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ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
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タグ:Tetsuya Komuro ( 128 ) タグの人気記事
[PART2] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:変わり続けることでタフになった「GET WILD」
『GET WILD SONG MAFIA』(EDMを追求した2010年代モデル・チェンジの軌跡30年目の創造的進化と現在進行形リミックス)は、30年間に披露されたさまざまな「GET WILD」を集めたアルバムです。こうしたアルバムが編集できるほどに、バージョンの異なる「GET WILD」が数多く蓄積されてきました。リミックスやライブで、その都度新しい音が重ねられたり、新しいイントロやアウトロが加えられたり、アレンジの刷新が繰り返されてきました。

その変化は、オリジナルをリリースして間もなく始まりました。現在、その姿を確認できる最古のライブ・アレンジは、1987年6月の日本武道館公演「FANKS CRY-MAX」です。イントロが長くなり、ウツのボーカルをサンプリングして鳴らします。ちなみに、このイントロでドラムを叩いた山田わたるさんによれば、Flower Travellin’ Bandの「Satori」をモチーフにしたとのことです。
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イントロの延伸やサンプリング・ボイスの追加といった手法は、ライブにおける「GET WILD」の基本形となり、その後、ライブによってはさらなる長尺のイントロや、別の曲のようにも思えるフレーズが重ねられたりしました。

TM NETWORKのライブでは、多くの曲がレコードやCDに収録されたものとはアレンジを変更されて演奏されます。アレンジの方向性は、そのときに小室さんが傾倒するジャンルに寄ったり、新作やライブの音楽的テーマに沿ったりします。TM NETWORKのライブは「音楽的に何が起こるか分からない」エンタテインメントであり、それを最も色濃く反映するのが「GET WILD」なのです。「GET WILD」がたどった30年には、変わり続けたTM NETWORKそのものを重ねることができます。

こうなるとは想像していなかったですけど、思惑やテーマに耐えてくれて、幾らいじっても壊れない曲になったということでしょうね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

ユーロビート、ハード・ロック、テクノ、トランス、EDMといったジャンルの要素が「GET WILD」に移植されてきました。具体的なジャンルに分類できないアレンジもあれば、underworldやAVICIIといった具体的なモチーフを活用することもありました。苦肉の策としての変節ではなく、明確に意図を持って「変わり続けた」ことがポイントです。

「GET WILD」の変化は単発の企画で終わることなく、継続的に行なわれました。いつの間にか変わることが宿命となり、さまざまなリミックスやライブ・アレンジに対応できる曲になりました。変わり続けることで「GET WILD」はタフになったのです。

よく小室君と曲を作ったときに、“サビのこの1小節でこの曲勝ってるよね” と言ったりするの。そこがあるから全体が持つみたいな。そういった意味で「Get Wild」はイントロなのかなと。イントロから先はどうでもいいわけじゃないんだけど、あのイントロがあるから、どんなにグチャグチャになっても、何をやってもみんなグッとくるんじゃないのかな。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

大小さまざまな変化を重ねた「GET WILD」ですが、最も重要なポイントとして、木根さんはイントロを強調します。ここで言及されているイントロとは、オリジナルから存在し続けるイントロのメロディですね。また、「どんなにグチャグチャになっても」とは、木根さんらしい言い方ですが、小室さんが試みるアレンジの刷新やサンプリング・ボイスの連打のことでしょう。

いわゆる ♪ミ・レ・ド♪ から始まるメロディは、サウンドが大幅にアレンジされる中でも継承されました。長大なイントロが続いた後に、エア・ポケットのようにわずかな空白を挟み、このメロディが鳴ることで会場の熱気がぐんと上がるシーンを何度も見ました。ファンの記憶どころか、身体にまで刻み込まれたメロディです。

「GET WILD」は音や構成で変わり続けてきたからこそ、対照的に、オリジナルのイメージを強く残すものの価値が浮かび上がります。それは木根さんが言うところの「あのイントロ」ですが、さらにボーカルも挙げられると思います。PART3では、変化し続けてきた音の中で、ひときわ輝くウツの歌に焦点を当ててみましょう。

