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QUIT30 HUGE DATA PART4
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


わずかな空白をスネアの音が打ち破り、スペーシーなギターのリフが飛び出します。光がステージを、観客席を照らします。そして始まる♪Yes I am Yes I am Yes I am a human♪のコーラス。それは♪No I can't No I can't I can't lose the moments♪と続き、会場を満たします。シンプルな言葉のリフレインが、聴く人それぞれの生き方に重なるように響きます。

TM NETWORKの新たな代表曲とも言うべき曲「I am」は、この三年間の活動の核となり、バトンのようにライブとライブをつないできた曲です。TM NETWORKストーリーに当てはめて聴き、自分の中にピースをはめ込むように聴く。地球を俯瞰した潜伏者の調査報告にも聞こえるし、一人ひとりが自分と向き合うツイートのような独白として捉えることもできます。マクロにミクロに、物語的に現実的に移ろう視点は、人間を立体的に描きます。

***

この曲は、譜割が流れるように変わります。その流れを捕らえて水先案内人のように歌を乗せ、丁寧に言葉を配置するのがウツの役割です。音が詰まったり間隔が空いたりする中で、ウツの歌は言葉をコントロールします。小室さんが書く曲の中でも、「I am」は特にメロディと歌詞の関係が密になっています。メロディに合わせて歌詞を変えるのではなく、あるべき言葉を伝えるために音の間隔を自在に変化させる。

音符の数に対して言葉の数が多い箇所は、必然的にラップに近い歌い方になります。メロディを無視するラップとは異なる、メロディに乗せたラップですね。平らな石を水面に平行に投げると、石が水面をジャンプするように跳ねますが、そういったイメージです。その一方で、ポップスらしく言葉をメロディに固着して歌うところもあります。テクノやトランスのように速いテンポではないのに、体感速度が高いのは、譜割で緩急をつけているからです。何度聴いても飽きずに、むしろ新鮮に感じられるのは、この緩急が大きな要因だと言えます。

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小室さんは黒いショルダーキーボード、KORG社のRK-100Sを下げ、エレクトリック・ギター系の音を鳴らします。ギターよりも丸みを帯びており、ハードディスクからデータで鳴らしている音に馴染みます。「I am」の間奏では、この音でソロをとりました。オリジナルでのMike Smithのギター・ソロとはまた異なる雰囲気が生まれます。シンセサイザーならではの拡散していく音が屹立して響きます。その音の終わりと重なるようにコーラス・パートが飛び出します。

キーボードブースの外に立てられたマイクスタンドに前に立ち、小室さんはコーラスに参加します。木根さんもギターを弾きながら歌い、それぞれの声がウツのボーカルと重なります。三人の声が三つの点を結び、三角形を生み出します。三十年前と変わらない三角形でもあるし、この三年で強固になった三角形でもあります。♪Yes I am Yes I am Yes I am a human♪のリフレインは続きます。大きな三角形が観客を包み込みます。

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時計の針は音を立てて進みます。オレンジ色と黄色と赤の光が混ざり合って差し込み、別の角度からは青い光が束になってステージを照らし、夕焼けのように三人を照らします。シンセサイザーの音で紡ぐ柔らかいフレーズの中、強烈なスネアの音が大きく響き、曲をダイナミックな姿に仕上げます。アコースティック・ギターの音が柔らかく響き、歌が地球上で生きる人々の姿を描きます。ライブの終幕を「FOOL ON THE PLANET」が告げます。

「FOOL ON THE PLANET」が描くのは、夢を抱いて、周りから冷めた目で見られようとも、行くべき道を進んでいこうとする人間の姿です。それは、宇宙から地球にやってきた潜伏者が最初に見た人間なのか。調査報告書の冒頭では、夢を抱いて生きる人々について書かれているのかもしれません。地球の時間で三十年をかけて、潜伏者たちはさまざまな時代や場所を巡り、調査を続けました。そして、最後のページに記した内容も最初と同じだったのかもしれません。

時が巡っても、場所が変わっても、言葉が違っても、人々はそれぞれの形で、大小さまざまな夢を抱きます。夢を追い続けることを諦めたり、夢を見ることすらできなかったりする中で、それでも愚直に、ストレートに夢を追う人々を目の当たりにして、その姿を潜伏者たちは調査報告書の最後に記します。

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赤、青、紫。三年前、地球に降り立った三つの色が、光の中に消えていきます。2012年から始まった物語が幕を閉じます。シンセサイザーが「ELECTRIC PROPHET」のメロディを繰り返します。静謐に美しく響く音は、時として形を変え、新たな音を加えながら、やがて夜空に瞬く星空と一体化します。宇宙から届けられた音が宇宙へと帰っていきます。

これで物語のすべての章が綴られ、紙幅は尽きたのかと問われれば、否と答えます。そこにはまだいくばくかのスペースが残っており、三人の潜伏者には、もうひとつ重要な任務が残っています。わずかなインターバルを挟み、三年に渡るミッションにおけるタスク・リストの最後の項目を遂行すべく、三人は地球に降り立つこととなります。音が消えると同時に、ミッション完了までのカウントダウンが始まりました。


2015.10.04
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by mura-bito | 2015-10-04 07:36 | Music | Comments(0)
QUIT30 HUGE DATA PART3
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


鍵盤が集積したエリアを光が包みます。目に見えるキーボードは六台ですが、それらの中には無数の音が搭載されています。ステージに残った小室さんは、ソフト・シンセでエレクトリック・ギターの音を呼び出します。キックとハイハットを呼び出し、四つ打ちの中でEDM的なシンセサイザー・サウンドを絡ませていきます。音の雰囲気は、さながらAfrojackです。サウンドの表情は刻一刻と変わり、Paul van Dykのようなトランス系の音を重ねつつ、リズム・トラックだけで駆け抜ける場面もあります。

