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[EN] LINKIN PARK – One More Light Live
One More Light Live, which is Linkin Park’s latest live album, has arrived. You can listen to the songs performed in Europe such as Amsterdam, Berlin, London, and Kraków in 2017.
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We dedicate this live album to our brother Chester
who poured his heart and soul into One More Light.

The set list for One More Light tour consists of the songs recorded in the latest album One More Light and the others. I am impressed by the performances such as Battle Symphony, Leave Out All The Rest, and What I’ve Done. The sounds created by the band are tough and wild.

The videos of Sharp Edges and Crawling are uploaded on YouTube. Chester Bennington sings with the simple sound by a guitar or piano, so his singing voice stands out more. You can taste his beautiful voice.



LINKIN PARK – Sharp Edges (One More Light Live)

Chester is printed on the cover of One More Light Live. He sings and puts his right hand out toward the audience. The photograph made me recall the symbol of One More Light that illustrates six hands grip each wrist to be a circle.

The band members connect to each other, and the band connects to their audience around the world. The circle did not lose one hand. We can reach out our hand to the band to create a new circle consisting of “seven hands.”



LINKIN PARK – Crawling (One More Light Live)

I feel a little bit sentimental about the fact that I listen to the “last” performance. However, their hot performance burns a sad feeling, and makes me so excited.

How do LP lovers feel in listening to One More Light Live? We have each feeling, and it has different resonances for us. This year 2017, which is a special year for all LP lovers, is strongly condensed into One More Light Live.

2017.12.29
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by mura-bito | 2017-12-29 18:12 | Music | Comments(0)
LINKIN PARK – One More Light Live
LINKIN PARKのライブ・アルバム『One More Light Live』がリリースされました。2017年のワールド・ツアーの口火を切ったヨーロッパ公演でのパフォーマンスが収録されています。アムステルダムでの録音が中心ですが、他にもベルリン、ロンドン、クラクフなどの様子が収められています。
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We dedicate this live album to our brother Chester
who poured his heart and soul into One More Light.

セット・リストの中心となっているのは新作『One More Light』の曲です。『One More Light』のサウンドやボーカルは、表題曲をはじめとして全体的に穏やかな雰囲気があります。『One More Light Live』に同封された解説を読んでみると、『One More Light』を録音するにあたり、Chester BenningtonとMike Shinodaは専門家によるボーカルの指導を初めて受けたとのことです。それだけ歌に乗せて届けたいものがあったということでしょうか。

『One More Light』の最後に収録された「Sharp Edges」も、このツアーで演奏されました。ライブではBrad Delsonが弾くアコースティック・ギターの音に支えられ、Chesterがギターを弾きながら歌っています。『One More Light Live』には、演奏の後に「ギターを弾きながら歌うのは大変だね」と笑いながら語るMCも収録されています。



LINKIN PARK – Sharp Edges (One More Light Live)

『One More Light Live』には新作以外の曲も盛り込まれています。「In The End」、「New Divide」、Jay-Zの「Encore」を含んだ「Numb」などを聴いていると、ライブで味わえる心地好さやスリリングさを追体験できる瞬間が数多く訪れます。特に「What I’ve Done」や「Leave Out All The Rest」では味わい深いバンド・アンサンブルを聴けて、僕はとても好きですね。

また、初期の代表曲のひとつ「Crawling」は象徴的だった激しいサウンドやシャウトではなく、美しいバラードとして披露されました。Mikeが弾くピアノの音を背景に、Chesterが歌い上げます。アルバムを通して聴いていると、彼の歌声がもたらす静謐な響きと、ハードな曲が生み出す会場の熱気がコントラストを描いて目の前に広がります。



LINKIN PARK – Crawling (One More Light Live)

『One More Light Live』のジャケットには、観客に向けて手を伸ばすChesterが写っています。その姿を目にしたとき、『One More Light』を象徴するアートワークのひとつ「それぞれの手首をつかんで円を描く6本の腕」を思い出しました。『One More Light』の裏に印刷されており、また『One More Light Live』のCDをケースから外すと目に飛び込んできます。