2017.05.21
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by mura-bito | 2017-05-21 08:13 | Music | Comments(0)
[PART1] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:TM NETWORKが拡散するきっかけを作った「GET WILD」
TM NETWORKのシングル「GET WILD ’89」のジャケット写真が、4月に刊行されたSound & Recording Magazine誌の表紙を飾りました。巻頭特集では、4月初旬にリリースされたコンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』が取り上げられています。1987年にリリースされたオリジナルを当時のエンジニアや参加ミュージシャンへの取材で解析したり、ライブで演奏したサポート・ミュージシャンや影響を受けたさまざまな世代のアーティストから集めた言葉を紹介したりしています。

TM NETWORKのインタビューも掲載されています。記事では、三人がそれぞれの記憶を巻き戻しながらそれぞれの視点で「GET WILD」の誕生や発展を語ります。彼らの印象的な言葉を引用しながら、「GET WILD」という角度からTM NETWORKというトライアングルに光を当ててみましょう。
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TM NETWORKのシングルのうち、売上枚数のトップは「GET WILD」ではなく「LOVE TRAIN」(1991年)であり、作品としてのインパクトや独自性はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の方が大きいかなとは思います。けれども、広がりという点では「GET WILD」に一日の長がありますよね。アニメ「シティーハンター」によって、多くの人の知るところとなり、今でも「そういえば…」と思い出せるくらいに記憶に残っている人は多いかと思います。拡散のトリガー、それが「GET WILD」の役割です。

TM NETWORKのターニング・ポイントは1987年であり、俗に言う「売れた」年です。2月にオリジナル・アルバム『Self Control』をリリースし、4月にシングル「GET WILD」をリリースしました。8月に「GET WILD」を含むベスト・アルバム『Gift for Fanks』、11月に次のオリジナル・アルバム『humansystem』をリリースしました。翌1988年には大規模なタイアップ(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と『ぼくらの七日間戦争』)が続き、完成したばかりの東京ドームでの公演を経て、代表作『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』がリリースされました。TM NETWORKが売れた要因はいろいろあるのでしょうが、少なくとも「GET WILD」が強力な追い風になったことに異論はないかと思います。

『CAROL』はいろんな意味で革新的なアルバムでしたが、「Get Wild」がそこへ行くための推進力になったのは確かですしね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」の前後でアルバムの制作費、全国ツアーやタイアップの規模といった点が変化しているわけですが、その延長線上に、1989年の『DRESS』があります。ロンドンやニューヨークの音楽家やプロデューサーに依頼して、ボーカル以外の音を大胆に変えた曲を集めたリミックス・アルバムです。Sound & Recording Magazine誌には、海外のプロデューサーたちとの交渉にあたった当時のスタッフ、大竹健さんの話も掲載されています。

アルバムの中でも、当時の世界を席巻していたユーロビートに生まれ変わった「GET WILD ’89」は、オリジナルの「GET WILD」と並んでTM NETWORKを代表する曲となり、多くのファンの記憶に残っています。リアルタイムではありませんが、僕がTM NETWORKに初めて触れた曲のひとつでもあります。小室さんの思い入れも大きかったようで、それは『GET WILD SONG MAFIA』のライナーノートで語られています。

ずっと廃れずにTMのブランドを持ち続けさせてもらえるのは「Get Wild」のおかげなのかなって思いますね。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」はリミックスやライブで何度も新しい姿を披露しました。「GET WILD」は単なる出世作ではありません。世の中にはオリジナルのまま歌い継がれる代表曲の方が多いのかもしれませんが、「GET WILD」は変わり続けることを使命にしていたのではないかと思えるくらい、大胆に変化していきました。新しいシンセサイザーの音や新しいフレーズ、常にコンテンポラリーな要素を組み込まれてその時代の空気をまとう。PART2では「変わり続ける」という点にフォーカスしてみます。

2017.05.15
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by mura-bito | 2017-05-15 21:37 | Music | Comments(0)
TM NETWORK『GET WILD SONG MAFIA』:30年目の創造的進化と現在進行形リミックス
TM NETWORKの活動は2015年のコンサート「TM NETWORK 30th FINAL」で区切られ、同じく「GET WILD」の進化も一度完結しました。しかし、『GET WILD SONG MAFIA』がリリースされたことで、新たな音、新たな「GET WILD」を聴く機会に恵まれます。小室さんは本作のために最新リミックス「GET WILD 2017 TK REMIX」を制作し、アルバムに先行して配信しました。イントロから響くベースの音はとても太く、それだけで心も身体も熱くなりますし、サビではボーカルの裏で鳴っているフレーズは新しい曲にも思えるインパクトを感じます。

