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音楽と物語に関する文章を書いています。
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T.UTU with The BAND – GET WILD PANDEMIC
「GET WILD」がリリースされてから30年目の2017年、TM NETWORKによるリミックスやライブ・テイクを中心とし、他のアーティストのカバーやリミックスを含むコンピレーション・アルバムがリリースされました。その中には、小室さんが新たに制作したリミックスも収録されていました。そうしたGet Wild Anniversaryの流れを意識したのかどうか、ウツが自分のサウンドで録音した「GET WILD」を発表しました。タイトルは「GET WILD PANDEMIC」。演奏しているのは、ウツの活動のひとつ「T.UTU with The BAND」です。T.UTUは「ティー・ウツ」と読みます(木根さん「チュチュかと思った」)。

BANDを構成するメンバーは土橋安騎夫(Key)、山田亘(Dr)、葛城哲哉(G)、是永巧一(G)、種子田健(Ba)です。いずれも歴戦のロック・ミュージシャンということもあり、「GET WILD PANDEMIC」は徹頭徹尾、紛うことなきロックです。それも、ブルージーな匂いを漂わせる、ロックの源流を感じるサウンドですね。ツイン・ギターのアンサンブルを存分に楽しむことができます。
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ウツの声はTM NETWORKとソロで異なる響きを見せます。ずっと感じていたことなのですが、これまでは「曲が違うから印象が違うのも当然」と思っていました。こうして同じ曲、「GET WILD」で比べてみるとその違いが際立つし、何かしらの意図があるのかもしれないと思えます。TM NETWORKにおけるウツの歌い方はドライな雰囲気があり、ソロの場合は甘さを感じます。その違いは、どこにあるのでしょうか。

Bメロの最後の ♪何も怖くはない♪ や ♪きっと強くなれる♪ というフレーズを見てみましょう。特に「怖く」と「強く」の部分が、例えば「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」では「こわーく」「つよーく」なのに対して、「GET WILD PANDEMIC」では「こわぁく」「つよぉく」と聞こえます。後者は、それほど強めではありませんが、鼻にかかるような音に聞こえます。テンポが遅いことも関係しているとは思いますが、意図的に歌い方を変えている可能性が高い。
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山田亘/葛城哲哉/土橋安騎夫/是永巧一/宇都宮隆

T.UTUはウツが1992年にソロとして初めて活動したときの名義であり、1992~1994年のライブでは「T.UTU with The Band」という名義を使っていました。T.UTU with The Bandの最初の全国ツアーでは、3人の女性がコーラスとベースで参加していました(Suzi Quatroをイメージしていたらしい)。次のツアーではベースが交代し、コーラスがいなくなります。そして20年以上のブランクを経て、2016年から「T.UTU with The BAND」の名義が(少し変わって)復活し、ベースとして種子田健が加わります。このメンバーで、今年もツアーを行なっています。

特にここ数年はシンセサイザーの音を重ねて構築した「GET WILD」をよく聴いていたため、ギターを前面に押し出したアレンジは新鮮に響きますね。また、ダンス・ミュージックのビートに慣れていた耳には、生ドラムの響きも熱を帯びて届きます。バンドにはバンドの良さがある、などとわざわざ言葉にする必要もないのですが、それでも言いたくなる心地好さなのです。定点観測のように「GET WILD」を聴いていると、アプローチの違いやそれぞれの良さを改めて感じることができます。

