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30th FINAL 05: SCREEN OF LIFE
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


穏やかに響くアコースティック・ギターの音。スツールに腰かけて演奏する木根さんを、夕暮れを思わせる光が照らします。音のかけらを丁寧に集めるように弦をはじき、やがて「SCREEN OF LIFE」のテーマ・メロディが形作られます。オリジナルではエレクトリック・ギター、アルバム・ミックスではシンセサイザーが奏でていたメロディです。フォーキーに爪弾いたり、ときにブルージーに奏でたりと、木根さんはギターを操って世界を静謐な空気で染め上げます。

***

ソロが終わると、シンセサイザーやエレクトリック・ギターとともに、再び木根さんがテンポを上げて、アコースティック・ギターでテーマ・メロディを弾きます。テーマ・メロディが一巡するとリズムが飛び出し、音が厚くなって、「SCREEN OF LIFE」のイントロが始まります。

「SCREEN OF LIFE」は、「DOUBLE-DECADE」と銘打った、2004年のTM NETWORKのデビュー20周年企画を代表する曲です。2004年にシングルとしてリリースされた後、ミックスを変えてオリジナル・アルバムに収録されました。音は、当時小室さんが傾倒していたトランスの要素を含み、ボーカルのメロディはポップスらしからぬ、ポエトリー・リーディングのような連なりを見せます。

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小室さんが詞を書いたTM NETWORKの曲の中でも珍しく、「生きること」と「死ぬこと」を綴った曲です。年齢を重ねることで否応なしに意識する死を扱うのは、公私ともに思うことがあったのは想像に難くないのですが、それでもなお、ひとつの芸術作品として純化された世界があると思います。

日々、記憶に記録されるもの。多くの人々との思い出、日々の体験。大事な人との何気ない時間、忘れられない思い出、いつか来るであろう最期。この世から去るとき、スクリーンに映したいものは何か。常人が見ることのできない風景を見ながらも、最後に移したいものはきっと異なる。多くの人々と同じであろう、ささやかなもの。言葉の端々に感じるのは、ただひとりの姿であれば充分だという、ささやかな願い。ある種の後悔をはらんだ、願い。

この曲を2004年に聴いたときは、歌詞に漂っていたのは、どこにも届かない、たどり着かない無力感でした。自分の記憶に深く潜って内省し、自問自答を繰り返しているかのようでした。淡々とした四つ打ちと悲しげなシンセサイザーの音に乗った、虚空を漂う言葉の連なり。届かない言葉の破片。

十年が経ち、「SCREEN OF LIFE」の歌詞の捉え方も変わりました。2015年では、言葉の端々に漂う絶望・孤独・諦観は薄まり、ただひとりの人を思う惜別の言葉となったように思えます。2004年に生まれた言葉が、誰かを思うことで「自分」が救われたいというある種のエゴに満ちた気持ちだったのに対し、十年という時間を費やすことで、「自分たち」のラスト・シーンを描くようになった。もちろん終わるときはひとりで終わることが多いわけですが、どちらかがひとり残されたとしても、その記憶をスクリーンに呼び戻すことで、ふたりとも、ふたりで終わることができるのではないか、と。

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オリジナルの段階から「SCREEN OF LIFE」にスネアの音は使われておらず、ベースとキックとハイハットでリズムを構成していました。「DOUBLE-DECADE」のコンサートでもベーシストもドラマーも加えず、リズムはデータとして流し、ステージ上で小室さんが音のバランスを調整しました。「TM NETWORK 30th FINAL」では、ドラマーが叩くスネアの音が重なります。トランスに寄っていた曲は、生のドラムによって、ポップスの色が濃くなりました。

サビ前のブリッジで、スネアとキックが抜けると、木根さんのアコースティック・ギターが存在感を増します。そのカッティングはEDMアーティスト(例えばAVICII)のアプローチに似ています。エレクトロニック・サウンドとアコースティック・ギターの音は親和性が高く、そのことはTM NETWORKでも体験することができます。アコースティック・ギターの音はバラードで鳴ると切ない響きを醸して歌を支えますが、エレクトロに組み込まれるとアクティブに響き、曲のファースト・インプレッションにすらなり得る突出した存在感を放ちます。

***

スクリーンにはニューヨークの空撮、潜伏者の姿が映し出されます。巨大な街の姿を俯瞰すると、潜伏者の姿を捉えることができる。無数の人々が行き交い、衝突し、共存する街の中に、潜伏者は入り込み、そのミッションを遂行します。指令を受け取り、バトンを受け取り、調査と報告を繰り返します。スクリーンは潜伏活動の一部を切り取り、そこに上映します。何気なく過ぎる毎日の中のどこかに潜伏者の影がある。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.02.19
by mura-bito | 2016-02-19 22:29 | Music
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