2015年以降も、小室さんは自分のライブ・パフォーマンスで「GET WILD」をアップデートし続けていました。その証が「GET WILD 2016 TK LIVE @YOKOHAMA ARENA MIX」という、エイベックスのECサイト「mu-mo」でアルバムを購入すると聴けるバージョンです。2016年のパフォーマンスで使った音源、あるいはそれを調整したものかと思います。このバージョンは、2015年の「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」を下敷きにしながら、随所で印象を変えています。特徴的だったアコースティック・ギターのカッティングを踏襲しつつも、2015ミックスがアグレッシヴな雰囲気だったのに対し、2016のサウンドでは抑制された印象に変わって味わい深くなり、渋さすら感じます。

終盤は誰も聴いたことがない展開を見せます。お馴染みの間奏が終わろうとした瞬間、サビが繰り返される…と思いきや、リズムががらりと変わり、哀愁漂うピアノの音がサビのメロディを切り取ってリフレインします。抽象的に表現するなら「余白の多い」アレンジ。最後のサビはライブでも一番盛り上がる部分ですが、それを逆手に取ったかのようなこのアレンジはチルアウトと言ってよいでしょう。興奮に興奮を積み上げてきた、メロディやサウンドを噛み締めてエンディングを迎え、ゆっくりとクールダウンする。そしてメインDJがステージを降りる姿が目に浮かびます。
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そして「GET WILD」の進化は2017年になっても続く…というよりむしろ加速します。『GET WILD SONG MAFIA』には「GET WILD 2017 TK REMIX」の他に、石野卓球によるリミックス「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Acid Remix-」やSICK INDIVIDUALSのダブステップ・ミックス「GET WILD -SICK INDIVIDUALS Remix」も収録されています。三者三様のアプローチで、すなわち三者三様のエレクトロで2017年の「GET WILD」を聴くことができます。

石野卓球は説明するまでもなく電気グルーヴのトラック・メーカーですが、あるいはDJとしての活動の方が有名でしょうか。彼が手がけたTakkyu Ishino Latino Acid Remixでは、サビのボーカルがひたすらリフレインします。リズムは軽めの雰囲気を醸し、ホーンの音も聴くことができます。僕はあまりアシッド系の音は馴染みがないのですが、こういうものなのでしょうか。EDM的な起伏のある展開ではなく、中毒性の高いループに巻き込んでいく感じですね。聴くほどに頭の中が音で満たされ、いつの間にかぐるぐる回る音の中で自分が翻弄されています。

SICK INDIVIDUALSはオランダ出身のEDMデュオです。ダブステップ・サウンドで押していく、Hardwellの系譜とされています。エイベックスはEDMアーティストを引っ張ってくる日本における先駆者のようなところがありますが、今回のコラボレーションにも一役買ったのでしょうか。SICK INDIVIDUALS Remixによって「GET WILD」はダブステップらしいダブステップに再構成されました。そのような変化はまったく予想できませんでした。

同じオランダ出身のNicky RomeroやAfrojackは、小室さんのスタジオに遊びに来たことがあるので、その縁でリミックスをしてくれたら嬉しいですね。そうすれば “Get Wild Remixes” をacross the globeで配信できるかもしれません。かつては「GET WILD '89」でヨーロッパのサウンドと結びつきましたが(PWLのピート・ハモンドによるユーロビート・スタイル)、2010年代はEDMという文脈で、改めて世界とつながってほしいものです。

SICK INDIVIDUALS Remixでは、♪ミ・レ・ドから始まるサビのメロディがソフト・シンセの特徴的な音で新しい姿に変貌しています。このリミックスを聴くと、「GET WILD」は世界的な音楽的トレンドに放り込んでも成立する可能性が充分にあると思えてきます。変わり続けてきた曲だからこそ、これからも、いくらでも変わっていいんですよね。僕は2015年の区切りをやむなしとしていましたが、今回の企画によって、むしろ「GET WILD」の進化は続けるべきだと思うようになりました。こうなったら「GET WILD」が、いつまで、どこまで変化するのか見届けてやろうと思います。
2017.04.21