2017.10.31
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by mura-bito | 2017-10-31 22:00 | Music | Comments(0)
コアラモード. – 大旋風
コアラモード.あんにゅ/小幡康裕) の新曲「大旋風」は、これまでの2人のイメージ(個人的には「穏やか・爽やか・軽やか」という感じ)を覆すアレンジが印象的です。「雨のち晴れのちスマイリー」や「Dive!」といった曲で聴けるバンド・サウンドは丁寧に構築されて厚みがあり、心地好いと思っていましたが、「大旋風」ではそうした演奏の密度はそのままに、鋭さや猛々しさが加わったといえます。歌・演奏・ビジュアルをロックに寄せて、クールでパワフルな音楽を聴かせます。
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曲はベースの音から始まります。ノイジーに吠えるギターや壮大に響くストリングスが印象に残ります。その裏で、縦横無尽に駆け巡るベースが、曲を支えながら多層的・立体的に仕立てます。鍵盤の音は随所で響きますが、かなり控えめという感じがします。ボーカルは、低体温のように淡々と吐き出す声からエモーショナルに絞り出す高い声まで、上昇と下降を気流のように繰り返します。エモ系のロックと呼ぶこともできるかもしれません。彼女の歌声は、時にソフトに、時にコミカルに言葉を送り届ける感じがしていたものですが、「大旋風」を聴くと、言葉をぶつける歌い方にもフィットすると思いました。



コアラモード. – 大旋風

ミュージック・ビデオの一部をYouTubeで観ることができます。一部といっても、曲の雰囲気をつかむには充分な長さがあります。また、サビから始まる曲なので、その勢いや力強さを存分に感じることができます。編集の仕方もいいですね。曲が持つ勢いがダイレクトに伝わってきます。暗く染まる部屋の中で、エネルギーが蓄積されていく。それはやがて、勢いよく飛び出し、強烈な風となって吹き付ける。そんなイメージを抱きました。

2017.10.26
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by mura-bito | 2017-10-26 22:25 | Music | Comments(0)
ORESAMA「流星ダンスフロア」:多彩な音と時間と曲線が駆け巡る21世紀のダンスフロア
ORESAMAぽん/小島英也)が再メジャー・デビューを果たしてから3枚目のシングル「流星ダンスフロア」がリリースされました。心地好い歌声と親しみやすいメロディ、肌理の細かいアレンジ、起伏のある展開などの魅力を併せ持つ、聴いていて楽しい曲です。先日のワンマンライブでも披露され、予想に違わず盛り上がりました。

「流星ダンスフロア」はファンクやソウル、80年代的ダンス・ミュージック、そしてEDM的なシンセサイザーの音が混ざり合うサウンドを聴かせてくれます。足し算の良さというのは、とにかく楽しくなれることですね。それでいて緩急や起伏もあるため、勢いだけではない味わい深い音を楽しむこともできます。音が好きな人にとっては、さまざまな音が駆け巡る間奏は楽しい時間でしょう。開放的な気持ちで踊るもよし、多層的なサウンドをじっくり聴き込むもよし。曲が始まった瞬間に、目の前にそれぞれのダンスフロアが広がるのです。
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シングルがリリースされる1週間前に、ミュージック・ビデオが公開されました。ディスコ・ソングの華やかなイメージを取り込んだ演出が印象的です。演奏シーンではELEVENPLAYのメンバーが出演しており、また、ORESAMAのライブではサポートメンバーとしてお馴染みのDJモニ子も加わります。

ELEVENPLAYは、1名が振り付け、2名がパフォーマーとして参加しています。振り付けは1作目の「ワンダードライブ」から担当しています。2作目の「Trip Trip Trip」と同様のメンバーが、青から赤の衣装に着替えて、ぽんの左右でパフォーマンスを披露します。振り付けは流星をイメージしていたり、70年代ディスコにおけるお馴染みのポーズを取り入れたりと、曲の雰囲気を分かりやすく視覚的に、身体的に表現しています。ELEVENPLAYの動きは特に曲線が美しく、鮮やかな流線型を描く手や指の動きが好きです。



ORESAMA – 流星ダンスフロア

単に自分の聴く新曲がたまたまそうなだけなのか、やはりトレンドとして成立しているのか。1970~80年代、あるいは90年代の空気を漂わせるアレンジの曲をよく耳にします。ORESAMAの音楽はもともとレトロな雰囲気がありましたが、シーン全体がリバイバルに向かっている気がします。どこからリバイバルでどこからが今かという区分けも難しいのですが。リバイバルに限らず、引用やオマージュ、サンプリングといった形で、過去と現在は常に混ざり合うものですしね。

