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音楽と物語に関する文章を書いています。
ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
Want to become tough, not need to get wild.
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藍井エイル – アカツキ
BEST -E-

BEST -E-

藍井エイル


藍井エイルの「アカツキ」はベスト盤『BEST -E-』に収録された新曲です。彼女の代表曲「IGNITE」を彷彿とさせるアップテンポの曲であり、エモ系の雰囲気は「シューゲイザー」や「幻影」に通じるものがあります。冒頭からピアノとともに彼女の歌声が響き渡り、ぐっと引き込まれます。圧倒的な声の存在感。エネルギーの塊のような、熱を帯びた歌声が紡ぐ美しいメロディに心を奪われます。

タフなロック・サウンドに乗って、絡みつくよう響くアコースティック・ギター、どこかジャズを思わせるピアノ、哀愁が漂うストリングスが曲を彩ります。歌声とメロディとアレンジが組み合わさって、幾度となく心を強く揺さぶります。BGMとして軽く聞き流すことは難しい、じっくり聴きたくなる曲です。聴かねばならない気持ちすら生まれます。間奏ではストリングスからエレクトリック・ギターへとソロが移ります。切なさから激情に大きく変化し、やがて両者は再び交わり、重なります。



藍井エイル – BEST -E-/BEST -A- (Trailer)

言葉は音に導かれたのでしょうか。「アカツキ」では、詞が描く世界もまた美しく、歌声に乗って届く言葉はショート・ムービーのような短い物語をイメージさせます。次第に色が落ちていって、サイレント・フィルムのような、声も色も消えた世界が残ります。曲がドラマチックに盛り上がり、音が乱高下を繰り返すにつれ、浮かぶイメージはモノクロームの世界に近づいていきます。

♪夜が朝に溶ける前に♪ や ♪夜と朝が分かつ前に♪ という言葉に惹かれます。もうすぐ夜が終わる、もうすぐこの時間が終わる、もうすぐ取り返しがつかなくなる。わずかに残された時間を惜しむように…という情熱とともに、どうすることもできない、この先にあるものに呑み込まれるしかない無力感が漂います。できるのは、ただ歩を進める、ただ過ぎていく時間を数える、そして明るくなっていく空を眺めること。
2016.10.31
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by mura-bito | 2016-10-31 21:12 | Music | Comments(0)
藍井エイル – レイニーデイ
BEST -A-

BEST -A-

藍井エイル


藍井エイルのデビュー5周年を記念した2枚のベスト盤、『BEST -E-』と『BEST -A-』がリリースされました。それぞれの最後を新曲が飾っており、「レイニーデイ」という曲は『BEST -A-』に収録されています。アルバム・ジャケットのカラーリングはアメジストを思わせ、肩越しに視線を向ける瞳もまた紫に輝きます。

「レイニーデイ」はポップな曲調が印象に残り、ポジティブな気持ちにさせてくれますね。J-POPのイメージが形づくられていった1990年代の雰囲気を感じるアレンジです。偶然か意図的か、歌詞の一部には有名なポップ・ソングへのオマージュが垣間見られます。ある部分は佐野元春の「Someday」、また別の部分は岡本真夜の「TOMORROW」を想起させます。こういう遊びは、とても好きです。



藍井エイル – BEST -E-/BEST -A- (Trailer)

音の面では、メロディアスに奏でるギターが中心に据えられています。僕が印象に残ったのは、小気味良く鳴るハンドクラップ(あるいはそれに近いエフェクト)です。イントロやサビ、間奏、アウトロで、ギターに乗せて随所で響きます。これが絶妙で、いいアクセントになっています。曲が放つ明るい雰囲気は、こうしたところからも感じられます。ライブでは演奏に合わせて手を叩きたい。Clap your hands!

「レイニーデイ」を聴いていると、濡れた道を軽やかに颯爽と歩いていくイメージが浮かびます。雨の日は気が乗らないものですが、すべてがそうと言うわけでもなく、雨が降っていても明るい気持ちで外を歩ける日もありますよね。それはいいことがあった日かもしれないし、新しい傘を初めて使う日かもしれません。道行く人が差す傘までもが咲き誇る花に見えるような、不思議と穏やかな気持ちになるレイニーデイ。
2016.10.27
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by mura-bito | 2016-10-27 20:43 | Music | Comments(0)
30th FINAL 18: GET WILD 2015
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