軽快なメロディのリフレインが四つ打ちに絡み、同じメロディを異なる音で鳴らし、やがてそのメロディもグラデーションの軌跡を描いて変化します。ソフト・シンセだけでなくNord Lead 3からもノイジーな音を引っ張り出し、サウンドは形を変え続け、液体から気体、あるいは個体に変わるように印象が変わっていきます。重なり、消えて、また積み上がる。それはリアルタイムで展開するサウンド・インスタレーションです。DJとも違う、ロック・スターとも違う、小室さんだけが生み出せる音のエンターテインメント。

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音が交錯する中で、ボーカロイドを切り取って集めたようなサウンドがリフレインします。ソロの勢いを引き継ぐ形で最新モデルの「GET WILD」が始まります。2013年に大きなモデルチェンジを実現した「GET WILD」は、ふたつのツアーを経てマイナーチェンジを続けました。「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」と「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」を経てイントロが大きく変容すると、このライブではアウトロが突然変異的に別物に変わります。

イントロ、アウトロともに、AVICIIやZeddの曲で聴けるようなキャッチーでシンガロングしたくなるフレーズが繰り返されます。歌詞がなくてもシンセサイザーのフレーズを口ずさみたくなる、魅力的で刺激的なフレーズのオンパレードです。イントロもアウトロも、もはや新曲と言ってもいいくらい「GET WILD」を想起する要素はなく、Extended Mixを聴いている感じですね。原曲の縛りを外れた展開は、予想外の興奮をもたらします。

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歌が終わると「GET WILD」は新たなアウトロにスイッチし、ウツと木根さんがステージ袖に消えます。ステージにひとり残った小室さんはNord Lead 3を担いで前にやってきます。この赤いシンセサイザーをステージに垂直に立てて、鍵盤を潰すように押し込みます。アウトロ用のEDM的なフレーズが繰り返される中で、Nord Lead 3の音がイレギュラーな存在として不規則に駆け巡ります。

その様子を、Nord Lead 3にくくりつけられたGoProがとらえます。シンセサイザーから見た小室さんが映ります。空や海などの自然をダイナミックに撮ったGoProの映像はあれど、シンセサイザーから奏者を撮ったものは存在しないだろうし、あってもおもしろいとは思えません。しかしながら「魅せるキーボード・プレーヤー」である小室さんであればどうでしょう。見たことのない角度で見たことのない映像が生まれました。キーボードを演奏するだけでなく、弾く姿を含めてエンターテインメントにした小室さんならではの映像です。

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ノイジーな音を吐き出し尽くすと、小室さんはNord Lead 3を担ぎ上げ、床に放り投げます。響く爆音と立ち上がる煙の中、エレクトロニック・サウンドが染み出すように会場に広がっていきます。巨大なLEDスクリーンの前に、三枚のLEDパネルが吊るされ、三人の背後に設置されます。四つ打ちの音が入り、シンセサイザーの音が増え、複雑に絡み合います。光が明滅します。そして音が途切れて空白が訪れます。


2015.10.03
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by mura-bito | 2015-10-03 11:22 | Music | Comments(0)
QUIT30 HUGE DATA PART2
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


黒いジャケットを脱いだ木根さんは、青いシャツにアコースティック・ギターを下げ、ステージの真ん中に立ちます。ステージの後方でアコースティック・ギターを爪弾くバンナさんと、パーカッションを叩くRuyさんの音を従え、木根さんが「LOOKING AT YOU」を弾き語りで歌います。

「LOOKING AT YOU」は木根さんがTM NETWORKで初めてボーカルを担当した曲です。それまでバラード系の曲を書き、ステージでは演奏の他にパントマイムなどのパフォーマンスを担当していました。1990年にTM NETWORKがTMNにリニューアルすると、木根さんのバラードを書く役割はそのままに、ステージでの役割が変わります。リード・ボーカルをとったり、フォーク・ソングを歌ったりすることで、それまでの制約から解き放たれたかのように、ミュージシャンとして多彩な面を見せていきます。時にはベースを弾いたり、時にはアコースティック・ギターによるソロを披露したりしました。こうした木根さんの役割を拡張するきっかけとなったのが、1990年のオリジナル・アルバム『RHYTHM RED』に収録された「LOOKING AT YOU」です。

優しさが感じられる、木根さんらしいメロディが流れ出て、会場に満ちます。歌詞には弱い部分をさらけ出すような雰囲気もあり、木根さんのメロディと溶け合います。ソロではもっとタフな曲も書きますが、TM NETWORKでは一歩引いたポジションで、小室さんが書く曲とのバランスをとります。ふたりが書くメロディはTM NETWORKにおける両輪だと言っても過言ではありません。なお、デビューから三十年経ってリリースされたオリジナル・アルバム『QUIT30』でも、木根さんが書いた「STORY」というミディアム・テンポの曲を聴くことができます。

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木根さんの演奏が終わり、ウツと小室さんが再びステージに姿を見せます。続いて演奏されるのは「Always be there」です。小室さんが詞曲ともに書いたバラード曲であり、『QUIT30』に収録されています。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」に続き、このライブでも披露されます。