6人を結ぶ関係の強さは言うまでもないし、バンドとファンの関係も推して知るべしです。だからこそというべきか、ジャケットに写るChesterの姿は「ライブという時間と場所でバンドが観客とつながることの意味」を僕らに改めて考えさせてくれて、そして大事に思わせてくれます。音楽におけるシンプルな関係性をストレートに表わしている写真なのではないでしょうか。

多くのファンがそれぞれの思いを抱えて聴いていることと思います。感傷的になるのはやむを得ないのかもしれませんが、それを焼き尽くすような熱い演奏に気持ちが昂ぶるのもまた事実です。『One More Light Live』には、6人の音楽が刻み込まれているのと同時に、2017年という特別な一年が凝縮されているのです。

2017.12.28
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by mura-bito | 2017-12-28 21:34 | Music | Comments(0)
[EN] LINKIN PARK LIVE AROUND THE WORLD
I chose 13 songs from Linkin Park’s live album series Live Around the World to make my playlist. The series contains the songs which the band had performed on various stages. You can listen to the studio version in four albums from the debut album Hybrid Theory to the 4th album A Thousand Suns.
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One of my favorite LP songs is Points Of Authority included in Hybrid Theory. This song has the role to start my playlist. Mike Shinoda, who is a rapper, guitarist, and keyboard player in the band, had performed the new rap at the start of the song in this version. The new rap sharply passes a torch to the original rap. The stream of the highly condensed words makes me so excited. Make some noise!

Points Of Authority (Sydney, 2007) in Hybrid Theory
In The End (Melbourne, 2010) in Hybrid Theory
Don’t Stay (Shanghai, 2007) in Meteora
Somewhere I Belong (Köln, 2008) in Meteora
Lying From You (New York, 2008) in Meteora
One Step Closer (Frankfurt, 2008) in Hybrid Theory
Papercut (Paris, 2010) in Hybrid Theory
What I’ve Done (New York, 2008) in Minutes To Midnight
When They Come For Me (Paris, 2010) in A Thousand Suns
Numb (New York, 2008) in Meteora
From The Inside (Sydney, 2010) in Meteora
Breaking The Habit (Hamburg, 2011) in Meteora
The Messenger (Las Vegas, 2011) in A Thousand Suns

The last song in the playlist is The Messenger included in A Thousand Suns. Chester Bennington’s singing voice is very tough, beautiful, and tender. I love it. In the simple and gentle sounds, his song sounds sweet to me and resonates with my heart. He said “Sing along with us!” and then the audience sang along with him at the end of the song. It had finished up with the voices of Chester and many LP lovers. So impressive.

2017.12.27
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by mura-bito | 2017-12-27 21:08 | Music | Comments(0)
アイナ・イエロフ – NYの「食べる」を支える人々
アイナ・イエロフの著書『NYの「食べる」を支える人々』(訳:石原薫、原題:FOOD and the CITY: New York’s Professional Chefs, Restaurateurs, Line Cooks, Street Vendors, and Purveyors Talk About What They Do and Why They Do It.)には、食に関する仕事に就くニューヨーカーの声が多く集められています。レストランのシェフやウェイター、魚捌きのプロやパン職人、ダックファームやピッツェリアの経営者、ケータリングのシェフや刑務官、消防士など、多彩な職種の人々が登場します。それぞれの現在や過去について言葉を連ね、「何をしてきたのか(What They Do)」「なぜしてきたのか(Why They Do It)」を語ります。
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本書に登場する人々の言葉は、素材の良さを活かした料理のようです。とりわけ印象に残ったのは「ウェイター兼彫刻家」と称する男性です。ウェイターはレストランにおける接客のプロフェッショナルですが、彼は「給仕は屈従的である」ということを認識して折り合いをつけなければならないと語ります。

彼が考える「ウェイターの醍醐味」とは何か。それは、価値あるものを客に与えていることが実感できたり、客に喜んでもらえる気持ちよさがあったりすることだ、と。しかし、奉仕という点を忘れて自らの威厳に固執すべきではないと加えます。「仕事に自信を持つことと仕事の本質を捉えることは等しく重要」ということでしょうか。

給仕は、屈従的な行為だから、そのことを認識して折り合いをつける必要がある。うまく給仕できたときには、相手が二度と受けとることのできないものを、自分が与えているという実感が得られて自尊心も満足する。人に喜ばれるのは気持ちがいいもので、それがこの仕事の醍醐味だ。でも、その奉仕の部分をクリアしないで、自分の威厳にこだわっていると、ほんとうに破滅的な影響を及ぼしかねないですよと。

