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音楽と物語に関する文章を書いています。
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[PART2] LINKIN PARK『One More Light』:「今、歌いたいこととは何か」と自らに問いかけ、歌い、演奏したアルバム
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アルバム『One More Light』がリリースされた後、LINKIN PARKから一通のニューズレターが届きました。“ONE MORE LIGHT IS HERE” と題した文章には、アルバム制作に関わるいくつかの事実と思いが綴られています。同じ内容の文章が公式サイトに掲載されています(IT’S HERE: ONE MORE LIGHT)。

バンドは音楽制作を「トンネル掘り」に例えます。何ヶ月も地下に潜って、暗闇の中で悪戦苦闘しながら、新しいもの、自分たちの予測を超えた音楽を捜し求めている。どこにたどり着くかは、たどり着いたその時になった初めて分かる。売れる前も後も、同じようにしてバンドは曲を生み出してきたのでしょう。

One More Light took over a year to make.
Each song started with the question, “what do we want to sing about today?”

アルバムは1年以上をかけて制作され、各曲はひとつの問いから生まれたようです。それは「今、自分たちが歌いたいこととは何なのか?」という自己への問いかけです。

意訳を許してもらえるのならば……揺れ動く世界の中で、十数年のキャリアを積み重ねてきたバンドが、今の立ち位置で作る音楽とは何かを考えた結果、「今この瞬間に歌いたいこと」を形にして送り出してみよう、と。彼らが住むアメリカのこと、Music For Reliefを通じたチャリティ活動、あるいはそれぞれの家族に関する思い。直接的に歌詞に反映されるものもあれば、曲の出発点となったものもあるでしょう。

One More Light is full of personal stories, and perspectives we’re still figuring out.
We dug through our lives as friends, fathers, brothers, and bandmates.

バンドは、パーソナルな視点と広い視野で捉えた物事を音楽に反映させます。アルバムの曲はメンバーの個人的なストーリー(その起点は各自の思いや考え、あるいは過去かもしない)から形作られ、それと同時に個人の枠を越えて、今もなお解明しようとしているこの広い世界を示してもいる、と。

個人は社会の構成員なので、個人の視点は社会を浮かび上がらせ、その反対もまた然り。両者は切り離せず、有機的に絡み合っています。そして、トンネル掘りは音楽に限らず、日々の生活や生きることそのものにも通じます。掘り進めた先で穴が開き、光が見える。そしてまた新たに掘り始め、もうひとつの光を探し求めていく。

To us, listening is an act of generosity.
Thank you for your generosity, and thank you for being part of the Linkin Park community.
Welcome to One More Light.

最後にバンドは “generosity” という言葉を用いてメッセージを締めます。generosityとは「寛容さ」、「惜しみない行為」、「寛大な行為」などと訳されますが、ここでは「バンドの音楽を選んで聴いてくれる、その行為と気持ちに感謝する」という感じになるでしょうか。

バンドにとっての “One More Light” とは、聴き手である僕らなのかもしれません。トンネルを掘り進めていった先には新しい音楽があり、それを聴く人々がいる。

音楽を聴くことが作り手に対する寛大さを示しているとは聴き手の側からは思いもしませんが、改めて考えてみると、僕も自分の書いたものを時間を割いて読んでくれることに感謝の念を抱いています。LINKIN PARKのようなワールドクラスの作り手もgenerosityを大切にする点では自分と同じなのだと分かると、作り手としての気持ちに差はないのだと思えます。
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彼が歌いたかったこととは何だろう? 時間が巻き戻されて違うルートをたどれるとすれば、この先どのような歌を歌うことになったのだろうか?