ORESAMAの音楽的アプローチは「ワンダードライブ」より前とそれ以降で異なっている、という印象を持ちます。「レトロな雰囲気のエレクトロニック・サウンドを絡めたポップス」という点では同じなのですが、メジャーで再び活動するにあたってコンセプトを徹底している感じですね。シングルを3作続けて短期間に出し、同じ系統の音楽(歌・音・映像)を徹底することで、ORESAMAのイメージを固めている。レトロと捉える聴き手もいれば、新鮮に感じる聴き手もいるでしょう。レトロは懐かしさを呼び起こすものですが、21世紀だからこそ新しい要素として輝く場合もある。うまい具合にウィングを広げているなあと思います。当然ながら、楽しいと感じさせる魅力がたくさん詰まっているため、聴きたくなるのは言うまでもないのですが!

2017.10.25
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by mura-bito | 2017-10-25 21:24 | Music | Comments(0)
大崎梢 – 横濱エトランゼ
『横濱エトランゼ』は、横浜にまつわるささやかな謎や、登場人物たちの気持ちの交錯を描いた小説です。街並みや通りの様子が随所で描写されており、言葉で綴る横浜もまた魅力的だと思わせてくれます。元町、山手、根岸、日本大通りなど、よく知られた街もそうでない街も、横浜というひとつの集合体として登場します。
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横浜は関内にあるタウン誌の編集室。主人公は高校生活最後の半年間、バイトとして働きます。彼女は街の人々と交流したり、建物が持つ歴史に触れたりと、編集室を飛び出して横浜を駆け巡ることもしばしば。物語が動けば彼女が動く、あるいは彼女が動くことで物語が進んでいきます。

表題に含まれる「エトランゼ(étranger)」とは英語でいうところの “stranger”、すなわち「見知らぬ人(あるいは外国人や旅人)」のことです。物語で描かれるのは、エトランゼから別の新たなエトランゼへ受け継がれてきたバトンです。よそ者とよそ者が交わり、新たなよそ者を受け入れる。そのリレーが横浜という街をつくったといえます。
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人はどのように街を見て、そして街は人をどのように見ているのか。物語は「人と街の関係」を描きます。主人公は、自らの目に映る今の街を見て、過ぎ去った時間の痕跡を見て、人と街の関係に触れます。その痕跡には、歴史という人々の集合的な記憶だけではなく、名もなき人々のささやかな思い出が刻み込まれています。

横浜という街は、その中で生きる人たちが織り成す「人と人の関係」をそっと見守ります。物語が切り取った数ヶ月という時間の中で、主人公はさまざまな人との出会いを経験し、それぞれの思いに触れます。それらは、もっと広い世界に足を踏み入れる彼女の背中を押すのです。
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2017.10.24
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by mura-bito | 2017-10-24 21:41 | Book | Comments(0)
Sarah Àlainn – ANIMA
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たまたまNHK Eテレの番組を観ていて、Sarah Àlainn(サラ・オレイン)というアーティストを知りました。オーストラリア出身のヴァイオリニストであり、シンガーです。他にもいろいろな仕事をしていたり、複数の言語を話せたりと、音楽に留まらず多芸・多才な方のようです。

Sarahの歌声とヴァイオリンの響きが織り成す美しさを楽しめるのが、2017年にリリースされたアルバム『ANIMA』です。ポップスやジャズのバックで流れるストリングスは馴染みがありますが、こうして弦楽器が主体になった作品をじっくり聴く機会は少なく、アルバムを聴きながら新鮮な気持ちを抱いています。



Sarah Àlainn – Animus

「Animus」という曲はヴァイオリンの静謐な演奏から始まります。やがて展開は急変し、攻撃的な音が響き渡ります。例えるなら、船を翻弄する嵐でしょうか。小さな存在を呑み込まんとする大きな力。同時に、彼女の音からは、そうした力に抗い、立ち向かう姿を感じることもできます。ヴァイオリンの音色に耳を傾けていると、その多彩な表現にいつしか心を奪われます。

