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TM NETWORK 30th FINAL (OUTRO)
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


2012年4月の「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」から始まった今回の活動の呼び水となったのは、同年3月のチャリティ・イベント「All That LOVE -give & give-」です。プリンセス・プリンセスや米米CLUBと共演したこのイベントは、最初はウツに声がかかったそうです。そしてウツの提案により、TM NETWORKとして出演することになりました。

イベントの準備が進む中で「これだけで終わるのは寂しい」となったらしく、TM NETWORKの単独コンサートが企画されました。それが、日本武道館で行なわれた「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」です。このコンサートがあったからこそ、「I am」という新曲も生まれ、いくつもの印象的なステージをこの目で見ることができました。



TM NETWORK 30th FINAL Trailer PART1

2015年まで続いたTM NETWORKストーリーは、「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」のコンセプトを基にして展開されました。「TM NETWORKが活動した三十年は潜伏期間(incubation period)だった」というコンセプト。1984年4月にデビューしてから2015年3月に至るまでの三十年間を、物語を通して総括しました。三年を費やして描かれたのは「潜伏期間の終わり」と「次の潜伏期間の始まり」です。

アニバーサリーとして新作を発表する、ライブを企画するときは、誰しも「焼き直し」を意図しているわけではないでしょう。それでも代表曲や懐かしい曲を織り交ぜることは必至であり、もちろん誰も責めることはない。むしろファンは嬉しいはずです。懐かしい曲を演奏し続けることは、アーティストにとって是か非かは人それぞれでしょうが、新しい曲でも評価されたいと思うのもまた偽らざる心だと思います。懐かしい曲を聴きたいファンに応えるのか、新しい曲で現在進行形の姿を見せるのか。アニバーサリーはそのせめぎ合いでもあります。

その点で、「潜伏期間」というマテリアルを組み込んだ描き方は、個人的には絶妙だったと思います。つまり、新旧の曲を組み合わせることができたのは、このマテリアルで作り上げた物語があったから。しかも、新しい物語を作り出したのではなく、自らの軌跡をモチーフにしたものなので、ずっと応援してきたファンを無理なく巻き込むことができました。懐かしさを味わいたいファンも、新しい世界を見たいファンもカバーできます。

TM NETWORKは初期から中期にかけて物語性の強い活動を展開してきましたが、その時期の「宇宙から来た訪問者」や「イギリスに住む少女キャロル」をピックアップして、今回の物語に組み込みました。全体としては新しい物語でありながら、いくつかのパーツは過去に残してきたものを磨いて使っています。こうしてできた新しい物語の中で、過去の曲は、当時のコンセプトとは異なる意味を付与され、演奏されました。とてもユニークな構成だったと思います。

そうした中で、過去のライブを体験していない自分にとっては、初めて生で聴けた曲がいくつもあり、とても嬉しく思ったものです。「FOOL ON THE PLANET」、「永遠のパスポート」、「GIRL」、「NERVOUS」、「CHILDREN OF THE NEW CENTURY」、「HERE, THERE & EVERYWHERE」、「一途な恋」、「DIVE INTO YOUR BODY」、「RESISTANCE」、「ACCIDENT」、「RAINBOW RAINBOW」、「LOOKING AT YOU」、CAROL組曲、「GIA CORM FILLIPPO DIA」、「JUST LIKE PARADISE」、「月はピアノに誘われて」、「あの夏を忘れない」などを聴くことができました。

アレンジやミックスで新しい印象を受けたのは「WE LOVE THE EARTH」、「ACTION」、「KISS YOU」、「LOVE TRAIN」、「1974」、「IGNITION, SEQUENCE, START」、「HUMAN SYSTEM」、「COME ON LET'S DANCE」、「金曜日のライオン」、「CUBE」、「SEVEN DAYS WAR」、「TIME TO COUNT DOWN」、「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」、「RHYTHM RED BEAT BLACK」、「SCREEN OF LIFE」などです。そして代表曲「GET WILD」はサウンドも演出も刷新され続けました。「I am」や「LOUD」も新曲でありながら幾度となくアレンジが変わりました。そこに存在していたのは、確かに存在していたのは、現在進行形で変わり続けるTM NETWORKです。



TM NETWORK 30th FINAL Trailer PART2

「TM NETWORK 30th FINAL」を終え、TM NETWORKが残したのは一本のバトン。そしてこのバトンを委ねるというメッセージを残して、三年にわたるTM NETWORKストーリーは終わり、デビュー三十周年という節目も終わりました。一連のライブで演奏された曲のラインナップを見ると、すべての時代を網羅的に巡っているため、ある程度「やり尽した」感はあるのかなと思います。

