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30th FINAL 14: JUST ONE VICTORY
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


「CAROL 2015 I」と題したインストゥルメンタルから始まった「CAROL」は、スネアの音を合図に始まる「JUST ONE VICTORY」で幕を閉じます。この曲は物語のエピローグのようなポジションにあります。音を盗む魔物と戦い、勝利したキャロルを祝福する歌です。映画であればスクリーンにエンド・ロールが流れるかもしれません。

これまで物語をガイドしてきた2015年のキャロルは、「JUST ONE VICTORY」で最後のミッションを遂行します。バンドが曲を演奏する中で、キャロルはウツと木根さんに最後の言葉を贈り、そして観客には何かしらを示唆するメッセージを送ります。そしてキャロルの役割が終わります。

***

TM NETWORKにとって「CAROL」の価値はとても大きく、1984年のデビュー以来、音楽に物語を組み込んでステージや映像で表現してきたTM NETWORKの、最初の五年間の集大成と言える作品です。この作品を「視点」という切り口で見てみると、1988~1989年の「CAROL」と2015年の「CAROL」には違いがあります。かつての「CAROL」では、物語の語り手と受け手が明確に分けられた、オーソドックスな関係性が保たれていました。

対して、2015年の「CAROL」はどうでしょうか。2012年から始まったTM NETWORKストーリーは「観客を物語に巻き込む」スタイルでしたが、その最終章に「CAROL」が組み込まれます。その結果、「CAROL」においても観客が物語の一部に組み込まれ、物語を構成する要素のひとつとして役割を与えられます。物語と読者は分かちがたく存在します。2015年の「キャロル」と向き合う僕らは、もはや観客ではなく、物語を描く共著者です。

***

「JUST ONE VICTORY」のオリジナルは、1988年のアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に収録されていますが、翌年、リミックス(というより音のバランスを調整したもの)がシングルとしてリリースされ、ミュージック・ビデオも制作されました。1993年には、シングルの音を厚くして、フェイドアウトさせずに最後まで収録したバージョンがリミックス・アルバム『TMN CLASSIX 2』に収録されました。このバージョンはベースとスネアの音が濃厚で、一連のミックスの中で最もロックの熱を感じさせます。

この曲は2012年、2013年のライブで演奏されました。続く2014年には、『DRESS2』というアルバムに、ボーカルも含めてすべての音を新たに録音したものが収録され、リリース直後に始まったツアーでも披露されました。この3年間の活動の中でも多く演奏された曲のひとつです。最後にウツが高らかに歌う ♪Just one victory tonight♪ に合わせて、ウツも含めてみんなで天に向けて人差し指を突き上げます。「CAROL」が積み上げてきた時間やエネルギーが集まるかのように、充実した音がアウトロに満ちます。

***

鐘の音が聞こえます。キャロルが取り戻したビッグ・ベンの音でしょうか。多くの人にとっては、それはここで耳にする音に留まらず、記憶の中で鳴っている音だったのかもしれません。1988年に生まれ、多くの観客の前で披露された物語、その中で鳴っていた音が、氷が融けるように眠りから覚め、響き始める。

その音が消えるとともに、2015年のステージによみがえった「CAROL」もまた再び眠りにつきます。それはいくつかのことを示唆しますが、決して明確な言葉として浮かび上がりはしません。世の中には言葉にすべきではない物事が多々あります。鐘の音が消えていく中で、観客の大部分が同じことを考えていたような気がします。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.07.28
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by mura-bito | 2016-07-28 21:26 | Music | Comments(0)
SKY-HI – ナナイロホリデー (Music Video/Making)


SKY-HI – ナナイロホリデー

AAAでラップを担当するSKY-HI(日高光啓)のソロ曲「ナナイロホリデー」がリリースされました。YouTubeにアップされている映像は、ミュージック・ビデオとメイキングをつなげています。流れを切らずに聴いた方が良いのは確かなので、CDなり配信なり、フルで聴くことを勧めます。

自然と身体を揺らしたくなる明るくてファンキーなポップスです。♪喜びにあふれている♪ という歌詞だったり、ラララで繰り返すところだったり、楽しくワイワイと騒いで盛り上がれますよね。それと同時に、悲しさのような寂しさのような、冷たい空気が漂っていて、陰と陽の同居や振れ幅に心を奪われます。間奏で激しくリフレインするシンセサイザーの音は、キラキラと輝きつつも、メランコリックなムードを強調します。ふとしたときに感じる寂寥感。

