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キーボード・マガジン No.382 小室哲哉インタビュー

Keyboard magazine No.382

リットーミュージック


キーボード・マガジンの2013年秋号の表紙を小室さんが飾っています。7月に行なわれたライブ「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」のステージでシンセサイザーを弾いている姿が写っています。ぐるりと取り囲むシンセサイザー、白い衣装、斜めに走る緑のライティング。ミュージシャンとして、そしてキーボード・プレーヤーとしてこれ以上ないくらいの素晴らしいカットです。理性で考えても感性でとらえても、行き着く先は同じです。すなわち、かっこいい…!

もちろん、表紙の写真のみならず、巻頭インタビューも掲載されています。ライブの音楽的コンセプトがEDM (Electronic Dance Music) だったこともあり、機材の話はソフト・シンセが中心となっています。EDMはここ数年の世界のダンス・ミュージックにおけるキーワードですが、TM NETWORKでEDMをやるにあたり、小室さんはソフト・シンセの研究・導入にもコストをかけたようです。

Twitterとかを見る限りでは、僕よりお客さんの方が驚いている感じでしたね。意外とTMのファンって音フェチなんだなっていうのが、こんなにライブをやってきたのに、今回初めて分かりました(笑)。もうちょっと全体の世界観が好きなのかなと思ってたんですよ。でも、意外と音も好きなんだなって。当たり前じゃないですか!って言われるかもしれないけど、実感したのは初めてでした。変わったの分かるんだなって。

小室哲哉
小室哲哉インタビュー - キーボード・マガジン No.382

当たり前じゃないですか!

ライブの前に小室さんが「音はEDMだよ」と予告してくれたということもあるんですけどね。スピーカーから流れた音がこれまでのシンセ・サウンドとは明らかに異なっていました。特にウツのボーカルが入らない序盤では、音の隅々まで意識を向けることができ、純然たる音の世界に潜り込むことができました。

もともと、小室さんが弾くシンセサイザーは最新のものもあれば、海外製のアナログ・シンセもあり、総じて太くて分厚いサウンドが特徴的です。ビームのように客席に突き刺さるイメージが浮かびます。TM NETWORKにおけるシンセサイザーは、ボーカルやギターと同じラインに位置している。縁の下の力持ちとして扱われるバンドに比べたら、随分と前に出てきていますね。もちろん、曲によってはシンセサイザーが突出することもあります。

一方、今回のようにEDMアプローチで構築されたサウンドは、舞台に上がっている役者がすべてシンセサイザーと言えます。主演も助演も(そしてステージ・セットまでも)すべてシンセサイザーで構成されている。シンセサイザーがサウンドの一部ではなく、サウンドそのものだったと言えるでしょう。ひとつの独立した世界が作り上げられて、その世界を僕らは体験していたのです。

このライブ・スタイルは、デビューした1984年にトライしながらも確立できなかったものです。その後も追求し続けたシンセサイザー・サウンドは、いくつかの実験(TM NETWORKとしては2004年のDOUBLE-DECADE、2012年のIncubation Period)を経て、2013年に結実したのだろうと思います。いや、2014年がその完成形であり、2013年すら中間地点なのかもしれませんが、少なくとも現段階ではこれぞTM NETWORKと言えるサウンドです。広い会場で全身で浴びるEDMサウンドは格別でしたよ。

ただ、この先というものがきっとあって、そのペッタリとした “データ” のエンターテイメントというか、映像にしてもそうですけど、そういうものの先に、生のものが待っているような気がするんですよね。ミュージカルなんかはそれに近いですけど。さらにいろいろな技術が進化して、生のものが、本当にすごいレベルでやれることになる気がする。

小室哲哉
小室哲哉インタビュー - キーボード・マガジン No.382

さて、インタビューはEDMの話から、これからの音楽のあり方にシフトしていきます。トレンドとしてのEDMの重要性を理解しつつ、その先にあるであろう音楽の姿を見据えます。視線の先に小室さんの音、TM NETWORKの音があると思っていいかもしれません。それを想像するのもまたTM NETWORKファンとしての楽しみです。

昨今のポピュラー音楽は、ただでさえ音楽だけではまともに売り上げることはおろか、耳にしてもらうことすらままなりません。かつて自身を「マーケットの渡り鳥」と表現していましたが、塗りつぶされていない白地図はもうどこにもない。かと言って安易な原点回帰には小室さんは興味がないでしょう。

想像するに、自らの音楽を総合芸術の域に近づけようとしているんじゃないかなと。演劇ともミュージカルとも異なる、ひとつの強固な世界を構築する音楽。楽曲のクオリティは重要だけども、もっと大きな括りでとらえて、総合的に評価されるような音楽をメインにするのではないか。

物語性を強くしたそれこそ「シアトリカル」なライブはいくつも存在するし、物語を打ち出さなくてもサウンドだけで総合芸術として捉えることもできるでしょう。2012年の「GET WILD」で披露したパフォーマンス* を切り取れば、サウンド・インスタレーションとして成立すると僕は思っています。

ポピュラー音楽が自らの足枷を解き放って表現の幅を広げたら、さらに多くの人に多彩な音楽体験を届けることができるんじゃないか。美術館で音楽の展覧会をやってもいいし、「ケルン・コンサート」のようなアーティスティックな音楽を2010年代の技術で表現してもいいですよね。想像を重ねてみると、音楽はもっとおもしろくなる気がしてきました。

* inthecube: TM NETWORK - Incubation Period 2012-04-24

2013.10.21
by mura-bito | 2013-10-21 22:27 | Music
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