小室さんが繰り広げたシンセサイザー・パフォーマンスの流れを継ぎ、「GET WILD 2015」と題した最新型の「GET WILD」がスタートします。長尺のイントロとアウトロを、オリジナルのイントロの前とアウトロの後につなげています。ソロのパフォーマンスで使った音を含みながら、スピード感あふれる音が駆け抜けていきます。小室さんはEDMの影響を色濃く反映したフレーズを呼び出し、木根さんがアコースティック・ギターを激しくかき鳴らします。ステージ上で火球が噴き上がります。明るい炎の固まりがいくつも、いくつも噴き上がり、クールなエレクトロニック・サウンドを熱く彩ります。

一瞬の休符を挟み、新たに組み込まれたアウトロが鳴り響きます。むしろ別のインストゥルメンタルをつなげたと言う方が適切なのですが、それまでの盛り上がりがあるからこそこの新しいアウトロも活きる。ソフト・シンセで作られたフレーズはEDMのエッセンスを取り込んでいます。テクノやハウスが無機質と言われるならば、EDMはその反対に位置します。意外と人間らしさが滲み、キャッチーで観客にダイレクトに突き刺さります。他のダンス・ミュージックと同じループ・サウンドでも、観客をアジテートして踊らせる成分を持っているのがEDMです。

TM NETWORKサウンドの進化の痕跡は「GET WILD」にあり。「TM NETWORK 30th FINAL」の会場では、「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」と題して新たにレコーディングされた音源が発売されました(後に音楽配信サイトでも販売)。この音源には、2015年2月の「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」までのライブを経て、それぞれの時点で実験的に盛り込まれた要素が盛り込まれました。イントロやアウトロに追加されたEDM的なフレーズ、Bメロのリズムの変化などがひとつの曲に収められています。そして「TM NETWORK 30th FINAL」では、この音源に音を重ねて披露しました。変わり続けてきた「GET WILD」の最終形態が眼前に広がります。

「GET WILD」の歴史は1987年に始まり、さまざまなリミックスやライブ・アレンジを経て、EDMというフィールドにたどり着きました。2015年のサウンドは、TM NETWORKにおけるEDMスタイルの総仕上げとも言うべきものです。もともと「GET WILD」は当時の先端的ジャンルであるユーロビートを意識していたとされます。その後はロックやテクノ、トランスの要素を取り込んで姿を変えてきました。僕はそれを「改造」と呼んでいます。音楽的テクノロジーの進化とともに変わり続けてきた「GET WILD」には、やはり改造という言葉が似合う。

経年劣化による補修ではなく、新たなパーツを組み込んで、新たな性能を得るための改造。EDMへのシフトチェンジは、新しいiOSのリリースに例えられます。それもただのアップデートではなく、それまでのテクノロジーでは実現不可能だった、アップグレードしたiOSで実装された機能(例えばSiri)のようなものです。もちろん、ドラスティックなアップグレードに対応できないファンもいます。それでもやはり、AppleファンがAppleファンであり続けるように、どのような「GET WILD」が披露されてもコアの部分が同じであれば、ファンは離れることはありません。「GET WILD」はTM NETWORKとファンをつなぐ、最も強いパイプです。イントロの3音が鳴れば、すべてのファンのスイッチがオンになる。変わり続けてきた曲であると同時に、TM NETWORKの変わらない部分、守り続けてきた核が埋め込まれた曲です。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.10.25
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by mura-bito | 2016-10-25 21:25 | Music | Comments(0)
Gacharic Spin – KAKUHEN
確実変動 -KAKUHEN-

確実変動 -KAKUHEN-

Gacharic Spin


Gacharic Spinの「KAKUHEN」は、アルバム『確実変動 -KAKUHEN-』の実質的なリード・トラックであり、アルバムの「ガチャガチャ感」を象徴するような曲です。ハード・ロックを基本にしつつ、ダブステップ系統のノイジーな音を絡ませ、間奏ではELO (Electric Light Orchestra) を思わせる展開を見せます。YouTubeにもアップされているビデオでは、パフォーマーによるダイナミックな動きが音楽とともに大きなインパクトを与え、赤で統一した衣装や顔を消すマスク、映像に被せるCGやノイズなどの要素が詰め込まれて、狂気にも近い熱気がスクリーンから立ち込めます。真っ赤なおもちゃ箱を開けてひっくり返したようなガチャガチャ感。

