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音楽と物語に関する文章を書いています。
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[PART2] TM NETWORK『EXPO』:夜空に螺旋を描くエレクトロニック・サウンド
ハウス系TMサウンドに焦点を当てたとき、アルバム『EXPO』の中でも重要なポジションを占める曲が「JUST LIKE PARADISE」です。身体を揺らすのに最適なテンポで、心地好いエレクトロニック・サウンドが流れます。その音は「夜の陰に紛れている」とでもいうような、境界線の曖昧な感じがします。クールであり、シニカルな部分も見え隠れする。表には見えない、隠された色気のような魅力がある曲です。

歌詞はすべて英語で書かれており、ループするサウンドに絡ませた言葉のインスタレーションが目の前に広がります。歌とラップとポエトリー・リーディングが入り混じり、言葉を散りばめ、交差させ、重ねます。それは愛の囁きにも聞こえるし、地球を俯瞰したメッセージにも聞こえます。地上で交わす言葉、宇宙から届く言葉。視点はダイナミックに移ろいます。

ライブでは、オリジナルの音をもとにしながら発展させたアレンジが特徴的でした。ライブでのアレンジは、1991年にかけて1992年に行なわれたホール・ツアーと、アリーナクラスの会場で実施したアリーナ・ツアーで、部分的に音が異なっています。ホール・ツアーでは、サビでアクセントとしてループしていた音を前面に押し出し、一方でアリーナ・ツアーでは曲の終盤で小室さんがソロを弾いて、会場を盛り上げました。切なさを呼び起こすメロディを繰り返しながら音の高さを上げていくことで、どんどん高揚していく、強烈なリフレインです。
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ハウス系の曲として忘れてはならないのが「あの夏を忘れない」ですね。起伏の少ない展開で単調とさえいえるのですが、中毒性はかなり高い。キラキラとした光をイメージさせるシンセサイザーの音が淡々とループを続け、ベースやギターの音と絡み合います。ゆるりとしたテンポに包まれて、指先で肌をなでるようなメロディに、情熱的な言葉が重なります。言葉の奔流が止まると、淡々とした音が再び聴き手を抱きすくめる。

音は円を描きながら、イメージの中で螺旋を描きます。それも上昇するのではなく、下降するスパイラル。同じところをぐるぐる回っていたようで、いつの間にか下に下に落ちていた。僕が曲名や歌詞からイメージするのは、太陽の下で過ごした眩しい記憶を真夜中の片隅でぼんやり思い返している人間の姿です。止まった時の中に留まり続けるメランコリックな一夜は、ただの眠れない夜ではなく、何も見えない闇の中を彷徨い歩く時間です。

1993年のリミックス・アルバム『CLASSIX 1』では、大胆に音を削ぎ落とした「あの夏を忘れない」を聴くことができます。リズム・セクションを抜き、シンセサイザーの音も前に出さないリミックスであり、ボーカルの存在感が一層強まっている。分厚い音を重ねていくダンス・ミュージックの概念はひっくり返され、静謐な空気の中でエレクトロニック・サウンドの「粒」を感じさせます。ここまでサウンドをスリムにされると、オリジナルでも使われていた音が異なる響きを持ち、より深みのある哀愁が漂います。

2017.10.11
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by mura-bito | 2017-10-11 21:45 | Music | Comments(0)
[PART1] TM NETWORK『EXPO』:季節の移ろいに溶け込むエレクトロニック・サウンド
秋に聴きたくなるアルバムを挙げるとすれば、TM NETWORKの『EXPO』を選びます。アルバムに収録されているいくつかの曲が、夏が終わり始めてから秋らしくなってグラデーションのように変わっていく空気に溶け込むような気がするからです。それも、太陽が沈んで夜になって空気がさらに冷たくなるあの感じがよく似合う。

『EXPO』はハウス・ミュージックを中心として、ロックやフォーク、ラテン・ミュージックの要素も含む、雑食性の高いアルバムですが、音、メロディ、歌詞が、それぞれに哀愁を漂わせる要素を含んでいます。秋といえば哀愁や切なさを強く感じる季節なので、そうした気持ちを『EXPO』の曲が呼び起こし、間接的に秋を感じるのだろうと思います。もちろん、聴く人によって何をイメージするか、どのような気持ちを呼び起こされるかは異なります。

とはいえ、『EXPO』の曲が哀愁を感じさせるという点は多くの聴き手に共通することなのではないかと思います。そして、それは音に依るところが大きい。アルバムにおける大きな音楽的テーマはハウス・ミュージックです。ループするエレクトロニック・サウンドを使って中毒的な快感を呼び起こす、ダンス・ミュージックの一種ですが、『EXPO』ではTM NETWORKの感性と混ざって独特のサウンドを作り上げました。そんなハウス系TMサウンドで構築された曲を3つ挙げて、三角形をつくってみましょう。
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ひとつ目は「WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-」です。シングルとは異なる音でリミックスされたバージョンです。シングルでは春や初夏のようなキラキラした華やかさを感じますが、このリミックスで感じるのは秋の風が運んでくる濃密な哀愁です。それでも寂しさやメランコリックな雰囲気ではなく、涼しげな空気が漂います。キックやベースの音は色気に満ちていて心地好く、さらに曲をぐいぐい引っ張るパワーがあります。加えて、高く抜けていくスネアの音が重なり、曲の印象を立体的にしています。

