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[PART4] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:「I am」にまつわる新しい真実を見せてくれた言葉
「GET WILD」を追いかけたSound & Recording Magazine誌による一連の企画は、「GET WILD」が蓄積した30年という時間をさまざまな角度から切り取りました。場合によっては「GET WILD」から離れ、TM NETWORKへの言及もありました。そこで、最後は「GET WILD」の話から派生した、興味深い言葉にフォーカスしてみます。

目に留まったのは、自らの歌について語ったウツの言葉です。これまで、ウツがTM NETWORKについて語るときは、自分も含めてメンバーそれぞれの役割を客観的に見ている感じでした。今回のインタビューで見せた一瞬の表情は、それとは少し異なる、自分自身を真正面から見据えたものに思えました。読み流すには惜しい、ウツの、そしてTM NETWORKの本質的な部分が見えた気がします。
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2014年4月に、TM NETWORKは30周年記念企画のひとつとして『DRESS2』というアルバムをリリースしました。収録されたのは、デビューした1984年から4年ほどの間にリリースした曲ですが、いずれも2014年の音でアップデートされ、ボーカルやコーラスも新たに録音されました。

代表曲である「GET WILD」もまた、このアルバムに「GET WILD 2014」として収録されています。「GET WILD」の音は2013年のライブで大きく変化しており(大部分をソフト・シンセで構築)、ライブで使った音を基にして小室さんがソロで音源として「GET WILD (2013 SUMMER)」として配信しました。そこにいくつかの音を加えたのが「GET WILD 2014」です。

そのちょっと前くらいから、自分の年齢もあるし、それまでのいきさつもあるだろうし、歌に対するその自分なりの立ち位置が変わっていたんです。だから1987年当時のときの歌とは全く違うと思う。今はより開いているというか、明るい声になっていると思うんです。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

リミックスでは歌を録りなおすことはないため、レコーディングでウツが「GET WILD」を歌いなおしたのは、1999年の「GET WILD DECADE RUN」以来、15年ぶりでした。歌もアップデートされたということで、今回のインタビューでは「GET WILD 2014」の歌に関する質問にウツが答えています。1987年の声とは大きく異なり、現在は「開いている」、「明るい」声になっているとウツは自分のボーカルを表現します。

では、ウツの「歌に対する立ち位置」が変化したきっかけとは何だったのでしょうか。転機となったのはTM NETWORKの「I am」だと語ります。「I am」は、2012年4月のライブ「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」の開催と同時にリリースされ、その後のコンサートでも常に演奏されてきました。

ソロも含め自分の歌を冷静に聴いていく中で、TMの「I am」を歌ったときに、“これが今の僕だ” って思えたんですよ。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「I am」は、再び動き出したTM NETWORKを象徴する曲であり、そこには小室さんの思いがたくさん込められていると思いました。それは真実のひとつです。一方で、今回のインタビューを通して、ウツもまた自らを重ねていたことを知って驚きました。歌い手として、ウツの何かが「I am」とぴたりとはまったのでしょう。インタビューではこれ以上掘り下げられてはいませんが、「I am」にまつわる新しい真実を見た気がします。

2015年2月に、小室さんは「みんなで話しているけど I amという曲は なんか、特別な曲になりました」とツイートしました。TM NETWORKの活動がそろそろ区切りを迎えるころの投稿です。「特別な曲」とはまた素敵な表現ですよね。3年にわたるTM NETWORKの活動を引っ張ってきた曲をメンバーとして大事に思うのと同時に、「パーソナルな距離感での思い入れ」とでも言うべき気持ちが別のレイヤーにあった、ということなのかなと思います。

躍動するメロディに乗って流れる「I am」の歌詞は、具体的なシーンを描いたり、抽象的に大きな世界を投影したりと、ミクロとマクロを行き交います。聴く人が自分を重ねられる曲であり、どの部分に焦点を当ててイメージするかは聴く人次第です。いろいろな人のさまざまな気持ちに重なってそれぞれの物語を描く。それはウツにも共通することなのかもしれません。今、ウツの「“これが今の僕だ” って思えた」という言葉に触れて、改めて「I am」が自分にもたらしてくれたものを思い起こします。僕もまた心を動かされたひとりであり、自然と自分を重ねていたことを覚えています。僕にとっても特別な曲ですね。