アルバムには、オーケストラの演奏をバックにして歌う曲も収録されています。壮大に広がる音に乗せ、心を揺さぶる歌声を披露しています。Sarahの歌声はいくつかの表情を持っており、「Bring The Snow」のようにオーケストラとともに歌うときと、アコースティック・ギターに乗せて歌う「Hallelujah」では異なる顔を見せます。Eテレでは表情の豊かな人だと思ったものですが、それは歌声にも通じるところがありますね。

2017.10.19
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by mura-bito | 2017-10-19 21:12 | Music | Comments(0)
コアラモード. – 雨のち晴れのちスマイリー
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「コアラモード.」というデュオの音楽を初めて聴いたのは、2016年10月にリリースされたシングル「雨のち晴れのちスマイリー」でした。その頃、tvk「saku saku」の月間エンディング・テーマとして毎日流れていたため、そのキャッチーなメロディが印象に残りました。また、ウィークリー・ゲストとして登場したときも、2人のしゃべる雰囲気がとても良く、その点でも好印象でした。

「雨のち晴れのちスマイリー」はインディーズの頃に制作され、ずっと歌われてきた曲のようです。デビュー前からの経験が積み重なり、歌も演奏も丁寧に熟成された曲ですね。同時に、ずっと応援してきたファンとの時間もパッケージされた曲ともいえます。



コアラモード. – 雨のち晴れのちスマイリー(CM映像)

バンド・サウンドがとても心地好い。軸のしっかりとした演奏とともに、歌が聴き手にエネルギーを送り込みます。起伏のある演奏や歌は、太陽の光や灰色の雲、降りしきる雨など、次々と表情を変える空のようです。それこそ「雨のち晴れのちスマイリー」という曲名を体現しています。YouTubeでは曲の一部が聴けますが、できれば、CD・ダウンロード・サブスクリプションなど形態はともかく、イントロからアウトロまで聴いてみてほしいと思います。

リリースから1年が経ち、この曲を改めて聴いていると、聴く人の背中を押す力強さというよりは、倒れないように「支える」というイメージが浮かびました。前に進む追い風や、倒れたところに手を差し伸べる優しさとも異なり、誰かを支えようとしているのではないか。倒れたら立ち上がるエネルギーが要りますが、倒れなければすぐに歩くことができますよね。そういう「支える」音楽なのかなと思いました。

2017.10.17
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by mura-bito | 2017-10-17 21:53 | Music | Comments(0)
[PART2] TM NETWORK『EXPO』:夜空に螺旋を描くエレクトロニック・サウンド
ハウス系TMサウンドに焦点を当てたとき、アルバム『EXPO』の中でも重要なポジションを占める曲が「JUST LIKE PARADISE」です。身体を揺らすのに最適なテンポで、心地好いエレクトロニック・サウンドが流れます。その音は「夜の陰に紛れている」とでもいうような、境界線の曖昧な感じがします。クールであり、シニカルな部分も見え隠れする。表には見えない、隠された色気のような魅力がある曲です。

歌詞はすべて英語で書かれており、ループするサウンドに絡ませた言葉のインスタレーションが目の前に広がります。歌とラップとポエトリー・リーディングが入り混じり、言葉を散りばめ、交差させ、重ねます。それは愛の囁きにも聞こえるし、地球を俯瞰したメッセージにも聞こえます。地上で交わす言葉、宇宙から届く言葉。視点はダイナミックに移ろいます。

ライブでは、オリジナルの音をもとにしながら発展させたアレンジが特徴的でした。ライブでのアレンジは、1991年にかけて1992年に行なわれたホール・ツアーと、アリーナクラスの会場で実施したアリーナ・ツアーで、部分的に音が異なっています。ホール・ツアーでは、サビでアクセントとしてループしていた音を前面に押し出し、一方でアリーナ・ツアーでは曲の終盤で小室さんがソロを弾いて、会場を盛り上げました。切なさを呼び起こすメロディを繰り返しながら音の高さを上げていくことで、どんどん高揚していく、強烈なリフレインです。
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ハウス系の曲として忘れてはならないのが「あの夏を忘れない」ですね。起伏の少ない展開で単調とさえいえるのですが、中毒性はかなり高い。キラキラとした光をイメージさせるシンセサイザーの音が淡々とループを続け、ベースやギターの音と絡み合います。ゆるりとしたテンポに包まれて、指先で肌をなでるようなメロディに、情熱的な言葉が重なります。言葉の奔流が止まると、淡々とした音が再び聴き手を抱きすくめる。