キックの響きは、2010年代のEDMとは異なった感じで存在感を示します。EDMでは主役と呼べるほどに存在感を放つことが多く、身体にぶつかってくるようなタフさがあります(TM NETWORKで例示すれば「金曜日のライオン 2014」)。「WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-」のようなハウス・ミュージックでのキックは「身体に浸み込む」感じがありますね。音に反応する快感のセンサーもいろいろあり、EDMにおけるキックとハウスにおけるキックは違ったタイプの刺激を与えるのだと思います。どちらも心地好い。

Ooh, Ah, Ah, Mixという名称もいいですよね。意味深というか、生々しいというか。TMN時代の曲やライブは、わりと色気を感じさせる、あるいはセクシュアルな要素を前に押し出すのが特徴でした。RHYTHM REDツアーの「KISS YOU」や『EXPO』での「CRAZY FOR YOU」の演出は分かりやすくセクシュアルです。『EXPO』を軸にしたツアーでもこのリミックスをもとに「WE LOVE THE EARTH」が披露されましたが、イントロに散りばめられたサンプリング・ボイスの一部で “Ooh, Ah, Ah” という声が繰り返し響きます。…まあ、そういうことです。

2017.10.10
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by mura-bito | 2017-10-10 21:40 | Music | Comments(0)
GET WILD Takkyu Ishino Remixes
2017年、「GET WILD」のリリースから30周年を記念する企画のひとつとして、石野卓球によるリミックスが実現しました。これまでに3種類のバージョンが発表されており、“Takkyu Ishino Latino Acid Remix”、“Takkyu Ishino Latino Remix”、“Takkyu Ishino Full Acid Remix” と名づけられています。
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「石野卓球が『GET WILD』をリミックスする」というテキストを目にしたときは、「何ですと!?」と驚かされたものですが、冷静になってみると期待が大きく膨らみました。すると次は、デビュー前の電気グルーヴがリミックス(?)した「RHYTHM RED BEAT BLACK」を思い浮かべて、不安の塊が脳を支配したものの、やはり冷静に考えればバックトラックは格好良かったので、やはり期待していいはずと思いなおしました。まあ、石野卓球や電気グルーヴの評価は推して知るべしというか、わざわざ言葉を尽くす必要もないのですが。

Latino Acid Remix

一連のリミックスの中で最初に発表されたのがLatino Acid Remixです。リズムは軽快な雰囲気があり、随所でホーンやパーカッションの音も聴くことができます。ループする音の中で、サビのボーカルがひたすらリフレインします。EDMのように起伏で聴き手を揺さぶる展開ではなく、中毒性の高いループに巻き込みます。

Latino Acid Remixは、CDおよび配信でリリースされた『GET WILD SONG MAFIA』に収録されています。SICK INDIVIDUALSによるダブステップ的なアプローチのリミックスとともに、「GET WILD」の新たな進化の可能性を感じたものです。小室さんとは異なる感性、アプローチによって開拓される「GET WILD」の可能性。

Latino Remix

2番目に公開されたのはLatino Remixです。このバージョンは、小室さんがリミックスした「GET WILD 2017 TK REMIX」とともに、6月にアナログ盤としてプレスされました。また、それに先立って5月に配信されたアルバム『GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition』でも聴くことができます。

Latino Acid RemixからACIDの音が抜かれることで、ACIDの裏でメインのメロディ(イントロやサビの「ミ・レ・ド」)を奏でていたシンセサイザーが前に出てきました。「ラティーノ」という言葉からラテン・ミュージックをイメージしていましたが、そういうわけでもないようです。コンガやホーンの音は使われているものの、Latino Acid Remixと同様にアクセントの役割を担います。

Full Acid Remix

最終形態…かどうかは分かりませんが、Full Acid Remixと題した新しいリミックスが9月に発表されました。11月にはFull Acid Remixのアナログ盤がリリースされます。サウンドは、ミックス名のとおりACID(ローランド社のTR-303というシンセサイザーとのこと)を押し出しています。

最後の1分間に繰り広げられる展開がとても印象的です。一連のリミックスの嚆矢であるLatino Acid Remixを聴いた時から中毒症状に侵されていたものですが、それが極まった感があります。身体を侵食する音。爆音ロックやパーティー系EDMとは違う意味で攻撃的です。そして音が収束するとともに聴き手も消えるかのような、音との同化を感じました。

これまでのリミックスと同様にウツのボーカルをサンプリングで散りばめていますが、一方でインストゥルメンタルも配信されています。ボーカルがミュートされると、音が生み出す中毒性は一層高まります。