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by mura-bito | 2017-04-21 21:01 | Music | Comments(0)
TM NETWORK『GET WILD SONG MAFIA』:EDMを追求した2010年代モデル・チェンジの軌跡
TM NETWORKの「GET WILD」は名実ともにTM NETWORKの代表曲と言えます。オリジナルは30年前にリリースされました。アニメ『シティハンター』のエンディング・テーマに起用されたこともあり、最も高い知名度を誇っています。そのためか、リリース以降のほとんど(すべて?)のライブで演奏されました。TM NETWORKは、いくつもの曲をライブの度に新しいアレンジにして披露してきましたが、中でも「GET WILD」の変わりようには驚くばかりです。世界の音楽的傾向を読み、その要素を移植するということを繰り返してきたのが「GET WILD」です。

バンドではなく曲の30周年という珍しい切り口から、コンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』が企画され、4月5日にリリースされました。オリジナルはもちろんのこと、リミックスやライブ・テイク、カバー、計36曲を集めた4枚組のアルバムです。「GET WILDだけでTM NETWORKの変化の歴史を追う」というのは過言でしょうか。答えは「ノー」です。もちろんTM NETWORKの魅力を知るためには不足していますが、「TM NETWORKの音楽的スタイルの変遷」を振り返るのに「GET WILD」ほど相応しい曲はない、と断言できます。
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さまざまなスタイルに変化した「GET WILD」ですが、大きくはロックとエレクトロに分類されます。ライブではどうしてもバンド・スタイルになるため自然とロックに寄るものですが、特にロック成分が高めのパフォーマンスを披露しているのが1990年の「TMN RHYTHM RED TOUR」、2004年の「DOUBLE-DECADE TOUR FINAL "NETWORK"」でしょう。前者でのサポートは葛城哲哉、阿部薫、浅倉大介であり、後者はFENCE OF DEFENSE(西村麻聡、北島健二、山田わたる)です。

一方、エレクトロという括りで見ると、もともとオリジナルのアレンジは、ヨーロッパ発の世界的ダンス・ミュージックであるユーロビートを意識していました。とは言え、ダンス・ミュージックに大きく寄せることはできず、本来の構想が形になったのは2年後のリミックス「GET WILD ’89」です。『GET WILD SONG MAFIA』に掲載されたインタビューでは、小室さんは「『GET WILD』に人格があるとするなら正しい身なりになった。髪型から何からカチャってハマったのは『GET WILD ’89』だったんですよ」と語っています。ダンス・ミュージックとしての「GET WILD」が血肉を備えたのは1989年なのです。


GET WILD 2012-2015

00:00~ TM NETWORK CONCERT -Incubation Period- (2012)
05:19~ TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation- (2013)
11:45~ TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end (2014)
19:18~ TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA (2015)
26:44~ TM NETWORK 30th FINAL (2015)

その後は、2001年の「TM NETWORK LIVE TOUR "Major Turn-Round"」や2004年の「TM NETWORK DOUBLE-DECADE "NETWORK"」で、トランスの要素を移植する試みが行なわれました。そして再びダンス・ミュージックに大きく舵を切ったのが2010年代。EDMが世界の音楽シーンのメイン・ストリームに躍り出ると、再指導したTM NETWORKの活動で、小室さんは積極的に「GET WILD」をエレクトロに染めていきました。2013年の「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」でEDMスタイルにモデル・チェンジすると、2015年の「TM NETWORK 30th FINAL」まで改造を繰り返しました。

2013~2015年のモデル・チェンジの要素は、2015年の「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」のライブ・テイクと「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」に凝縮されており、どちらも『GET WILD SONG MAFIA』にも収録されています。「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」は2014年から加わった新たなイントロ、歌を含むオリジナルの要素を残した部分、2015年に追加された新たなアウトロで構成されており、「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」ではその前に小室さんのパフォーマンスが繰り広げられています。

小室さんはハードディスクの音を鳴らしながら、ソフト・シンセを中心に自分をぐるりと取り囲むシンセサイザーを駆使して音を重ねたりミュートしたりしながら、予測不能のサウンド・インスタレーションを織り上げます。パフォーマンスではワブル・ベースなどダブステップ系の音も加えて、新しいイントロやアウトロではEDMらしいキラー・フレーズのリフレインで攻めます。このときの音の組み合わせこそが最もEDM的であり、2013年から始まったモデル・チェンジの集大成だったと思います。
2017.04.16