デイヴィッド・マックイーン
アイナ・イエロフ『NYの「食べる」を支える人々』(訳:石原薫)

ウェイターの話に興味を持ったのは、オノ・ナツメの『リストランテ・パラディーゾ』と『ジェンテ ~リストランテの人々~』を読んでいたからだと思います。リストランテを舞台にしたこの漫画では、男性給仕人(カメリエーレ)が重要な役割を果たします。主役ともいえるそのカメリエーレの回想において、彼は「なぜこの仕事を選んだのか」という問いを受けます。

彼は「美味しい食事を楽しもうと待つテーブルに料理を運ぶのは素敵なことのように思えて」と語りました。「料理を運ぶ」という行為に運搬以上の役割を想像していなかった僕にとって、その言葉は新鮮であり、とても印象的でした。しばらくして『NYの「食べる」を支える人々』を読んだとき、このインタビューにおける言葉と『リストランテ・パラディーゾ』の世界が重なりました。まるで目の前に料理が並ぶかのように、言葉がシンプルに自分の中に満ちていきます。

「どんなレストランでも、サービスと料理は互いを救い合う」と言われています。どちらかがすばらしかったら、どちらかが今ひとつでも、お客様はまた来るという意味ですが、僕は料理とサービスだけの問題じゃないと思います。レストランには、雰囲気が必要なんです。それと活気も。活気は、僕に言わせれば、4つの中で一番なくてはならない要素で、それはいいスタッフを揃えることでしか得られません。

デイヴィッド・マックイーン
アイナ・イエロフ『NYの「食べる」を支える人々』(訳:石原薫)

他にも多くのプロフェッショナルのプロフェッショナルな言葉に触れて、感銘を受けたり驚いたり、自らの至らなさを痛感したりしました。こうした人々の考えや過去をわずかなりとも知ることで思ったのは、「自分で選ぼうが流れに身を任せようが、落ち着くところに落ち着く定めがある」ということです。人生における選択とは、王道だろうが邪道だろうが、結果として大した違いはないのかもしれません。

同時に、各人の今が充実しているのは、苦労した経験が隠し味の役割を果たしているからだろうとも思いますけどね。その苦労も千差万別です。同じ苦労を別の人が経験する必要はなくて、苦労話はその人を綴る物語の一部でしょう。隠し味というには強烈すぎる体験(ナチスからの逃亡など)をしている人もいますが、苦労の軽重も含めて「落ち着くところに落ち着く」のだと思います。苦労することが大事というよりは、「生き方は人の数だけバリエーションがある」ことを改めて思わせてくれたインタビュー集です。
2017.12.26
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by mura-bito | 2017-12-26 21:55 | Book | Comments(0)
オノ・ナツメ – リストランテ・パラディーゾ
オノ・ナツメ『リストランテ・パラディーゾ』は、イタリアはローマの一角に店を構えるリストランテ、そこに集う人々を描く「美味」な物語です。本編の『リストランテ・パラディーゾ』(全1巻)の他、その前後のエピソードを描いた『ジェンテ ~リストランテの人々~』(全3巻)が刊行されています。

本作でキーとなってくるのは「cameriere(カメリエーレ)」と呼ばれる男性の給仕人です。英語でいうところのwaiter/waitress、ホール担当のスタッフということですが、それは「料理を届け、説明し、接客するプロフェッショナル」です。女性の場合は「cameriera(カメリエーラ)」と呼ばれるようです。
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題名の『リストランテ・パラディーゾ』は、リストランテの名称ではありません。舞台となるリストランテは「casetta dell’orso(カゼッタ・デルロッソ)」といい、意味は「クマの小さな家」といった感じでしょうか。オノ・ナツメはサインに添えるマスコット・キャラクターをクマにするほど好きなので、そこから名付けたのだと思います。また、リストランテのオーナーはクマっぽい容姿なのですが、店名からキャラクターを作り上げたのかなと予想しています。