TM NETWORK「I am」のミュージック・ビデオ。
三人がそれぞれの場所で「潜伏」している様子、そして、
再び集まりTM NETWORKとなる様子が描かれている。
2017.05.31
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by mura-bito | 2017-05-31 21:53 | Music | Comments(0)
[PART3] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:オリジナルの「イメージ」を呼び出す歌声
「GET WILD」が持つ強さは幾多の変化にも対応できる柔軟さであり、それが「変わり続ける」という魅力を確立させました。その一方で、二律背反的に、反対の魅力も共存共栄しています。それがイントロのメロディであり、「変わらない」という魅力です。変わり続けて、変わらない。
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観察する角度をわずかに変えてみましょう。僕らがずっと聴き続けているもの、それはイントロのメロディだけではありません。それはウツの歌です。彼の歌は「変わらない」というより、「オリジナルにアクセスして再び立ち上げる」機能があると思います。もちろん30年前の声とは質が違うし、歌い方、テクニックも格段に進歩しているはずです。レベルの高低の問題ではなく、ウツの歌は「オリジナルの『イメージ』を呼び起こす」ことができるのではないか、ということを言いたい。

同じことを語るプロフェッショナルがいます。同じSound & Recording Magazine誌の企画の中で、サウンド・デザイナー/PAエンジニアの志村明さんは「これだけアレンジが変わっても、オリジナルの曲のイメージがストレートに入ってくる」と語っています。「GET WILD」が持つ力を評した言葉ですが、僕はそこにウツの歌も含まれていると解釈しました。イントロが輪郭を描き、ウツの歌がその像にピントを合わせる。そして「GET WILD」のイメージが聴き手に浮かび上がる。そんなことを思いました。



2012年から2015年にかけて5つのライブで演奏された「GET WILD」をまとめた映像。
この時期のサウンドはダイナミックに変遷したが、ウツのボーカルは安定感を見せていた。
特に2013年のライブは病み上がりだったものの、歌への大きな影響は見られなかった。


* * *


インタビューでは、小室さんがウツの歌について語っています。2012年から2015年のTM NETWORKの活動を経た今、改めてウツの歌声の魅力を語り、そして敬意を表します。

小室さんが価値を感じているのは「基本に忠実に歌ってくれる」こと。サウンドの面で変化を繰り返してきた「GET WILD」だからこそ、その出発点が見えることは重要なのだろうと思います。たとえるなら、船における碇のようなものなのかもしれません。周囲が揺れる中でも同じところに留まる。ただ同じことを繰り返す(それはそれで大事なことではありますが)のではなく、サウンドが激しく変わる中で軸となるものを示し続けるのは、意外とハードルの高いことなのでしょう。

シンガーにもいろんなタイプの人がいますよね。歌うごとにフェイクを入れて、そのときそのときで変わるとか。でも30年もたつと、基本に忠実に歌ってくれるという方の価値が大きくなっているかもしれません。宇都宮君はそれができる人なのがすごいですよね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

では、ウツはどのように考え、歌っているのでしょうか。小室さんが評価する「基本に忠実に歌う」ことについて、ウツはその重要性を自覚し、共有しています。歌うことは、同時に聞かせることもあります。多くの場合「どのように歌いたいか」は「どのように聞かせたいか」とセットで語られます。

今回のインタビューで語られた言葉の中から、ウツの真意を正確に読み取ることは困難を極めます。それでも、観客の顔を思い浮かべながら自分の歌について語っていることは間違いないのかなと思います。

これは人によると思うんですけど、僕は、作った曲をライブで披露するときに、できるだけCDに近いものを聴かせたいという思いがあるんですよ。人によってはどんどんメロディを変えちゃったり、譜割を変えたりしますよね。僕もそういうのもありかなって思った時期がありましたが、結局はみんなが聴いてきたものがそこで再現される喜びが一番大きいと思うんです。だからなるべく再現できた方がいいかなって。

宇都宮隆
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

2013年のライブ「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」でも、ウツの歌が大きく変わったという印象はありませんでした。膵臓の腫瘍を患い、手術に成功したとはいえ、歌うことすらままならなかった状態で、それでも僕らが知っている「ウツの歌」を聴かせてくれました。

ウツはさらりと「なるべく再現できた方がいいかな」と語っていますが、2013年のエピソードを思い出すと、それほど簡単なことではないと思えてきます。それはプロフェッショナルだから……というより、ウツだから、と表現するほうが適切なのでしょう。だから小室さんも「すごい」と語るわけですね。まあ、ウツは「今さらほめてくれなくてもいいよ」と言っているようですが。