2017.10.03
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by mura-bito | 2017-10-03 21:21 | Comments(0)
TM NETWORK – GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition
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2017年5月に『GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition』が配信されました。4月にCD・配信でリリースされた『GET WILD SONG MAFIA』のうち2012年以降に録音されたライブ・テイクをまとめ、さらにavexが権利を管理するカバーやリミックスを加えたコンピレーション・アルバムです。

本作に収録された曲の中で特徴的だと思うのは、2011年のライブ配信「DOMMUNE」で披露された「GET WILD ’89」、2013年に配信された「GET WILD (2013 SUMMER)」、石野卓球によるリミックスの別バージョン「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Remix-」です。

GET WILD ’89 (DOMMUNE #332 TETSUYA KOMURO Liveset)

2011年に小室さんはDOMMUNEに出演し、ソロやglobeのリミックス、1990年代にプロデュースした曲を披露しました。TM NETWORKの曲も含まれており、そのひとつが「GET WILD ’89」です。リアルタイムにシンセサイザーの音を重ねるパフォーマンスは、キャッチーな音や荒々しくノイジーな音を響かせながら、インターネットを介して多くの人のもとに拡散しました。

「GET WILD ’89」は1989年にリリースされました。1980年代のダンス・ミュージックの象徴であるユーロビートの音でリミックスされた曲です。制作を手掛けたのはPete Hammond(ユーロビートの代表格であるPWLというチーム)というプロデューサーです。1989年の音に2011年の音と感性を重ねたのがDOMMUNEでのプレイです。20年離れた時間が交錯する瞬間を味わうことができます。

GET WILD (2013 SUMMER)

2013年は小室さんがソフト・シンセを本格的に導入した時期であり、「EDM (Electronic Dance Music)」というキーワードを重視していました。globeやtrfなどの曲をEDMにリミックスした『DEBF EDM 2013 SUMMER』に、「GET WILD (2013 SUMMER)」も収録されています。ライブ「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」で使った音を整理しつつアップデートして、リズムやボーカルを加えています。

「GET WILD」がEDMの要素を取り入れた最初のバージョンであり、「いかにもソフト・シンセ」という音が聴けます。大きな特徴のひとつはイントロですが、本作に収録されたものではイントロの大部分がカットされています。そのため、『DEBF EDM 2013 SUMMER』を聴いた方が、よりEDMらしさを感じることができます。ダブステップの特徴であるワブル・ベースが使われているイントロやBメロを聴いて、「これまでの『GET WILD』とは違う」と思ったものです。

GET WILD -Takkyu Ishino Latino Remix-

「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Remix-」は、『GET WILD SONG MAFIA』に収録された「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Acid Remix-」を基にしたリミックスです。ループする音に、ボーカルのサビ部分をサンプリングして重ねます。

Latino Remixの特徴はLatino Acid Remixからアシッドの音が抜かれていること…と書くとなんだか間抜けですが、注意深く聴き比べると印象が異なります。アシッドの裏でメインの「ミ・レ・ド(=♪Get wild and tough♪)」を奏でていたシンセサイザーがよく聞こえるようになりました。天ぷらの衣をはがした感じ…という表現が適切かどうかは分かりませんが。僕の耳と知識では判別できるのはそのあたりですが、大きな違いはそれだとすれば、なかなかにマニアックな差です。




2017.09.19

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by mura-bito | 2017-09-19 21:53 | Music | Comments(0)
[PART4] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:「I am」にまつわる新しい真実を見せてくれた言葉
「GET WILD」を追いかけたSound & Recording Magazine誌による一連の企画は、「GET WILD」が蓄積した30年という時間をさまざまな角度から切り取りました。場合によっては「GET WILD」から離れ、TM NETWORKへの言及もありました。そこで、最後は「GET WILD」の話から派生した、興味深い言葉にフォーカスしてみます。

目に留まったのは、自らの歌について語ったウツの言葉です。これまで、ウツがTM NETWORKについて語るときは、自分も含めてメンバーそれぞれの役割を客観的に見ている感じでした。今回のインタビューで見せた一瞬の表情は、それとは少し異なる、自分自身を真正面から見据えたものに思えました。読み流すには惜しい、ウツの、そしてTM NETWORKの本質的な部分が見えた気がします。
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2014年4月に、TM NETWORKは30周年記念企画のひとつとして『DRESS2』というアルバムをリリースしました。収録されたのは、デビューした1984年から4年ほどの間にリリースした曲ですが、いずれも2014年の音でアップデートされ、ボーカルやコーラスも新たに録音されました。

代表曲である「GET WILD」もまた、このアルバムに「GET WILD 2014」として収録されています。「GET WILD」の音は2013年のライブで大きく変化しており(大部分をソフト・シンセで構築)、ライブで使った音を基にして小室さんがソロで音源として「GET WILD (2013 SUMMER)」として配信しました。そこにいくつかの音を加えたのが「GET WILD 2014」です。