音が束になって何度も聴き手に迫ってくるので、さらっと聞き流すにはあまりにも存在感が大きい曲です。サウンドの厚みに圧倒されそうになるも、音の塊を感じるのがまた心地好く、各人の演奏の巧みさを楽しむことができます。TOMO-ZOのギターを軸とするギター・ロックに、ソフト・シンセを含むシンセサイザーの音を絡めます。バンド以外の音を散りばめたり、ジェット・コースターのように雰囲気が移ろうアレンジは、引き算ではなく足し算の魅力を存分に活かしています。例えば、後半で繰り広げられるエレクトリック・ポップ的なアレンジは、とてもノスタルジックですが、2016年に聴くことでむしろ新鮮な響きを生みます。



Gacharic Spin – KAKUHEN

「KAKUHEN」で特筆すべきはミュージック・ビデオの「躍動感」ですね。プロモーション用の映像という役割を越えて、音楽と演奏とパフォーマンスが一体となったコンテンポラリー・アートなのではないかと思います。パフォーマンスを披露する2人のパフォーマー(1号 まい、3号 ねんね)の存在が光ります。激しく身体を動かし、時に無機質に動き、そして力強く旗を振る。空間を広く使うというよりは、狭い箱に入っているように限られた範囲で凝縮した動きを見せます。動きの幅が小さいからこそ、より大きな力がひとつひとつの動作に込められるのではないか。個々の身体に蓄積されたエネルギーが、大人数のダンスとは異なる躍動感を生み出します。2人がアーティスティックに、鮮やかに音の世界で舞います。

とりわけ、旗を振るシーンはとてもダイナミックです。旗が身体の一部のようにコントロールされています。さらに旗をすくい上げるように回して振り上げ、2人の動きが連鎖して、ぴしっと止まるところは気持ちいい。旗の動きが視聴者をスクリーン越しにアジテートします。そしてライブでは観客を煽ることでしょう。Gacharic Spinのパフォーマンスには「アジテーション」という要素が含まれていると思います。ダンスとアジテーションが組み合わさることでオリジナルのパフォーマンスとなり、そして観客と音楽をつなぐコネクターの役割を果たすでのはないか、と。
2016.10.23
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by mura-bito | 2016-10-23 22:06 | Music | Comments(0)
Gacharic Spin – シャキシャキして!!
シャキシャキして!!

シャキシャキして!!

Gacharic Spin


Gacharic Spinのシングル「シャキシャキして!!」は2016年にリリースされました。メガシャキのタイアップ曲として、コマーシャルでよく流れていました(鈴木亮平が出演していましたよね)。コマーシャル・ソングを歌っていたのがGacharic Spinとは認識していなかったものの、メロディやサビの歌声は頭の片隅に残っていました。その記憶がきっかけでこのバンドの曲をあれこれ聴いてみようと思ったので、音楽との出会いはどこに転がっているか分からないものです。

「シャキシャキして!!」をフル・レングスで聴いてみました。CMでもコミカルなイメージを感じていましたが、その雰囲気がこの曲の勢いにつながっていると思います。シリアスな曲は胸を締め付けたり心を揺さぶったりしますが、「シャキシャキして!!」のような明るく爽快な曲は、背中をばんと叩かれるような、あるいは背中をぐっと押されるような力強さがあります。元気になりますね。



Gacharic Spin – シャキシャキして!! (For PC)

FチョッパーKOGAのが弾くベースは威勢がよくて、実に熱い。イントロの最初と最後で響くベースが曲に勢いを与えており、アクセルをぐんと踏み込む役割を果たします。ベースの存在感は間奏でも印象に残りますね。僕は、四つ打ちの一翼を担うベース、ジャズ系のコントラバスの音に加え、ロックを支えるベースも好きです。かつて「良いベースがいるバンドって、曲がぐいぐい来るんですよ」と語ったのはジャズ・ピアニストの平戸祐介さんです。Gacharic Spinを聴きながら改めて、その言葉に強く強く首肯します。



Gacharic Spin – シャキシャキして!! (For Smartphone)

Gacharic Spinの強みは「バンドが聴覚的に、パフォーマーが視覚的に魅せる」ということですね。2人のパフォーマーが披露するダンスが、曲のポップさをうまく活かしています。同時に、パフォーマンスが曲を親しみやすくさせているとも感じます。この曲に関しては演奏とパフォーマンスが組み合わさってバランスよく成立していると思うので、ミュージック・ビデオという表現方法で楽しむのがベストでしょう。

