inthecube
音楽と物語に関する文章を書いています。
ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
OUR WORLD IS EXPRESSED BY IMPRESSIVE WORDS
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
シンセサイザーとギターのリフレインが現実感を失わせ、観客はどこか別の世界に吸い込まれます。組曲「QUIT30」を構成する曲のひとつである「The Beginning Of The End」が、ステージを異空間に染め上げます。スクリーンには、夜道で車の後部座席に乗り込む「キャロル」が映し出されます。彼女はどこに向かうのでしょうか。何かから逃げているわけでもなく、あるいは急いでいる様子もない。
「The Beginning Of The End」はシンセサイザーとエレクトリック・ギターがそれぞれに生み出し、リフレインするフレーズが軸になっています。YesやEmerson, Lake & Palmerをイメージさせる網の目の細かいサウンドは、円を描きながらいつの間にか螺旋の軌跡を残して進みます。ライブでは、さらにアラートのようにも聞こえるアルペジエーターを重ね、木根さんが一心不乱に繰り返すアコースティック・ギターのストロークが混ざり合います。いつ終わるとも知れぬ音の螺旋は、どこまでも続きます。音の交錯。音の乱舞。音の集積。
いくつもの赤くて丸みを帯びたものが細いチューブの中を通り、移動します。血管の中をイメージしてデフォルメした映像。人間の身体に張り巡らされた血管を、赤血球を始めとした無数の細胞が流れます。それは、人間を人間たらしめる要素のうち、心のようにダイレクトには見えないものとは異なり、目に見えるもののひとつです。ミクロな視点で捉えた人間のフィジカルな姿。
曲の展開とともに映像も変化を見せ、何百何千という言葉では足らないほどの数の星が瞬く宇宙空間が映し出されます。宇宙空間を航行する先に見えたのは星々が集まって形成する銀河です。銀河の大きさは想像を超えており、人間のサイズなど比較にもなりませんが、銀河の中の小さな小さな点のひとつが人間である、ということくらいは言えそうです。視点は、人間の体内というミクロの極致から銀河というマクロの世界に移り行きます。
最後は母の胎内で眠る胎児を描いたグラフィックが表示され、そして霞むように消えます。「The Beginning Of The End」というタイトルは、もともとはTM NETWORKの30周年プロジェクトの終わりを指す言葉と捉えられていましたが、人間を示す言葉と考えてみましょう。生命が宿るとは、死に向かって生き始めることである、それはすなわち終わることの始まりである、と。
ループする音の連鎖が "Love" という言葉によって断ち切られると、世界は一気に変わり、組曲の続き「Mist」に移ります。「The Beginning Of The End」で淡々と紡がれる言葉から一転、「Mist」では叙情的な雰囲気が強まります。ギターの音は感情をほとばしらせるように鳴り、ウツのボーカルも曲が生み出す昂りに拍車を掛けます。
霧に包まれたときに見えるのは自分の周りだけです。晴れ渡っているときほど、遠くのものを見ようとする。注意のリソースは分散され、手の届くところにあるものへの注意は相対的に減じる。けれども、霧の中で遠くが見えなければ、頼れるのはすぐ近くにあるものです。それは人と人の関係においても同じことが言えるのかもしれません。
車が走る中、シートに背を預けた「キャロル」は語り始め、過ぎ去る夜景に目を向けながら言葉を継ぎます。三人の潜伏者たちは、地球上に散らばったばらばらのピースを集めてきました。それらを組み合わせ、つなぎ合わせることで大きな意味を持ったり、新たなものが生まれる。そうすることで見えてくるものを、彼女は「真実」と表現します。その「真実」が一体何なのか、ということについては、多くを語らず、言葉を畳みます。
01. QUIT30 PART1: Birth
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
04. Alive/君がいてよかった
05. Always be there/STILL LOVE HER
06. QUIT30 PART3: Glow
07. I am/GET WILD
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/III
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
04. Alive/君がいてよかった
05. Always be there/STILL LOVE HER
06. QUIT30 PART3: Glow
07. I am/GET WILD
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/III
2015.08.05
by mura-bito
| 2015-08-05 21:14
| Music

fujiokashinya (mura-bito)
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