7月21日の朝、Chester Benningtonが亡くなったというショッキングなニュースが飛び込んできて、声を失いました。数日が経ち、LINKIN PARKのサイトに “Dear Chester” と題した公式のステートメントがアップロードされました。最後のパラグラフに綴られた “Thank you for that gift. We love you, and miss you so much.” が胸にしみます。

ニュースの後でバンドの公式Twitterがアップした彼の画像やMike Shinodaの “Shocked and heartbroken, but it's true.” という言葉をリツイートすると気持ちが少し落ち着き、最新アルバムについての記事を書きかけていたことを思い出しました。中途半端に放置するべきではないと思い、完成させます。

改めてアルバムを聴き、メッセージを読み返して、言葉を足す。そうした行為を続けていると、いつの間にか『One More Light』というタイトルがリリース当時とは異なる響きを持ちます。このような形でというのはあまりにも悲しいことではありますが、期せずして強い印象を残し、忘れることのない作品となりました。
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2017.07.30
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# by mura-bito | 2017-07-30 08:25 | Music | Comments(0)
[PART1] LINKIN PARK『One More Light』:成熟したサウンドが歌を支え、歌声がメロディの魅力を聴き手に届ける
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2017年5月、LINKIN PARKの7枚目のオリジナル・アルバム『One More Light』がリリースされました。先行して「Heavy [feat. Kiiara]」、「Battle Symphony」、「Good Goodbye [feat. Pusha T & Stormzy]」といった曲が公開され、ミュージック・ビデオも制作されました。

『One More Light』のサウンドは、腰を据えて安定した、という雰囲気があります。ヘビー・ロックやラップ・ロックを牽引したかつてのLINKIN PARKからは離れたところにいる、という感じですね。十数年にわたるバンドのキャリアにおいてヘビー・ロックを標榜したのは最初の数年ですが、初期の『Hybrid Theory』や『Meteora』があまりにも有名なので、そのイメージが強い。とはいえ、これまでにリリースされたどのアルバムもアイデンティティを持っています。その中でも、『One More Light』の音づくりはシンプルさが際立つと思います。



LINKIN PARK – Sorry for Now (Audio)

今作をどのように受け取るかは聴き手次第ですが、個人的には「メロディの美しさ、柔らかさ、味わい深さ」を楽しめるアルバムだと思います。アルバムから最初にシングル・カットされた「Heavy」ではKiiaraをゲストに迎えて、Chester Benningtonとの歌の共演を聴かせてくれました。(Fワードを含みつつも)そのメロディは優しく、心をなでるようなイメージが浮かんだものです。「Battle Symphony」もまた流線型を描くChesterのボーカルが美しく、聴いた瞬間に素晴らしいメロディだと思った記憶があります。

アルバムで新たに聴いた曲のうち、例えば「Sorry for Now」では、Mike Shinodaのボーカルをメインに据えて、Chesterがラップのように歌います。二人が歌うメロディは、それぞれに輝き、異なる角度から曲を彩る。リード・ボーカルとラップの担当をひっくり返すというアプローチですが、「包容力を感じさせるMike、シャープに歌うChester」というように各自の歌い方が良い。このパターンはもっと聴いてみたいと思いました。

2017.07.29
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# by mura-bito | 2017-07-29 09:39 | Music | Comments(0)
ORESAMA「Trip Trip Trip」:音が鳴る旅、歌が響く旅、カラフルに踊る旅
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「ワンダードライブ」に続くORESAMAの新曲「Trip Trip Trip」がリリースされました。ORESAMAは、ボーカルのぽん@pon_oresama)、ギターやアレンジを担当する小島英也@Kojima_oresama)から成るデュオです。この7月から放映されているアニメ『魔法陣グルグル』の主題歌として使われています。ちなみに、原作漫画の連載が始まったのは25年前とのことで、アニメ化されるのはこれが3回目だそうな。

心地好いテンポに乗せて、軽やかにリズムを刻みます。歌声もサウンドもキラリと明るく響き、前向きな気持ちにさせてくれます。それでいて、明るい雰囲気の中に切ない響きが含まれていて、音は魔法のように色を変え、表情を変える。聴くたびに少しずつ違う世界に連れて行かれます。