とは言え、ポップスとしておいしいところが詰まっているのも確かです。ファンキーな音と軽快なリズム、そして楽しそうに歩き続ける様子から、Pharrell Williamsの「Happy」[*1] が思い浮かびました。夜になって、パーティーでワイワイと騒ぐところは、(もちろん他にもありますが特に)Taylor Swiftの「22」[*2] を思わせます。僕は日本人ラッパーの中ではSKY-HIが最も好きなのですが、ラップらしいラップが入っていない「ナナイロホリデー」では、彼のボーカリストとしての魅力を存分に感じることができます。

[*1] inthecube: Pharrell Williams – Happy (Music Video)
[*2] inthecube: Taylor Swift – 22 (Music Video)

2016.07.27
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by mura-bito | 2016-07-27 22:18 | Music | Comments(0)
藍井エイル – 翼/CARRY OUT/深い森
翼

藍井エイル


藍井エイルのシングル「翼」がリリースされました。「翼」はアニメ『アルスラーン戦記 風塵乱舞』(2015年に放映されたシリーズの続編)のオープニング・テーマとして使われており、物語の再開を告げるのに相応しいアップテンポの曲です。先日のNHKホールでのライブ「Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"」[*1 *2] でいち早く全体を聴くことができました。

息もつかせぬスピードもさることながら、言葉を詰めに詰めることで加速度を増しています。Aメロは舌がもつれそうなほどに音符が細切れにされる一方で、Bメロでは音符の間に空白をつくり、緩やかに流れます。Bメロを始めとして、随所で響くアコースティック・ギターの音がとても心地好く、エレクトリック・ギターを中心としたサウンドの中でもスパイスのように存在感を示します。

サビに入ると曲は再び加速し、歌声が鋭く強く、大空を舞う鷹のように勢いよく流れていきます。間奏で披露されるギター・ソロ、バンドの音が引き、ストリングスとアコースティック・ギターの滑らかな音の中で輪郭が際立つ歌。急流から緩流へ、そしてまた勢いを増して曲は流れます。音のジェットコースターに聴き手を乗せて、ダイナミックな緩急で気分を盛り上げます。



藍井エイル – 翼

シングルには「CARRY OUT」と「深い森」という曲も収録されています。「CARRY OUT」は明るく弾ける、夏を感じさせるポップスです。ドラムが打ち込みで作られており、キックの音が目立ちます。藍井エイルの曲はスネアを前面に押し出すことが多いので、打ち込みに重点を置いたアレンジは新鮮に響きます。また、端々に光るシンセサイザーの音は、太陽の光や水しぶきを思わせます。陰と陽で言えば「陽」を感じさせ、「深い森」の鬱蒼とした雰囲気と対になっているのかなとも思います。

キラキラと輝く「CARRY OUT」から「深い森」への落差がまずは印象に残ります。このタイトルやイントロでは気づかなかったのですが、サビを聴いてDo As Infinityのカバーであることに思い至りました。記憶の中で鳴っている歌と照合してみると、歌い方が驚くほど似ています。細かな差異はいくつもあるはずですが、例えばラジオで不意に流れてもオリジナルかカバーかは容易に判断できない気がします。

「深い森」はパーカッションの音から始まり、アコースティック・ギターのストロークが交わって、そして厚みを増すバンド・サウンドに、藍井エイルの歌声が重なります。力強さを求められながら、それでいて気持ちの発露を抑制しなければならない歌、というところでしょうか。切ない雰囲気が漂う中で、そこには冷めた視線があり、感情に溺れない強さや感情から切り離された寂しさ、そういった複雑な表現が見えます。

[*1] inthecube: [PART1] Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"
[*2] inthecube: [PART2] Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"

2016.07.20
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by mura-bito | 2016-07-20 21:49 | Music | Comments(0)
Swimy – 御一人様 (Music Video)


Swimy – 御一人様

tvkの『saku saku』でSwimy(スイミー)という4人組のバンドを知りました。7/11~7/15のウィークリー・ゲストとして登場したのですが、毎日流れる「御一人様」という曲のミュージック・ビデオを目に耳にするうちに記憶に残り、ついにApple Musicで最新EP『おひとりさま』をダウンロードしました。「御一人様」の映像も実に奇妙で独特の雰囲気を醸しますが、曲そのものも随所に不思議な要素が見受けられます。

奔放に駆け回るギターが印象に残り、ついに頭の中でフレーズがぐるぐると駆け巡ります。そして、ギターを中心にしたサウンドに、3人のボーカルがそれぞれの角度から差し込まれます。男性ボーカルの声が高めなので、女性2人のボーカルと、ちょうどいいバランスが取れています。声でグラデーションを作ることができるのかなと思いますね。

