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ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
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[PART2] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:変わり続けることでタフになった「GET WILD」
『GET WILD SONG MAFIA』(EDMを追求した2010年代モデル・チェンジの軌跡30年目の創造的進化と現在進行形リミックス)は、30年間に披露されたさまざまな「GET WILD」を集めたアルバムです。こうしたアルバムが編集できるほどに、バージョンの異なる「GET WILD」が数多く蓄積されてきました。リミックスやライブで、その都度新しい音が重ねられたり、新しいイントロやアウトロが加えられたり、アレンジの刷新が繰り返されてきました。

その変化は、オリジナルをリリースして間もなく始まりました。現在、その姿を確認できる最古のライブ・アレンジは、1987年6月の日本武道館公演「FANKS CRY-MAX」です。イントロが長くなり、ウツのボーカルをサンプリングして鳴らします。ちなみに、このイントロでドラムを叩いた山田わたるさんによれば、Flower Travellin’ Bandの「Satori」をモチーフにしたとのことです。
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イントロの延伸やサンプリング・ボイスの追加といった手法は、ライブにおける「GET WILD」の基本形となり、その後、ライブによってはさらなる長尺のイントロや、別の曲のようにも思えるフレーズが重ねられたりしました。

TM NETWORKのライブでは、多くの曲がレコードやCDに収録されたものとはアレンジを変更されて演奏されます。アレンジの方向性は、そのときに小室さんが傾倒するジャンルに寄ったり、新作やライブの音楽的テーマに沿ったりします。TM NETWORKのライブは「音楽的に何が起こるか分からない」エンタテインメントであり、それを最も色濃く反映するのが「GET WILD」なのです。「GET WILD」がたどった30年には、変わり続けたTM NETWORKそのものを重ねることができます。

こうなるとは想像していなかったですけど、思惑やテーマに耐えてくれて、幾らいじっても壊れない曲になったということでしょうね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

ユーロビート、ハード・ロック、テクノ、トランス、EDMといったジャンルの要素が「GET WILD」に移植されてきました。具体的なジャンルに分類できないアレンジもあれば、underworldやAVICIIといった具体的なモチーフを活用することもありました。苦肉の策としての変節ではなく、明確に意図を持って「変わり続けた」ことがポイントです。

「GET WILD」の変化は単発の企画で終わることなく、継続的に行なわれました。いつの間にか変わることが宿命となり、さまざまなリミックスやライブ・アレンジに対応できる曲になりました。変わり続けることで「GET WILD」はタフになったのです。

よく小室君と曲を作ったときに、“サビのこの1小節でこの曲勝ってるよね” と言ったりするの。そこがあるから全体が持つみたいな。そういった意味で「Get Wild」はイントロなのかなと。イントロから先はどうでもいいわけじゃないんだけど、あのイントロがあるから、どんなにグチャグチャになっても、何をやってもみんなグッとくるんじゃないのかな。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

大小さまざまな変化を重ねた「GET WILD」ですが、最も重要なポイントとして、木根さんはイントロを強調します。ここで言及されているイントロとは、オリジナルから存在し続けるイントロのメロディですね。また、「どんなにグチャグチャになっても」とは、木根さんらしい言い方ですが、小室さんが試みるアレンジの刷新やサンプリング・ボイスの連打のことでしょう。

いわゆる ♪ミ・レ・ド♪ から始まるメロディは、サウンドが大幅にアレンジされる中でも継承されました。長大なイントロが続いた後に、エア・ポケットのようにわずかな空白を挟み、このメロディが鳴ることで会場の熱気がぐんと上がるシーンを何度も見ました。ファンの記憶どころか、身体にまで刻み込まれたメロディです。

「GET WILD」は音や構成で変わり続けてきたからこそ、対照的に、オリジナルのイメージを強く残すものの価値が浮かび上がります。それは木根さんが言うところの「あのイントロ」ですが、さらにボーカルも挙げられると思います。PART3では、変化し続けてきた音の中で、ひときわ輝くウツの歌に焦点を当ててみましょう。

2017.05.21
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by mura-bito | 2017-05-21 08:13 | Music | Comments(0)
[PART1] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:TM NETWORKが拡散するきっかけを作った「GET WILD」
TM NETWORKのシングル「GET WILD ’89」のジャケット写真が、4月に刊行されたSound & Recording Magazine誌の表紙を飾りました。巻頭特集では、4月初旬にリリースされたコンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』が取り上げられています。1987年にリリースされたオリジナルを当時のエンジニアや参加ミュージシャンへの取材で解析したり、ライブで演奏したサポート・ミュージシャンや影響を受けたさまざまな世代のアーティストから集めた言葉を紹介したりしています。