特に印象的だったのはシンセサイザーの音ですね。シンセ・ポップ的な音で曲をデコレーションする一方で、サビやアウトロでは太く厚い音が曲をぐいぐい引っ張ります。このシンセサイザーが切なさを一層強めていて、心を揺さぶります。力強くタフな音でありながら、柔らかく優しい切なさを醸します。そして、最後のサビでもシンセサイザーは勢いよく駆け抜けて、そのままアウトロでも存在感を出して盛り上げ、曲を締めます。



ORESAMA – Trip Trip Trip

さまざまな要素を組み合わせて彩ったミュージック・ビデオもまた、「Trip Trip Trip」の魅力のひとつです。イラストレーターうとまる@utomaru)によるアニメーションが、曲の世界をカラフルに描きます。ORESAMAとは長い付き合いらしく、2人をモチーフにしたキャラクターは過去の作品のジャケットやミュージック・ビデオにも登場しています。むしろ、ORESAMAといえばこのキャラクター、という感じのようです。

そして、ミュージック・ビデオのもうひとつのポイントはダンスですね。ぽんとともに踊る2人のダンサーは、ELEVENPLAYというグループに所属しています。国内外の多くの作品やステージに振り付けやダンサーとして参加しており、最も分かりやすいであろう例は、星野源の「恋」のミュージック・ビデオでしょうか。

「Trip Trip Trip」の振り付けは、曲線的な柔らかさと直線的な強さが入れ替わりに顔を出し、時として交差するという感じがします。特にサビの最初の部分、顔の近くで両手をすばやく動かすところが好きです。魔法をかけられたかのように、すっと視線が引き寄せられます。前髪が目を隠す2人の髪型は無表情さを強調していて、ぽんの明るい表情を際立たせる役割に徹しながらも、終盤で見せる一瞬の笑顔が印象に残ります。

2017.07.26
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# by mura-bito | 2017-07-26 22:10 | Music | Comments(0)
Zedd & Liam Payne「Get Low」:色気を生み出す音と声の中毒的なスパイラル
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Zeddの新曲「Get Low」は、色気に満ちたダンサブルな曲です。One DirectionのLiam Payne(リアム・ペイン)をボーカルに迎えて、その歌声をエレクトロニック・サウンドと組み合わせると、鮮やかに輝く音楽が産み落とされます。Zeddは女性の声だけではなく、男性の声も上手に料理して素晴らしい曲に仕上げます。例えばAloe Blaccとともに制作した「Candyman」もまた色気のある格好良い曲であり、僕はとても好きです。

「Get Low」の魅力のひとつは、そのリズムですね。EDM的な盛り上げ方とは異なり、聴き手を徐々に侵食するようなループが特徴的です。ずしりと重みを感じるキックと、絡みつくベース。ハウス・ミュージック的というか、あるいはそのサブカテゴリーに属するのかもしれませんが、ぐるぐると螺旋を描くリズムにはこの上になる中毒性があります。音の渦に吸い込まれて、いつの間にか目の前の世界が変わっている。



Zedd & Liam Payne – Get Low (Infrared)

曲に漂う色気のもうひとつの要因はLiamの歌声です。その色気を構成するのは艶やかさと気怠さでしょう。さらに歌声の中に潜っていくと、切なさや哀愁といった、メランコリックな空気を感じます。その源泉は声か、メロディか、サウンドか。あるいは三者が混ざり合うからこそ生まれる空気なのか。

曲の進行とともに歌声は表情を変えます。言葉の運び方が変わるとでもいいましょうか。言葉が連なっては離れることでメロディは流動的になり、心地好い流れ、心地好い響きを生みます。言葉を突き刺すように放つのではなくて、手の触れる距離にいる相手に向かって届けるイメージです。腕の中、でもいいのですが。



Zedd & Liam Payne – Get Low (Official Tour Edit)

YouTubeには「Get Low」の音源がアップロードされています。片や “Infrared” と題し、もう片方は “Official Tour Edit” と題しています。ビデオ・アートのように楽しむ場合は前者、Zeddのライブ感を味わいながら聴く場合は後者を再生してみてください。