そのちょっと前くらいから、自分の年齢もあるし、それまでのいきさつもあるだろうし、歌に対するその自分なりの立ち位置が変わっていたんです。だから1987年当時のときの歌とは全く違うと思う。今はより開いているというか、明るい声になっていると思うんです。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

リミックスでは歌を録りなおすことはないため、レコーディングでウツが「GET WILD」を歌いなおしたのは、1999年の「GET WILD DECADE RUN」以来、15年ぶりでした。歌もアップデートされたということで、今回のインタビューでは「GET WILD 2014」の歌に関する質問にウツが答えています。1987年の声とは大きく異なり、現在は「開いている」、「明るい」声になっているとウツは自分のボーカルを表現します。

では、ウツの「歌に対する立ち位置」が変化したきっかけとは何だったのでしょうか。転機となったのはTM NETWORKの「I am」だと語ります。「I am」は、2012年4月のライブ「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」の開催と同時にリリースされ、その後のコンサートでも常に演奏されてきました。

ソロも含め自分の歌を冷静に聴いていく中で、TMの「I am」を歌ったときに、“これが今の僕だ” って思えたんですよ。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「I am」は、再び動き出したTM NETWORKを象徴する曲であり、そこには小室さんの思いがたくさん込められていると思いました。それは真実のひとつです。一方で、今回のインタビューを通して、ウツもまた自らを重ねていたことを知って驚きました。歌い手として、ウツの何かが「I am」とぴたりとはまったのでしょう。インタビューではこれ以上掘り下げられてはいませんが、「I am」にまつわる新しい真実を見た気がします。

2015年2月に、小室さんは「みんなで話しているけど I amという曲は なんか、特別な曲になりました」とツイートしました。TM NETWORKの活動がそろそろ区切りを迎えるころの投稿です。「特別な曲」とはまた素敵な表現ですよね。3年にわたるTM NETWORKの活動を引っ張ってきた曲をメンバーとして大事に思うのと同時に、「パーソナルな距離感での思い入れ」とでも言うべき気持ちが別のレイヤーにあった、ということなのかなと思います。

躍動するメロディに乗って流れる「I am」の歌詞は、具体的なシーンを描いたり、抽象的に大きな世界を投影したりと、ミクロとマクロを行き交います。聴く人が自分を重ねられる曲であり、どの部分に焦点を当ててイメージするかは聴く人次第です。いろいろな人のさまざまな気持ちに重なってそれぞれの物語を描く。それはウツにも共通することなのかもしれません。今、ウツの「“これが今の僕だ” って思えた」という言葉に触れて、改めて「I am」が自分にもたらしてくれたものを思い起こします。僕もまた心を動かされたひとりであり、自然と自分を重ねていたことを覚えています。僕にとっても特別な曲ですね。



TM NETWORK「I am」のミュージック・ビデオ。
三人がそれぞれの場所で「潜伏」している様子、そして、
再び集まりTM NETWORKとなる様子が描かれている。
2017.05.31
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by mura-bito | 2017-05-31 21:53 | Music | Comments(0)
[PART3] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:オリジナルの「イメージ」を呼び出す歌声
「GET WILD」が持つ強さは幾多の変化にも対応できる柔軟さであり、それが「変わり続ける」という魅力を確立させました。その一方で、二律背反的に、反対の魅力も共存共栄しています。それがイントロのメロディであり、「変わらない」という魅力です。変わり続けて、変わらない。
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観察する角度をわずかに変えてみましょう。僕らがずっと聴き続けているもの、それはイントロのメロディだけではありません。それはウツの歌です。彼の歌は「変わらない」というより、「オリジナルにアクセスして再び立ち上げる」機能があると思います。もちろん30年前の声とは質が違うし、歌い方、テクニックも格段に進歩しているはずです。レベルの高低の問題ではなく、ウツの歌は「オリジナルの『イメージ』を呼び起こす」ことができるのではないか、ということを言いたい。

同じことを語るプロフェッショナルがいます。同じSound & Recording Magazine誌の企画の中で、サウンド・デザイナー/PAエンジニアの志村明さんは「これだけアレンジが変わっても、オリジナルの曲のイメージがストレートに入ってくる」と語っています。「GET WILD」が持つ力を評した言葉ですが、僕はそこにウツの歌も含まれていると解釈しました。イントロが輪郭を描き、ウツの歌がその像にピントを合わせる。そして「GET WILD」のイメージが聴き手に浮かび上がる。そんなことを思いました。



2012年から2015年にかけて5つのライブで演奏された「GET WILD」をまとめた映像。
この時期のサウンドはダイナミックに変遷したが、ウツのボーカルは安定感を見せていた。
特に2013年のライブは病み上がりだったものの、歌への大きな影響は見られなかった。


* * *


インタビューでは、小室さんがウツの歌について語っています。2012年から2015年のTM NETWORKの活動を経た今、改めてウツの歌声の魅力を語り、そして敬意を表します。