では「paradiso(パラディーゾ)」とは何か。英語で言えばparadiseなので楽園や天国という意味ですが、これは本作に登場するカメリエーレのひとり「クラウディオ」のファミリー・ネームです。彼と、彼に惹かれた「ニコレッタ」(オーナー夫人の娘)との交流を描くのが『リストランテ・パラディーゾ』です。カメリエーレもシェフもソムリエも老眼鏡をかけているという一風変わったリストランテを舞台に、クラウディオが抱えてきたものやそれとの決別、ニコレッタと母親の関係の変化などが描かれます。ゆっくりと噛み締めて、じっくり味わうことで、温かくて幸せな気分にさせてくれる物語です。

2017.12.20
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by mura-bito | 2017-12-20 22:08 | Visualart | Comments(0)
LINKIN PARK LIVE AROUND THE WORLD
LINKIN PARK“Live Around the World” シリーズは、デビュー・アルバム『Hybrid Theory』から4枚目の『A Thousand Suns』までの曲について、2007~2011年のワールド・ツアーで録音したライブ・テイクを集めたシリーズです。これらの存在を僕が知ったのは最近のことですが、なんと5年前に配信が始まっていました。遅すぎた出会い。それでもこのライブ・テイクは、僕にとって今が旬です。
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Live Around the Worldプレイリストを自作してみたところ、トータル13曲の約50分になりました。順番は日々入れ替えてベストを探っていますが、開幕が「Points Of Authority」という点は変わりません。2007年以降のライブでは冒頭のMike Shinodaのラップが長くなったり、リズムやギターなど音のメリハリが効いていたりと、僕の好きな方に変わっていきました。追加されたラップからオリジナルにもあるラップ “Forfeit the game...” につながっていく流れがとても好きで、その高揚感を味わうためにプレイリストの先頭に据えています。

「Somewhere I Belong」「What I’ve Done」はイントロが長くなっていたり音が加わっていたりして、気分を盛り上げてくれます。特にJoe Hahnのスクラッチは快感を覚えますが、時としてエモーショナルに響くのが好きです。「エモーショナルなスクラッチ」とは奇妙な表現ですが、本当にそうなのです。鋭く空気を切り裂く音というよりは、空気に溶け込んで雰囲気を柔らかくするストリングスに近い役割を担っていると思います。もちろん彼は攻撃的で鋭い、スクラッチらしいスクラッチも「Papercut」などで披露します。

Points Of Authority (Sydney, 2007) in Hybrid Theory
In The End (Melbourne, 2010) in Hybrid Theory
Don’t Stay (Shanghai, 2007) in Meteora
Somewhere I Belong (Köln, 2008) in Meteora
Lying From You (New York, 2008) in Meteora
One Step Closer (Frankfurt, 2008) in Hybrid Theory
Papercut (Paris, 2010) in Hybrid Theory
What I’ve Done (New York, 2008) in Minutes To Midnight
When They Come For Me (Paris, 2010) in A Thousand Suns
Numb (New York, 2008) in Meteora
From The Inside (Sydney, 2010) in Meteora
Breaking The Habit (Hamburg, 2011) in Meteora
The Messenger (Las Vegas, 2011) in A Thousand Suns

「One Step Closer」はライブのオープニングを飾っていた頃に録音されたものと思われ、Brad Delsonが弾くギターの音が徐々に厚みを増していくイントロが格好良い。「When They Come For Me」は、リリース当時から僕はアフリカの民族音楽をイメージしていたのですが、祝祭的なリズムが特徴的でLINKIN PARKの枠を越えている点が好きでした。ライブではChester Benningtonが歌いながらバスドラムを叩いていた記憶があります。

プレイリストの最後に配置したのは「The Messenger」です。アコースティック・ギターの音に乗せて、Chesterが切々と歌います。途中からピアノ、そして穏やかなスネアの音が加わります。LINKIN PARKはバラードやフォークよりもヘビーなサウンドの方が知られているかとは思いますが、「The Messenger」のような「剥き出しになる」曲も素晴らしいものがあります。シンプルな音の中で響くChesterの歌が静かな輝きを放ちます。そして最後はChesterの歌声と、彼の “Sing along with us!” という言葉に導かれた観客の歌声が重なり、幕を下ろします。

2017.12.13

◆追記
「Lying From You」を追加しました。“No no, turning back now” というMikeのラップと一緒に叫びたい。この曲の追加により、2枚目のアルバム『Meteora』の曲が半数を占めるプレイリストとなりました。

