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30th FINAL 16: あの夏を忘れない
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


静謐な月夜を真夏の太陽が呑み込む。木根さんが歌った「月はピアノに誘われて」が終わると、「あの夏を忘れない」のエレクトロニック・サウンドが会場を満たします。シンセサイザーの煌びやかな音は滑らかにループして、聴き手をダンサブルなリズムに誘い込み、心地好い時間を作り出します。

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ハウス・ミュージックの色が強く反映された「あの夏を忘れない」はアルバム『EXPO』に収録されました。アルバムがリリースされた1990年代初期、ハウスはダンス・ミュージックにおけるトレンドであり、『EXPO』の音楽的な柱のひとつでもありました。この曲は「WE LOVE THE EARTH」のリミックスや「JUST LIKE PARADISE」とともに、ハウスというテーマを表現する役割を担いました。アルバム自体はハウス一色に染め上げられることなく、フォークやロックも含めた、ひとつの路線に限定しない構成になりましたが、比率はハウスの曲が最も大きい。

『EXPO』の曲がハウスかどうか。音楽のジャンルは境界線が曖昧なことが多く、特にダンス・ミュージックは離合集散を繰り返してきましたよね。ハウスの定義も難しく、しかも小室さんは新しいジャンルを取り込むときは独自のフィルターを通すので、リリースされたときにはオリジナルの味付けがなされています。『EXPO』におけるハウスも、厳密な定義を求めるリスナーには、おそらく「ハウスじゃない」という烙印を押されたのでしょう。

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詞を書いた坂元裕二さんは、『東京ラブストーリー』を手がけた脚本家です。「RHYTHM RED BEAT BLACK」では退廃的で耽美な世界を描き、「CRAZY FOR YOU」では男女の逢瀬(密会?)を描きます。後者では、坂元さんが書いたのは歌詞ではなく台詞です。ウツは宇都宮隆をいうロック・スターを演じ、ハウスの音が狂ったようにループする中で、女性の部屋で言葉を交わします。

「あの夏を忘れない」が切り取るのは真夏のプールか、ビーチか。太陽の光を反射する水面が目の前に浮かびます。水しぶきが光をまとって弾け、水の欠片は肌を滴り落ちます。身体に絡みつくように、心を縛るように、夏が記憶にまとわりつきます。夏の残滓は、時に鮮やかに、時におぼろげに、記憶の中を漂います。描かれた景色は太陽の下での戯れですが、行間には、それを思い出す誰かのメランコリックな姿が見えます。夜の闇に抱かれて、持て余すように夏の記憶を眺めている。

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「あの夏を忘れない」はリリース後の全国ツアーも含め、過去にも披露されていますが、僕がライブで聴いたのは「TM NETWORK 30th FINAL」が初めてです。こうして音をダイレクトに浴びてリズムに身を任せると、音のループに酔います。TM NETWORK流のトランスやEDMを体験してきた身体の中に、ハウスが注入されます。身体にTM NETWORKのダンス・ミュージックが蓄積して、記憶に刻み込まれます。

TM NETWORKを再び動かそうとしていた1990年代末、小室さんは『EXPO』を聴きなおして「アメリカやイギリスの音楽にも引けを取らない」と自負していました。その評価について僕は語る言葉を持ってはいませんが、これらの音はリリースから20年が経った2010年代であってもまったく色褪せていないと思います。個人的には、ユーロビートは「1980年代らしさ」と強固に結びついています。リアルタイムで聴いていたわけでもないのに、どうしてもイメージが引っ張られます。一方で、ハウスはそういった暴力的な結びつきがない。いわゆる「お茶の間」にも浸透したか否か、という違いなのかもしれません。

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ライブでは、バンナさんが刻むギターがとても印象に残りました。TM NETWORKでのバンナさんの役割は、ソロで目立つと言うよりも、小室さんが構築するシンセサイザーを主体としたサウンドに陰影をつけることだと僕は思います。もちろんソロをとることもあるのですが、「刻む」イメージが強く、そしてその音は不思議と中毒性が強く、気付けば耳で追っている。とりわけ「あの夏を忘れない」では、テクニカルに刻まれるギターの音が絡みついてきます。身体に、記憶に。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.09.19
by mura-bito | 2016-09-19 18:33 | Music | Comments(0)
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