守り、そして奪われた音を取り戻す戦いに挑みます。

***

「TM NETWORK 30th FINAL」で披露された「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」は、リメイク版の音を元にしています。ソフト・シンセの音を中心にして音を構築します。エフェクトをかけて不気味に響かせていた男性の声は、クリアな女性のコーラスに変わりました。ギターを重ねるのは、音源ではマーティ・フリードマン、ライブでは松尾和博さんです。オリジナルでは映画音楽のような響きを持っていましたが、リメイクではよりロックに寄った印象を受けます。ソフト・シンセの音は、デジタルの不自然さを生むことなく、ユニークな存在として成立します。ソフト・シンセを軸にしてギターとベースとドラムが組み付くロック。

ライブではJD-XAの音が太く響きます。ソフト・シンセとハード・シンセを弾きわけて、インパクトのある音を生み出します。小室さんが多くのハード・シンセを試し、ソフト・シンセで弾くための音を積極的にダウンロードして選別するのは、そのときそのときに自らにフィットした音を掬い取るためです。それはミュージシャンとしての追究心なのか、プロデューサーとしてのバランスなのか、あるいは両方の視点か。僕らはその結果を、そして音の変遷を、存分に享受するのです。

***

「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」では、ウツの歌も特筆すべきポイントです。その歌声は、叙情的に傾きそうで、そのライン上に留まるような絶妙なポジションにいます。美しく流れるメロディを丁寧につないでいきます。その美しさに自らが酔うのではなく、観客に向けて届ける役に徹します。もちろんそれはウツの声だからできることであり、三十年にわたって小室さんのメロディを歌ってきた経験の成せる技なのでしょう。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.04.22
by mura-bito | 2016-04-22 22:08 | Music | Comments(0)
Listen to the sounds of spring
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Spring wind, spring sky.

2016.04.13
by mura-bito | 2016-04-13 22:17 | Photograph | Comments(0)
にがくてあまい レシピ75 アボカドと納豆のそば粉ガレット
小林ユミヲさんの漫画『にがくてあまい』が、4/5の更新をもって完結しました。僕の読者歴は2年に満たないものではありますが、毎月の更新を楽しみ、物語を追いかけてきた時間はとても素晴らしいものでした。

物語の中で生きる人々に自分の生活を重ね、背中を押されました。転職活動を続けるモチベーションになりましたし、さらに、自分の人生を左右した…と言うのは大袈裟ですが、「家族にはいろいろな形がある」と思えるひとつの要因にもなりました。

http://comic.mag-garden.co.jp/nigaama/

二人の主人公、「マキ」と「渚」はそれぞれに決断を下し、それぞれの道に進みます。「渚」は長屋を出て、「マキ」の父親の農園を継ぐためにそこを手伝い始めます。「マキ」は東京に残って今まで以上に広告プロデューサーとしての生活に注力するも、やはり長屋を出て、二人の奇妙な同居生活は終わりを迎えます。数ヶ月が経ったある日、「マキ」は酔いに誘われ、気づけば長屋に向かい、たどり着きます。そこで目にしたもの、耳にしたものとは。最後の料理が読者に振る舞われます。

そして物語は、静かにクライマックスを迎えます。細かいことは語られません。美しい夕焼けが紙面を彩り、二人の会話が添えられます。こうして言葉を交わす二人の姿を描くだけで、それはどんな壮大なクライマックスよりも深みのある終幕を感じることができます。最後に描かれるのは、日常です。ずっとずっと続いていくであろう、日常のワンシーン。

ここにひとつの家族が生まれます。生まれたと言うべきか、ぼんやりと見えていた輪郭が、はっきり形を作って見えるようになったと言うべきか。二人がそれぞれに抱える事情は、二人を交差させないためのものでしたが、最後は二人をしかるべきところに導くためのものとなります。それはバッドエンドではなく、しかし絵に描いたようなハッピーエンドでもない。ひとつの日常を切り取った、そんな終わり方です。

***

かつて僕は、この長屋が足立区あたりに本当に存在していて、登場人物たちが生活しているのではないか、長屋でのやりとりが本当にこの瞬間にも繰り広げられているのではないかと錯覚したものです。最終回を迎えた今でも、あの二人は日本のどこかで、相変わらず暮らしているような気がします。

小林ユミヲさんの描く人々には、不思議な魅力があります。どこかで楽しく暮らしているように思わせる、そういう意味での生命力を感じます。そこにはおいしそうな音と香りと、楽しそうな喧騒と悪態があります。それは自分のイメージを越えて、きっとどこかで実体を伴なって存在している、さまざまな家族の形が交錯している。楽しいことだけではないかもしれないけど、それでも楽しいことの方が少し多そうな感じですよね。

ああ、ついに終わってしまった…。最終巻である第12巻の発売は5月です。物語の余韻を味わいつつ、最後の楽しみを待つとしましょう。

2016.04.11
by mura-bito | 2016-04-11 22:08 | Visualart | Comments(0)

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