inthecube
音楽と物語に関する文章を書いています。
ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
OUR WORLD IS EXPRESSED BY IMPRESSIVE WORDS
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
地を這うようなベースの音が響く中、何本もの光のラインがステージを照らし、それらは中央に立つウツに集束します。青くて重厚な雰囲気から一転して音も光も輝きを放ち始め、ライブはエレクトロ系ロック・サウンドに染まります。曲は「WILD HEAVEN」です。ソフト・シンセでつくった粘り気のある音が端々で鳴る中、木根さんのコーラスが殊の外、大きく響きます。
木根さんのコーラスが強調されるのは珍しいことではありません。2012年から始まったプロジェクトでは、できる限り三人の声でコーラスをおこなっています。TM NETWORKを構成する幾多のトライアングルのひとつですね。木根さんは謙遜していますが、三人の声を混ぜるときに欠かせない、つなぎの役割を果たしています。R&Bやジャズのような、いわゆるソウルフルなコーラスではないけれど、TM NETWORKの音やメロディに合った声のデザインとして、三人の声が混ざり合うことは欠かせません。
「WILD HEAVEN」はロックの雰囲気を持ちつつ、ハウス・ミュージックのテイストもある曲です。1991年にシングルとしてリリースされ、1993年のリミックス・アルバムにはハードコア・テクノの要素を取り込んだextended mixが収録されました。アウトロと言うにはあまりにも長大な、リミックスの後半がほとんど別物のトラックであり、当時の小室さんのスタイルを反映していました。多少の距離はあるものの、その系譜に連なるのがtrfだった、と言えばイメージしやすいかと思います。四つ打ちで攻める系統のダンス・ミュージックと親和性が高い曲ですね。
光が小室さんを照らし、ピアノの音が響きます。その音だけが会場を満たします。やがて、ピアノの音に導かれるように、エレクトロニック・サウンドが染み出して会場を支配していきます。四つ打ちがかぶさり、ギターの音が咆えます。ロックから大きくエレクトロに寄った「TIME TO COUNT DOWN」です。オリジナルはハード・ロック系のタフなアレンジでしたが、2004年にはトランス系の音でリメイクされました。「ドラマー殺し」の異名を持ち、ライブではハイテンポなロックとして演奏されることが多い曲です。演奏する方も大変ながら、聴く方も相当エネルギーを消耗します。
EDMに傾倒した小室さんが2014年にこの曲を選び、タイムリーな音に作り変えます。インタールードではオリジナルにない展開を見せ、EDM系サウンドによる盛り上がりを見せます。シンセサイザーで重ねるフレーズは小室さんらしさが炸裂します。スクリーンには無数のアルファベットや数字が乱舞し、トンネルを進むかのごとく、文字が流れては消えていきます。映像が生み出すスピード感が曲の持つスピードに合致し、むしろ増幅、加速させます。同じエレクトロ系であっても、2004年の減算的サウンドメイクとは異なり、ある程度のボリュームを持ち、立体的に重ねていくのが2014年のスタイルですね。層を成すサウンドは、HUGE DATA(大量の情報)の一端でもあります。
アウトロに突入する瞬間、ウツが右腕を上げるとすべてのスイッチをオフにしたように音が消えます。そして身体ごと右に向けながら腕を振り下ろすと、再びスイッチがオンになる。このライブだけにアレンジされたエレクトロ系サウンドが走り始めます。フロントマンとしてのウツの所作は、こういったところで輝きます。ミュージカルを経験したり、演劇の要素を取り入れたソロ・ライブを披露したりしたこともあると思います。ステージで映える所作というのは、決してオーバーアクションというわけではなく、ひとつひとつの動作をきちんと止めたり最適な間を作り出したりすることにあります。小室さんが作り出したサウンドや間を、ウツが視覚的にコンダクトする。それによってライブがより躍動して、観客の興奮を増幅させます。
01. QUIT30 PART1: Birth
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
04. Alive/君がいてよかった
05. Always be there/STILL LOVE HER
06. QUIT30 PART3: Glow
07. I am/GET WILD
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/III
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
04. Alive/君がいてよかった
05. Always be there/STILL LOVE HER
06. QUIT30 PART3: Glow
07. I am/GET WILD
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/III
2015.08.03
by mura-bito
| 2015-08-03 20:23
| Music

fujiokashinya (mura-bito)
| S | M | T | W | T | F | S |
| 1 | ||||||
| 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
| 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
| 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
| 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
| 30 |
最新の記事
| LINKIN PARK「Hy.. |
| at 2020-12-31 15:20 |
| ORESAMA「耳もとでつか.. |
| at 2020-12-30 15:24 |
| 米津玄師「感電」:巧みなアレ.. |
| at 2020-12-29 21:04 |
| Gacharic Spin「.. |
| at 2020-12-22 19:29 |
| Reol「激白」:近づいては.. |
| at 2020-12-16 21:20 |
| ORESAMA「あたまからモ.. |
| at 2020-12-09 22:30 |
| TM NETWORK『SPE.. |
| at 2020-12-05 14:55 |
以前の記事
記事ランキング
カテゴリ
タグ
TM NETWORK(312)
Tetsuya Komuro(151)
EDM/Electro(107)
Investigation Report(102)
EDM(98)
quasimode(72)
30th FROM 1984(63)
Rie fu(62)
Jerry(52)
Eir Aoi(45)
QUIT30(44)
Incubation Period(42)
Zedd(37)
30th FINAL(36)
AVICII(34)
ORESAMA(32)
Sakura(31)
LINKIN PARK(28)
Azumino(27)
START investigation(25)
Tetsuya Komuro(151)
EDM/Electro(107)
Investigation Report(102)
EDM(98)
quasimode(72)
30th FROM 1984(63)
Rie fu(62)
Jerry(52)
Eir Aoi(45)
QUIT30(44)
Incubation Period(42)
Zedd(37)
30th FINAL(36)
AVICII(34)
ORESAMA(32)
Sakura(31)
LINKIN PARK(28)
Azumino(27)
START investigation(25)
ライフログ
TM NETWORK
TETSUYA KOMURO
quasimode
Linkin Park
Paramore
Immigrant'sBossaBand
Ryu Miho
AVICII
Krewella
Zedd
藍井エイル
ORESAMA
Gacharic Spin
梨木香歩
村上春樹
京極夏彦
小林ユミヲ
Book
Comic
Music
その他のジャンル
ブログジャンル

