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Scene4/I am/JUST ONE VICTORY -- the beginning of the end
TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end

TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end

TM NETWORK


ドアが開く。潜伏者のひとりが端末に向かって作業を続けている。いくつもの情報がインプットされます。プログラミングのような文字の羅列、DNA二重螺旋のような曲線、分子構造のような六角形の連なり、積分のグラフのような図形。宙を漂う三つの物体も見えます。

メイン・ブレインにおいて、潜伏者たちは人間に似せた生命体、すなわちアンドロイドを生成しようとしているのでしょうか。カプセルの中で培養されているそれは、人間に似た曲線を見せています。曲線は曲線でも、特に柔らかなカーブを描く曲線。黙々と作業をこなす潜伏者の表情からは、その目的を読み取ることはできません。理解できるのは、時間が経つにつれ、カプセルの中のものが変化していることだけです。

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ドアが閉じる。音が変化し、滲み、広がり、白い空間に模様を描く。音はさらに変化し、四つ打ちの音が加わります。さらに音が変わり、ノイジーなエレクトロニック・サウンドが渦をつくり出します。そして、すべての音が消える。時間も止まります。その空白を遮り、ドラムの音が時間を呼び戻す。その音をトリガーにして、「I am」が始まります。

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音、メロディ、言葉を隅々まで味わい、イメージを広げたい。それが「I am」という曲です。2012年4月にオリジナルがリリースされ、2013年7月には「I am 2013」と題したリミックスが発表されました。ライブ会場で販売されたシングルに収録されていましたが、2014年4月に発売されたアルバム『DRESS2』でも聴くことができます。このライブ・ツアーのアレンジは「I am 2013」を下敷きにしています。「I am 2013」はソフト・シンセの音がふんだんに使われており、それだけでオリジナルとの印象の違いが生まれています。エレクトロに寄ったポップス。ステージの上でもソフト・シンセの音が重ねられ、エレクトロニック・サウンドの比率がさらに高まる。それは同時に、ウツの柔らかい歌声とのコントラストを高めています。

♪ほんの少しだけの遅れは/急いですぐ戻ってくればいい/群れに集う その瞬間は/明日はともかく みな喜ぶ♪ というフレーズの歌い方がとても優しい。ウツの歌い方はエモーショナルですよね。CDを含め、これまで聴いた中でも、歌に優しさを感じます。これまでは、できる限りクールであり続けたというべきか、小室さんが書いた言葉やメロディを伝える役割を自らに課していたような気がしますね。ボーカリストとして自らの色をつけるよりは、むしろ薄めて、触媒に徹していた。それが、2014年になって少し変わったのかもしれません。「I am」の世界、すなわち小室さんの内的なエリアに、ウツがぐっと近づいたのでしょうか。あるいは、少し余裕が出てきたのかもしれない。2012年は初演であり、2013年は病み上がりだったので、自らの色を出す余裕がなかった。快復しつつあること、ツアーで歌い込めたことなどの要素が重なり、ウツなりの表現を構築し、披露できたのではないか。

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「I am」の最後、音が消えると、光が潜伏者のひとりを照らします。メロディから解き放たれた言葉、「Yes I am Yes I am Yes I am a human」を残します。その言葉は、あのカプセルに関する作業のひとつだったのかもしれません。人間の情報をインプットし、人間であることをインプットする。人間ではないけれども、カプセルの中の生命体は、「自分は人間ではない」ということを「意識しない」ようになっている。それは何のためか。

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続いて、「JUST ONE VICTORY」が演奏されます。アレンジはアルバム『DRESS2』に収録されているバージョンに基づいています。オリジナルは「CAROL」という物語のエンディング・テーマとして位置づけられ、1988年のアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に収録されました。「CAROL」は1988年から1989年にかけて敢行された大規模なライブ・ツアーのコンセプトとなり、ステージでは、物語を音とパフォーマンスで表現しました。物語は完結しましたが、25年の歳月を経て、ステージに呼び戻されます。2013年のライブ「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」では、観客の中に眠る「CAROL」の記憶を掘り起こすために、アルバムの曲を組み合わせた「CAROL SUITE」が披露されました。

記憶のリトレース。その射程に入っていたのは2014年であり、特にその後半です。2014年の10月から12月にかけて行なわれるライブ・ツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」は、「CAROL」の完全版を軸にする、とのことです。今回のツアー「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」は、そのイントロダクションにあたります。したがって、このライブ・ツアーでは次の物語の伏線がいくつか張られているわけですが、「JUST ONE VICTORY」は、物語の最初にある「あらすじ」のようなものでしょうね。かつての物語「CAROL」を象徴する曲であり、その記憶にアクセスして常駐させておくことで、新たな物語を起動するスピードを高めようとしている。

ステージでは、sledgeやVirus TIといったハード・シンセの音が強烈なプレゼンスを放ちます。それゆえか、木根さんのアコースティック・ギター、バンナさんのエレクトリック・ギターがともに引き立ちます。イメージとしてはYESの「Owner of A Lonely Heart」でしょうか。トレヴァー・ホーンによるアレンジは、かつてのYESのイメージをひっくり返すものであり、1980年代を象徴するようなエレクトロニック・サウンドが印象に残りますよね。「JUST ONE VICTORY」で鳴っている音とは当然ながら異なりますが、シンセサイザーとギターがともに屹立しながら共存するという点では、似ているかなと思います。

RETRACE/LOUD/Scene1/COME ON LET'S DANCE/KISS YOU
Scene2/永遠のパスポート/ACCIDENT/金曜日のライオン
Scene3/RAINBOW RAINBOW/BE TOGETHER/CUBE
Scene4/I am/JUST ONE VICTORY/KEYBOARD SOLO/GET WILD
Scene5/SELF CONTROL/Scene6/BEYOND THE TIME/Scene7


2014.10.07
by mura-bito | 2014-10-07 20:54 | Music
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