地球に生きる人々を宇宙から俯瞰します。人々の生活、営みを客観的に見つめ、綴る歌詞は、まるで調査報告書です。潜伏者は地球に降り立ち、各地の人間と交わりながら、時にはすれ違いながら、体験したことをまとめ、地球の外に待つメインブレイン(司令部)に報告する。さまざまなシーンで体験した数々の出来事は、TM NETWORKが世に送り出した曲として残り、それらは同時に報告書でもあります。世に出なかった曲は、トップ・シークレットのような扱いの報告書なのかもしれません。

視点をミクロに絞れば大事な人に向けて送る言葉と捉えることができます。マクロに開けば、人間の業のようなものが目に入ってきます。1999年に発表した「10 YEARS AFTER」という曲で小室さんが綴った言葉に近いものがあります。地球を概観する視点と、地上でのささやかな心の触れ合いにフォーカスする視点が入れ替わる。ウツは「Always be there」を構成する言葉のひとつひとつを丁寧に歌い、積み上げていきます。

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三十年間で蓄積した報告書の存在を開示することで、TM NETWORKの任務も最終段階を迎えます。終幕のための物語が進行する間にも、潜伏者から送られる報告書は増え続け、一方で世界を記録したデータのサイズも大きくなり続けています。積み上がって人々を、地球を呑み込まんとしているデータの中で、TM NETWORKの調査報告書は羅針盤のような役割を果たします。それは人々の営みから得たシンプルな記憶であり、そこにこそ航路があることを示唆します。

鳴り響くシンセサイザーの音、ミラーボールに反射して会場を輝かせる光、すべての観客がシンガロングするコーラスのリフレイン。「WE LOVE THE EARTH」のメロディが、音が会場を駆け巡ります。光の奔流とともに多彩な音があふれ、観客の上に降り注ぎます。1991年に発表された、ハウス・ミュージックの要素を混ぜ込んだポップスです。踊るもよし、歌うもよし。

ダンス・ミュージックとして最適なテンポ、濃密なリズム。ベースとキックの音が絡み合い、とてもとても心地好い。クリアなピアノの音とテクニカルに歪んだエレクトリック・ギターの音がリズムに絡み、曲の密度を、解像度を高めています。縦に横に編まれた、隙間のない音のエリア。小室さんはソフト・シンセをマウスで操作して、さまざまな音を出します。ファースト・インプレッションの向こう側に意識を集中させると、多彩な音が有機的に組み合わさって構築された立体的なサウンドが見えてきます。丸い地球も地上まで降りてみれば山や森、湖や海という凸凹があるように、俯瞰から細部へのフォーカスにシフトしてみると、曲をもっと楽しむことができます。


2015.09.29
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by mura-bito | 2015-09-29 22:03 | Music | Comments(0)
CAROL2015 PART4
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


異世界から戻り、そこで起きた出来事を思い出しながら、その記憶を大事にして日常に戻っていくキャロル。一枚のレコードを拾い上げ、ジャケットに印刷された三人の姿に、先刻まで同じ時間を過ごしていた三人を重ねます。レコードをそっと胸に抱え、ともに音を取り戻した時間に想いを馳せます。その表情はとても美しく、優しく、そして力強い。

スネアの力強い音を合図にしてシンセサイザーとギターの音が飛び出します。演奏されるのは「CAROL」の終幕を飾る「JUST ONE VICTORY」です。TM NETWORKの曲の中でもタフな雰囲気を出す曲であり、ライブで演奏されるときはとりわけロック寄りにアレンジされます。そのエネルギッシュな音は、魔王ジャイガンティカから音を取り戻したキャロルたちを祝福します。

曲は終盤で、アルバム曲のひとつである「CHASE IN LABYRINTH」の一節を鳴らします。その中でウツは、裾の長い、黒く煌めくジャケットを脱ぎ、赤いシャツになります。「CHASE IN LABYRINTH」がフェイド・アウトすると同時に「JUST ONE VICTORY」が戻り、ウツは高らかに人差し指を天に向け、力強く歌声を会場に響かせます。テンポが上がり、坂道を一気に駆け上がるかのごとく、曲はクライマックスを迎えます。

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CAROL2015の余韻を包み込むようにして、「STILL LOVE HER」が演奏されます。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」ではクールダウンするために中盤に配置された曲ですが、このライブではCAROL2015からQUIT30 HUGE DATAへ戻るレールとして機能します。ポイントを切り換え、物語と物語をつなぐその道を通過する中で、もう少しだけ残された未来に向けたヒントを観客は受け取ることとなります。

ステージでは、木根さんの演奏するダブル・ネックのアコースティック・ギターと、間奏で吹くハーモニカが曲に温かみを与えます。ウツは赤いエレアコを弾きながら歌い、小室さんはソフト・シンセでストリングス系の音を重ねます。イントロが鳴る中で小室さんは黒地に大きな白い格子がデザインされたジャケットを脱ぎ、紫色のシャツになって演奏します。

「STILL LOVE HER」はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』の最後に収録され、物語とは離れたポジションに位置していました。それと同時に、歌詞に織り込まれたロンドンの風景が「CAROL」と結びつき、アルバムを締めくくります。物語としての結びつきはないものの、その背景として描写されたロンドンの情景の一部に、「STILL LOVE HER」は組み込まれています。街角の寒々とした空気に触れることができそうなくらいにビビッドで、そしてエモーショナルな言葉とメロディの組み合わせを体験することができます。