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by mura-bito | 2017-04-16 17:08 | Music | Comments(0)
TETSUYA KOMURO – GET WILD 2017 TK REMIX
来る4月に、TM NETWORKの代表曲「GET WILD」のリミックスやライブ・バージョン、他のアーティストによるカバー曲などを集めたコンピレーション・アルバムがリリースされます。アルバムのリリースに先駆けて、小室さん自身が新たに制作した「GET WILD 2017 TK REMIX」の配信が始まりました。新たなバージョンが制作されたのは、2015年3月の「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」以来ですね。このときは2013年から始まった「GET WILD」の改造の集大成でしたが、それに匹敵する変化を「GET WILD 2017 TK REMIX」に感じます。

第一印象で大きな衝撃を受けたのは、キックとハイハットが強調された四つ打ちのリズムです。これでもかというくらいに強烈に鳴るキックは速さとタフさを兼ね備えて、土台としてしっかり支えつつさらに曲をぐいぐいと引っ張ります。そしてそこにシンセサイザーの音が多彩に重なるのですが、特にJD-800プリセットNo. 53(1990年代に多用された、小室さんの代名詞とも言える音)を思わせる、硬質で鋭角的なピアノ音が存在感を放ちます。
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曲の雰囲気は「イントロから1番のサビ前」と「1番のサビ以降」で変わります。新しく加わったイントロはトランスに傾倒していた時代の雰囲気があり、♪It's your pain or...♪ と歌うBメロはイントロで使われている音を含みながら、大胆な解体と再構築が施されて重厚感が漂います。サビ以降はEDM的に、祝祭的に盛り上がり、勢いよく2番に入りアクセルをぐっと踏み込んで駆け抜けてます。そして再びイントロから聴きたくなる、実にトキシックなサウンドです。

サビはお馴染みの ♪Get wild and tough♪ なので盛り上がることは必至なのですが、2017版はそれだけに留まりません。ボーカルとコーラスの裏でEDM的なキラー・フレーズを奏でるシンセサイザーが鳴っており、このバック・トラックはほとんど別の曲です。歌をミュートしたINSTRUMENTALを聴くと、サウンドの改造具合がよく分かります。もちろんオリジナルを感じさせる要素も微かにありますが、それ以上に新たな音のインパクトが強い。エキサイト必至のエレクトロを聴かせてくれます。

2017.03.08
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by mura-bito | 2017-03-08 22:10 | Music | Comments(0)
ソフト・シンセの中に冨田勲の偉大さを見る:朝日新聞 小室哲哉インタビュー
先日、音楽家の冨田勲さんが亡くなったのは、多くの人が知るところです。訃報から10日ほど経って、朝日新聞に小室さんのインタビューが掲載されました。冨田さんの音、音楽、会ったときの会話について語っています。かなり多くの言葉が連なる、実に濃い内容のインタビューなので、ぜひ全文を読んでみてください。

自分の頭のなかの音楽を、どんな手段で表現するかということ。それはどこまでも自由なんだよ、と教えてくださったと思います。

小室哲哉
朝日新聞 – 小室哲哉さん「自分の音追究した音楽家」冨田勲さん悼む

小室さんの言葉がとてもピュアに、ストレートに響きます。これは『キーボード・マガジン』の対談 [*1] でも感じたのですが、冨田さんについて話すとき、素直な言葉がこぼれるんですよね。小室さんは冨田さんを「先生」と呼んでいますが、二人はまさに先生と生徒の関係を思わせます。あまり多くを教えない、けれども尊敬される先生。生徒は、先生を驚かせたくて、懸命にプレゼンテーションをする。「先輩から音楽的な影響は受けなかった」とは1987年頃の小室さんの発言ですが、ここに来て、冨田さんの存在の大きさに気づき、再び学ぶ姿勢を見せます。

シンセサイザーの音色に、「トミタなんとか」っていうのがあるんです。ヨーロッパのソフトのなかに。トミタという人がつくった音だよ、というリスペクトなんですが、そのなかに「トミタフルート」みたいな「トミタボイス」みたいな、とても繊細な音がある。口笛のような、声のような、鼻歌のような、あの音色こそが、実は冨田さんの「代表作」なんじゃないかなと僕は思ってる。