小室さんが価値を感じているのは「基本に忠実に歌ってくれる」こと。サウンドの面で変化を繰り返してきた「GET WILD」だからこそ、その出発点が見えることは重要なのだろうと思います。たとえるなら、船における碇のようなものなのかもしれません。周囲が揺れる中でも同じところに留まる。ただ同じことを繰り返す(それはそれで大事なことではありますが)のではなく、サウンドが激しく変わる中で軸となるものを示し続けるのは、意外とハードルの高いことなのでしょう。

シンガーにもいろんなタイプの人がいますよね。歌うごとにフェイクを入れて、そのときそのときで変わるとか。でも30年もたつと、基本に忠実に歌ってくれるという方の価値が大きくなっているかもしれません。宇都宮君はそれができる人なのがすごいですよね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

では、ウツはどのように考え、歌っているのでしょうか。小室さんが評価する「基本に忠実に歌う」ことについて、ウツはその重要性を自覚し、共有しています。歌うことは、同時に聞かせることもあります。多くの場合「どのように歌いたいか」は「どのように聞かせたいか」とセットで語られます。

今回のインタビューで語られた言葉の中から、ウツの真意を正確に読み取ることは困難を極めます。それでも、観客の顔を思い浮かべながら自分の歌について語っていることは間違いないのかなと思います。

これは人によると思うんですけど、僕は、作った曲をライブで披露するときに、できるだけCDに近いものを聴かせたいという思いがあるんですよ。人によってはどんどんメロディを変えちゃったり、譜割を変えたりしますよね。僕もそういうのもありかなって思った時期がありましたが、結局はみんなが聴いてきたものがそこで再現される喜びが一番大きいと思うんです。だからなるべく再現できた方がいいかなって。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

2013年のライブ「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」でも、ウツの歌が大きく変わったという印象はありませんでした。膵臓の腫瘍を患い、手術に成功したとはいえ、歌うことすらままならなかった状態で、それでも僕らが知っている「ウツの歌」を聴かせてくれました。

ウツはさらりと「なるべく再現できた方がいいかな」と語っていますが、2013年のエピソードを思い出すと、それほど簡単なことではないと思えてきます。それはプロフェッショナルだから……というより、ウツだから、と表現するほうが適切なのでしょう。だから小室さんも「すごい」と語るわけですね。まあ、ウツは「今さらほめてくれなくてもいいよ」と言っているようですが。

PART4では、ウツの歌について、もう少し踏み込んでみたいと思います。今回は「歌い方」にフォーカスしたのですが、次回は「歌」というものに迫ってみたい。それは広いマクロな視野で捉えるようでいて、とてもミクロなウツの本質的な部分に近づくことを意味します。ウツのわずかな言葉を頼りにして、「海の底」のようなところに潜っていこうと思います。
2017.05.29
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by mura-bito | 2017-05-29 22:13 | Music | Comments(0)
[PART2] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:変わり続けることでタフになった「GET WILD」
『GET WILD SONG MAFIA』(EDMを追求した2010年代モデル・チェンジの軌跡30年目の創造的進化と現在進行形リミックス)は、30年間に披露されたさまざまな「GET WILD」を集めたアルバムです。こうしたアルバムが編集できるほどに、バージョンの異なる「GET WILD」が数多く蓄積されてきました。リミックスやライブで、その都度新しい音が重ねられたり、新しいイントロやアウトロが加えられたり、アレンジの刷新が繰り返されてきました。

その変化は、オリジナルをリリースして間もなく始まりました。現在、その姿を確認できる最古のライブ・アレンジは、1987年6月の日本武道館公演「FANKS CRY-MAX」です。イントロが長くなり、ウツのボーカルをサンプリングして鳴らします。ちなみに、このイントロでドラムを叩いた山田わたるさんによれば、Flower Travellin’ Bandの「Satori」をモチーフにしたとのことです。
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イントロの延伸やサンプリング・ボイスの追加といった手法は、ライブにおける「GET WILD」の基本形となり、その後、ライブによってはさらなる長尺のイントロや、別の曲のようにも思えるフレーズが重ねられたりしました。

TM NETWORKのライブでは、多くの曲がレコードやCDに収録されたものとはアレンジを変更されて演奏されます。アレンジの方向性は、そのときに小室さんが傾倒するジャンルに寄ったり、新作やライブの音楽的テーマに沿ったりします。TM NETWORKのライブは「音楽的に何が起こるか分からない」エンタテインメントであり、それを最も色濃く反映するのが「GET WILD」なのです。「GET WILD」がたどった30年には、変わり続けたTM NETWORKそのものを重ねることができます。

こうなるとは想像していなかったですけど、思惑やテーマに耐えてくれて、幾らいじっても壊れない曲になったということでしょうね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

ユーロビート、ハード・ロック、テクノ、トランス、EDMといったジャンルの要素が「GET WILD」に移植されてきました。具体的なジャンルに分類できないアレンジもあれば、underworldやAVICIIといった具体的なモチーフを活用することもありました。苦肉の策としての変節ではなく、明確に意図を持って「変わり続けた」ことがポイントです。