2017.07.20
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# by mura-bito | 2017-07-20 21:58 | Music | Comments(0)
藍井エイル「シリウス」:一等星のように輝く歌、星空のように瞬く音
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最近、藍井エイルの「シリウス」を聴いています。明るく光る一等星の名前を冠した曲です。2013年にシングルとしてリリースされ、翌年の2枚目のアルバム『AUBE』に収録されました。躍動するボーカルと開放的なバンド・サウンドが組み合わさることで、聴きながら気持ちは高揚し、そして聴き終えた後に爽快感を残します。

メロディがきらきら光る、というイメージが浮かびます。思い出されるのは、「シリウス」がオープニングを飾ったライブ「Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 “Last Blue” at NIPPON BUDOKAN」(PART1/PART2)です。目の前が明るくてポジティブな気持ちで聴けたのは、単にステージを照らす光だけではなく、そのメロディに因るところもあったのかなと思います。



藍井エイル – シリウス

シングルには他の曲に加えて、「シリウス」のインストも収録されています。音だけで聴くと、ボーカルが入っているものとは異なる印象を受けます。例えばオルガンが鳴っていることに、インストを聴いて気づきました。そしてボーカル入りを聴きなおすと、オルガンが聞こえる。これまでも聞こえていたはずなのに、認識していなかったわけですね。歌に意識のリソースが多く割かれていたためでしょうか。

インストは歌というパーツを外した、部品の欠けた機械なのでしょうか。僕は、違う世界を描くキャンバスだと思います。そのシンガーのファンであれば「物足りない」と感じるのが当然なのかもしれません。ただ、これまで僕は、ボーカリスト自身が「歌も楽器の一部」と公言してはばからないグループの曲をたくさん聴いてきたせいか、インストはインストとしてボーカル入りとは別個の存在と捉える節があります。インストを聴いても歌がなくて物足りないと思うのではなく、「こういう音が入っていたのか」というような発見を楽しむことが多い。

そして、インストの魅力は「歌の存在を改めて感じられる」点にあります。音だけで聴いてみるからこそ、そこに「ないもの」の価値を感じるというか。インストを聴くことで、またボーカルが入った状態で聴きたくなる。歌声に魅せられているため、歌もインストも、それぞれの観点から楽しめるのだと思います。歌と音は互いの魅力を引き立てる関係ですね。この「シリウス」という曲も、音の魅力と歌の魅力が相互作用でクロスしていると僕は感じました。楽しい。

2017.06.04
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# by mura-bito | 2017-06-04 21:19 | Music | Comments(0)
[PART4] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:「I am」にまつわる新しい真実を見せてくれた言葉
「GET WILD」を追いかけたSound & Recording Magazine誌による一連の企画は、「GET WILD」が蓄積した30年という時間をさまざまな角度から切り取りました。場合によっては「GET WILD」から離れ、TM NETWORKへの言及もありました。そこで、最後は「GET WILD」の話から派生した、興味深い言葉にフォーカスしてみます。

目に留まったのは、自らの歌について語ったウツの言葉です。これまで、ウツがTM NETWORKについて語るときは、自分も含めてメンバーそれぞれの役割を客観的に見ている感じでした。今回のインタビューで見せた一瞬の表情は、それとは少し異なる、自分自身を真正面から見据えたものに思えました。読み流すには惜しい、ウツの、そしてTM NETWORKの本質的な部分が見えた気がします。
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2014年4月に、TM NETWORKは30周年記念企画のひとつとして『DRESS2』というアルバムをリリースしました。収録されたのは、デビューした1984年から4年ほどの間にリリースした曲ですが、いずれも2014年の音でアップデートされ、ボーカルやコーラスも新たに録音されました。

代表曲である「GET WILD」もまた、このアルバムに「GET WILD 2014」として収録されています。「GET WILD」の音は2013年のライブで大きく変化しており(大部分をソフト・シンセで構築)、ライブで使った音を基にして小室さんがソロで音源として「GET WILD (2013 SUMMER)」として配信しました。そこにいくつかの音を加えたのが「GET WILD 2014」です。