***

「STILL LOVE HER」の終盤で、パニーラはメッセージを送ります。二人の潜伏者に、そして観客に。彼女は潜伏者のひとりであり、「キャロル」という役割を与えられ、三人の潜伏者とともに調査にあたりました。パニーラとして、小室さん、ウツ、木根さんと結びつき、キャロルとして、マクスウェル、フラッシュ、ティコと結びつきました。そして潜伏者のひとりとして、三人の潜伏者が遂行しようとしている最後のミッションを見守ります。

パニーラから観客に向けたメッセージは、思い出話でもなく、別れの挨拶でもありません。それは、潜伏者のひとりから託されたものです。メッセージは抽象的であり、予告のように響きます。この時点では、その意味を知ることはできません。パニーラの言葉が輪郭を伴い、像を結ぶためには、もう少し時間を進める必要があります。

鐘の音が鳴り響きます。それはビッグ・ベンから聞こえてくるのでしょうか。音が徐々にほどけ、消えると同時にCAROL2015もゆっくりと幕を閉じていきます。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.09.27
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by mura-bito | 2015-09-27 08:24 | Music | Comments(0)
CAROL2015 PART3
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


狂騒的な夢を見ていて、はっと目が覚めたかのようです。時空と次元を越えたカーニバルによって上昇した温度は、音の収束とともに、すっと下がります。余韻のように残る熱を、僕らは肌で感じつつ、目の前の世界が移り変わっていくのを眺めます。キャロルの記憶が時間を越えて現在の物語を綴ります。過去の物語をトレースしながら、同時に今の物語がリアルタイムで進行している。

パニーラは観客をタイムマシンに乗せ、時間を巻き戻します。時間というものはすべての人間に平等に降り積もります。チャーミングな皺として刻まれた時間は、新たな物語を語り、新たな記憶を生み、そして新たな記録となっていきます。時間が経過したからこそ、時間を巻き戻すことができるし、記憶をマッシュアップすることができる。そういう意味において、降り積もった時間は財産でもあるのです。

***

森の中を走るキャロルが観客の目の前に浮かび上がります。曲は「IN THE FOREST」。1988年のアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に収録されたときは「君の声が聞こえる」というサブタイトルが付けられていました。異世界の森の中を走るキャロル。彼女を探す仲間たち。光の届かない暗闇の中、入り組んだ迷路のような森の中、物語はスリリングな展開を見せます。声は届けど、姿は見えない。闇と木々に翻弄されるキャロルの姿を「IN THE FOREST」は歌います。孤独や絶望の中でも、希望は消えないことを表わすかのような明るいメロディが響きます。

スクリーンを背に歌うウツ。ステージ上でリアルタイムに歌う姿と、物語のアクターとして歌う姿が交錯します。当時の記憶をよみがえらせる観客もいれば、そうではない観客もいます。後者は、当時の記録として現在の記憶に組み込みます。それぞれ異なる形ではありますが、このライブの中で「CAROL」という物語にアクセスしています。配電盤として過去と現在をつなぐのが、現在のTM NETWORKです。スクリーンに映る過去と、ステージに存在する現在。スクリーンの中で歌うTM NETWORK、ステージの上で歌うTM NETWORK。

***

裾の長い服をひらりと羽織るように、音の雰囲気がするりと入れ替わります。メロディは柔らかさと憂いを帯び、テンポは緩くなります。「CAROL (CAROL'S THEME II)」と題したバラードは、「IN THE FOREST」と共通するメロディと歌詞を含みながら、異なる角度から光を当ててキャロルの姿を描きます。

アルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に収録された13曲のうち、「CAROL」という物語に関係するのは7曲です。その中の4曲、すなわち「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」、「CAROL (CAROL'S THEME I)」、「IN THE FOREST」、「CAROL (CAROL'S THEME II)」から構成された組曲は、「CAROL」のエッセンスが凝縮されており、「CAROL」をステージに蘇らせる役割を果たします。

四つの曲をつないでみると、浮かび上がるのはキャロルという少女の姿です。物語の鍵を握る特殊な存在としてのキャロル、平凡な日常の中で日々を過ごすキャロル、まったく予期しなかった世界を駆け巡るキャロル、疲れ果ててその場に崩れ落ちそうなキャロル。ひとりの少女をさまざまなメロディやアレンジで多面的に表現する組曲。キャロルは聴き手の中に生まれ、躍動します。物語はステージや小説で補完され、それでも生じるいくつもの隙間からは受け取った人々のイメージが湧き出し、各々の記憶と混ざり合い、物語は各々の独自性をまといます。

***

「CAROL」を思い浮かべるとき、人々の脳裏には何が映し出されるのでしょうか。ウツの歌が蘇るのか、小室さんが弾くピアノの音が蘇るのか、木根さんが宙を舞う姿が蘇るのか。あるいはしなやかに踊り、ステップを踏むパニーラの姿を思い出すのかもしれません。かつてリアルタイムで刻んだ記憶は、どのような形で2015年に呼び戻され、像を結んだのだろう?