小室哲哉
朝日新聞 – 小室哲哉さん「自分の音追究した音楽家」冨田勲さん悼む

小室さんの音楽制作環境の大きなウェイトを占めるのがソフト・シンセです。ソフト・シンセは、ネットワークにつないで、定期的にアップデートされる音源を手に入れて使います。その中に見た音の名称に、冨田さんの偉大さを感じているようです。アイコンとして、音を扱う人々の中に残ることは、音楽が残り続けるよりも大きなインパクトがある出来事なのかもしれません。記憶に残る音楽というのは、誰もが口ずさめるメロディ、あるいは印象的なリフやソロが浮かびます。鮮烈なイメージを残す音は、なかなかない気がします。冨田さんの音がこうして記憶に残るのは、ツールがシンセサイザーだったからなのでしょう。小室さんだって、Roland社の「JD-800のプリセット53番」という音を多くの人の記憶に残したわけですしね。

僕自身は一時代、ある種のイノベーターだったわけですけど、それをまだきちんと締めくくれていないな、という思いがまだあるんです。

小室哲哉
朝日新聞 – 小室哲哉さん「自分の音追究した音楽家」冨田勲さん悼む

どのような取材であっても、小室さんは先のことまで話したがりますよね。こうして過去のことを話す機会であっても、いくつかの点は未来につながります。本人が言うところの「大衆芸術家」として、多くの人の耳にとまる音楽をつくりたい、そのモチベーションは今もなお衰えません。彼がターゲットにしているのは若いリスナーの感性であり、その琴線に響く音、メロディ、言葉を探しています。それを僕が楽しみにするのも変な感じですが、「ミュージシャンに定年はない」と言い放つ小室さんの飽くなきチャレンジを追いかけ続けたいと思います。

[*1] inthecube: キーボード・マガジン No.385 シンセサイザー特別対談 冨田勲×小室哲哉

2016.05.18
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by mura-bito | 2016-05-18 22:14 | Music | Comments(0)
INNOVATION WORLD FESTA 2016
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Photo by @TK_staff

僕の出身校である筑波大学で小室さんがパフォーマンスを披露すると聞いたので、つくばエクスプレスに乗り、久しぶりにつくばの地を踏みました。6年前に友人に誘われて市内を自転車で回るイベントに参加したことがありますが、本格的に大学の中を歩いたのは、修士号を取得してから初めてなので、ちょうど10年ぶりです。あちこち懐かしの場所を巡り、思い出話に花を咲かせつつ、当初の目的であるイベント「INNOVATION WORLD FESTA 2016」に参加します。

テーマは「テクノロジーと音楽の祭典」。テクノロジーで新しい価値を生み出そうとするベンチャー企業がプレゼンテーションしたり、テクノロジーとコラボレーションする音楽を紹介したりしたイベントです。つくばは「研究学園都市」と銘打つ土地であり、新たな産業につながる研究が盛んに行なわれています。筑波大学は総合大学なので、基礎研究も応用研究も、そしてベンチャービジネスもごった煮で同居する場所です。

筑波大学で行なわれていた「起業家養成講座」なるものをきっかけにこのイベントが生まれたそうです。さまざまな分野で活躍する人々を集めたこのイベントは、さまざまな研究分野が混在する大学・都市に相応しい気がします。(いい意味で)節操の無さがイベントにも表われていたと思います。みんながみんな「新しいこと」に躍起になる必要もないとは思いますが、「新しいこと」が好きな人の足を引っ張る必要も、もちろんないわけですね。それぞれにやりたいことをやればいい。

イベントはベンチャー企業の展示やトーク・セッション、そしてミュージシャンのライブで構成されていました。藍井エイルのパフォーマンスを初めて観ましたが、僕が知っているバンドで言うなら、Paramoreのような感じがしました。ハイ・トーンのボーカルでパワフルに駆け抜ける。「ラピスラズリ」(昨年放送されたアニメ『アルスラーン戦記』のエンディング・テーマ)が良かったですね。