なお、ミュージック・ビデオには2パターンあります。スマートフォン用に編集された映像では、タイミング良くスマートフォンの向きを変えることで、ゲーム感覚で観ることができます。確かに目が覚める…!眠気覚ましにどうぞ。
2016.10.20
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by mura-bito | 2016-10-20 21:22 | Music | Comments(0)
Immigrant's Bossa Band – Feel Like This [feat. 上鈴木兄弟 (P.O.P)]


Immigrant's Bossa Band – Feel Like This [feat. 上鈴木兄弟 (P.O.P)]

Immigrant's Bossa Bandの「Feel Like This」という曲の音源がYouTubeで公開されています。最新アルバム『Like This, Like That.』に収録されている曲です。ピアノがループして、聴き手の感覚を麻痺させ、ぐるぐると回る世界に引きずり込みます。このループは癖になります。リフレインに次ぐリフレインは、単調に響きながら、少しずつ意識の中に潜り込んできます。染み込んでくるような、浸食して少しずつ削るような。

IBBの曲を聴くとまずは「スタイリッシュ」という印象を抱きます。カフェやバーのBGMに合うと思いますし、実際に服を選んでいて耳にしたこともあります(そのときは「That's What Friends Are For」でした)。けれども、それだけではない魅力があります。意識を集中して聴くと、異なる表情を見せてくれます。いつの間にか、どこか別の世界にぽつんと座っている感じがします。「You've Got To Have Freedom」を聴いた頃から(個人的に)感じる、IBBの不思議な雰囲気、独自の音楽世界は顕在です。

「Feel Like This」のポイントは、フィーチャリングされたラップと、クールなボーカルとの対比です。軽快なラップは、Shocoさんの歌声を引き立てます。低空飛行の歌声。質の良いベッドに沈み込んでいるような心地好さを感じます。立ち上がって離れることが難しくなるところも含めて。ループする音の中で響く歌は、絡みつくような気だるさを増していきます。ここで目を閉じて、そして目を開けたら別の部屋にいるんじゃないか。カフカを思わせる奇妙なイメージが浮かんで、消えました。
2016.10.18
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by mura-bito | 2016-10-18 21:34 | Music | Comments(0)
30th FINAL 17: TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


シンセサイザーの音と、会場を駆け巡る光、ステージ奥のスクリーンに表示される映像。それらの中心に小室さんが立ち、音を操りながら、リアルタイムで新しい音楽的空間を作り出していきます。シンセサイザーを使った、予測不能なサウンド・メイキング。リズムを鳴らしながら、ソフト・シンセに登録していたフレーズを呼び出して重ね、あるいは入れ替える。その姿はAVICIIやZeddのようなEDMのDJともまた異なる、シンセサイザーを操るオリジナルのDJスタイルです。

***

「SELF CONTROL」や「DIVE INTO YOUR BODY」のリフやフレーズを織り込みながら、EDMらしさを醸すメロディアスなキラー・フレーズやダブステップ系統の音を盛り込み、そして観客を煽ることも忘れずに、どんどん音を変化させていきます。ライブ・ペインティングで絵を描く芸術家のように、シンセサイザーという絵筆を巧みに動かして、壮大な絵画を描きます。

TM NETWORKが再び活動を始めた2012年から、このライブが行なわれた2015年の間に、EDMというジャンルがピークを迎えました。「ピーク」と言うとあとは落ちるだけのような表現になりますが、別の側面から見ると、EDMとポピュラー音楽の同化が始まり、拡散し始めた時期とも言えます。例えばAVICIIはマドンナの曲をリミックスしたりステージでも共演しましたし、ZeddはAriana Grandeに曲を提供しました。いわゆるクラブ・シーンに馴染みのない(僕のような)リスナーにもEDMの音が届くようになったんですよね。2015年あたりにはEDMの音がコマーシャルや音楽番組からも流れてくるようになりました。保守的な日本の業界(音楽にせよ広告にせよ)が意識したかどうかはともかく、EDMが一番「今っぽい」とされる音だということだと思います。

小室さんのパフォーマンスを目の前で観て、そして聴いていると、2004年を思い出しました。トランスの要素を強く反映したサウンドでツアーを行ない、その千秋楽を日本武道館で迎えました。小室さんはハードディスクに入れていたトランス系の音を中心にして、パフォーマンスを披露しました。そこで僕が目の当たりにしたのは、周囲の観客が次々と座る光景です。トランスという音楽が、少なくともTM NETWORKにはそぐわないことを思い知らされた瞬間でした。とても寂しかった。