PART4では、ウツの歌について、もう少し踏み込んでみたいと思います。今回は「歌い方」にフォーカスしたのですが、次回は「歌」というものに迫ってみたい。それは広いマクロな視野で捉えるようでいて、とてもミクロなウツの本質的な部分に近づくことを意味します。ウツのわずかな言葉を頼りにして、「海の底」のようなところに潜っていこうと思います。
2017.05.29
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by mura-bito | 2017-05-29 22:13 | Music | Comments(0)
ORESAMA「ワンダードライブ」:鮮やかなグラデーションを描いて駆け抜ける歌声
ORESAMAというデュオのデビュー・シングル「ワンダードライブ」がにリリースされました。歌も音も鮮やかに舞うポップな曲です。この曲は、アニメ「アリスと蔵六」のオープニング主題歌として4月からオンエアされています。リリースの1ヶ月前には、ミュージック・ビデオが公開されました。
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まっすぐ伸びやかな音が印象に残りますが、特にシンセサイザーが響くところはとても心地好い。このあたりはサウンド・プロデューサーである佐藤純之介さんの狙いでしょうか。彼は「TM NETWORKフォロワー」のひとりであり、Sound & Recording Magazine誌で『QUIT30』や『GET WILD SONG MAFIA』について、クラムボンのmitoと対談しています。シンセサイザー・サウンドへの感度はかなり高いことは明白です。

閑話休題。「ワンダードライブ」の魅力のひとつは、ぽんのボーカルです。♪フリーウィル 針を振り切って♪ や ♪フリーウィル もっと遠くまで♪ の部分が特に好きですね。くるくる表情を変える曲の中で、歌声が鮮やかなグラデーションを描きます。甘めの声、切なくて儚いようにも聞こえる声、追い風を背にしてエネルギッシュに駆け出す声。彼女の歌は音の世界に奥行きを与えます。

彼女の歌を初めて耳にしたのは、ONE III NOTESの「Shadow and Truth」です。偶然目にしたアニメ「ACCA13区監察課」のオープニング・テーマが強く印象に残り、「この曲を歌うシンガーは誰だろう?」と思って、興味を引かれました。歌の雰囲気はONE III NOTESとORESAMAでは大きく異なるため、その落差もまた魅力なのかなあと思います。



ORESAMA – ワンダードライブ

青い髪の女性と金髪の女性が鏡越しに向かい合う。物語は音に乗り、音を媒介にして、二つの世界を往来します。カラフルでマジカルなトイボックスが広がり、ひとつの扉が開くと、その先には次の扉が待っています。三次元の世界と二次元の世界が交錯して、瞬きをするたびに世界が移り変わります。

くるくる回って表情を変える世界、走るだけでは追いつきません。かつてアリスはワンダーランドを駆けました。ここのワンダーランドにはドライブがよく似合う。ハンドルを握ってアクセルを踏み込み、この世界を駆け巡るのです。

2017.05.27
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by mura-bito | 2017-05-27 22:48 | Music | Comments(0)
[PART2] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:変わり続けることでタフになった「GET WILD」
『GET WILD SONG MAFIA』(EDMを追求した2010年代モデル・チェンジの軌跡30年目の創造的進化と現在進行形リミックス)は、30年間に披露されたさまざまな「GET WILD」を集めたアルバムです。こうしたアルバムが編集できるほどに、バージョンの異なる「GET WILD」が数多く蓄積されてきました。リミックスやライブで、その都度新しい音が重ねられたり、新しいイントロやアウトロが加えられたり、アレンジの刷新が繰り返されてきました。

その変化は、オリジナルをリリースして間もなく始まりました。現在、その姿を確認できる最古のライブ・アレンジは、1987年6月の日本武道館公演「FANKS CRY-MAX」です。イントロが長くなり、ウツのボーカルをサンプリングして鳴らします。ちなみに、このイントロでドラムを叩いた山田わたるさんによれば、Flower Travellin’ Bandの「Satori」をモチーフにしたとのことです。
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イントロの延伸やサンプリング・ボイスの追加といった手法は、ライブにおける「GET WILD」の基本形となり、その後、ライブによってはさらなる長尺のイントロや、別の曲のようにも思えるフレーズが重ねられたりしました。

TM NETWORKのライブでは、多くの曲がレコードやCDに収録されたものとはアレンジを変更されて演奏されます。アレンジの方向性は、そのときに小室さんが傾倒するジャンルに寄ったり、新作やライブの音楽的テーマに沿ったりします。TM NETWORKのライブは「音楽的に何が起こるか分からない」エンタテインメントであり、それを最も色濃く反映するのが「GET WILD」なのです。「GET WILD」がたどった30年には、変わり続けたTM NETWORKそのものを重ねることができます。