TM NETWORKのインタビューも掲載されています。記事では、三人がそれぞれの記憶を巻き戻しながらそれぞれの視点で「GET WILD」の誕生や発展を語ります。彼らの印象的な言葉を引用しながら、「GET WILD」という角度からTM NETWORKというトライアングルに光を当ててみましょう。
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TM NETWORKのシングルのうち、売上枚数のトップは「GET WILD」ではなく「LOVE TRAIN」(1991年)であり、作品としてのインパクトや独自性はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の方が大きいかなとは思います。けれども、広がりという点では「GET WILD」に一日の長がありますよね。アニメ「シティーハンター」によって、多くの人の知るところとなり、今でも「そういえば…」と思い出せるくらいに記憶に残っている人は多いかと思います。拡散のトリガー、それが「GET WILD」の役割です。

TM NETWORKのターニング・ポイントは1987年であり、俗に言う「売れた」年です。2月にオリジナル・アルバム『Self Control』をリリースし、4月にシングル「GET WILD」をリリースしました。8月に「GET WILD」を含むベスト・アルバム『Gift for Fanks』、11月に次のオリジナル・アルバム『humansystem』をリリースしました。翌1988年には大規模なタイアップ(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と『ぼくらの七日間戦争』)が続き、完成したばかりの東京ドームでの公演を経て、代表作『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』がリリースされました。TM NETWORKが売れた要因はいろいろあるのでしょうが、少なくとも「GET WILD」が強力な追い風になったことに異論はないかと思います。

『CAROL』はいろんな意味で革新的なアルバムでしたが、「Get Wild」がそこへ行くための推進力になったのは確かですしね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」の前後でアルバムの制作費、全国ツアーやタイアップの規模といった点が変化しているわけですが、その延長線上に、1989年の『DRESS』があります。ロンドンやニューヨークの音楽家やプロデューサーに依頼して、ボーカル以外の音を大胆に変えた曲を集めたリミックス・アルバムです。Sound & Recording Magazine誌には、海外のプロデューサーたちとの交渉にあたった当時のスタッフ、大竹健さんの話も掲載されています。

アルバムの中でも、当時の世界を席巻していたユーロビートに生まれ変わった「GET WILD ’89」は、オリジナルの「GET WILD」と並んでTM NETWORKを代表する曲となり、多くのファンの記憶に残っています。リアルタイムではありませんが、僕がTM NETWORKに初めて触れた曲のひとつでもあります。小室さんの思い入れも大きかったようで、それは『GET WILD SONG MAFIA』のライナーノートで語られています。

ずっと廃れずにTMのブランドを持ち続けさせてもらえるのは「Get Wild」のおかげなのかなって思いますね。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」はリミックスやライブで何度も新しい姿を披露しました。「GET WILD」は単なる出世作ではありません。世の中にはオリジナルのまま歌い継がれる代表曲の方が多いのかもしれませんが、「GET WILD」は変わり続けることを使命にしていたのではないかと思えるくらい、大胆に変化していきました。新しいシンセサイザーの音や新しいフレーズ、常にコンテンポラリーな要素を組み込まれてその時代の空気をまとう。PART2では「変わり続ける」という点にフォーカスしてみます。

2017.05.15
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by mura-bito | 2017-05-15 21:37 | Music | Comments(0)
Zara Larsson「Lush Life」:ベースの音が魅せるサウンド、1980年代的世界の再構築
ミュージック・ビデオを流すtvkの番組で不意に目にした映像に衝撃を受けました。「この曲を歌っているのは誰だろう?」と思って調べると、Zara Larsson(ザラ・ラーソン)というシンガーであることを知ります。曲のタイトルは「Lush Life」。今年リリースされたアルバム『So Good』に収録されています。
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アレンジで印象に残るのは主にベースの音ですね。厚みがあって、曲の輪郭を描きます。ベースとハンドクラップが共謀して、聴き手をアジテートします。ベースが心地好い――それは僕にとって素晴らしい曲の証のひとつです。心も身体も動かされることが多々あります。

サウンド全体に1980年代の雰囲気を感じるのは、上に乗るユーロビートのような音の影響かもしれません。30年が経って、軽くてキラキラした音が再び求められているのでしょうか。スタッフは当時を知っているのかもしれませんが、Zaraのファンにとっては知らない世界でしょうね。当時を知るリスナーにとっては懐かしく、それぞれの記憶に触れられる。そんなタイムマシン的サウンドかなと思います。



Zara Larsson – Lush Life (Music Video 1)

ミュージック・ビデオを観たときの第一印象は、やはり30年ほど前の雰囲気がある、ということですね。その要因として大きいのは、シンプルというよりは「チープ」と表現したくなる映像エフェクト。彼女が一人で披露するダンスも2010年代的とは言い難い(Olivia Newton-Johnの「Physical」のような)雰囲気を感じますが、ここまで来ると意図的、戦略的な「パロディ」なのではないかと思います。リバイバルと表現するよりも、1980年代の雰囲気をパロディで再構築してみた、と言う方がしっくり来ます。

2つのミュージック・ビデオが制作されており、もうひとつのバージョンを観ると、独特の雰囲気を醸します。階段やセットの中を歩くシーンがありますが、それらの佇まいがシュールで、現代アートにも見えます。日本で言うならば、佐々木マキの絵(『1973年のピンボール』や『ダンス・ダンス・ダンス』)のような感じでしょうか。衣装のカラーリングもまたポップで、時代を遡っている感じがあります。



