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[PART2] 木村俊介 – 物語論
物語論

物語論

木村俊介


[PART1] 木村俊介 – 物語論

木村俊介さんは『物語論』で、伊坂幸太郎さんの作品について「登場人物たちの心については、いつもきれいに話を閉じている」と述べています。これまでに読んだ伊坂作品を思い返しながら、この点を考えてみましょう。真っ先に浮かんだのが『重力ピエロ』です。僕はこの小説を文庫本で2007年に読みました。

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『重力ピエロ』で最も好きなのは、語り手の弟である「春」が小屋の上から跳躍して、「春が二階から落ちてきた」と綴られる最後の場面です。この場面は、「春が二階から落ちてきた」という一文から始まる物語の冒頭と呼応しています。この作品を初めて読んだとき、僕は「最初のシーンで、これは読むべき物語だ、と確信し、最後のシーンで、読んで良かった、と確認する」* と書きました。無邪気な感想だと思わざるを得ませんが、心に浮かんだものをストレートに記していることは間違いない。

「春」を含めた家族のみんなが抱えてきたものは決して軽いものではありません。それらを「家族愛」という言葉で乱暴にコーティングしてしまうには、事態はあまりにも複雑です。謎解きに関する軸、家族に関する軸が、それこそ二重螺旋のような関係にある物語です。人によっては目を背けたいものをテーマにしていますし、謎解きや小説の構造を楽しむのは無邪気に過ぎたのかもしれません。もちろん不謹慎だからとか、嫌がる人がいるからとか、そんな無責任な理由で過去の自分を否定したいわけではない。

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『物語論』を読んだことで『重力ピエロ』を再読する機会を得ました。今の感性で読んで思ったのは、冒頭の「春が二階から落ちてきた」と最後の「春が二階から落ちてきた」は素晴らしい文である、ということです。言葉にすると8年前と同じですが、当時とは異なる感性で、しかも多少は積み上がった経験をふまえても、やはり素晴らしいものは素晴らしい。一度心を震わせた物語は、そう簡単に格下げされることはありませんね。登場人物たちの話が閉じていると思えるから、読み終わってすぐに素直に「いい小説だった」と思えるのでしょう。それは「登場人物たちの気持ちが解放された」ということを意味するのではないでしょうか。

謎解きが終わると、物語は長めのエピローグに入ります。場所を変え、話題を変え、そのたびに言葉を積み重ねてエピローグは進みます。気持ちは少しずつ解き放たれていく。最初から散りばめられていたエピソードのいくつかはエピローグにも登場しつつ、伏線と呼べるものではなく、多くは読者の記憶で鳴り続けるものです。どのエピソードを思い出して目の前の文章につなげるかは、読者が決めます。読者によっては、ただの退屈な後日談かもしれません。けれども、物語のあちこちに転がったものを拾い集めていれば、きっと、最後の場面に向かって登場人物たちの気持ちが徐々に解放されていくのを感じることができる。その解放は「春が二階から落ちてきた」で結実します。

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登場人物の話が閉じているか、という観点で他の伊坂作品を再読するのも楽しそうです。『砂漠』や『ゴールデンスランバー』の読後感は爽やかだった記憶がありますが、改めて読むと、どれくらい深みを感じられるのでしょうか。作家が物語を生み出すプロセス、その一端を教えてもらうことで、一度読んだ作品も異なる角度から光を当てることができます。そうして物語は陰影を持ち、立体的になるのだろうと思います。

* inthecube: 僕は二階から落ちてはきませんが

2015.05.29
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by mura-bito | 2015-05-29 21:33 | Book | Comments(0)
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