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New songs: Alive/STORY/Mission to GO
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アルバム『QUIT30』には組曲「QUIT30」の他に、アルバムのために書き下ろした曲がいくつかあります。アルバムの軸である組曲「QUIT30」からは離れ、独立した世界を描く曲です。小室さんの曲に加え、木根さんが書いた曲を聴くこともできます。木根さんの曲が新曲として発表されるのは、2007年のアルバム『SPEEDWAY』以来ですね。

◇◇◇

「Alive」、「STORY」、「Mission to GO」は、いずれもみっこ(小室みつ子)さんが詞を手がけました。みっこさんとTM NETWORKが組んだ曲は、もう数え切れませんね。デビュー・アルバム『RAINBOW RAINBOW』に参加してから30年。TM NETWORKの黎明期から、いくつもの印象的な詞を生み出してきました。「SELF CONTROL」や「GET WILD」などのTM NETWORKが躍進する原動力となった曲や、「BEYOND THE TIME」や「SEVEN DAYS WAR」といった映画の主題歌の詞も彼女が書いています。

少し離れたところで今起きていることを眺めながら、未来に向けた言葉を連ねる。言葉は抽象的なレベルから、目の前の相手まで自在に行き来します。前を向く明るさとともに、どこか冷めた視点も感じる。みっこさんの詞はJ-POPのシングル曲として役割を充分に果たしながら、多くを語らない単館上映の映画のような空気を漂わせます。

「Alive」では、複雑に絡む世界に生きる人々と、それらを分かつ境界線の存在を描きます。「STORY」では、音楽とともに生きてきた仲間たちの思いを綴り、寄り添います。そして、「Mission to GO」では宇宙を旅するボイジャーに人々の生きる姿を重ねます。それぞれに物語があり、短編集のようなおもしろさがありますね。ひとつひとつの世界は小さいけれども、その中の物語は大きく広がる可能性を持っている。

◇◇◇

「Alive」はアルバムの冒頭に配置され、先陣を切る役割を果たします。口ずさみやすいメロディと、駆け抜けるような勢いを感じさせるリズム。ストレートな日本のポップスという感じを漂わせつつも、リズムはダンス・ミュージックの要素を含みます。シーケンサーの音が鮮やかに光り、曲を彩ります。J-POPの雛型と言うべきか、1980年代後半から1990年代にかけて成長したユーロ系のポップスかなと思います。端々に漂う哀愁はヨーロッパの香り。

なるほど、音の雰囲気や言葉のはめ方は1980年代、すなわちTM NETWORKの最初の十年に近い、と言えなくもない。けれども、響いてくるリズム、駆け巡るシンセサイザーの音は、紛れもなく2010年代です。ふとイメージが浮かびます。2014年4月のアルバム『DRESS2』で、タイムマシンに乗って1980年代からやってきたひとりの音楽家。そのまま2014年に留まり、目の前の音に惹かれて、それを使って新たな曲を生み出す。その音楽家は2014年の出来事を記憶に刻み、やがてタイムマシンに乗り込み、元の時代に帰るのでしょう。

◇◇◇

「STORY」は木根さんが書き下ろしたポップスです。木根さんが書くTM NETWORKの曲はテンポがスローだったりミディアムだったりしますが、小室さんが書くアップテンポの曲とのコントラストが生まれます。これはデビュー当時から変わらないポジションですね。木根さんが書いたメロディをウツが歌い、小室さんがアレンジして曲を完成させる。「キネバラ」と呼ばれるTM NETWORKのバラードは、変わらない三角形を描いて聴き手に届きます。

「STORY」の主役は木根さんのメロディであり、小室さんのサウンドはいわば助演。聴き手がメロディの良さを堪能できるようなサウンドを構築します。テンポが緩やかになるほど、リズムの重要性は増します。曲が重くならないように、軽くならないように。木根さんが書くメロディは柔らかく、時として気持ちを集中させて強く響きます。音は川の中にある石のようなものでしょうか。メロディの流れを止めないように、けれどもさらりと流れていかないように。シンセサイザーとアコースティック・ギターとリズム・トラック。薄く重なり、それぞれが透過して色が混ざり合います。

◇◇◇

「Mission to GO」はシンセサイザーの音が全体をぐいぐい引っ張る曲です。硬く鳴る音と丸みを帯びた音が組み合わさって、ぐるぐるとループして軌跡を描きます。ソフト・シンセの音は、曲面や平面が美しく設計されたプロダクトをイメージさせますね。無機質なのだけれど、その感触は冷たくない。美術館に飾られたアートではなく、生活の中にフィットするデザイン。小室さんは、音を丁寧に構築することで、ソフト・シンセの音をポップスやロックに混ぜて世に出しています。

宇宙に浮かぶ星々をとらえた映像に合わせて、この曲を流してみたらどうでしょうか。歌詞と混ざり合い、音が旅を始めるかもしれません。星と星の間を航行する音。みっこさんの言葉を乗せ、音はどこかに向けて飛び続けます。ボイジャーに感情があるとすれば、当初の役割を終えて星々の間を進む今、何を思うのでしょうか。それを人間の営みに重ねると、どのような思いが浮かぶのか。過去に課されたミッションが終わり、飛行体は進むことそのものをミッションとして飛び続けます。未知の世界を進み続け、未知のものに遭遇する。


2014.11.12
by mura-bito | 2014-11-12 21:19 | Music
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