Zara Larsson – Lush Life (Music Video 2)

Zaraのハスキーな歌声は独特で、オリジナリティの高い存在感を放っています。甘くなくて、どこか突き放したような、世界を斜めに見ているような声ですが、その一方で、音と絡み、調和する声ですよね。歌声と音が組み合わさると、今なのか昔なのか、あるいは今と昔が渾然一体となっているのか、時間が交差するミクスチャーを体験できます。

また、イギリス出身のラッパーTinie Tempah(タイニー・テンパー)が参加したバージョンも配信されています。Zaraのボーカルを一部ミュートして、そこにラップを組み込みます。Zaraの歌からTinieのラップにバトンが渡されると、カメラが切り換わり、すっと世界が変わります。ラップは音に乗りながら、サーフィンで波を捕らえるように、クールな流線型を描きます。そして再びZaraのボーカルが満ちる世界に放り込まれるのです。

2017.05.10
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by mura-bito | 2017-05-10 21:49 | Music | Comments(0)
ACCA13区監察課 オリジナルサウンドトラック:紫煙のように立ち昇る音、鏡が映す13の世界
2017年の1月から3月までTOKYO MXなどで放送されたアニメ「ACCA13区監察課」のオリジナルサウンドトラックがリリースされました。サブタイトルは「SMOKE and MIRRORS」。物語の進行において鍵を握り、大きな役割を果たした煙草ですが、そこから立ち昇る煙と、その間に見え隠れする鏡。鏡が映す物語は、いつの間にか大きな流れ、大きな渦となって、主人公であるジーン・オータスを巻き込んでいきます。それでも本人は飄々として、煙草の煙のように漂い続けます。
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音楽を担当したのは高橋諒。ジャズやフュージョンを軸にしたアレンジで、物語を支えます。音楽は物語を引き立たせる助演であることは疑いようもありませんが、音楽を聴いているだけでも物語が浮かび上がります。印象的なメロディや音は、絵や台詞とともに記憶に刻み込まれます。時間が経てばディスクで確認するのでなければ具体的なシーンを思い描くのは難しくなりますが、サウンドトラックを聴くことで、断片的に物語が蘇ってきます。それらを継ぎ合わせ、オリジナルの世界が立ち上がります。それもまた、拡散したACCA13区の世界、もうひとつのACCA13区です。



アニメ「ACCA13区監察課」オリジナルサウンドトラック
SMOKE and MIRRORS

ホーンを効かせた「SMOKE and MIRRORS - Theme of ACCA」や「Movin’ On」が特に好きですね。物語が始まったり、一気に動いたりと、躍動感に満ちています。「Manic Funk」はファンキーなベースとギター、軽快に鳴るホーンとエレクトリック・ピアノを効かせています。「Cool Talk」は、よく記憶に残っています。この曲からシーンが始まり、やがて台詞が重なるため、耳に残っているんですよね。「Rising Over」は緊張感を一気に高めて、同時にエキサイトさせてくれる曲です。

My Own Order」では渋く響くベースに、遠くを見つめるようなピアノがそっと加わります。「Turn Your Eyes On」は、ノイジーな音から始まり、不穏な雰囲気を醸します。扇情的なピアノ、ループするピアノ。不安定な世界の中でも、その旋律が心地好く、音が上がるときの高揚感は素晴らしい。サイズを長くして、アップダウンが何度もあるバージョンも聴いてみたいですね。ひとつの曲として成立すると思います。「Breaking News」は、暗闇を切り裂く光のように鮮やかなジャズ・ピアノに、ふくらみのあるストリングスが重なります。



ONE III NOTES – Shadow and Truth
結城アイラ – ペールムーンがゆれてる

主題歌または挿入歌はシングルとしてリリースされていますが、本作には劇中で流れたサイズで収録されています。オープニング主題歌はONE III NOTESの「Shadow and Truth」であり、一方、エンディング主題歌は結城アイラの「ペールムーンがゆれてる」です。前者はオープニングらしく鋭くダイナミックに響き、後者は柔らかに包み込むような温かい肌触りを感じます。どちらもそれぞれのアニメーションとともに記憶されています。

結城アイラの「It’s my life」は挿入歌として一度だけ流れましたが、耳にした瞬間に、はっとした記憶があります。劇中で流れるとアコースティック・ギターのカッティングの存在感が大きくて、印象に強く残りました。そして、最終回のエンド・ロールでは、ONE III NOTESの「Our Place」が使われました。フルサイズとは終わり方が異なり、とても印象的でした。エンド・ロールともに、煙がふっと消えるように歌がカット・アウトします。その記憶が余韻を残す中、物語はアニメ独自のエンディングを迎えたのでした。
2017.05.08
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by mura-bito | 2017-05-08 21:21 | Music | Comments(0)

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