『saku saku』のトーク・コーナーでは、4人の醸す雰囲気に不思議な魅力を感じました。回を重ねるたびに各人の奇妙な部分が露出し、相乗効果(と言うべきなのか)によって、独特の色を持つバンドだということが分かりました。それにしても「4人を例えるなら?」と聞かれて出た答えが「お母さん+末っ子+先生+ロボット」って何だその構成。

2016.07.19
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by mura-bito | 2016-07-19 21:32 | Music | Comments(0)
藍井エイル – 春~spring~ (Music Video)


藍井エイル – 春~spring~

Hysteric Blueの「春~spring~」という曲を藍井エイルがカバーしました。オリジナルは1999年に発表され、これまでにも何度かカバーされているようですが、藍井エイルによるカバーは2016年にリリースされたシングル「アクセンティア」で聴くことができます。ミュージック・ビデオはレコーディング風景をモチーフにしており、一部がYouTubeで公開されています。先日のライブ「Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"」[*1] においても、アンコールで披露されました。

メロディがポップで、とても耳に馴染んで心地好い。柔らかい感じのポップスなのですが、その中でも高低差があって、メロディの多彩さが際立ちます。カラオケで歌うにはけっこう難しいとは思いますが、ちゃんと歌えたらきっと楽しい曲でしょう。口ずさむと心地好くなる、距離感の近いメロディですね。作詞と作曲を担当したのは、Hysteric Blueのメンバーだった楠瀬拓哉ですが、現在、彼はドラマーとして藍井エイルのライブをサポートしています。ライブのMCで、彼女は「お兄ちゃんみたいな存在です」と話していました。

当時、『WHAT's IN?』という音楽誌をよく読んでいたこともあり、Hysteric Blueの名前はデビューから知っていました。曲を聴くところまではいかなかったのですが(他に聴くべき音楽があまりにも多かった)、こうして時間が経ち、きちんと聴く機会を得られたことに感謝します。カバーは過去と現在が出会う素晴らしい時間であり、素晴らしい体験ですよね。過去に存在した音楽に、現在という未来からアクセスできるのは、実に幸せなことです。今聴いて、いい曲だなあと思えることが嬉しい。

[*1] inthecube: [PART2] Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"

2016.07.13
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by mura-bito | 2016-07-13 21:14 | Music | Comments(0)
30th FINAL 13: CAROL (CAROL'S THEME II)
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


「IN THE FOREST」の最後の音が消えないまま、組曲「CAROL」は最後のパートにシフトします。「CAROL (CAROL'S THEME II)」と題した曲は、それまでの軽快な曲調から雰囲気を変え、哀愁の漂うバラードとして色の異なる世界を描き出します。

女性コーラスが歌う英語から始まります。どこか戸惑いや不安が感じられる。主人公キャロルは明るくて強い心を持っています。しかしその裏には弱さが存在し、それを吐露します。どうしてここにいるのか、何をするためにいるのか、どこに向かえばいいのか。キャロルの声なき声に応え、ウツが歌います。くじけそうなキャロルに向けて、そっと手を差し伸べます。

彼女は決して超人的な能力を持つ者ではなく、ましてや世界を救う英雄でもありません。キャロルのテーマ曲のひとつである「CAROL (CAROL'S THEME II)」は、フィクションの中でありながら、キャロルはひとりの人間であることを描こうとしているのかもしれません。物語は平面的な世界から立体的に浮かび上がります。

***

バラードから一転して、曲は一気に激しさを増し、光も激しくステージを駆け回ります。ドラムが叫ぶように激しく音を鳴らします。シンセサイザーがすべての音を呑み込もうとします。歪むギターの音は戦いの様子を表現しているのか、それとも敗北した魔王ジャイガンティカが音を吐き出すところを示しているのか。

オリジナルの音源でギターを弾いたのはB'zの松本孝弘さんです。2014年の『QUIT30』に収録されている新録では、マーティ・フリードマンが弾いています。NHK BSプレミアムの番組『MASTER TAPE 「CAROL」 TM NETWORK』で、オリジナルと新録を聴き比べるために小室さんが選んだのがこのパートです。

松本さんのテイクについて、もちろん若かったということもあるのですが、小室さんは「先生の言うことを聞いた感じ」と評しました。一方で、マーティのテイクを聴いて、ウツは「こっちの方がプログレ感がすごいね」と語り、小室さんも同意して「随分変わるものだね」と(自分でつくっておきながら)しみじみと言いました。