音は円を描きながら、イメージの中で螺旋を描きます。それも上昇するのではなく、下降するスパイラル。同じところをぐるぐる回っていたようで、いつの間にか下に下に落ちていた。僕が曲名や歌詞からイメージするのは、太陽の下で過ごした眩しい記憶を真夜中の片隅でぼんやり思い返している人間の姿です。止まった時の中に留まり続けるメランコリックな一夜は、ただの眠れない夜ではなく、何も見えない闇の中を彷徨い歩く時間です。

1993年のリミックス・アルバム『CLASSIX 1』では、大胆に音を削ぎ落とした「あの夏を忘れない」を聴くことができます。リズム・セクションを抜き、シンセサイザーの音も前に出さないリミックスであり、ボーカルの存在感が一層強まっている。分厚い音を重ねていくダンス・ミュージックの概念はひっくり返され、静謐な空気の中でエレクトロニック・サウンドの「粒」を感じさせます。ここまでサウンドをスリムにされると、オリジナルでも使われていた音が異なる響きを持ち、より深みのある哀愁が漂います。

2017.10.11
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by mura-bito | 2017-10-11 21:45 | Music | Comments(0)
[PART1] TM NETWORK『EXPO』:季節の移ろいに溶け込むエレクトロニック・サウンド
秋に聴きたくなるアルバムを挙げるとすれば、TM NETWORKの『EXPO』を選びます。アルバムに収録されているいくつかの曲が、夏が終わり始めてから秋らしくなってグラデーションのように変わっていく空気に溶け込むような気がするからです。それも、太陽が沈んで夜になって空気がさらに冷たくなるあの感じがよく似合う。

『EXPO』はハウス・ミュージックを中心として、ロックやフォーク、ラテン・ミュージックの要素も含む、雑食性の高いアルバムですが、音、メロディ、歌詞が、それぞれに哀愁を漂わせる要素を含んでいます。秋といえば哀愁や切なさを強く感じる季節なので、そうした気持ちを『EXPO』の曲が呼び起こし、間接的に秋を感じるのだろうと思います。もちろん、聴く人によって何をイメージするか、どのような気持ちを呼び起こされるかは異なります。

とはいえ、『EXPO』の曲が哀愁を感じさせるという点は多くの聴き手に共通することなのではないかと思います。そして、それは音に依るところが大きい。アルバムにおける大きな音楽的テーマはハウス・ミュージックです。ループするエレクトロニック・サウンドを使って中毒的な快感を呼び起こす、ダンス・ミュージックの一種ですが、『EXPO』ではTM NETWORKの感性と混ざって独特のサウンドを作り上げました。そんなハウス系TMサウンドで構築された曲を3つ挙げて、三角形をつくってみましょう。
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ひとつ目は「WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-」です。シングルとは異なる音でリミックスされたバージョンです。シングルでは春や初夏のようなキラキラした華やかさを感じますが、このリミックスで感じるのは秋の風が運んでくる濃密な哀愁です。それでも寂しさやメランコリックな雰囲気ではなく、涼しげな空気が漂います。キックやベースの音は色気に満ちていて心地好く、さらに曲をぐいぐい引っ張るパワーがあります。加えて、高く抜けていくスネアの音が重なり、曲の印象を立体的にしています。

キックの響きは、2010年代のEDMとは異なった感じで存在感を示します。EDMでは主役と呼べるほどに存在感を放つことが多く、身体にぶつかってくるようなタフさがあります(TM NETWORKで例示すれば「金曜日のライオン 2014」)。「WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-」のようなハウス・ミュージックでのキックは「身体に浸み込む」感じがありますね。音に反応する快感のセンサーもいろいろあり、EDMにおけるキックとハウスにおけるキックは違ったタイプの刺激を与えるのだと思います。どちらも心地好い。