…と思わせておいて実は、という展開もTM NETWORKではあり得ます。このライブの後、小室さんは『スター・ウォーズ』を引き合いにして、TM NETWORKが続くのか終わるのかは意図的に曖昧にしていました。匙加減ひとつで事態は大きく変わると思います。さてさて、TM NETWORKは再び地球に降りてくるのでしょうか。それとも新たな物語の中で再会することになるのでしょうか。とりあえず今言えるのは「そのときは新たな音楽に出会えるに違いない」ということですね。次なる指令まで潜伏すべし。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.12.26
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by mura-bito | 2016-12-26 21:49 | Music | Comments(0)
30th FINAL 23: ELECTRIC PROPHET
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


潜伏期間(incubation period)のピリオドに向かって、デジタル時計の数字はカウントダウンを続けます。すべてのミッションを終えた潜伏者たちは地球を去ろうとしています。大きな円を描き、空から降り注ぐ光。潜伏者は光に包まれ、やがてその姿は見えなくなりました。「ELECTRIC PROPHET」のメロディが繰り返される中、目の前に広がるのは満天の星空です。無数の星々が散りばめられた、夜空という名のスクリーン。そこから潜伏者はやってきて、そしてミッションの終了とともに、その向こうへ帰還します。

大地を踏みしめる足で、地球の存在を感じます。視線を空から地上に移すと、そこには一本のバトンが置かれていました。バトンは1980年代におけるTM NETWORKのコンサートにおいて、それぞれの物語に関連するメッセージを観客に伝える役割を果たしてきました。「TM NETWORK 30th FINAL」においても、我々はバトンを通してメッセージを受信します。三十年間という潜伏期間を締め括るために送られた、TM NETWORKからの最後のメッセージです。

You are a part of us and became one of the investigators who sympathize with the sound of hope. Your mission is to incubate until the next instructions are given. We hope to see you in the future.

これまで三年にわたり、TM NETWORKという潜伏者たちの物語を観てきた観客は、実は「次の潜伏者」だったのです。観客、すなわち我々もまた最初から物語の一部として取り込まれていました。我々はただライブを観て新曲を聴いていたわけではなく、ただTM NETWORKの軌跡を懐かしんでいたわけでもありません。我々はTM NETWORKからの調査報告書を受け取ることで、次の潜伏者としての活動の準備を行なっていました。

我々は最終調査報告書「TM NETWORK 30th FINAL」を受け取ります。そして、最後のページで「新たな潜伏者として潜伏せよ」というミッションを与えられました。次の指令があるまで、それぞれの場で潜伏すること。バトンを受け取ったその瞬間から、我々の潜伏期間が始まったのです。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.12.19
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by mura-bito | 2016-12-19 21:56 | Music | Comments(0)
30th FINAL 22: FOOL ON THE PLANET
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


潜伏期間(incubation period)として定められたのは、地球の時間に換算すると三十年。宇宙のどこかからやってきた潜伏者にとって三十年は、どれくらいの長さを意味するのでしょうか。一瞬で過ぎ去って何も残らないものだったのか、あるいは有限だからこそ感じる価値があったのか。永遠の中では、限りある時間というものは、儚く消える雪の結晶のように特異な存在なのかもしれません。

時間という物差しが別の星、あるいは別の銀河でも一定とは限らないのですが、少なくとも地球において三十年は、世代がひとつ変わるほどの時間です。ポップ・ミュージックが栄え始めてから、ひとつのグループが三十年間続くことは、決して簡単なことではありません。TM NETWORKは、数年のインターバルをところどころに挟みながら三十年という時間を積み上げ、音楽を残してきました。

「TM NETWORK 30th FINAL」の最後に演奏されたのは「FOOL ON THE PLANET」です。この曲は「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」の最初に演奏され、三年かけて構築されたプロジェクトの起点となりました。プロジェクトを締め括るために、再び「FOOL ON THE PLANET」は演奏されます。青い光に染まったステージで、白く明るい光が三人を照らします。天井に見える光源の白い点は夜空に瞬く星のようです。

「FOOL ON THE PLANET」のメロディはとても優しく、滑らかです。個人的にライブで初めて聴いたのは「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」ですが、包容力と言うべきか、オーケストラのようなものとは異なる壮大さを感じました。シンセサイザーが生み出す壮大さ、荘厳さがあります。圧倒するような壮大さではなく、包み込んで温めるような雰囲気。満天の星空は、地上で生きる人々を優しく包み込みます。