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Photo by @TK_staff

「INNOVATION WORLD FESTA 2016」の最後を飾ったのが、小室さんのDJ/シンセサイザー・パフォーマンスです。「テクノロジーと音楽」という言葉がこれだけ似合う人もそうはいないのではないでしょうか。シンセサイザーという存在は、生まれた瞬間からテクノロジーの申し子ですよね。そしてソフト・シンセの隆盛もまたエポック・メイキングな出来事でしたし、今や街を歩いてもテレビを点けてもソフト・シンセの音で作られた音楽が流れます。積極的にテクノロジーを肯定してきた小室さんが、そのテクノロジーを駆使して、現在進行形の音を披露します。

パフォーマンスはglobeの「MUSIC TAKES ME HIGHER」から始まり、同じく「Love again」や「Feel Like dance」、trfの「EZ DO DANCE」が会場を沸かせます。ソロの曲からは、VERBAL(このイベントのプロデューサーのひとり)のラップをフィーチャーした「YEARS LATER」、最新リリースのインストゥルメンタル「a new lease on life」* を披露しました。そして、TM NETWORKの「GET WILD」は、「白A」という映像とダンス・パフォーマンスをミックスさせた集団とのコラボレーションで届けられました。

重くて分厚いキックの音を強調するサウンドです。曲によって、ずしりと響いたり鋭く突き刺さったりと、キックひとつをとっても印象はカラフルに変わりますが、いずれにしても身体にダイレクトに届いて熱くさせます。これだけ激しい嵐のようなリズムを浴びたのは、もう一年以上も前ですね。忘れかけていた感覚が戻ってきます。こういう重厚な音を体験したいから、会場に足を運ぶのだと、改めて思います。

リリースされたばかりということもあり、とりわけ「a new lease on life」が印象に残りましたね。サッカーをテーマにして制作された曲ですが、よく知られているように筑波大学もスポーツが盛んなので、期せずしてフィットした選曲かなと思います。ヘビーなリズムと刺激的なシンセサイザーの音が、力強くプレーする選手の姿に重なります。それはまた、テーマの一部であるテクノロジーにも通じます。現在進行形のシンセサイザー・ミュージックは、テクノロジーで新たな世界を生み出そうとしている人々へのエールとも言えますね。シンセサイザーから生まれる新しい音楽に、期待は尽きません。

* inthecube: Tetsuya Komuro – a new lease on life

2016.05.15
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by mura-bito | 2016-05-15 22:53 | Music | Comments(0)
Tetsuya Komuro – a new lease on life
現在進行形のシンセサイザー・ミュージック。小室さんが書き下ろした「a new lease on life」の配信がiTunes StoreやApple Musicで始まりました。ストリングス系の音を控えめにしているためか、音の輪郭がはっきりと浮かび上がります。それぞれの音に芯があって、とりわけリズムが硬質で鋭角的な感じがしますね。ハイハットとスネアが前に出ている印象を受けました。

歓声の中で鳴るホイッスルが合図となり、曲が始まります。シンセサイザーで構築された音が重なり、拡散し、そして再び集合します。メロディを奏でるシンセサイザーは、サッカー選手の叫びを表現しているのでしょうか、ピッチを駆ける選手を鼓舞するように響きます。スピーディーに動くボールや選手のように、リズムが駆け巡ります。芸術的な弧を描くパスのように、鋭くゴールネットに突き刺さるシュートのように、音がイメージを呼び、イメージが音を盛り上げます。
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「a new lease on life」は「J-SPORTS」の今季のプレミアリーグ中継のエンディング・テーマ* です。プレミアリーグと言えば、やはりレスターの歴史的な優勝ということで、そうしたエポック・メイキングの瞬間に重なる小室さんは、そういう星のもとに生まれたというべきか、何というか…「持って」いますよね。もちろん曲の評価とは別の次元ですが、そういう巡り合わせには縁のある人です。奇跡としか思えないタイミングでゴール前にいて、放り込まれたボールを蹴って得点するストライカーのような嗅覚と言うべきか。

シンセサイザーを使った音楽は形を変えて変遷し、メイン・ストリームに躍り出たり、サブに回ったりとポジションを変えます。この数年はソフト・シンセの音が隆盛を極め、EDMが音楽マーケットを賑わせました。シンセサイザーの音は、これからどのようなポジションで、どのような役割を担うのでしょうか。サッカーのように急激に変わる展開が予想されます。どのような音を、どのような音楽を聴けるのでしょうか? 音楽愛好家としての楽しみは尽きることがありません。

* J-SPORTS – 15/16 イングランド プレミアリーグ中継のエンディングテーマは、小室哲哉の「a new lease on life」!