こうなるとは想像していなかったですけど、思惑やテーマに耐えてくれて、幾らいじっても壊れない曲になったということでしょうね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

ユーロビート、ハード・ロック、テクノ、トランス、EDMといったジャンルの要素が「GET WILD」に移植されてきました。具体的なジャンルに分類できないアレンジもあれば、underworldやAVICIIといった具体的なモチーフを活用することもありました。苦肉の策としての変節ではなく、明確に意図を持って「変わり続けた」ことがポイントです。

「GET WILD」の変化は単発の企画で終わることなく、継続的に行なわれました。いつの間にか変わることが宿命となり、さまざまなリミックスやライブ・アレンジに対応できる曲になりました。変わり続けることで「GET WILD」はタフになったのです。

よく小室君と曲を作ったときに、“サビのこの1小節でこの曲勝ってるよね” と言ったりするの。そこがあるから全体が持つみたいな。そういった意味で「Get Wild」はイントロなのかなと。イントロから先はどうでもいいわけじゃないんだけど、あのイントロがあるから、どんなにグチャグチャになっても、何をやってもみんなグッとくるんじゃないのかな。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

大小さまざまな変化を重ねた「GET WILD」ですが、最も重要なポイントとして、木根さんはイントロを強調します。ここで言及されているイントロとは、オリジナルから存在し続けるイントロのメロディですね。また、「どんなにグチャグチャになっても」とは、木根さんらしい言い方ですが、小室さんが試みるアレンジの刷新やサンプリング・ボイスの連打のことでしょう。

いわゆる ♪ミ・レ・ド♪ から始まるメロディは、サウンドが大幅にアレンジされる中でも継承されました。長大なイントロが続いた後に、エア・ポケットのようにわずかな空白を挟み、このメロディが鳴ることで会場の熱気がぐんと上がるシーンを何度も見ました。ファンの記憶どころか、身体にまで刻み込まれたメロディです。

「GET WILD」は音や構成で変わり続けてきたからこそ、対照的に、オリジナルのイメージを強く残すものの価値が浮かび上がります。それは木根さんが言うところの「あのイントロ」ですが、さらにボーカルも挙げられると思います。PART3では、変化し続けてきた音の中で、ひときわ輝くウツの歌に焦点を当ててみましょう。
2017.05.21
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by mura-bito | 2017-05-21 08:13 | Music | Comments(0)
[PART1] Sound & Recording Magazine 2017年6月号 TM NETWORKインタビュー:TM NETWORKが拡散するきっかけを作った「GET WILD」
TM NETWORKのシングル「GET WILD ’89」のジャケット写真が、4月に刊行されたSound & Recording Magazine誌の表紙を飾りました。巻頭特集では、4月初旬にリリースされたコンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』が取り上げられています。1987年にリリースされたオリジナルを当時のエンジニアや参加ミュージシャンへの取材で解析したり、ライブで演奏したサポート・ミュージシャンや影響を受けたさまざまな世代のアーティストから集めた言葉を紹介したりしています。

TM NETWORKのインタビューも掲載されています。記事では、三人がそれぞれの記憶を巻き戻しながらそれぞれの視点で「GET WILD」の誕生や発展を語ります。彼らの印象的な言葉を引用しながら、「GET WILD」という角度からTM NETWORKというトライアングルに光を当ててみましょう。
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TM NETWORKのシングルのうち、売上枚数のトップは「GET WILD」ではなく「LOVE TRAIN」(1991年)であり、作品としてのインパクトや独自性はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の方が大きいかなとは思います。けれども、広がりという点では「GET WILD」に一日の長がありますよね。アニメ「シティーハンター」によって、多くの人の知るところとなり、今でも「そういえば…」と思い出せるくらいに記憶に残っている人は多いかと思います。拡散のトリガー、それが「GET WILD」の役割です。

TM NETWORKのターニング・ポイントは1987年であり、俗に言う「売れた」年です。2月にオリジナル・アルバム『Self Control』をリリースし、4月にシングル「GET WILD」をリリースしました。8月に「GET WILD」を含むベスト・アルバム『Gift for Fanks』、11月に次のオリジナル・アルバム『humansystem』をリリースしました。翌1988年には大規模なタイアップ(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と『ぼくらの七日間戦争』)が続き、完成したばかりの東京ドームでの公演を経て、代表作『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』がリリースされました。TM NETWORKが売れた要因はいろいろあるのでしょうが、少なくとも「GET WILD」が強力な追い風になったことに異論はないかと思います。