「GET WILD」の変化は単発の企画で終わることなく、継続的に行なわれました。いつの間にか変わることが宿命となり、さまざまなリミックスやライブ・アレンジに対応できる曲になりました。変わり続けることで「GET WILD」はタフになったのです。

よく小室君と曲を作ったときに、“サビのこの1小節でこの曲勝ってるよね” と言ったりするの。そこがあるから全体が持つみたいな。そういった意味で「Get Wild」はイントロなのかなと。イントロから先はどうでもいいわけじゃないんだけど、あのイントロがあるから、どんなにグチャグチャになっても、何をやってもみんなグッとくるんじゃないのかな。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

大小さまざまな変化を重ねた「GET WILD」ですが、最も重要なポイントとして、木根さんはイントロを強調します。ここで言及されているイントロとは、オリジナルから存在し続けるイントロのメロディですね。また、「どんなにグチャグチャになっても」とは、木根さんらしい言い方ですが、小室さんが試みるアレンジの刷新やサンプリング・ボイスの連打のことでしょう。

いわゆる ♪ミ・レ・ド♪ から始まるメロディは、サウンドが大幅にアレンジされる中でも継承されました。長大なイントロが続いた後に、エア・ポケットのようにわずかな空白を挟み、このメロディが鳴ることで会場の熱気がぐんと上がるシーンを何度も見ました。ファンの記憶どころか、身体にまで刻み込まれたメロディです。

「GET WILD」は音や構成で変わり続けてきたからこそ、対照的に、オリジナルのイメージを強く残すものの価値が浮かび上がります。それは木根さんが言うところの「あのイントロ」ですが、さらにボーカルも挙げられると思います。PART3では、変化し続けてきた音の中で、ひときわ輝くウツの歌に焦点を当ててみましょう。
2017.05.21
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by mura-bito | 2017-05-21 08:13 | Music | Comments(0)
[PART1] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:TM NETWORKが拡散するきっかけを作った「GET WILD」
TM NETWORKのシングル「GET WILD ’89」のジャケット写真が、4月に刊行されたSound & Recording Magazine誌の表紙を飾りました。巻頭特集では、4月初旬にリリースされたコンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』が取り上げられています。1987年にリリースされたオリジナルを当時のエンジニアや参加ミュージシャンへの取材で解析したり、ライブで演奏したサポート・ミュージシャンや影響を受けたさまざまな世代のアーティストから集めた言葉を紹介したりしています。

TM NETWORKのインタビューも掲載されています。記事では、三人がそれぞれの記憶を巻き戻しながらそれぞれの視点で「GET WILD」の誕生や発展を語ります。彼らの印象的な言葉を引用しながら、「GET WILD」という角度からTM NETWORKというトライアングルに光を当ててみましょう。
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TM NETWORKのシングルのうち、売上枚数のトップは「GET WILD」ではなく「LOVE TRAIN」(1991年)であり、作品としてのインパクトや独自性はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の方が大きいかなとは思います。けれども、広がりという点では「GET WILD」に一日の長がありますよね。アニメ「シティーハンター」によって、多くの人の知るところとなり、今でも「そういえば…」と思い出せるくらいに記憶に残っている人は多いかと思います。拡散のトリガー、それが「GET WILD」の役割です。

TM NETWORKのターニング・ポイントは1987年であり、俗に言う「売れた」年です。2月にオリジナル・アルバム『Self Control』をリリースし、4月にシングル「GET WILD」をリリースしました。8月に「GET WILD」を含むベスト・アルバム『Gift for Fanks』、11月に次のオリジナル・アルバム『humansystem』をリリースしました。翌1988年には大規模なタイアップ(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と『ぼくらの七日間戦争』)が続き、完成したばかりの東京ドームでの公演を経て、代表作『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』がリリースされました。TM NETWORKが売れた要因はいろいろあるのでしょうが、少なくとも「GET WILD」が強力な追い風になったことに異論はないかと思います。

『CAROL』はいろんな意味で革新的なアルバムでしたが、「Get Wild」がそこへ行くための推進力になったのは確かですしね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」の前後でアルバムの制作費、全国ツアーやタイアップの規模といった点が変化しているわけですが、その延長線上に、1989年の『DRESS』があります。ロンドンやニューヨークの音楽家やプロデューサーに依頼して、ボーカル以外の音を大胆に変えた曲を集めたリミックス・アルバムです。Sound & Recording Magazine誌には、海外のプロデューサーたちとの交渉にあたった当時のスタッフ、大竹健さんの話も掲載されています。

アルバムの中でも、当時の世界を席巻していたユーロビートに生まれ変わった「GET WILD ’89」は、オリジナルの「GET WILD」と並んでTM NETWORKを代表する曲となり、多くのファンの記憶に残っています。リアルタイムではありませんが、僕がTM NETWORKに初めて触れた曲のひとつでもあります。小室さんの思い入れも大きかったようで、それは『GET WILD SONG MAFIA』のライナーノートで語られています。