2017.12.17
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by mura-bito | 2017-12-13 21:57 | Music | Comments(0)
[PART3] TM NETWORK「MAJOR TURN-ROUND」:32分21秒の音楽体験、過去と現在と未来の交錯、刷新される音の記憶
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FIRST IMPRESSIONの音がカット・アウトすると、間を置かずにSECOND IMPRESSIONのドアが開き、そこから響いてくるメロトロンの音が聴き手を招き入れます。緩やかなテンポで「MAJOR TURN-ROUND」の中で最も重厚なバンド演奏が繰り広げられます。音の塊はやがて小さくなっていき、荒れた水面から波がすっと引くような、静かな雰囲気の音になります。小室さんが弾くピアノが静謐な響きを紡ぎ、木根さんが爪弾くアコースティック・ギターは過去の記憶を探して彷徨います。そしてバンドの音が戻り、「MAJOR TURN-ROUND」の中で最もスリリングな演奏が始まります。途中まではピアノとベースとドラムのトリオ演奏です。それぞれのスタイルを存分に見せつけながら音が展開していき、やがてギターの音が重なります。

「MAJOR TURN-ROUND」のリズムを構築するのは、Simon PhillipsとCarmine Rojasです。Simon Phillipsのドラムは、CDとは思えないほどの迫力を感じさせます。僕は彼のプレイを上原ひろみのコンサートで聴いたことがありますが、実際に生で体験できる喜びと、期待を遥かに上回る格好良さに震えたのを覚えています。一方、Carmine Rojasは、David Bowieのツアーでバンドを統率したこともあるベーシストです。「MAJOR TURN-ROUND」は多くの音が交錯する曲ですが、ベースの音が全体を包み込んでいるのではないかと思うほど、ずしりと重く、厚い音で存在感を示しています。

ドラムとベースに支えられ、小室さんのピアノが走ります。このソロはKeith Jarrettを意識したと、後に小室さんは語りました。小室さんとプログレを結びつける人物として最初に挙がるのはKeith Emersonでしょうが、実はジャズ・ピアニストのKeith Jarrettをイメージしたという話には驚きました。その後も、自身のソロ作品でもKeith Jarrettについて言及する場面がありました。とはいえ、特にピアノの演奏スタイルについては、むしろRick Wakemanの影響の方が大きいのではないかと思います。Rick Wakemanが参加したYesの大作「Close to the Edge」やソロ・アルバム『The Six Wives of Henry VIII』を聴いていると、そう感じます。
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最後のパートであるTHIRD IMPRESSIONが始まると、音は少し明るめに響き、ポップな色に染まります。THIRD IMPRESSIONの前半で聴ける音は、ハウスというべきか、あるいは小室さんが傾倒していたトランスというべきか、プログレでは使われないであろうダンス・ミュージックのループ・サウンドです。そうした音が呼び込んだのかもしれませんが、歌詞はこれまでのパートより前向きなものになります。FIRST IMPRESSIONを現在、SECOND IMPRESSIONを過去とするなら、THIRD IMPRESSIONは未来に向かっていく音や言葉を発しています。

音は目まぐるしく、ダイナミックに展開します。地を這うようなベースとキックが鳴り終わると、曲はがらりと雰囲気を変えます。葛城哲哉が弾くギターの音は哀愁の色を帯び、音が紡がれるたびにその色は濃くなります。他のパートでも印象的なギターを披露していますが、THIRD IMPRESSIONでは心をぐっとつかむ音を鳴らしています。バンドの演奏を背にして、ウツの歌もエモーショナルに曲を彩ります。