オリジナルと2015年の「CAROL」が混ざり合い、記憶は刷新されます。オリジナルを体験した観客の数だけ、その記憶のピースの数だけ、記憶のマッシュアップは存在します。混ぜるための記憶を持ち合わせない人々は、2015年の「CAROL」を記憶の土台とします。リアルタイムで積み上がる記憶の中に、スクリーンに広がる記録が混ざっていく。TM NETWORKが2015年に「CAROL」を再び演奏することで、観客の記憶はそれぞれに刷新され、新たな時間が堆積します。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)

GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.09.22
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by mura-bito | 2015-09-22 15:43 | Music | Comments(0)
CAROL2015 PART2
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


不意に静寂が破られ、音が戻ってきます。ロンドンの人々も何事もなかったかのように動き出します。音が止まる前と同じような、どこか違うような。一度音が消えた地球は、その永遠の一瞬の中で、歯車ひとつほどの違いなのかもしれませんが、何かが変化して、再び回り始めます。

軽快に刻むリズムが悪魔たちのカーニバルを引き寄せます。異世界に紛れ込んだキャロルは、音を盗み、呑み込んで世界を支配しようとする怪物、ジャイガンティカによって囚われます。ライーダと呼ばれる手下の悪魔を使って、ジャイガンティカはこの世界を蹂躙していきます。仲間と引き離され、ジャイガンティカの居城に連れてこられたキャロル。不気味な色の月が光る夜空のもとで音を盗む儀式が始まり、「GIA CORM FILLIPPO DIA」という呪文が響き渡ります。

「GIA CORM FILLIPPO DIA」は物語「CAROL」の一幕を描く曲のタイトルでもあります。キックとハイハットとパーカッションで構築されたリズムに、小室さんがソフト・シンセを、木根さんがアコースティック・ギターを重ねます。オリジナルではパーカッションの音が走る中でシンセサイザーの音が重なり、からりとした、明るい印象を受けます。その一方で歌詞は頽廃的な言葉が並び、悪魔が熱狂するカーニバルを表現します。音や歌詞のモチーフとして、The Rolling Stonesの「Sympathy For The Devil」を意識していたのかもしれません。「CAROL」における悪魔はファンタジーにおける悪役というくらいの存在なので、宗教的なトピックとしての悪魔ではありませんが。

***

スクリーンには1988年から行なわれたツアーの様子が映し出されます。巨大な目と牙を持って音を呑み込むジャイガンティカの前で、無数のライーダが踊り狂います。音を盗み、世界を破滅に導かんとするカーニバル。黒っぽく浮かび上がる体に、鈍く光る二つの眼が不気味な雰囲気を生み出します。ライーダに扮したダンサーたちは槍を使った殺陣の演舞を披露したかと思えば、興が乗ったか調子に乗ったか、ブレイクダンスまで飛び出します。

色とりどりの光が縦横無尽にステージを、そして観客席を駆け巡ります。かつては緑色に限定されていたレーザー照明は、今やどのような色も作り出せます。赤、青、白、黄色。光の乱舞は、否応なしに観客のボルテージを上げます。ポップスのライブでも使われており、ファーストラインと言ってもいいのかもしれません。大きな会場に多彩な色の橋を架ける。その中にいると思うだけで気持ちは盛り上がります。光が人の心を支配する。功罪はありつつも、光はエンタテインメントに欠かせない要素でしょう。

***

小室さんはソフト・シンセにボーカロイドのような声を設定して、ボーカルのメロディを奏でます。細切れに響くボーカロイド音声に加えて、ダブステップ系の音が混ざり、カラフルなレーザー光が乱舞することで「GIA CORM FILLIPPO DIA」はファナティックな色彩を帯びます。それを塗り固めるように、新たな色を重ねるように、アコースティック・ギターの扇情的な音が響きます。小室さんが指し示すと、光が木根さんに集まり、その演奏はさらに熱を帯びます。

木根さんがアコースティック・ギターでロックを感じさせる激しいプレイを披露する姿は「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」の「GET WILD」を想起させます。アコースティック・ギターを弾くのはデビュー当時からの役割ですが、サウンドにおけるつなぎとして使われたり、バラード調やフォーク調の曲で爪弾いたりコードを弾いたりするのがメインでした。ギタリストとしての木根さんの役割は、この一年で広がりを見せます。従来のようにサウンドの内部に組み込まれるパーツでありながら、時に外装を構成するパーツにもなる。ギターを高く掲げてかき鳴らし、このエレクトロ・カーニバルを盛り上げます。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)

GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.09.06
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by mura-bito | 2015-09-06 15:56 | Music | Comments(0)
CAROL2015 PART1
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


女性がカウチに座っています。やがて、男性が姿を現わし、カウチの後ろに立つ。女性の名前はパニーラ・ダルストランド。男性は小室さんです。違う角度から光を当ててみると、その光景は異なる意味を持ちます。潜伏者のひとりが別の潜伏者に会いに来た、というシーン。感情を見せない音が連鎖し、物語の扉を開きます。

ステージでは小室さんがソフト・シンセを弾き、1988年に生まれた物語「CAROL」を2015年に呼び寄せます。「キャロル」が異世界を旅して音を取り戻すファンタジーから、異なる意味を付与されて、潜伏者としての役割を果たす「キャロル」になるのが2015年の「CAROL」です。1988年の「CAROL」では、パニーラは物語の主人公という役割を与えられ、2015年の「CAROL」では潜伏者として、最後の任務を遂行します。

***

ロンドンの街並みが広がります。古都を象徴するような建物、ロンドン・アイと呼ばれる観覧車、二階建てのバス。ソフト・シンセの音が広がり、バンナさんのエレクトリック・ギターと木根さんのアコースティック・ギターが混ざり合い、ドラムの音が会場を包み込みます。物語の中に絡め取られていくようです。女性の声でポエトリー・リーディングのように言葉が流れ出ます。曲は「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」。オリジナルでは男性の声にエフェクトをかけていましたが、2014年の再録では女性の声を使用しました。オリジナルで見られた地を這うような不気味な瘴気はなく、暗い森の奥から手を差し伸べるように導く声をイメージします。