歌詞が描くのは、夢を抱き、周りから冷めた目で見られようとも、行くべき道を進んでいこうとする人間の姿です。TM NETWORKが地球に降り立ったとき、最初に見たものは何だったのか。それは地球で生きる人々の姿。時が積み重なって巡っても、呼吸して生きる場所が変わっても、交わす言葉が違っても、地球の人々はそれぞれの形で、色とりどりの夢を抱きます。夢を叶えることを諦めたり、ささやかな夢すら見ることすらできなかったりする中で、それでも夢を追う人々。その姿を目の当たりにして、潜伏者たちは調査報告書に記します。三十年の潜伏期間において、折に触れ、夢追い人たる人間の姿が記録されてきました。

シンセサイザーとドラムの音は双璧をなすように、それぞれ特徴的な響きを聞かせてくれます。シンセサイザーの音は柔らかく、インテリジェントな雰囲気を醸し、対照的にスネアの音が激しく、強烈に響きます。スネアから生み出される分厚い音は、シンセサイザーと同じくらいに「FOOL ON THE PLANET」を象徴しています。そして、スネアの音が激しく鳴らされるたびに、幕が少しずつ下りていきます。スネアの音が止むと、シンセサイザーの音が残響のように漂い、物語の終わりを告げます。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.12.12
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by mura-bito | 2016-12-12 21:24 | Music | Comments(0)
30th FINAL 21: I am
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


潜伏者のひとりが天を指し示します。それは雲を貫き、空を抜けて、宇宙にまで届くサイン。スペースシップが呼び寄せられ、光が潜伏者を照らします。「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」の冒頭のように、光がぐるりと輪になり、円を描きます。スペースシップはゆっくりと地上に近づき、潜伏期間を終えようとしている潜伏者たちを迎えにきます。

ソフト・シンセの音がスモークのようにステージを観客席を覆い始めます。リズムが鳴り、光が明滅し、視覚的にも聴覚的にも、じわじわと高まるエネルギーを感じます。それはスネアの音とともに弾け、ギターを始めとした他の音が放出されます。曲は「I am」。

「I am」はシングルとして2012年にリリースされました。前のアルバムやツアーから四年ほどの(永遠にも思えた)インターバルを置き、「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」の開催に合わせて発表されました。ギターを弾いているのは、limp bizkitに在籍したこともあるマイク・スミスです。その一年後、ソフト・シンセの音を導入して音をアップデートした「I am 2013」と「I am -TK EDM Mix-」という二種類のリミックスが発表されました。

さらに、一年が経ってリリースされたアルバム『QUIT30』には、オリジナル・ミックスを基にして、音のバランスやボーカルのエフェクトを調整したバージョンが収録されました。このアルバム・ミックスを手がけたのが、Aerosmithの作品にコンポーザーやエンジニアとして参加しているマーティ・フレデリクソンです。いずれのバージョンも雰囲気が変わり、EDMに寄ったりロックの色が濃くなったりと、それぞれに異なる印象を受けました。

歌詞は日々を生きる僕らの姿や抱えている気持ちを切り取ります。2012年の夏、「35.664319, 139.697753」で行なわれた潜伏活動(渋谷公会堂でのイベント)の中で、小室さんが明かしたところによると、ある朝起床したときに「I am」の歌詞が生まれたそうです。夢に見たのか、あるいは目覚めた瞬間のインスピレーションなのか。浮かぶ言葉を流れ出るままに五線譜に書き留め、「I am」の歌詞の大部分ができたと言います。

三十年の活動において、TM NETWORKには代表曲と言える曲はいくつもあります。「I am」もそのひとつです。「GET WILD」や「STILL LOVE HER」のような、メディアに乗って多くの人の記憶に残った代表曲とは異なりますが、TM NETWORKの音楽の本質に近づける曲という意味でTM NETWORKを代表していると思います。その本質とは、三人の存在ですよね。レントゲン写真を撮ったかのように、三人の存在が浮き上がります。

もう少し具体的に言うならば、三人の声です。三人が声を重ねている曲はもちろん多くありますが、その中でもそれぞれの声の存在を強く感じます。光の三原色のように、それぞれの声がユニークな色を持ち、そして混ざってTM NETWORKの声が形成されている。音も色も波長という点では同じですが、分光スペクトルのように三人の声がそれぞれの色を持ち、それらがひとつになることで太陽光のように聴き手を包む光になる。そんなイメージが浮かびました。