そのちょっと前くらいから、自分の年齢もあるし、それまでのいきさつもあるだろうし、歌に対するその自分なりの立ち位置が変わっていたんです。だから1987年当時のときの歌とは全く違うと思う。今はより開いているというか、明るい声になっていると思うんです。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

リミックスでは歌を録りなおすことはないため、レコーディングでウツが「GET WILD」を歌いなおしたのは、1999年の「GET WILD DECADE RUN」以来、15年ぶりでした。歌もアップデートされたということで、今回のインタビューでは「GET WILD 2014」の歌に関する質問にウツが答えています。1987年の声とは大きく異なり、現在は「開いている」、「明るい」声になっているとウツは自分のボーカルを表現します。

では、ウツの「歌に対する立ち位置」が変化したきっかけとは何だったのでしょうか。転機となったのはTM NETWORKの「I am」だと語ります。「I am」は、2012年4月のライブ「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」の開催と同時にリリースされ、その後のコンサートでも常に演奏されてきました。

ソロも含め自分の歌を冷静に聴いていく中で、TMの「I am」を歌ったときに、“これが今の僕だ” って思えたんですよ。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「I am」は、再び動き出したTM NETWORKを象徴する曲であり、そこには小室さんの思いがたくさん込められていると思いました。それは真実のひとつです。一方で、今回のインタビューを通して、ウツもまた自らを重ねていたことを知って驚きました。歌い手として、ウツの何かが「I am」とぴたりとはまったのでしょう。インタビューではこれ以上掘り下げられてはいませんが、「I am」にまつわる新しい真実を見た気がします。

2015年2月に、小室さんは「みんなで話しているけど I amという曲は なんか、特別な曲になりました」とツイートしました。TM NETWORKの活動がそろそろ区切りを迎えるころの投稿です。「特別な曲」とはまた素敵な表現ですよね。3年にわたるTM NETWORKの活動を引っ張ってきた曲をメンバーとして大事に思うのと同時に、「パーソナルな距離感での思い入れ」とでも言うべき気持ちが別のレイヤーにあった、ということなのかなと思います。

躍動するメロディに乗って流れる「I am」の歌詞は、具体的なシーンを描いたり、抽象的に大きな世界を投影したりと、ミクロとマクロを行き交います。聴く人が自分を重ねられる曲であり、どの部分に焦点を当ててイメージするかは聴く人次第です。いろいろな人のさまざまな気持ちに重なってそれぞれの物語を描く。それはウツにも共通することなのかもしれません。今、ウツの「“これが今の僕だ” って思えた」という言葉に触れて、改めて「I am」が自分にもたらしてくれたものを思い起こします。僕もまた心を動かされたひとりであり、自然と自分を重ねていたことを覚えています。僕にとっても特別な曲ですね。



TM NETWORK「I am」のミュージック・ビデオ。
三人がそれぞれの場所で「潜伏」している様子、そして、
再び集まりTM NETWORKとなる様子が描かれている。
2017.05.31
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# by mura-bito | 2017-05-31 21:53 | Music | Comments(0)
[PART3] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:オリジナルの「イメージ」を呼び出す歌声
「GET WILD」が持つ強さは幾多の変化にも対応できる柔軟さであり、それが「変わり続ける」という魅力を確立させました。その一方で、二律背反的に、反対の魅力も共存共栄しています。それがイントロのメロディであり、「変わらない」という魅力です。変わり続けて、変わらない。
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観察する角度をわずかに変えてみましょう。僕らがずっと聴き続けているもの、それはイントロのメロディだけではありません。それはウツの歌です。彼の歌は「変わらない」というより、「オリジナルにアクセスして再び立ち上げる」機能があると思います。もちろん30年前の声とは質が違うし、歌い方、テクニックも格段に進歩しているはずです。レベルの高低の問題ではなく、ウツの歌は「オリジナルの『イメージ』を呼び起こす」ことができるのではないか、ということを言いたい。