『CAROL』はいろんな意味で革新的なアルバムでしたが、「Get Wild」がそこへ行くための推進力になったのは確かですしね。

小室哲哉
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」の前後でアルバムの制作費、全国ツアーやタイアップの規模といった点が変化しているわけですが、その延長線上に、1989年の『DRESS』があります。ロンドンやニューヨークの音楽家やプロデューサーに依頼して、ボーカル以外の音を大胆に変えた曲を集めたリミックス・アルバムです。Sound & Recording Magazine誌には、海外のプロデューサーたちとの交渉にあたった当時のスタッフ、大竹健さんの話も掲載されています。

アルバムの中でも、当時の世界を席巻していたユーロビートに生まれ変わった「GET WILD ’89」は、オリジナルの「GET WILD」と並んでTM NETWORKを代表する曲となり、多くのファンの記憶に残っています。リアルタイムではありませんが、僕がTM NETWORKに初めて触れた曲のひとつでもあります。小室さんの思い入れも大きかったようで、それは『GET WILD SONG MAFIA』のライナーノートで語られています。

ずっと廃れずにTMのブランドを持ち続けさせてもらえるのは「Get Wild」のおかげなのかなって思いますね。

木根尚登
Sound & Recording Magazine 2017年6月号

「GET WILD」はリミックスやライブで何度も新しい姿を披露しました。「GET WILD」は単なる出世作ではありません。世の中にはオリジナルのまま歌い継がれる代表曲の方が多いのかもしれませんが、「GET WILD」は変わり続けることを使命にしていたのではないかと思えるくらい、大胆に変化していきました。新しいシンセサイザーの音や新しいフレーズ、常にコンテンポラリーな要素を組み込まれてその時代の空気をまとう。PART2では「変わり続ける」という点にフォーカスしてみます。
2017.05.15
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by mura-bito | 2017-05-15 21:37 | Music | Comments(0)
Zara Larsson「Lush Life」:ベースの音が魅せるサウンド、1980年代的世界の再構築
ミュージック・ビデオを流すtvkの番組で不意に目にした映像に衝撃を受けました。「この曲を歌っているのは誰だろう?」と思って調べると、Zara Larsson(ザラ・ラーソン)というシンガーであることを知ります。曲のタイトルは「Lush Life」。今年リリースされたアルバム『So Good』に収録されています。
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アレンジで印象に残るのは主にベースの音ですね。厚みがあって、曲の輪郭を描きます。ベースとハンドクラップが共謀して、聴き手をアジテートします。ベースが心地好い――それは僕にとって素晴らしい曲の証のひとつです。心も身体も動かされることが多々あります。

サウンド全体に1980年代の雰囲気を感じるのは、上に乗るユーロビートのような音の影響かもしれません。30年が経って、軽くてキラキラした音が再び求められているのでしょうか。スタッフは当時を知っているのかもしれませんが、Zaraのファンにとっては知らない世界でしょうね。当時を知るリスナーにとっては懐かしく、それぞれの記憶に触れられる。そんなタイムマシン的サウンドかなと思います。



Zara Larsson – Lush Life (Music Video 1)

ミュージック・ビデオを観たときの第一印象は、やはり30年ほど前の雰囲気がある、ということですね。その要因として大きいのは、シンプルというよりは「チープ」と表現したくなる映像エフェクト。彼女が一人で披露するダンスも2010年代的とは言い難い(Olivia Newton-Johnの「Physical」のような)雰囲気を感じますが、ここまで来ると意図的、戦略的な「パロディ」なのではないかと思います。リバイバルと表現するよりも、1980年代の雰囲気をパロディで再構築してみた、と言う方がしっくり来ます。

2つのミュージック・ビデオが制作されており、もうひとつのバージョンを観ると、独特の雰囲気を醸します。階段やセットの中を歩くシーンがありますが、それらの佇まいがシュールで、現代アートにも見えます。日本で言うならば、佐々木マキの絵(『1973年のピンボール』や『ダンス・ダンス・ダンス』)のような感じでしょうか。衣装のカラーリングもまたポップで、時代を遡っている感じがあります。



Zara Larsson – Lush Life (Music Video 2)

Zaraのハスキーな歌声は独特で、オリジナリティの高い存在感を放っています。甘くなくて、どこか突き放したような、世界を斜めに見ているような声ですが、その一方で、音と絡み、調和する声ですよね。歌声と音が組み合わさると、今なのか昔なのか、あるいは今と昔が渾然一体となっているのか、時間が交差するミクスチャーを体験できます。