♪Yes I am Yes I am Yes I am human No I Can't No I can't I can't lose the moment♪ と繰り返されるコーラス。TM NETWORKの三人をつなぎ、三角形を描き出します。ステージと観客席をつなぎ、ひとつの空間を作り出します。このフレーズがあったからこそ、2012年から2015年にかけてのTM NETWORKの物語が生まれました。とてもシンプルな言葉の連なりではありますが、とても大事な時間と体験と記憶を生み出しました。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
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月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
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2016.12.01
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by mura-bito | 2016-12-01 22:09 | Music | Comments(0)
30th FINAL 20: BE TOGETHER
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


バンナさんの刻むギターの音が、会場を駆け巡ります。静かに、テクニカルに、しかしその後のバーストを予感させるような演奏です。その後ろをベースの音が漂います。このベースの音は、それだけで曲が分かるメロディを描きます。ベースだけで曲が分かるべきだ、というのは小室さんの主張ですが、まさにそれを体現するベースです。ギターとベース、そして小室さんのシンセサイザーが重なり、機は熟します。

***

ウツの言葉を合図にしてバンドの音が飛び出し、同時に無数の金と銀のテープが宙を舞います。TM NETWORKの初期のコンセプト「金色の夢」を示すかのように、テープは照明を反射してキラキラと光ります。曲は、吹き抜ける風のようにぐんぐんスピードアップする演奏が印象的な「BE TOGETHER」です。木根さんはギターではなくベースを弾きます。木根さんのベース演奏は1999年の「Log-on to 21st Century」で弾いた「CAROL」、2008年の「PLAY SPEEDWAY and TK HITS!!」で弾いた「MALIBU」以来、3回目でしょうか。

他の数々の曲と同様に「BE TOGETHER」もまた、コンサートで頻繁に演奏されてきた曲です。1987年のオリジナル・アルバム『humansystem』に収録された、アルバム用の曲でありながら、コンサートを支える曲のひとつとして重宝されてきました。2014年には音もボーカルも新たに録りなおして、ビート・ロックとEDMがブレンドされたバージョンが『DRESS2』に収録されました。そして「TM NETWORK 30th FINAL」では、オリジナルに近いアレンジで披露されます。

***

これまで演奏された「BE TOGETHER」の中で印象に残っているのは、2013年のコンサート「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」ですね。手術を受けたウツが初めて立つステージで、観客はコンサートへの期待を抱くと同時に、それと同じまたは上回るくらい心配を抱えていました。コンサートは物語をもとにした進行だったため、MCらしいMCが入らなかったのですが、その中でも、「BE TOGETHER」が始まるとき、ひと言「ただいまです!」と言ったウツの笑顔は忘れません。

ウツは痛み止めの注射を打ち、それでも消えない痛みに耐えながら進行したステージでした。そうした状態で迎えたコンサートの初日、幕が下りた瞬間に、TM NETWORKの3人だけになる時間がありました。そこで交わされたのは「3人だけの握手」です。後にも先にもないこの唯一の出来事は、後に出版された木根さんのエッセイに書かれていたエピソードです。「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」を思い出すときに、この「3人だけの握手」が必ずと言っていいほど脳裏をよぎります。

***

スクリーンには、これまでのTM NETWORKを捉えたシーンがいくつも映し出しされます。TM NETWORKが残したいくつもの曲、いくつものミュージック・ビデオは、潜伏者として地球に降り立ったTM NETWORKの「報告書」でもあります。人と人をつなぐ「BE TOGETHER」が終わると、2012年から始まった一連の活動のテーマ・ソングとも言うべき曲にバトンが移ります。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
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月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.11.16
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by mura-bito | 2016-11-16 20:44 | Music | Comments(0)
30th FINAL 19: WE LOVE THE EARTH
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


無機質なループを続ける電子音が響く中、スクリーンは潜伏者の姿を映し出します。夜の闇の中で、転がるバトンを拾う潜伏者。潜伏者がどこかに向かって歩き始め、やがて姿を消すと、今度は地球上の各所や人々が暮らす姿が、いくつも切り出され、スクリーンを埋め尽くします。そして煌びやかなシンセサイザーの音が鳴り響き、一面が青い光に包まれ、蒼く染まります。「WE LOVE THE EARTH」と題した曲が始まります。