2016.05.11
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by mura-bito | 2016-05-11 21:42 | Music | Comments(0)
AAA – Joy to the love (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)


AAA – Joy to the love

カバー・アルバム『#globe20th SPECIAL COVER BEST』に、AAAも参加しています。カバーしているのは「Joy to the love」。デビュー盤『globe』に収録された、実に陽気な曲です。歌詞は微妙に倦怠感が漂い、メロディのポップさとのミスマッチがおもしろい。深刻な問題ではないけれど、日常の中で引っかかる閉塞感のようなものを感じます。そうした閉塞感を抱えたまま10代、20代を過ごしていく人々を描いたのでしょうか。

こうしてAAAがKEIKOの代わりにglobeを歌うのも、浅からぬ縁のような気がします。というのも、globeのデビュー20周年はKEIKOが歌えない状況で迎えました。『ミュージックポートレイト』(浦沢直樹さんとの対談を中心にしたEテレの番組)によると、KEIKOが入院していたときに小室さんは病院で曲を書かねばならなかったそうです。そのときに生まれたのがAAAの「SAILING」です。小室さんとAAAは、作家とシンガーという関係を越えたつながりを感じずにはいられません。

AAAの魅力のひとつは7人の声が交錯し、混ざり合うところでしょう。「WOW WAR TONIGHT」* をカバーしたときは男性陣の声を中心に構築されましたが、「Joy to the love」では女性陣が大きなウェイトを占めます。表を女性が歌い、男性は裏に回る。女性2人の歌が最も強く印象に残るのは確かですが、裏で歌う男性陣の歌声も心地好いと思いますね。

SKY-HIこと日高光啓のラップが活きる曲です。ラップはAAAの強みでもありますよね。僕は日本語ラップの中では彼のラップが一番好きです。小室さんのソロ・アルバム『Digitalian is eating breakfast 2』でゲスト・ラッパーとして参加した曲「Every」を聴いて、「これはいい」と思いました。彼のラップは、メロディや音を潰すことなくうまく乗る、馴染むのだと思います。「Joy to the love」ではマーク・パンサーのコピーではなく新たにリリックを書いて録音していますが、彼独特の声の重ね方がぴたりとはまり、曲を盛り上げています。

* inthecube: AAA – WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~

2015.01.09
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by mura-bito | 2016-01-09 16:55 | Music | Comments(0)
HYDE – DEPARTURES (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)


HYDE – DEPARTURES

カバー・アルバム『#globe20th SPECIAL COVER BEST』に収録される曲のいくつかがYouTubeにアップされています。そのうち、最も多くのビューを獲得したのが、L'Arc-en-CielのHYDEがカバーした「DEPARTURES」です。アレンジは小室さんが手掛けました。最初はアレンジをすべて行なう予定ではなかったとのことですが、その予定が大きく変わったのは、やはりHYDEの歌声に触発されたからでしょうか。

小室哲哉とHYDE。実に意外な組み合わせですよね。1998年あたりに行なったマーケティング調査で、globeと競合していたのがL'Arc-en-Cielだったことを、どこかのインタビューで小室さんが明かしていました。CDのマーケットが最大規模だった頃の話ですが、いわゆる「小室ファミリー」といわゆる「ビジュアル系」というカテゴリーが市場を作っていた証でしょうか。両者が互いに意識していたかは定かではありませんが、ともに時代のアイコンとして存在していたことは確実に言えます。そんなふたつの音楽的才能がクロスするなんて、1990年代はおろか最近まで想像すらできなかった。カバーという形で実現した両者のコラボレーション、その素晴らしさに嘆息するばかりです。

HYDEの歌声はとても叙情的で、気持ちをえぐるような強さ、アグレッシブな魅力があります。傷つけるという意味ではなく、「持っていかれる」感じですね。歌声ひとつで、唯一無二の世界が生まれる。それを象徴するのが、♪あなたが私を 選んでくれたから♪という部分でしょう。ここの歌い方がとても好きですね。KEIKOが歌っているオリジナルでもこのメロディ、歌詞に心をつかまれたものですが、男性ボーカルで聴くとまた新たな魅力が湧き上がってきます。

2015.12.27
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by mura-bito | 2015-12-27 17:52 | Music | Comments(0)

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