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音楽と物語に関する文章を書いています。
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おおきなかぶ、むずかしいアボカド
村上春樹が『anan』に連載していた文章をまとめた『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』が刊行されました。前作『村上ラヂオ』が出版されたのは10年前とのことで、学生の頃に読んでいてなんだか退屈だなぁなんて思っていた記憶があります。ただ、それから5年か6年経って、仕事をするようになって読み返してみるとおもしろく読めたんですよね。ひとつひとつの文章から漂うファニーな感じ、時として垣間見えるアイロニー、瞬間的に漂う静謐さ。

わくわく、そして嬉々として『おおきなかぶ~』を買い、待ち切れずに自由が丘の通りを歩きながら読み始めました。エルサレム・スピーチやバルセロナ・スピーチに通じる話もありましたが、印象的だったのは自らの書く文章をおにぎりに譬えたところですね。誰かを批判したり揶揄するための比喩ではなく、物事の素晴らしさを優しく伝えるための比喩。僕が彼のエッセイを好む一因はここにあるのです。

おにぎりで言えば、お米を選んで注意深く炊きあげ、適当な力をこめて簡潔にぎゅっと握る。そういう風に作られたおにぎりは、誰が食べてもおいしいですよね。文章も同じで、それがしっかり「握られ」てさえいれば、性差や年齢差を越えて、そこにある気持ちはわりにすんなり伝わっていくものではないかと、まあ楽観的に考えています。間違っていたら申し訳ないけど。

『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』より引用

とか何とか言いつつも、彼の文章に漂うファニーさも捨てがたい。何気なく選ばれて組み合わされた言葉なのかもしれないけれど、じんわりと心を満たしてくれるんですね。別にそんなに値段の張るものじゃないけれど、思わずああおいしいと言葉にして目の前の人に伝えたくなる料理と言いますか。

昔はあのあたりもずいぶんのんびりして、人通りも多くなく、猫が気持ちよく昼寝できるような環境が残っていた。僕が隣でうなぎを食べていても、猫はぜんぜん気にせずにぐうぐう寝ていた。きっとうなぎの匂いなんて嗅ぎ飽きていたのだろう。

『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』より引用

2011.07.09
by mura-bito | 2011-07-09 21:17 | Book
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