この曲の特徴のひとつは、木根さんを中心にして、葛Gも加わって歌われるコーラスです。イントロや間奏、そしてアウトロでも登場し、観客も一緒になって同じメロディを歌います。「GET WILD」とはまた異なる点で一体感を強く抱くことができるのが、この魅力的なコーラスのメロディですね。

「TM NETWORK 30th FINAL」の特徴は、1991年のオリジナル・アルバム『EXPO』の曲が選ばれていることです。「WE LOVE THE EARTH」はシングルとしてもリリースされましたが、このアルバムにもリミックスが収録されています。シングルではポップスの色が強く、アルバムではハウス・ミュージックの色が強調されています。アルバムを掲げた当時の全国ツアーではこのリミックスをもとにして演奏されましたが、以降はオリジナルに沿ったアレンジで披露されています。

***

「WE LOVE THE EARTH」というタイトルは、地球に住む人々の思いが投影されているのと同時に、遠くからやってきた潜伏者が客観的に地球を眺める姿を彷彿とさせます。地球の調査という任務を与えられた潜伏者たちは、地球を愛する人々の思いを記録するとともに、そこに自らの思いも重ねているのかもしれません。地球で人々に紛れて生活をともにする中で、同じ思いを抱くようになったのか。

「潜伏期間(Incubation Period)」が終わったら地球を去る潜伏者は、本来であれば、記憶も心もなく、ただ記録するだけの存在でした。地球に潜伏するための機能として記憶や感情が発動することはあっても、個体として備わったものではなかった。しかし、地球に生きる人々には不思議な磁力のようなものがあり、それは時として生命の奪い合いにもなるけれど、生命を守り合う「心」を潜伏者に付与したのかもしれません。いつしか潜伏者たちに "We love the earth." と感じる心が芽生えていた。地球の重力から離れると、すべて消えてしまうのかもしれないけれど。

柔らかいメロディが、親密な関係を語る歌詞を届けます。ささやかな逢瀬が鮮やかな言葉で綴られた歌詞は、小室さんのペンによるものです。地球への「愛」と目の前の人への「愛」を歌います。ひとつの小さなラブ・ストーリーが、人間と比べてはるかに大きい地球と対比され、強調されて浮かび上がります。小さな存在は大きな存在に包み込まれ、二人の中で果てしなく世界は広がります。

***

地球の人々を観察する潜伏者は、その視点をミクロからマクロにシフトします。点と点が結びつき、そして、より多くの点が集まります。人間は集団をつくり、弊害も甘受しながら、生活を続けています。TM NETWORKはいくつかの時代にタイムマシンで飛び、人々の争いや別れなども調査対象にしてきました。人と人が結びつくことで生まれた悲劇の中から、それでもともに生きることの意味が浮かび上がります。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
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OUTRO

2016.11.02
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by mura-bito | 2016-11-02 22:11 | Music | Comments(0)
30th FINAL 18: GET WILD 2015
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


小室さんが繰り広げたシンセサイザー・パフォーマンスの流れを継ぎ、「GET WILD 2015」と題した最新型の「GET WILD」がスタートします。長尺のイントロとアウトロを、オリジナルのイントロの前とアウトロの後につなげています。ソロのパフォーマンスで使った音を含みながら、スピード感あふれる音が駆け抜けていきます。小室さんはEDMの影響を色濃く反映したフレーズを呼び出し、木根さんがアコースティック・ギターを激しくかき鳴らします。ステージ上で火球が噴き上がります。明るい炎の固まりがいくつも、いくつも噴き上がり、クールなエレクトロニック・サウンドを熱く彩ります。

一瞬の休符を挟み、新たに組み込まれたアウトロが鳴り響きます。むしろ別のインストゥルメンタルをつなげたと言う方が適切なのですが、それまでの盛り上がりがあるからこそこの新しいアウトロも活きる。ソフト・シンセで作られたフレーズはEDMのエッセンスを取り込んでいます。テクノやハウスが無機質と言われるならば、EDMはその反対に位置します。意外と人間らしさが滲み、キャッチーで観客にダイレクトに突き刺さります。他のダンス・ミュージックと同じループ・サウンドでも、観客をアジテートして踊らせる成分を持っているのがEDMです。