同じことを語るプロフェッショナルがいます。同じSound & Recording Magazine誌の企画の中で、サウンド・デザイナー/PAエンジニアの志村明さんは「これだけアレンジが変わっても、オリジナルの曲のイメージがストレートに入ってくる」と語っています。「GET WILD」が持つ力を評した言葉ですが、僕はそこにウツの歌も含まれていると解釈しました。イントロが輪郭を描き、ウツの歌がその像にピントを合わせる。そして「GET WILD」のイメージが聴き手に浮かび上がる。そんなことを思いました。



2012年から2015年にかけて5つのライブで演奏された「GET WILD」をまとめた映像。
この時期のサウンドはダイナミックに変遷したが、ウツのボーカルは安定感を見せていた。
特に2013年のライブは病み上がりだったものの、歌への大きな影響は見られなかった。


* * *


インタビューでは、小室さんがウツの歌について語っています。2012年から2015年のTM NETWORKの活動を経た今、改めてウツの歌声の魅力を語り、そして敬意を表します。

小室さんが価値を感じているのは「基本に忠実に歌ってくれる」こと。サウンドの面で変化を繰り返してきた「GET WILD」だからこそ、その出発点が見えることは重要なのだろうと思います。たとえるなら、船における碇のようなものなのかもしれません。周囲が揺れる中でも同じところに留まる。ただ同じことを繰り返す(それはそれで大事なことではありますが)のではなく、サウンドが激しく変わる中で軸となるものを示し続けるのは、意外とハードルの高いことなのでしょう。

シンガーにもいろんなタイプの人がいますよね。歌うごとにフェイクを入れて、そのときそのときで変わるとか。でも30年もたつと、基本に忠実に歌ってくれるという方の価値が大きくなっているかもしれません。宇都宮君はそれができる人なのがすごいですよね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

では、ウツはどのように考え、歌っているのでしょうか。小室さんが評価する「基本に忠実に歌う」ことについて、ウツはその重要性を自覚し、共有しています。歌うことは、同時に聞かせることもあります。多くの場合「どのように歌いたいか」は「どのように聞かせたいか」とセットで語られます。

今回のインタビューで語られた言葉の中から、ウツの真意を正確に読み取ることは困難を極めます。それでも、観客の顔を思い浮かべながら自分の歌について語っていることは間違いないのかなと思います。

これは人によると思うんですけど、僕は、作った曲をライブで披露するときに、できるだけCDに近いものを聴かせたいという思いがあるんですよ。人によってはどんどんメロディを変えちゃったり、譜割を変えたりしますよね。僕もそういうのもありかなって思った時期がありましたが、結局はみんなが聴いてきたものがそこで再現される喜びが一番大きいと思うんです。だからなるべく再現できた方がいいかなって。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

2013年のライブ「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」でも、ウツの歌が大きく変わったという印象はありませんでした。膵臓の腫瘍を患い、手術に成功したとはいえ、歌うことすらままならなかった状態で、それでも僕らが知っている「ウツの歌」を聴かせてくれました。

ウツはさらりと「なるべく再現できた方がいいかな」と語っていますが、2013年のエピソードを思い出すと、それほど簡単なことではないと思えてきます。それはプロフェッショナルだから……というより、ウツだから、と表現するほうが適切なのでしょう。だから小室さんも「すごい」と語るわけですね。まあ、ウツは「今さらほめてくれなくてもいいよ」と言っているようですが。

PART4では、ウツの歌について、もう少し踏み込んでみたいと思います。今回は「歌い方」にフォーカスしたのですが、次回は「歌」というものに迫ってみたい。それは広いマクロな視野で捉えるようでいて、とてもミクロなウツの本質的な部分に近づくことを意味します。ウツのわずかな言葉を頼りにして、「海の底」のようなところに潜っていこうと思います。
2017.05.29
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# by mura-bito | 2017-05-29 22:13 | Music | Comments(0)

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