ウツは白地に黒い線が入ったシャツにダークグレーのジャケットを着て、サングラスをかけて姿を現わします。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」のエンディングと同じ格好です。ウツの歌は言葉のひとつひとつを丁寧につなぎ、物語を紡ぎます。若い頃とは違う、タフな声です。技術的にも工夫しているはずですが、ボーカリストとしてステージで光を浴びて曲の中心となっていることの自信、芯が声に出ています。音で「CAROL」を表現するのが小室さんと木根さんの役割ですが、声だけで表現するのがウツの役割、ウツにしかできない役割です。

組曲「CAROL」の中で、「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」と続く「CAROL (CAROL'S THEME I)」はセットで演奏されます。前者のアウトロから後者のイントロがゆるやかにつながっています。最初の構想では40分に渡る曲をつくることを考えていたそうですが、トラックの連結は、長大な曲にしようとしていた名残だったのかもしれません。「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」でのロックを感じる演奏は、グラデーションを描いて「CAROL (CAROL'S THEME I)」にシフトします。

***

「CAROL (CAROL'S THEME I)」はバラード調に始まり、次第に激しく波打つドラマが展開します。春の訪れに、移ろう季節を感じる歌詞です。雪がとけてようやく春がやってきた街の中、少女はポスターを眺めています。誰かの手描きのポスター。それは誰かからのメッセージを発しています。行き交う人は誰も気に留めない中、彼女だけはそのシグナルを受信します。やがて彼女は、そのメッセージに導かれるようにして、『不思議の国のアリス』のように、この世界とは別の世界に潜り込むことになります。

夜の帳が下りようとしているロンドン。灯り始めた街の光を反射するテムズ川。濃紺に染まる空にシルエットを浮かべるビッグ・ベン。「CAROL (CAROL'S THEME I)」を演奏するTM NETWORKの背後で、ロンドンの風景が映っては消えます。ロンドンに生きる人々の姿、何気ない日常が切り取られ、スクリーンを彩ります。ロンドンで生まれた音楽はロンドンに還っていくのでしょうか。ロンドンの映像との親和性が高く、一体化しているとさえ思える曲です。

街にあふれる喧騒が響く中、ウツが腕を上げ、すっと手を横に動かします。その動作に合わせて音が消えます。ロンドンのストリートを歩く人々もまたぴたりと止まり、微動だにしません。ウツがステージを去ります。静寂は続きます。観客は息を潜め、ステージを凝視します。永遠のような、一瞬のような音の空白が会場を包みます。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)
GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.09.02
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by mura-bito | 2015-09-02 22:09 | Music | Comments(0)
QUIT30 HUGE DATA PART1
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


ベースの音がゆるやかに流れ出て会場を満たし、シンセサイザーの音が身体に染み込むように響きます。流れ出すメロディは「SEVEN DAYS WAR」です。LEDスクリーンに映る男性はバトンを取り出し、放り投げます。潜伏者の一人がそれを拾い上げ、しばし眺めた後、どこかに向けて放ります。バトンは弧を描き、地球を巡って、潜伏者から潜伏者へと役割を伝えていきます。

光の束がTM NETWORKの三人を捕らえます。オープニングの映像とともに会場に流れていた「SEVEN DAYS WAR」は、ウツのボーカルを合図にして生演奏に切り替わります。ウツの左隣で木根さんがギターを弾き、反対側では、サングラスをかけた小室さんがショルダーキーボードを弾きます。

スクリーンの一部が開き、サポートのふたりが演奏している姿が見えます。ギターを弾く松尾和博(バンナ)さんは、2013年からTM NETWORKのサポートを務めており、『DRESS2』や『QUIT30』といったアルバムの録音にも加わっています。一方、ドラムとパーカッションを担当するRuyさんは2012年のライブ「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」から参加し、すべてのライブで演奏してきました。若手でありながら、回を重ねるにつれ、ベテランのミュージシャンに引けを取らないプレイを披露するようになりました。

***

多くのファンの記憶に残る曲は、それだけ多くの場面とともにリプレイされます。「SEVEN DAYS WAR」を聴いて、映画のワンシーンが蘇る人もいれば、TMNが終了した1994年のライブを思い出す人もいます。人によっては、2004年のライブにおけるギタリストの共演(松本孝弘、北島健二、葛城哲哉)を思い浮かべるのかもしれません。25年近い時間の積み重ねは、多くの人の記憶の集積でもあります。いくつものピースが集まって、それは曲の一部になっているとも言えます。

「SEVEN DAYS WAR」がリリースされたのは1988年。TM NETWORKの活動が軌道に乗り、プロジェクトの規模が大きくなっていく、その渦中でした。「GET WILD」、「RESISTANCE」、「BEYOND THE TIME」というようにタイアップした曲が並び、「SEVEN DAYS WAR」も映画『ぼくらの七日間戦争』の主題歌として世に出ます。さらに、小室さんは映画の音楽、サウンドトラックを手がけました。

1988年の終わりには、物語を軸にしたコンセプト・アルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』がリリースされます。「CAROL」というプロジェクトのポイントは音楽と物語の融合です。物語を軸にしたステージはTM NETWORKの初期から取り組んでいたことですが、プロジェクトの規模が最大になったのは「CAROL」ですね。デビューの頃から試行錯誤してきたことが、いくつかの流れを生み、「CAROL」として結実しました。小室さんが映画音楽を制作したことも、少なからず『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に影響したと考えられます。

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「QUIT30」と「HUGE DATA」を組み合わせたロゴがスクリーンに表示され、向こう側に吸い込まれるようにして消えます。闇がスクリーンと会場を包むと、わずかな間の中で緊張感が高まります。張り詰めた空気を破壊するように、爆発音が鳴ります。差し込む光と立ち込めるスモークの中に、三つのシルエットが浮かびます。小室さんと木根さんが歩を進め、それぞれのブースに立ちます。小室さんは客席から見て左側、木根さんは右側です。