TM NETWORKサウンドの進化の痕跡は「GET WILD」にあり。「TM NETWORK 30th FINAL」の会場では、「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」と題して新たにレコーディングされた音源が発売されました(後に音楽配信サイトでも販売)。この音源には、2015年2月の「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」までのライブを経て、それぞれの時点で実験的に盛り込まれた要素が盛り込まれました。イントロやアウトロに追加されたEDM的なフレーズ、Bメロのリズムの変化などがひとつの曲に収められています。そして「TM NETWORK 30th FINAL」では、この音源に音を重ねて披露しました。変わり続けてきた「GET WILD」の最終形態が眼前に広がります。

「GET WILD」の歴史は1987年に始まり、さまざまなリミックスやライブ・アレンジを経て、EDMというフィールドにたどり着きました。2015年のサウンドは、TM NETWORKにおけるEDMスタイルの総仕上げとも言うべきものです。もともと「GET WILD」は当時の先端的ジャンルであるユーロビートを意識していたとされます。その後はロックやテクノ、トランスの要素を取り込んで姿を変えてきました。僕はそれを「改造」と呼んでいます。音楽的テクノロジーの進化とともに変わり続けてきた「GET WILD」には、やはり改造という言葉が似合う。

経年劣化による補修ではなく、新たなパーツを組み込んで、新たな性能を得るための改造。EDMへのシフトチェンジは、新しいiOSのリリースに例えられます。それもただのアップデートではなく、それまでのテクノロジーでは実現不可能だった、アップグレードしたiOSで実装された機能(例えばSiri)のようなものです。もちろん、ドラスティックなアップグレードに対応できないファンもいます。それでもやはり、AppleファンがAppleファンであり続けるように、どのような「GET WILD」が披露されてもコアの部分が同じであれば、ファンは離れることはありません。「GET WILD」はTM NETWORKとファンをつなぐ、最も強いパイプです。イントロの3音が鳴れば、すべてのファンのスイッチがオンになる。変わり続けてきた曲であると同時に、TM NETWORKの変わらない部分、守り続けてきた核が埋め込まれた曲です。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
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CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
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OUTRO

2016.10.25
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by mura-bito | 2016-10-25 21:25 | Music | Comments(0)
30th FINAL 17: TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


シンセサイザーの音と、会場を駆け巡る光、ステージ奥のスクリーンに表示される映像。それらの中心に小室さんが立ち、音を操りながら、リアルタイムで新しい音楽的空間を作り出していきます。シンセサイザーを使った、予測不能なサウンド・メイキング。リズムを鳴らしながら、ソフト・シンセに登録していたフレーズを呼び出して重ね、あるいは入れ替える。その姿はAVICIIやZeddのようなEDMのDJともまた異なる、シンセサイザーを操るオリジナルのDJスタイルです。

***

「SELF CONTROL」や「DIVE INTO YOUR BODY」のリフやフレーズを織り込みながら、EDMらしさを醸すメロディアスなキラー・フレーズやダブステップ系統の音を盛り込み、そして観客を煽ることも忘れずに、どんどん音を変化させていきます。ライブ・ペインティングで絵を描く芸術家のように、シンセサイザーという絵筆を巧みに動かして、壮大な絵画を描きます。

TM NETWORKが再び活動を始めた2012年から、このライブが行なわれた2015年の間に、EDMというジャンルがピークを迎えました。「ピーク」と言うとあとは落ちるだけのような表現になりますが、別の側面から見ると、EDMとポピュラー音楽の同化が始まり、拡散し始めた時期とも言えます。例えばAVICIIはマドンナの曲をリミックスしたりステージでも共演しましたし、ZeddはAriana Grandeに曲を提供しました。いわゆるクラブ・シーンに馴染みのない(僕のような)リスナーにもEDMの音が届くようになったんですよね。2015年あたりにはEDMの音がコマーシャルや音楽番組からも流れてくるようになりました。保守的な日本の業界(音楽にせよ広告にせよ)が意識したかどうかはともかく、EDMが一番「今っぽい」とされる音だということだと思います。

小室さんのパフォーマンスを目の前で観て、そして聴いていると、2004年を思い出しました。トランスの要素を強く反映したサウンドでツアーを行ない、その千秋楽を日本武道館で迎えました。小室さんはハードディスクに入れていたトランス系の音を中心にして、パフォーマンスを披露しました。そこで僕が目の当たりにしたのは、周囲の観客が次々と座る光景です。トランスという音楽が、少なくともTM NETWORKにはそぐわないことを思い知らされた瞬間でした。とても寂しかった。