Ooh, Ah, Ah, Mixという名称もいいですよね。意味深というか、生々しいというか。TMN時代の曲やライブは、わりと色気を感じさせる、あるいはセクシュアルな要素を前に押し出すのが特徴でした。RHYTHM REDツアーの「KISS YOU」や『EXPO』での「CRAZY FOR YOU」の演出は分かりやすくセクシュアルです。『EXPO』を軸にしたツアーでもこのリミックスをもとに「WE LOVE THE EARTH」が披露されましたが、イントロに散りばめられたサンプリング・ボイスの一部で “Ooh, Ah, Ah” という声が繰り返し響きます。…まあ、そういうことです。

2017.10.10
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by mura-bito | 2017-10-10 21:40 | Music | Comments(0)
GET WILD Takkyu Ishino Remixes
2017年、「GET WILD」のリリースから30周年を記念する企画のひとつとして、石野卓球によるリミックスが実現しました。これまでに3種類のバージョンが発表されており、“Takkyu Ishino Latino Acid Remix”、“Takkyu Ishino Latino Remix”、“Takkyu Ishino Full Acid Remix” と名づけられています。
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「石野卓球が『GET WILD』をリミックスする」というテキストを目にしたときは、「何ですと!?」と驚かされたものですが、冷静になってみると期待が大きく膨らみました。すると次は、デビュー前の電気グルーヴがリミックス(?)した「RHYTHM RED BEAT BLACK」を思い浮かべて、不安の塊が脳を支配したものの、やはり冷静に考えればバックトラックは格好良かったので、やはり期待していいはずと思いなおしました。まあ、石野卓球や電気グルーヴの評価は推して知るべしというか、わざわざ言葉を尽くす必要もないのですが。

Latino Acid Remix

一連のリミックスの中で最初に発表されたのがLatino Acid Remixです。リズムは軽快な雰囲気があり、随所でホーンやパーカッションの音も聴くことができます。ループする音の中で、サビのボーカルがひたすらリフレインします。EDMのように起伏で聴き手を揺さぶる展開ではなく、中毒性の高いループに巻き込みます。

Latino Acid Remixは、CDおよび配信でリリースされた『GET WILD SONG MAFIA』に収録されています。SICK INDIVIDUALSによるダブステップ的なアプローチのリミックスとともに、「GET WILD」の新たな進化の可能性を感じたものです。小室さんとは異なる感性、アプローチによって開拓される「GET WILD」の可能性。

Latino Remix

2番目に公開されたのはLatino Remixです。このバージョンは、小室さんがリミックスした「GET WILD 2017 TK REMIX」とともに、6月にアナログ盤としてプレスされました。また、それに先立って5月に配信されたアルバム『GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition』でも聴くことができます。

Latino Acid RemixからACIDの音が抜かれることで、ACIDの裏でメインのメロディ(イントロやサビの「ミ・レ・ド」)を奏でていたシンセサイザーが前に出てきました。「ラティーノ」という言葉からラテン・ミュージックをイメージしていましたが、そういうわけでもないようです。コンガやホーンの音は使われているものの、Latino Acid Remixと同様にアクセントの役割を担います。

Full Acid Remix

最終形態…かどうかは分かりませんが、Full Acid Remixと題した新しいリミックスが9月に発表されました。11月にはFull Acid Remixのアナログ盤がリリースされます。サウンドは、ミックス名のとおりACID(ローランド社のTR-303というシンセサイザーとのこと)を押し出しています。

最後の1分間に繰り広げられる展開がとても印象的です。一連のリミックスの嚆矢であるLatino Acid Remixを聴いた時から中毒症状に侵されていたものですが、それが極まった感があります。身体を侵食する音。爆音ロックやパーティー系EDMとは違う意味で攻撃的です。そして音が収束するとともに聴き手も消えるかのような、音との同化を感じました。

これまでのリミックスと同様にウツのボーカルをサンプリングで散りばめていますが、一方でインストゥルメンタルも配信されています。ボーカルがミュートされると、音が生み出す中毒性は一層高まります。


2017.10.03
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by mura-bito | 2017-10-03 21:21 | Comments(0)

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