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LINKIN PARK「Hybrid Theory EP」:痕跡から浮かび上がるバンドの黎明期、HT/LPの分岐点
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2020年10月に発表されたLINKIN PARKの『Hybrid Theory (20th Anniversary Edition)』には、Hybrid Theory(デビュー前のバンド名)として制作した「Hybrid Theory EP」の曲も収録されています。このEPを持ってレコード会社に売り込み、苦労しつつも契約にこぎつけたそうな。当時の彼らの名刺であり、運命の一枚といえます。

「Hybrid Theory EP」の曲はデビュー・アルバム『Hybrid Theory』には使われていません。同じ言葉を冠していても、アルバムとEPでは描かれた世界が異なります。「Hybrid Theory EP」は当時のバンドの方向性が刻まれた作品であり、『Hybrid Theory』の原型とはいえないものの、「LINKIN PARKの原型」といえるのではないでしょうか。そうした視点から、EPから「Step Up」と「High Voltage」をピックアップして、それぞれの印象を書き留めます。



LINKIN PARK – Step Up (Hybrid Theory EP)

「Hybrid Theory EP」の曲をおおまかに分類するとロックとヒップホップで、バランスとしてはヒップホップ寄りです。対して、『Hybrid Theory』以降はヒップホップの色が薄くなっています。このEPを聴くと、最初はロックとヒップホップを二つの柱にしようとしていたのかなと思えます。

ヒップホップとロックのハイブリッドといえる曲が「Step Up」です。ラップ、バンド・サウンド、スクラッチ・ノイズそれぞれが熱を帯び、重厚なパフォーマンスがダイレクトに迫ってきます。特に “Who can rock a rhyme like this?” から “Step, step up, step, step up” までの畳み掛けるアプローチが好きです。一歩引いたところからクールに見下ろす視線と、ぐっと近づいて相手を煽る熱気が同居しています。

LINKIN PARK – High Voltage (Hybrid Theory EP)
https://www.youtube.com/watch?v=nfFQwdegqtI

ロックの色がほとんどないヒップホップの「High Voltage」には、このEPのバージョンと、アレンジが異なる別のバージョンがあります。僕は後者を『Hybrid Theory』の日本版ボーナス・トラックとして聴いていて、他のバージョンがあるとは知らなかった。EPのバージョンを聴いてみると、それまで聴いていた「High Voltage」とは雰囲気がかなり異なります。

基本的な歌詞やメロディは同じですが、それなのに亜種ではなく別種、ほとんど別の曲だと感じるのが不思議です。リミックスやリメイクであれば、大なり小なり原型が見えるものなのですが、そういうわけでもない。完成した曲を一度ばらばらにして、必要なものを拾いつつ、別の要素を組み合わせて作り直した…という感じでしょうか。

LINKIN PARK – High Voltage
https://www.youtube.com/watch?v=wIP8R_jqw0M


デビュー後、「Hybrid Theory EP」におけるヒップホップの要素はほとんど引き継がれず、「ラップとボーカルが交錯するヘビー・ロック」がメインとなります。ヒップホップが前面に押し出された曲は2枚目の『Meteora』に収録された「Nobody’s Listening」くらいでしょうか。それ以降、ヒップホップの受け皿になったのはバンドではなく、Mike Shinodaが主宰するFort Minorです。

LINKIN PARKの成功は多くの人が知るところです。しかしながら『Hybrid Theory』ではなく、「Hybrid Theory EP」の路線でデビューしていたら、これほどまでに大きくなり得たのでしょうか。『Hybrid Theory』とは反対の結果になっていた可能性もありますが、今では想像するのも難しい話題です。しかしながら「Hybrid Theory EP」からは、この音楽でのし上がろうとする若い彼らの野望を感じますし、やはり世界を激しく揺さぶるバンドになったのかもしれません。
2020.12.31
by mura-bito | 2020-12-31 15:20 | Music
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