メロトロンが鳴り響き、終着点に向かう曲を導きます。過去に吹き込まれた音が時間を越えて呼び戻され、空気を震わせます。録音されたものを聴く限りでは、他の音とのバランスを取っているのか、メロトロンは後ろの方に位置しています。ライブでは、小室さんが弾くメロトロンはストリングスとコーラスを鳴らし、前に前に出てきて、ベースやドラム、ギターを率いて壮大な雰囲気を醸しながらクライマックスを迎えます。32分という長大な曲の幕が閉じると、記憶のあちこちに音が残っているのが分かります。その欠片を拾い集めようとして最初から「MAJOR TURN-ROUND」を聴くと、音の記憶は刷新されていくのです。
2017.12.07
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by mura-bito | 2017-12-07 21:02 | Music | Comments(0)
[PART2] TM NETWORK「MAJOR TURN-ROUND」:重なる三つの「印象」を通り抜けながら体験する音の世界と記憶の揺らぎ
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「MAJOR TURN-ROUND」の収録時間は32分を超えます。いわゆる組曲の形式ですが、全体は3つのパートに分かれており、それぞれFIRST IMPRESSION、SECOND IMPRESSION、THIRD IMPRESSIONと名付けられています。この構成と命名は、Emerson, Lake & Palmerのアルバム『Brain Salad Surgery』に収録された「Karn Evil 9」の構成(1st Impression~3rd Impression)に沿っている…というより、そのままですね。

「Karn Evil 9」での意味合いは分かりませんが、「MAJOR TURN-ROUND」で各パートの名称にIMPRESSIONという言葉を採用したのは、この曲がテーマとして持っている要素のひとつが「記憶」だからだと思います(あるいはIMPRESSIONから「記憶」というテーマが生まれたのかもしれませんが)。impressionという語は印象・感銘という意味ですが、これは「心に残る痕跡」とでもいうべき現象です。心に刻み込まれて残り続けるもの、それは記憶と呼ぶこともできるのではないでしょうか。例えば、FIRST IMPRESSIONは「第一印象」というより、無数に存在して眠っている記憶の中で最初にアクセスする記憶のことなのではないか。

音を変えて多くの言葉を散りばめることで、「MAJOR TURN-ROUND」は「記憶とは何か?」というテーマにアプローチします。小室さんがこの曲について「最後の方になると、最初の部分がどのようなものだったのか記憶は曖昧になる」と語ったように、人間の記憶はそこまで強固なものではなく、時間とともに薄れていくものです。メディアに記録された音は揺るがないものですが、それを聴く人間の記憶はファジーであり、揺るがないはずの音は記憶の中で揺らぎます。記憶の揺らぎをひとつの曲の中で体験することで、誰もが知っている「記憶は揺らぐもの」という事実が身体的に刻み込まれます。
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「MAJOR TURN-ROUND」の開幕を告げるのは、壊れた換気扇が鳴らす乾いた音です。水面に落ちた墨がじわりと広がっていくようにベースとドラムが音の世界の輪郭をゆっくりと描き、シンセサイザーの音が聴き手をFIRST IMPRESSIONの中に取り込んでいきます。僕らの意識は音もなく音の中に沈んでいきます。さまざまな音が重なり、交錯します。チューブラー・ベルズの乾いた金属音が響き、ギターがテーマ・メロディを運んできます。音の世界は、ウツの歌声によって立体的に立ち上がり、小室みつ子さんの書いた歌詞によって陰影が生まれます。

曲は表情を次々と変えます。FIRST IMPRESSIONの中でもパート分けができるくらいに、浮き沈みの激しいダイナミックな展開を見せます。展開が徐々に切り替わるのではなく、急上昇や急転直下で音がいきなり変わるのが特徴です。途中で「オペラ座の怪人」を彷彿とさせるメロディが顔を覗かせ、不穏な雰囲気を醸しますが、その前の演奏が力強いために闇は一層濃く目に映ります。音の変わりようから、太陽が月に呑み込まれる日蝕のイメージが浮かびました。メロトロンに記録されたストリングスの音がメランコリックに空気を震わせます。

FIRST IMPRESSIONの終盤になると、それまで溜め込んだエネルギーを発散しながら、音が音を巻き込み、曲は勢いを増していきます。アスファルトにタイヤを切りつけながら走る車のように、ぐいぐいとスピードを上げて駆け抜けていく。スネアやハイハットの音が鋭く大きく力強く響き、他の楽器を煽ります。また、ライブで顕著だったのですが、この部分ではハモンドの音が強烈な存在感を示しており、荒々しいロック・オルガンが曲を強靭なものにしています。音が交差して主張し合う中で、ウツのボーカルはノイズと混ざり合いながら、異なる空間からのメッセージのように響きます。
2017.12.06
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by mura-bito | 2017-12-06 21:31 | Music | Comments(0)
[PART1] TM NETWORK「MAJOR TURN-ROUND」:プログレに新しい生命を吹き込み、21世紀の扉を開いたキーボード・サウンド
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TM NETWORKのオリジナル・アルバム『Major Turn-Round』がリリースされたのは、世紀が変わる直前の2000年12月です。アルバムはプログレッシヴ・ロック(プログレ)という音楽ジャンルで制作されており、その特徴を決定づけているのが表題曲の「MAJOR TURN-ROUND」です。アルバムに収録された「WORLDPROOF」、「IGNITION, SEQUENCE, START」、「PALE SHELTER」、「CUBE」などの曲も異なる角度からプログレらしさを見せますが、やはりアルバム収録時間のほぼ半分を占める「MAJOR TURN-ROUND」が中心となっています。