10年が経ち、小室さんのパフォーマンスは変化しました。未来を求めるあまり過去を否定していた小室さんがスタイルを変え、人々の記憶に残る過去を肯定的に捉えて自らのパフォーマンスに取り込む。そこでEDMという新しい潮流に出会い、貪欲に取り込むことで、過去も現在も未来にもつながる音を紡ぐことができるようになった。会場にいると、周囲から湧き上がる期待を肌で感じることができました。かつて感じた寂しさはなく、目の前で繰り広げられているパフォーマンスへの期待だけがありました。

単調で冗長だったとも言えるトランスと異なり、TK EDMはどんどん変化し、起伏もダイナミックに表現されます。もっとリフレインしてほしいと思わせるフレーズもあっという間に、新たなフレーズに呑み込まれ、それもまた次のフレーズの呼び水となります。この多彩な音、流動的なフレーズこそ、小室さんのシンセサイザー・パフォーマンスのカギです。音を浴びながら、果たして次にどのような音がフレーズが来るのか、僕らはただひたすら期待する。

***

音の奔流が続く中で、赤い光に照らされながら、小室さんは赤く光るJD-XAの鍵盤を叩きます。ほとばしるサンプリング・サウンド。鍵盤は何度も叩かれます。TM NETWORKを象徴するキラー・フレーズが、繰り返し響き渡ります。最後には鍵盤に指を置いたままにして、マシンガンのように音が放たれます。そして鍵盤から指を離し、天を指差してから再び鍵盤に叩きつけます。一際大きい音で、サンプリングされたフレーズが鳴ります。それが合図でした。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.10.16
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by mura-bito | 2016-10-16 21:30 | Music | Comments(0)
Gacharic Spin – MUSIC BATTLER
MUSIC BATTLER

MUSIC BATTLER

Gacharic Spin


ロック!ロック!ロック!土台のしっかりした分厚いリズム・セクションに、熱量の高いギター・サウンドやシンセサイザーを乗せるのがGacharic Spinのスタイル。デビュー・アルバム『MUSIC BATTLER』では、インディーズ時代に培ったロック・スタイルを踏襲しながら、さらに表現力を高めた曲を披露します。シングル・カットされた「赤裸ライアー」と「Don't Let Me Down」に加え、パワフルな曲、テクニカルな曲、エモーショナルな曲を新たに録音して一枚に仕上げています。

表題曲の「MUSIC BATTLER」は、直球勝負のハード・ロック。"It's show time!!" という掛け声や、アメコミ風に描かれたアルバムのジャケットと相俟って、音までもアメリカっぽさを感じます。ミュージック・ビデオでも、2次元から3次元に飛び出すかのように、ジャケットを模した衣装で演奏します。イントロや間奏のシンセサイザーのリフが、サビメロをモチーフにしており(反対かもしれませんが)、曲の輪郭を描きます。間奏ではベースとギターの掛け合い、そして両者のたくましい並走を見せてくれて、これらが実に恰好良い。魅せてくれます。



Gacharic Spin – MUSIC BATTLER

Gacharic Spinの魅力のひとつは、メロコアあるいはエモといったジャンルの要素を含むことです。美しい歌メロとギター・サウンドがぶつかって生み出す火花のような輝きが、とても心地好い。個人的に、はな(ドラムス&ボーカル)の歌声に、エッジの効いた美しさ、あるいは自立した美しさを感じます。べたついていない、クールな歌声。彼女の歌声によって、美しいメロディがヘビーなギター・サウンドと混ざり合うのだろうと思います。もちろん、オレオレオナ(キーボード&ボーカル)がリード・ボーカルをとる曲も劣るわけではないのですが、エモ系の曲には、はなの声の方がマッチするかな、と。今作で該当するのは「Identity」という曲ですね。

また、ロックの音でファンクを奏でる曲が僕は結構好きなのですが、Gacharic Spinでも聴けます。それが「ガンバンバダンサー」という曲です。ファンキーに刻まれるギターが、爆音で鳴るときとは異なり、身体に心地好い音のループを生み出します。裏で鳴り続けるコンガが良いアクセントになって、踊れるロックをよりダンサブルに彩ります。この曲ではオレオレオナのスキャットやシャウトがいい感じにピタリとはまります。この人は明るくて、リズムが跳ねる曲、例えばラテン・ミュージックの色が濃い曲で、水を得た魚のように輝きそうですね(キャラもラテン系だし…)。