微細に刻まれるハイハットの音。その音に導かれるようにピアノの音が鳴り、組曲「QUIT30」の最初のパート「Birth」の始まりが告げられます。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」ツアーのときから音が整理され、ぎゅっと引き締まった印象を受けます。

今回のライブでは、組曲「QUIT30」は「Birth」だけが演奏されました。「SEVEN DAYS WAR」とともに、ツアーの記憶と今回のライブをつなぐように披露されます。スクリーンにはジャカルタやロンドンの一角が映し出されます。街の雰囲気も、人々の表情も異なる都市。異なる記憶、異なる体験をつなげると、「Birth」はその役割を終えます。小室さんはソフト・シンセでアコースティック・ピアノの音を呼び出し、コントローラーとしてつないだFantom G6で弾きます。最後は、ピアノの音がバンド・サウンドの余韻を呑み込みます。

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鳴り響くアコースティック・ギターのカッティング。ソリッドな音、硬くてクールな音が広い会場に響き渡ります。装飾的かつノイジーに鳴るエレクトリック・ギターと、ストリングス系のシンセサイザー・サウンドを背景にして、木根さんがかき鳴らすアコースティック・ギターの音が響きます。ウツはリズミカルなハンドクラップで加わります。音は「LOUD」を形成します。

アコースティック・ギターの音が満ちたステージで、ウツは「LOUD」を歌い始めます。バラードと錯覚するような、静かな雰囲気が漂います。サビに入る直前、歌と音が静止し、小室さんが鳴らすシンセサイザーの音をきっかけにして、サビのボーカルと強烈なリズム、特にキックの音が飛び出します。それまで蓄積したエネルギーが一気に放出され、照明もダイナミックにステージを照らします。間奏パートでも木根さんのアコースティック・ギターを中心とした音が展開され、ボーカルが入るとスネアとキックが力強く鳴ります。メリハリのきいたアレンジは、エレクトロやカントリーの空気を漂わせながらも、骨太なロックを感じさせます。

ツアーで新たに加えられたアウトロは、今回のライブでも踏襲されました。テーマ・メロディのリフレインですが、繰り返せば繰り返すほどにその魅力を増すメロディです。ツアーではアウトロのソロをVirus Indigo 2 Redbackで弾いていましたが、今回はソフト・シンセに登録した音を使い、最後はVirus TI Polarで締めます。Virus TI Polarはベルのような音を出すことができます。柔らかい音ながら柔らかすぎず、硬さを含みながらも、受ける印象は優しい。音は余韻をかすかに残し、次の展開である「CAROL」の扉の前に観客を導いていきます。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)
GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.08.31
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by mura-bito | 2015-08-31 21:44 | Music | Comments(0)
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA (INTRO)
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


2015年2月に行なわれたライブ「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」のBD/DVDがリリースされました。1月まで続いたツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」の一部を踏襲するも、流れを汲むことはせず、曲目や演出を大きく変更したライブです。ツアーでつなぎ合わせた物語のピースをもとにして、時計の針を進めるように物語の続きを語ります。

2012年のライブ「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」から始まった物語のキーワードは「潜伏者」です。潜伏者は宇宙から地球に降り立ち、人間の営みを調査して報告するという任務を遂行しています。それは現代だけでなく過去も含まれており、人間として社会に溶け込んでいたり、時としてエキセントリックな存在として人間たちの思考や行動に影響を与えたりしました。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」では、多数の潜伏者が地球のあちこちに存在し、それぞれのミッションに沿って活動していることが語られました。

TM NETWORKも潜伏者として地球を調査してきました。人間の歴史でいえば1984年に地球にやってきて、その任期は三十年と定められていました。そのままミッションは終わるはずでしたが、終了を目前にして、ひとりが予期せぬ動きを見せます。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」では、2012年に始まって形を少しずつ変えながら続いてきた、潜伏者としてのTM NETWORKの物語を閉じます。

今回のライブにおいて重要なポジションを占めるのが「CAROL」という物語です。ロンドン、バース、そして異世界を舞台に、「キャロル」という名の少女が盗まれた音を取り戻すために戦います。記憶を巻き戻すと、この物語が生まれたのは1988年です。物語をコンセプトに据えたオリジナル・アルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』は、1988年にロンドンのスタジオで録音されました。大規模な全国ツアーも組まれ、「CAROL」は多くのファンの記憶に残る物語となりました。

『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』には物語に関連する曲と、その枠外の曲が収録されています。物語を構成する曲のうち、中心的なものを抽出して組み合わせたのが組曲「CAROL」であり、節目のライブで演奏されました。組曲「CAROL」は2014年の感性と技術で再構築され、オリジナル・アルバム『QUIT30』に収録されました。今回のライブでは、新たに録音された組曲を基にして、アルバムには収録されていない曲も組み込み、「CAROL」が描かれました。



TM NETWORK – QUIT30 (Sampler)

ステージ後方には巨大なLEDスクリーンが設置されています。スクリーンに映し出される映像のうち、とりわけ目を引くのがロンドンの街並みやその間を行き交う人々です。小室さんが自ら撮った映像も使われています。いつだったか、オリンピックの前後でロンドンの雰囲気は変わった、と小室さんは言いました。ビデオカメラでロンドンの姿を切り取りながら、アーティスティックな直感によって導き出したことなのでしょうか。