また、イギリス出身のラッパーTinie Tempah(タイニー・テンパー)が参加したバージョンも配信されています。Zaraのボーカルを一部ミュートして、そこにラップを組み込みます。Zaraの歌からTinieのラップにバトンが渡されると、カメラが切り換わり、すっと世界が変わります。ラップは音に乗りながら、サーフィンで波を捕らえるように、クールな流線型を描きます。そして再びZaraのボーカルが満ちる世界に放り込まれるのです。

2017.05.10
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by mura-bito | 2017-05-10 21:49 | Music | Comments(0)
ACCA13区監察課 オリジナルサウンドトラック:紫煙のように立ち昇る音、鏡が映す13の世界
2017年の1月から3月までTOKYO MXなどで放送されたアニメ「ACCA13区監察課」のオリジナルサウンドトラックがリリースされました。サブタイトルは「SMOKE and MIRRORS」。物語の進行において鍵を握り、大きな役割を果たした煙草ですが、そこから立ち昇る煙と、その間に見え隠れする鏡。鏡が映す物語は、いつの間にか大きな流れ、大きな渦となって、主人公であるジーン・オータスを巻き込んでいきます。それでも本人は飄々として、煙草の煙のように漂い続けます。
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音楽を担当したのは高橋諒。ジャズやフュージョンを軸にしたアレンジで、物語を支えます。音楽は物語を引き立たせる助演であることは疑いようもありませんが、音楽を聴いているだけでも物語が浮かび上がります。印象的なメロディや音は、絵や台詞とともに記憶に刻み込まれます。時間が経てばディスクで確認するのでなければ具体的なシーンを思い描くのは難しくなりますが、サウンドトラックを聴くことで、断片的に物語が蘇ってきます。それらを継ぎ合わせ、オリジナルの世界が立ち上がります。それもまた、拡散したACCA13区の世界、もうひとつのACCA13区です。



アニメ「ACCA13区監察課」オリジナルサウンドトラック
SMOKE and MIRRORS

ホーンを効かせた「SMOKE and MIRRORS - Theme of ACCA」や「Movin’ On」が特に好きですね。物語が始まったり、一気に動いたりと、躍動感に満ちています。「Manic Funk」はファンキーなベースとギター、軽快に鳴るホーンとエレクトリック・ピアノを効かせています。「Cool Talk」は、よく記憶に残っています。この曲からシーンが始まり、やがて台詞が重なるため、耳に残っているんですよね。「Rising Over」は緊張感を一気に高めて、同時にエキサイトさせてくれる曲です。

My Own Order」では渋く響くベースに、遠くを見つめるようなピアノがそっと加わります。「Turn Your Eyes On」は、ノイジーな音から始まり、不穏な雰囲気を醸します。扇情的なピアノ、ループするピアノ。不安定な世界の中でも、その旋律が心地好く、音が上がるときの高揚感は素晴らしい。サイズを長くして、アップダウンが何度もあるバージョンも聴いてみたいですね。ひとつの曲として成立すると思います。「Breaking News」は、暗闇を切り裂く光のように鮮やかなジャズ・ピアノに、ふくらみのあるストリングスが重なります。



ONE III NOTES – Shadow and Truth
結城アイラ – ペールムーンがゆれてる

主題歌または挿入歌はシングルとしてリリースされていますが、本作には劇中で流れたサイズで収録されています。オープニング主題歌はONE III NOTESの「Shadow and Truth」であり、一方、エンディング主題歌は結城アイラの「ペールムーンがゆれてる」です。前者はオープニングらしく鋭くダイナミックに響き、後者は柔らかに包み込むような温かい肌触りを感じます。どちらもそれぞれのアニメーションとともに記憶されています。

結城アイラの「It’s my life」は挿入歌として一度だけ流れましたが、耳にした瞬間に、はっとした記憶があります。劇中で流れるとアコースティック・ギターのカッティングの存在感が大きくて、印象に強く残りました。そして、最終回のエンド・ロールでは、ONE III NOTESの「Our Place」が使われました。フルサイズとは終わり方が異なり、とても印象的でした。エンド・ロールともに、煙がふっと消えるように歌がカット・アウトします。その記憶が余韻を残す中、物語はアニメ独自のエンディングを迎えたのでした。
2017.05.08
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by mura-bito | 2017-05-08 21:21 | Music | Comments(0)

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