ずっと廃れずにTMのブランドを持ち続けさせてもらえるのは「Get Wild」のおかげなのかなって思いますね。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」はリミックスやライブで何度も新しい姿を披露しました。「GET WILD」は単なる出世作ではありません。世の中にはオリジナルのまま歌い継がれる代表曲の方が多いのかもしれませんが、「GET WILD」は変わり続けることを使命にしていたのではないかと思えるくらい、大胆に変化していきました。新しいシンセサイザーの音や新しいフレーズ、常にコンテンポラリーな要素を組み込まれてその時代の空気をまとう。PART2では「変わり続ける」という点にフォーカスしてみます。
2017.05.15
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by mura-bito | 2017-05-15 21:37 | Music | Comments(0)
TM NETWORK『GET WILD SONG MAFIA』:30年目の創造的進化と現在進行形リミックス
TM NETWORKの活動は2015年のコンサート「TM NETWORK 30th FINAL」で区切られ、同じく「GET WILD」の進化も一度完結しました。しかし、『GET WILD SONG MAFIA』がリリースされたことで、新たな音、新たな「GET WILD」を聴く機会に恵まれます。小室さんは本作のために最新リミックス「GET WILD 2017 TK REMIX」を制作し、アルバムに先行して配信しました。イントロから響くベースの音はとても太く、それだけで心も身体も熱くなりますし、サビではボーカルの裏で鳴っているフレーズは新しい曲にも思えるインパクトを感じます。

2015年以降も、小室さんは自分のライブ・パフォーマンスで「GET WILD」をアップデートし続けていました。その証が「GET WILD 2016 TK LIVE @YOKOHAMA ARENA MIX」という、エイベックスのECサイト「mu-mo」でアルバムを購入すると聴けるバージョンです。2016年のパフォーマンスで使った音源、あるいはそれを調整したものかと思います。このバージョンは、2015年の「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」を下敷きにしながら、随所で印象を変えています。特徴的だったアコースティック・ギターのカッティングを踏襲しつつも、2015ミックスがアグレッシヴな雰囲気だったのに対し、2016のサウンドでは抑制された印象に変わって味わい深くなり、渋さすら感じます。

終盤は誰も聴いたことがない展開を見せます。お馴染みの間奏が終わろうとした瞬間、サビが繰り返される…と思いきや、リズムががらりと変わり、哀愁漂うピアノの音がサビのメロディを切り取ってリフレインします。抽象的に表現するなら「余白の多い」アレンジ。最後のサビはライブでも一番盛り上がる部分ですが、それを逆手に取ったかのようなこのアレンジはチルアウトと言ってよいでしょう。興奮に興奮を積み上げてきた、メロディやサウンドを噛み締めてエンディングを迎え、ゆっくりとクールダウンする。そしてメインDJがステージを降りる姿が目に浮かびます。
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そして「GET WILD」の進化は2017年になっても続く…というよりむしろ加速します。『GET WILD SONG MAFIA』には「GET WILD 2017 TK REMIX」の他に、石野卓球によるリミックス「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Acid Remix-」やSICK INDIVIDUALSのダブステップ・ミックス「GET WILD -SICK INDIVIDUALS Remix」も収録されています。三者三様のアプローチで、すなわち三者三様のエレクトロで2017年の「GET WILD」を聴くことができます。

石野卓球は説明するまでもなく電気グルーヴのトラック・メーカーですが、あるいはDJとしての活動の方が有名でしょうか。彼が手がけたTakkyu Ishino Latino Acid Remixでは、サビのボーカルがひたすらリフレインします。リズムは軽めの雰囲気を醸し、ホーンの音も聴くことができます。僕はあまりアシッド系の音は馴染みがないのですが、こういうものなのでしょうか。EDM的な起伏のある展開ではなく、中毒性の高いループに巻き込んでいく感じですね。聴くほどに頭の中が音で満たされ、いつの間にかぐるぐる回る音の中で自分が翻弄されています。

SICK INDIVIDUALSはオランダ出身のEDMデュオです。ダブステップ・サウンドで押していく、Hardwellの系譜とされています。エイベックスはEDMアーティストを引っ張ってくる日本における先駆者のようなところがありますが、今回のコラボレーションにも一役買ったのでしょうか。SICK INDIVIDUALS Remixによって「GET WILD」はダブステップらしいダブステップに再構成されました。そのような変化はまったく予想できませんでした。

同じオランダ出身のNicky RomeroやAfrojackは、小室さんのスタジオに遊びに来たことがあるので、その縁でリミックスをしてくれたら嬉しいですね。そうすれば “Get Wild Remixes” をacross the globeで配信できるかもしれません。かつては「GET WILD '89」でヨーロッパのサウンドと結びつきましたが(PWLのピート・ハモンドによるユーロビート・スタイル)、2010年代はEDMという文脈で、改めて世界とつながってほしいものです。