1988年の「CAROL」と2014年の「CAROL」の間には、二十五年という時間が横たわっています。テクノロジーの進化、ミュージシャンやプロデューサーとしての成熟といった、TM NETWORKを取り巻く変化は、「CAROL」という作品のテイストやクオリティに影響を与えています。1988年に生まれた「CAROL」を2014年にアップデートし、2015年にステージで表現する。これはもう単なる音源のリメイクではなく、異なる世界を生み出す行為です。

「CAROL」という物語は、2012年から始まった物語に組み込まれ、新たな役割を得ました。過去の記憶と記録がステージと観客席に渦巻く中、新たな記憶がインプットされ、そしてそれは新たな記録として残る。小室さんの言う、オリンピックによって変化したロンドンの空気に似ています。メロディは同じだけど、音や声の雰囲気は変わっている。それをノスタルジックに捉える人もいれば、ポジティブに捉える人もいます。

ストーリーテラーを務めるのは「キャロル」です。三年間の物語において、「キャロル」は異なる姿で登場し、異なる役割を割り振られました。「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」では、「CAROL」の記憶をサーチして呼び出すトリガー。「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」では、潜伏者を「生成」するプロセスを表現するための舞台装置。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」では、潜伏者の「役割」を伝えるためのガイド。

そして、「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」では、ひとりの女性が物語を進めます。彼女は、「CAROL TOUR '88~'89」というツアーで、物語の主人公「キャロル」を演じました。彼女もまた潜伏者のひとりであり、物語の中で「キャロル」という役割を与えられました。潜伏者の物語は「CAROL」も含んでいたのです。それは物語が物語をくるむ、アラビアン・ナイトのような世界。かつて「キャロル」という役割を担ったパニーラ・ダルストランドが再び登場し、2015年の「キャロル」として、2012年に始まったTM NETWORKストーリーの終幕を告げます。

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)
GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.08.26
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by mura-bito | 2015-08-26 21:07 | Music | Comments(0)
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/The Beginning Of The End III
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


潜伏者のひとりは「キャロル」に向かって、君には特別な力がある、と言いました。太陽が昇る音が聞こえる。月の石が鳴る音が聞こえる。「キャロル」は、潜伏者たちが集めたピースをつなぎ合わせてみましょう、と語りかけます。潜伏者たちにも特別な力があります。それは創造力であり、情熱、そして想像力。けれども、あなたたちにも特別な力があるのです。それを目覚めさせるものこそ、音楽なのです。それを忘れないように。最後に "Good luck." と口にして、「キャロル」の役割は終わります。

三人の潜伏者が姿を現わします。ひとりは、白地に黒い線で模様が描かれたTシャツ、ダークグレーのジャケットを着て、サングラスをかけている。ひとりはネクタイを締め、スーツに身を包み、いつものサングラスをかけている。そして、もうひとりは赤を基調としたブルゾンを着て、少し大きめの濃い色のサングラスをかけている。

スネアの音がトリガーとなって「The Beginning Of The End II」の演奏が始まります。このパートは組曲「QUIT30」の終幕の開始を意味します。組曲の前半パートで使った言葉を集めて、新たな言葉と組み合わせて歌います。深く沈み込むベースの音と輝きを放つシーケンス・サウンドが背中を押すように曲を進めます。音が積み重なるにつれ、物語のエンディングが近づいてくる。

電源マークが緑色に光り、ゆっくりと明滅します。曲は、組曲「QUIT30」の最後に位置するパート「The Beginning Of The End III」にシフトします。記録されたベースの音と女性のコーラスとともに、ギターとドラムがテクニカルに音を刻みます。音は物語の背景として、エピローグの進行を見守ります。やがて、電源マークの色が変わり、赤く光り始めます。

三人の潜伏者が集まり、いくつかの言葉を交わします。小さくうなずき、ひとりがその場を去ります。潜伏者は港の側に建つバーに入ります。客のいない真昼の店で、店主と何事かを話しています。やがて席を立ち、ドアを開けて外の世界に踏み出します。ギターケースを下げ、空を見上げています。この潜伏者は、これからロック・ミュージシャンとして潜伏し続けるのでしょうか。

もうひとりの潜伏者が歩き去ります。どこかでバトンを拾い、車の運転席に乗り込みます。アクセルを踏み、夜の道を進んでいきます。車を停めると、おもむろにノートパソコンのような装置を起動させます。モニターに表示されたのは "Next mission is commanded." という文字列。この潜伏者はサラリーマンの顔を持ちながら潜伏を続け、いつか、駅のプラットフォームで少女からiPodを渡されるのかもしれません。

最後の潜伏者が姿を消します。人と物がひしめく建物の中を歩きます。アジアらしい混沌とした雰囲気を醸す、どこかのバザール。売り物にあふれる狭い通路や物置のような一帯を通り抜け、人をかわして前に進みます。何かを探しているのか、誰かを探しているのか、あるいは行くべき場所はすでにプログラムされているのか。歩みは止まらぬまま、やがてその姿は消えて見えなくなります。

黒地に白抜きの線で描かれた世界地図が目の前に広がります。三つの電源マークが地図の上で赤く光ります。ひとつはニューヨーク、もうひとつはジャカルタのあたりで光ります。そして、残るひとつの電源マークが表示されているのがロンドンです。この古都に、TM NETWORKの物語を語る上で欠かせない人物がいます。増え続ける大量のデータとともに、物語の舞台はロンドンに移ります。


2015.08.15
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by mura-bito | 2015-08-15 08:29 | Music | Comments(0)

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