inthecube
音楽と物語に関する文章を書いています。
ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
OUR WORLD IS EXPRESSED BY IMPRESSIVE WORDS
TM NETWORK ORIGINAL SINGLE BACK TRACKS 1984-1999
TM NETWORKのシングルのバック・トラックを集めたコンピレーション盤がリリースされました。ソニー時代にリリースされたシングルのA面曲とB面曲のカラオケまたはインストゥルメンタルが収録されています。「カラオケ」は、リード・ボーカルのみがミュートされている音源で、コーラスは入っています。「インストゥルメンタル」は純然たる楽器だけの音源。カップリングでリリースされているものも含まれていますが、ほとんどが初出しの音源ですね。
何度も何度も聴いてすべてを知っているつもりでいたのですが、こうしてリード・ボーカルがない状態で聴くとまた新たな発見がありました。これまで意識しなかった音やメロディ、そしてコーラス・ラインに出合えたことは本当に嬉しい。そして、歌と切り分けることで、小室さんが構築した音のレイヤーや音の流れを存分に楽しむことができます。ギターの背後で鳴るベース、派手なシンセのフレーズを支えるように鳴っているホーン、ボーカルの後ろでリズムを刻むギター…次々と形を変えて披露される音の饗宴です。
「RHYTHM RED BEAT BLACK」のループするテーマ(サビのメロディ)と、それと同期しながら鳴り響くリズムがこの上なく好きです。コーラスは残っていますが、色気のあるテーマをダイレクトに聴けるのが本気で嬉しい。この曲は、ダンス・ミュージックの色を押し出すライブでよく演奏されますが、その度に音の印象が変わっています。僕が唯一リアルタイムで体験できたのは2004年の横浜アリーナですが、キックとベースが攻め立ててくるあの音の塊に身も心も熱くなったのを覚えています。
冬の名曲である「STILL LOVE HER」や、嵐のようなBPMの「TIME TO COUNT DOWN」は、カラオケと表記されていますが、コーラスが入っていないのでインストと言ってもいいでしょう。「一途な恋」や「GET WILD DECADE RUN」なども含めて、小室さんのサウンドメイキングが存分に楽しめます。TM NETWORKでは縁の下の力持ちであるベースやパーカッションの音にも注目です。「STILL LOVE HER」はフェイド・アウトせずに、ライブのように最後の音まで収録されています。これはかなり嬉しいことですよ。
これまでは僕の中であまり重要なポジションを占めていなかった曲の印象が、このバック・トラック集でがらりと変わりました。例えば、「GIRL」や「COME BACK TO ASIA」。確かに派手ではないけれど、ボーカルの裏で緻密に音が組み立てられていたんですね。ボーカルに合わせて鳴っていたシンセのフレーズを単体で聴いて、「声をより前に届けるための工夫?」、「ボーカルとシンクロすることで声もトラックも魅力を倍増させる計算?」なんてことを思いました。
他にもまだ印象が変わった曲、新しい発見を楽しめた曲はあります。あり過ぎます。僕はTM NETWORKを聴き始めてから20年ほどなのですが、まだ驚く余地があったことに驚きます。新曲「I am」でも存分に楽しませてもらっていますが、小室さんの本質は30年近く変わっていない!と強く思いました。小室さんは、音の職人かつエンターティナー。それは変わりません。
2012.05.27
by mura-bito
| 2012-05-27 09:36
| Music
fujiokashinya (mura-bito)
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