SICK INDIVIDUALS Remixでは、♪ミ・レ・ドから始まるサビのメロディがソフト・シンセの特徴的な音で新しい姿に変貌しています。このリミックスを聴くと、「GET WILD」は世界的な音楽的トレンドに放り込んでも成立する可能性が充分にあると思えてきます。変わり続けてきた曲だからこそ、これからも、いくらでも変わっていいんですよね。僕は2015年の区切りをやむなしとしていましたが、今回の企画によって、むしろ「GET WILD」の進化は続けるべきだと思うようになりました。こうなったら「GET WILD」が、いつまで、どこまで変化するのか見届けてやろうと思います。
2017.04.21

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by mura-bito | 2017-04-21 21:01 | Music | Comments(0)
TM NETWORK『GET WILD SONG MAFIA』:EDMを追求した2010年代モデル・チェンジの軌跡
TM NETWORKの「GET WILD」は名実ともにTM NETWORKの代表曲と言えます。オリジナルは30年前にリリースされました。アニメ『シティハンター』のエンディング・テーマに起用されたこともあり、最も高い知名度を誇っています。そのためか、リリース以降のほとんど(すべて?)のライブで演奏されました。TM NETWORKは、いくつもの曲をライブの度に新しいアレンジにして披露してきましたが、中でも「GET WILD」の変わりようには驚くばかりです。世界の音楽的傾向を読み、その要素を移植するということを繰り返してきたのが「GET WILD」です。

バンドではなく曲の30周年という珍しい切り口から、コンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』が企画され、4月5日にリリースされました。オリジナルはもちろんのこと、リミックスやライブ・テイク、カバー、計36曲を集めた4枚組のアルバムです。「GET WILDだけでTM NETWORKの変化の歴史を追う」というのは過言でしょうか。答えは「ノー」です。もちろんTM NETWORKの魅力を知るためには不足していますが、「TM NETWORKの音楽的スタイルの変遷」を振り返るのに「GET WILD」ほど相応しい曲はない、と断言できます。
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さまざまなスタイルに変化した「GET WILD」ですが、大きくはロックとエレクトロに分類されます。ライブではどうしてもバンド・スタイルになるため自然とロックに寄るものですが、特にロック成分が高めのパフォーマンスを披露しているのが1990年の「TMN RHYTHM RED TOUR」、2004年の「DOUBLE-DECADE TOUR FINAL "NETWORK"」でしょう。前者でのサポートは葛城哲哉、阿部薫、浅倉大介であり、後者はFENCE OF DEFENSE(西村麻聡、北島健二、山田わたる)です。

一方、エレクトロという括りで見ると、もともとオリジナルのアレンジは、ヨーロッパ発の世界的ダンス・ミュージックであるユーロビートを意識していました。とは言え、ダンス・ミュージックに大きく寄せることはできず、本来の構想が形になったのは2年後のリミックス「GET WILD ’89」です。『GET WILD SONG MAFIA』に掲載されたインタビューでは、小室さんは「『GET WILD』に人格があるとするなら正しい身なりになった。髪型から何からカチャってハマったのは『GET WILD ’89』だったんですよ」と語っています。ダンス・ミュージックとしての「GET WILD」が血肉を備えたのは1989年なのです。


GET WILD 2012-2015

00:00~ TM NETWORK CONCERT -Incubation Period- (2012)
05:19~ TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation- (2013)
11:45~ TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end (2014)
19:18~ TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA (2015)
26:44~ TM NETWORK 30th FINAL (2015)

その後は、2001年の「TM NETWORK LIVE TOUR "Major Turn-Round"」や2004年の「TM NETWORK DOUBLE-DECADE "NETWORK"」で、トランスの要素を移植する試みが行なわれました。そして再びダンス・ミュージックに大きく舵を切ったのが2010年代。EDMが世界の音楽シーンのメイン・ストリームに躍り出ると、再指導したTM NETWORKの活動で、小室さんは積極的に「GET WILD」をエレクトロに染めていきました。2013年の「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」でEDMスタイルにモデル・チェンジすると、2015年の「TM NETWORK 30th FINAL」まで改造を繰り返しました。

2013~2015年のモデル・チェンジの要素は、2015年の「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」のライブ・テイクと「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」に凝縮されており、どちらも『GET WILD SONG MAFIA』にも収録されています。「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」は2014年から加わった新たなイントロ、歌を含むオリジナルの要素を残した部分、2015年に追加された新たなアウトロで構成されており、「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」ではその前に小室さんのパフォーマンスが繰り広げられています。

小室さんはハードディスクの音を鳴らしながら、ソフト・シンセを中心に自分をぐるりと取り囲むシンセサイザーを駆使して音を重ねたりミュートしたりしながら、予測不能のサウンド・インスタレーションを織り上げます。パフォーマンスではワブル・ベースなどダブステップ系の音も加えて、新しいイントロやアウトロではEDMらしいキラー・フレーズのリフレインで攻めます。このときの音の組み合わせこそが最もEDM的であり、2013年から始まったモデル・チェンジの集大成だったと思います。
2017.04.16

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by mura-bito | 2017-04-16 17:08 | Music | Comments(0)

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