10年が経ち、小室さんのパフォーマンスは変化しました。未来を求めるあまり過去を否定していた小室さんがスタイルを変え、人々の記憶に残る過去を肯定的に捉えて自らのパフォーマンスに取り込む。そこでEDMという新しい潮流に出会い、貪欲に取り込むことで、過去も現在も未来にもつながる音を紡ぐことができるようになった。会場にいると、周囲から湧き上がる期待を肌で感じることができました。かつて感じた寂しさはなく、目の前で繰り広げられているパフォーマンスへの期待だけがありました。

単調で冗長だったとも言えるトランスと異なり、TK EDMはどんどん変化し、起伏もダイナミックに表現されます。もっとリフレインしてほしいと思わせるフレーズもあっという間に、新たなフレーズに呑み込まれ、それもまた次のフレーズの呼び水となります。この多彩な音、流動的なフレーズこそ、小室さんのシンセサイザー・パフォーマンスのカギです。音を浴びながら、果たして次にどのような音がフレーズが来るのか、僕らはただひたすら期待する。

***

音の奔流が続く中で、赤い光に照らされながら、小室さんは赤く光るJD-XAの鍵盤を叩きます。ほとばしるサンプリング・サウンド。鍵盤は何度も叩かれます。TM NETWORKを象徴するキラー・フレーズが、繰り返し響き渡ります。最後には鍵盤に指を置いたままにして、マシンガンのように音が放たれます。そして鍵盤から指を離し、天を指差してから再び鍵盤に叩きつけます。一際大きい音で、サンプリングされたフレーズが鳴ります。それが合図でした。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.10.16
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by mura-bito | 2016-10-16 21:30 | Music | Comments(0)
30th FINAL 16: あの夏を忘れない
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


静謐な月夜を真夏の太陽が呑み込む。木根さんが歌った「月はピアノに誘われて」が終わると、「あの夏を忘れない」のエレクトロニック・サウンドが会場を満たします。シンセサイザーの煌びやかな音は滑らかにループして、聴き手をダンサブルなリズムに誘い込み、心地好い時間を作り出します。

***

ハウス・ミュージックの色が強く反映された「あの夏を忘れない」はアルバム『EXPO』に収録されました。アルバムがリリースされた1990年代初期、ハウスはダンス・ミュージックにおけるトレンドであり、『EXPO』の音楽的な柱のひとつでもありました。この曲は「WE LOVE THE EARTH」のリミックスや「JUST LIKE PARADISE」とともに、ハウスというテーマを表現する役割を担いました。アルバム自体はハウス一色に染め上げられることなく、フォークやロックも含めた、ひとつの路線に限定しない構成になりましたが、比率はハウスの曲が最も大きい。

『EXPO』の曲がハウスかどうか。音楽のジャンルは境界線が曖昧なことが多く、特にダンス・ミュージックは離合集散を繰り返してきましたよね。ハウスの定義も難しく、しかも小室さんは新しいジャンルを取り込むときは独自のフィルターを通すので、リリースされたときにはオリジナルの味付けがなされています。『EXPO』におけるハウスも、厳密な定義を求めるリスナーには、おそらく「ハウスじゃない」という烙印を押されたのでしょう。

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詞を書いた坂元裕二さんは、『東京ラブストーリー』を手がけた脚本家です。「RHYTHM RED BEAT BLACK」では退廃的で耽美な世界を描き、「CRAZY FOR YOU」では男女の逢瀬(密会?)を描きます。後者では、坂元さんが書いたのは歌詞ではなく台詞です。ウツは宇都宮隆をいうロック・スターを演じ、ハウスの音が狂ったようにループする中で、女性の部屋で言葉を交わします。

「あの夏を忘れない」が切り取るのは真夏のプールか、ビーチか。太陽の光を反射する水面が目の前に浮かびます。水しぶきが光をまとって弾け、水の欠片は肌を滴り落ちます。身体に絡みつくように、心を縛るように、夏が記憶にまとわりつきます。夏の残滓は、時に鮮やかに、時におぼろげに、記憶の中を漂います。描かれた景色は太陽の下での戯れですが、行間には、それを思い出す誰かのメランコリックな姿が見えます。夜の闇に抱かれて、持て余すように夏の記憶を眺めている。

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「あの夏を忘れない」はリリース後の全国ツアーも含め、過去にも披露されていますが、僕がライブで聴いたのは「TM NETWORK 30th FINAL」が初めてです。こうして音をダイレクトに浴びてリズムに身を任せると、音のループに酔います。TM NETWORK流のトランスやEDMを体験してきた身体の中に、ハウスが注入されます。身体にTM NETWORKのダンス・ミュージックが蓄積して、記憶に刻み込まれます。