プログレが隆盛を誇った1970年代前半、中高生だったTM NETWORKの3人はその音楽をリアルタイムに体験しています。特に小室さんはプログレのバンドを組んでいたこともあり、少なからず影響を受けたと思われます。プログレは1984年のデビュー以降は活動の中心にはならなかったものの、「VAMPIRE HUNTER D」や「THINK OF EARTH」といった小室さんのソロの要素が強い曲、ライブでのキーボード・ソロではプログレが意識されていました。プログレの作品と言えそうなのはアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE-』でしょうか。当初は30~40分の曲をメインに据えるプログレのアルバムを構想していたものの、最終的には複数の曲に分割され、そして物語を軸にした音楽とライブは演劇やロック・ミュージカルに近かったと言う方が適しています。

こうしたプログレへのアプローチが散見される中で、徹底的にプログレに取り組んだのが『Major Turn-Round』です。メジャー・レーベルから撤退して、自らのインディー・レーベル「ROJAM Entertainment」からリリースされました。アルバムの中でも特に「MAJOR TURN-ROUND」のテーマやサウンドには、YesやEmerson, Lake & Palmer、Pink Floydなどの影響が色濃く見えます。後に小室さんが語った言葉を借りれば「遊びの極致」。アマチュア時代を思い出すことでそういう言葉が出てきたのでしょうが、実にミュージシャン的で良いと思います。なお、2014年にはソフト・シンセの音を多用した「QUIT30」というプログレの曲を作り、先端的な4Kの映像とともにライブで披露しました。
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「MAJOR TURN-ROUND」の特徴は、かつて隆盛を誇ったプログレ・サウンドに再び生命を吹き込むキーボードの音です。オールド・シンセサイザーの名器であるミニ・モーグ・シンセサイザーやメロトロン、オーバーハイムに加え、ロック・オルガンの代名詞であるハモンド、ジャズやフュージョンで使われるローズ・ピアノなど、プログレらしいキーボードの共演が実現しました。絡み合うキーボードの音は、僕にとってすべてを聞き分けることは難しいのですが、それでも「音の重なりや交差」や「ひとつの楽器の音が屹立する瞬間」を楽しむことができます。

特筆すべきはメロトロンです。メロトロンはいうなればテープレコーダーであり、音が記録されたテープが内蔵されていて、鍵盤ひとつひとつに連動しています。各テープにはコーラスやストリングス、フルート、ブラスなどが録音されています。和音の種類や音の消滅(音の出る時間が約8秒と、テープの長さに依存している)の組み合わせで、ある程度バリエーションのある表現が可能な楽器です。サンプラーやソフト・シンセが発達した今では化石にも等しい存在ですが、当時の音を知っているミュージシャンにとって本物を弾けるのは特別な体験のようです。

1996年にtk-trapというプロジェクトのライブで小室さんが「CAROL」組曲を披露したとき、キーボードの配置はYesのキーボード・プレーヤーであるRick Wakemanを参考にしたといいます。このときに、できればメロトロンも使いたいと語ったそうですが、実現しませんでした。ほとんど生産されておらず、中古でもなかなか手に入らない代物だったそうで。しかし、2000年に「MAJOR TURN-ROUND」を録音したときは中古のメロトロンを手に入れ、ライブではさらに新品を加えて2台のメロトロンを弾きました。「遊びの極致」とは言いながらも、「MAJOR TURN-ROUND」の制作は「ミュージシャンとしての本領発揮」といえることは間違いないでしょう。
2017.12.05
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by mura-bito | 2017-12-05 21:51 | Music | Comments(0)

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