inthecube
音楽と物語に関する文章を書いています。
ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
OUR WORLD IS EXPRESSED BY IMPRESSIVE WORDS
Tetsuya Komuro - DEBF3
前作から2年ほどのインターバルを置いて、小室さんのアルバムがリリースされました。タイトルは『DIGITALIAN IS EATING BREAKFAST 3』。とは言え、このタイトルよりは「DEBF3」という通称を本人もプロモーターも使用しています。明らかにソーシャルメディアでBUZZるように仕掛けられたキーワードですよね。Twitterならハッシュタグとして使いやすいし、わずかながらでも何の略かを考えさせる謎かけの役割も持ちます。単純なアナグラムではなく、ひねりが効いていておもしろい。最初はファンでも分からなかったでしょうしね。そこがいい。
「Piece Electro」は今作の音楽的テーマであるEDM (Electronic Dance Music) を体現した一曲。シンセの音を重ねに重ね、時間の経過とともに音が広がり、エネルギーが満ちていきます。2:00あたりからの展開がとてもいいですね。音が上がって、上がって、上がって、一度下がってまた上がっていく。曲によって少しずつ形を変えてはいますが、このパターンは近年の小室さんの傾向と言えそうです。
「Now1 -TK Remix-」は先行配信されたインストのリミックスです。最初に聴いたときは別の曲なんじゃないかと思って、よく聴いてみると原型は残っていました。曲調を大幅に変えているわけではないのに印象が大きく変わる、という感じでしょうか。歌ものであれば歌を軸にしてミックスの違いを楽しみますが、インストだともはや別のサウンドに触れている感じがしますね。
「Golden Highway」に漂う哀愁は小室さんの十八番と言ってもいいでしょう。最初の一音から乾いた哀愁が漂い、スネアの音がその寂しさを助長します。U-zhaanの叩くタブラも、ぴたりとはまるパズルのピースのように、この曲が持つ雰囲気にマッチしています。コーラスは途中からスキャットと言うべきか、言語の形態をとらなくなり、さながら東南アジアやインドの空気を醸します。GABALL「KUTA MOON」、DJ TK「Buddha Bar」以来の、ゴア・トランスっぽい曲ですかね。
「The Generation」や「Human Illumination」などは、再生するたびに少しずつおもしろさがわかってきます。魅力が滲み出てくると言うべきですね。これらに乗っかるラップやコーラスはどうも自分の中で消化しきれないのですが、それでも聴くほどになぜか癖になるのが不思議です。サウンドだけで聴いてみて、どのような気分になるのか試してみたいところです。
サフロン・ル・ボンをボーカルに据えた「Drive」は、さながら1980年代のユーロビートを彷彿とさせます。音の印象と言うよりは、声の感じですね。サフロンの声や歌い方がカイリー・ミノーグを思い出させたのです。とがったところがなくて柔らかく、芯があってまっすぐに届きます。最近、こういうストレートな歌い方をするシンガーがいないかもしれません。ちなみにDuran Duranのボーカリストであるサイモン・ル・ボンの娘です。
Tetsuya Komuro - DEBF3 (Sampler)
YouTubeとニコ動では、アルバム収録曲をつないだMIX音源が公開されています。Samplerと言うそうで、この言葉はSoundCloudでも見かけますね。アルバムの輪郭を見せるプロモーション用の音源。そういえばiTunes Storeでは90秒ずつ試聴でき、連続してアルバム全体を試聴することもできます。それならばいっそのこと、まとめてYouTubeやニコ動にアップロードすると、再生数から効果測定がしやすい。
そして、YouTubeやニコ動で聴くクラスタに向けて音をぶつけてみる、という実験も含んでいるのでしょう。再生数を見る限り、ニコ動はあまり伸びておらず、YouTubeの方が多く再生されています。どちらもBUZZっているとは言えません。もはやCDやダウンロード音源だけでなく、動画サイトで聴けば充分というリスニング・スタイルも成立しているので、そこをどうやって音楽マーケットに接近させるかが今後は問われそうです。
YouTubeで大きなBUZZを得れば、それはただのBUZZにあらず。最近では、PSYの話は有名ですよね。違法アップロードサイトの側面もありますが、今や世界にリーチする音楽メディアとして重要視されています。特にDEBF3はニック・ウッドがプロデュースして、フィーチャリングで名を連ねるミュージシャンも海外勢が大部分を占めます。音も言葉も、世界中のエレクトロが好きなリスナーやDJに向けて発信しているんだろうなと思います。世界のどこかのクラブでかかっている、かもしれませんね。
inthecube: Tetsuya Komuro - Now1
inthecube: [EN] Tetsuya Komuro - DEBF3 (in English)
2013.03.13
by mura-bito
| 2013-03-13 21:14
| Music
fujiokashinya (mura-bito)
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