2016.10.12

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by mura-bito | 2016-10-12 22:04 | Music | Comments(0)
Gacharic Spin – Don't Let Me Down/TAMASHII/夢喰いザメ
Don't Let Me Down

Don't Let Me Down

Gacharic Spin


Gacharic Spinの「Don't Let Me Down」は、デビュー・シングル「赤裸ライアー」に続き、2番目にリリースされたシングルです。表題曲に加え、「TAMASHII」と「夢喰いザメ」という曲も収録されています。3曲が一点に凝縮され、それぞれが異なるアプローチ、異なる表情を見せます。ジャケットは白い背景に各メンバーの衣装の色が映えており、シンプルな鮮やかさが目を引く印象的なデザインですね。

Don't Let Me Down」は爽やかで軽快なアレンジが多くの人に響きそうなポップ・ロック。それと同時に、涙腺を刺激する美しいメロディが特徴的な曲です。終盤、リズムが抜けて、はな(ドラム&ボーカル)がサビメロを歌う部分では、歌声に強固な芯を感じさせ、美しく曲の世界を震わせます。ハスキー寄りの歌声は、自ら叩くビートにまったく負けることなく聴き手に届き、そしてリズムが抜けた中では、その強さが一層際立ちます。



Gacharic Spin – Don't Let Me Down

いわゆる「エモ」系の「TAMASHII」は、Gacharic Spinの曲を次々聴く中で、僕が第一印象で胸を打たれた最初の曲です。まさしくバンドの魂を感じます。エネルギッシュなサウンドに「泣ける」メロディを乗せるアレンジは、芸術的に美しい。ギターとシンセサイザーが離合を繰り返し、混ざり合って互いを引き立てたり、それぞれが火花を散らして屹立したりします。濃密な音の中で、2人のボーカルが交錯し、美しく光るメロディが縦横無尽に舞います。

夢喰いザメ」はダンス・ミュージックとロックのハイブリッド。シングルではロック寄りのアレンジがされており、『MUSIC BATTLER』に収録されたアルバム・ミックスでは、四つ打ちが強調されていて、ロックからエレクトロに寄っています。また、Gacharic Spinではボーカルにエフェクトをかけるシーンをよく見かけますが、「夢喰いザメ」でも効果的に使われています。淡々と紡がれるメロディを、無機質な雰囲気でコーティングします。
2016.10.10

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by mura-bito | 2016-10-10 21:22 | Music | Comments(0)
カーソン・マッカラーズ – 結婚式のメンバー

結婚式のメンバー

カーソン・マッカラーズ


カーソン・マッカラーズの『結婚式のメンバー』は、「村上柴田翻訳堂」シリーズの第一弾として刊行された小説です。このシリーズでは、村上春樹と柴田元幸が中心となって、再び読まれるべき小説を選んで翻訳や再発を行ないます。本書は村上春樹が新たに翻訳したものです。

主人公は、アメリカ南部に住むひとりの少女。彼女が繰り広げる会話や行動のあちこちに、「狂気」と呼べる思考が見え隠れします。物語が進むにつれ、子供時代に特有の夢想として処理され、通過儀礼的に昇華していくのだろうと思いながら、ページを繰りました。しかし、むしろ狂気は培養されて、彼女がそれにどんどん呑み込まれていく様子が描かれています。

本書で描かれた狂気は、あり得るか否か。本書は、リアリティを感じる描写こそが大事だと力説する読者、小説はとことんフィクショナルであるべきと主張する読者、どちらにとっても受容され得るのではないかと思います。この混沌こそリアリティと評することもできるし、ぶっとんだ内容がいかにもフィクションらしいと判断するすることもできる。個人的には、どちらとも断言しがたい、言わば「境界線を漂う」物語だと感じています。

ひとりの少女のナチュラルな姿を、真正面から捉え、物語に刻み付ける。カーソンが綴る文章は、何かに取り憑かれたように筆を動かす画家を思わせます。しかもそれは凪のように見える静かな言葉の中に住み着いています。章が移るごとに変化する「名前」は、主人公の成長を暗示するように見えて、実はずっと変わることなく主人公を支配する狂気の「影」を意味するのかもしれません。

2016.10.06
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by mura-bito | 2016-10-06 21:56 | Book | Comments(0)

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