TM NETWORKを再び動かそうとしていた1990年代末、小室さんは『EXPO』を聴きなおして「アメリカやイギリスの音楽にも引けを取らない」と自負していました。その評価について僕は語る言葉を持ってはいませんが、これらの音はリリースから20年が経った2010年代であってもまったく色褪せていないと思います。個人的には、ユーロビートは「1980年代らしさ」と強固に結びついています。リアルタイムで聴いていたわけでもないのに、どうしてもイメージが引っ張られます。一方で、ハウスはそういった暴力的な結びつきがない。いわゆる「お茶の間」にも浸透したか否か、という違いなのかもしれません。

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ライブでは、バンナさんが刻むギターがとても印象に残りました。TM NETWORKでのバンナさんの役割は、ソロで目立つと言うよりも、小室さんが構築するシンセサイザーを主体としたサウンドに陰影をつけることだと僕は思います。もちろんソロをとることもあるのですが、「刻む」イメージが強く、そしてその音は不思議と中毒性が強く、気付けば耳で追っている。とりわけ「あの夏を忘れない」では、テクニカルに刻まれるギターの音が絡みついてきます。身体に、記憶に。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
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月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
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2016.09.19
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by mura-bito | 2016-09-19 18:33 | Music | Comments(0)
30th FINAL 15: 月はピアノに誘われて
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


目の前に月が姿を現します。青白く浮かぶ月を彩るのは、木根さんの歌声です。

幕間に響いていた音のループが消え、ステージに光が戻ります。木根さんは、裏地がカラフルにデザインされたジャケットを脱ぐと、YAMAHAのキーボードに向かいます。葛Gがアコースティック・ギターを爪弾き、ひとしきり音を会場に馴染ませると、木根さんが鍵盤を押さえ、「月はピアノに誘われて」を弾き始めます。葛Gに加え、Ruyのエレクトロニック・パーカッションが木根さんを支えます。ステージが青く染まると、哀愁漂うラブソングが会場の隅々にまで浸透して、心地好い時間が流れます。

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「月はピアノに誘われて」は、1991年のアルバム『EXPO』に収録されています。TM NETWORKにおいて、木根さんがリード・ボーカルをとった曲は2曲ありますが、そのひとつですね。木根さんらしい、優しいメロディの流れが印象的なバラードです。もうひとつの「LOOKING AT YOU」は、「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」で披露されました。

この曲は『EXPO』のテーマを体現した曲でもあります。『EXPO』は「月とピアノ」をテーマにしており、各曲をパビリオンに見立て、多種多様な要素が一堂に会して交流する博覧会を表現しました。数々のパビリオンは、ピアノの形をした宇宙船の中に広がります。宇宙を漂うピアノ。その窓からは月が、そして地球が見えます。「地球を俯瞰する」という、TM NETWORKの暗黙のテーマも埋め込まれました。

***

「月はピアノに誘われて」で歌われる情景は、幻想的な要素よりは、もっと現実的な空気を感じます。宇宙から地球の一点にぐっとズームして、地上で一瞬一瞬をもがくように生きる人間たちにフォーカスします。それは月の視点です。ピアノの音に誘われて、月が地球に視線を送ります。僕らが夜空を見上げて月の美しさに見とれているとき、月もまた地球のどこかを見ているのかもしれません。

人間が交わすささやかなラブストーリーを、月の光が照らします。真っ暗な中では互いの顔も見えません。それらを照らす光は、月からの贈り物です。ピアノに誘われた月は、柔らかな光を投げかけながら、地球で生きる人々の姿を眺めています。

***

木根さんの歌い方には、優しさが感じられます。木根さんが書いたメロディをウツが歌うときはまた異なる雰囲気が生まれます。フォークが好きな木根さんらしいと言うべきか、TM NETWORKの中では、最も人間らしいというか、体温を感じさせます。小室さんの歌い方は独特と言うには独特すぎるものがありますが、それに比べれば木根さんはストレートです。

たっぷりと円かった月は、気付けば大きく欠け、三日月に変わっています。もうすぐ消えて見えなくなってしまうのか。あるいは「新月」と考えれば、それは終わりではなく始まりです。月はただ満ちては欠け、欠けては再び満ちます。そこに意味を持たせているのは、地上から見上げる人間です。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
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月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.08.29
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by mura-bito | 2016-08-29 22:07 | Music | Comments(0)

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