***

音の嵐が過ぎ去ると、前にも増して静かな音が戻ってきます。「IN THE FOREST」の歌詞とメロディをバラード調にアレンジして演奏します。軽快に駆けるメロディは静謐なメロディへと姿を変え、組曲を畳む役割を担います。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.07.09
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by mura-bito | 2016-07-09 22:23 | Music | Comments(0)
京極夏彦『絡新婦の理』:緻密に張り巡らされた言葉が生み出す映像美
絡新婦の理

絡新婦の理

京極夏彦


僕が京極夏彦の『絡新婦の理(じょろうぐものことわり)』を読んだのは十年ほど前のことです。一年間で『姑獲鳥の夏』から始まる一連の物語のほとんどを、友人から借りて読みました。むさぼるように、憑かれたように、ただひたすら頁を繰っていたことを思い出します。

それから十年ほどが経ち、読み直してみようと思ったのはこの『絡新婦の理』だけですね。それほどまでに強く印象付けられた作品だったと言えます。初めて読んだときに書き残した文章 [*1] を読むと、少し不思議な感覚にとらわれていたようです。当時の印象をなぞりつつ、改めて物語を追います。現代ではないが、歴史に埋もれた時代でもない、僕らにとっては曖昧な存在である終戦後の日本で、美しく歪んだ物語が言葉を紡ぎます。

「言葉の映像美」とは語義矛盾なのかもしれませんが、そう言いたい。言葉が描く映像、そしてその美しいこと。開幕と終幕で同じ場面を描くことそのものは、必ずしも独創的だとは言い切れません。けれども、そうと分かっていても、これらの場面を言葉の羅列から想像すると、どこまでも美しくて、その美しさに惚れ惚れします。そしてそれこそが、この物語に、そして蜘蛛の糸に絡め取られていることを意味するのでしょう。吸い寄せられるように、ここに戻ってきたのは、ずっと蜘蛛の糸に縛られていたからなのかもしれません。

[*1] inthecube: 板の上の脚本家、それを眺める観客

2016.07.07
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by mura-bito | 2016-07-07 21:56 | Book | Comments(0)
30th FINAL 12: IN THE FOREST
TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK 30th FINAL

TM NETWORK


明るく響くシンセサイザーの音と対照的に、歌詞は目の前に広がる森を駆け抜けるキャロルの姿を歌います。組曲「CAROL」の後半を始める「IN THE FOREST」が演奏されます。ポップな曲調の中でも、とりわけ軽快に鳴るリズムが特徴的であり、バンドによる演奏がぴたりとはまります。

***

「TM NETWORK 30th FINAL」でドラムを叩くのは「べーあん」こと阿部薫さんです。TM NETWORKのメンバーとは旧知の仲であり、1984年のデビュー・アルバム『RAINBOW RAINBOW』でも叩いていますし、デビュー直後にライブハウスで行なったライブにも参加しています。その後、しばらくしてから『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』のツアーに参加し、TM NETWORKがTMNになってからも最後のライブまでサポートを続けました。FENCE OF DEFENSEの山田ワタルさんと並び、TM NETWORKを知る僕らにとってはとても馴染みのあるドラマーです。

1990年代後半にはべーあんはglobeのサポートを務めました。TM NETWORKでは2004年の武道館コンサートに参加して以来、この「TM NETWORK 30th FINAL」が10年ぶりの共演です。『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』の曲をべーあんが叩いていると、やはり特殊な意味を持ちますね。時を経て再び同じドラマーによって生み出されるリズムは、もちろん別のものなのですが、過去と現在が瞬時につながる不思議な時間を刻みます。

***

白のジャケットを脱いだウツがステージに戻り、マイク・スタンドに手を添えて歌い始めます。その歌声が、森の中を駆けるキャロルを導きます。歌詞は必ずしも物語のすべてを語っているわけではありません。木根さんが書いた小説『CAROL』は、木根さんのフィルターを通した物語であり、聴き手の中で生まれて培養された物語のひとつだと言えます。僕らは、木根さんの小説から、ウツの歌で届けられた言葉から、それぞれにインスパイアされて、自分なりの物語を組み立てます。

ウツは常々、バンドのビートの中で歌うことを好みます。TM NETWORKではリズム・セクションの音がハードディスクから鳴ることが多いため、必ずしもウツが求める音ではありません。それでも職人的に、どのようなサウンドであってもウツは対応します。それでもやはり、バンドの音が強くなる曲では楽しそうな表情を見せます。多くのドラマーのリズムで歌ってきたウツですが、とりわけべーあんのドラムは歌いやすそうですね。ライブ中にべーあんに悪戯して遊ぶくらいに、ウツはべーあんのリズムに全幅の信頼を寄せているのだと思います。

INTRO
JUST LIKE PARADISE 2015/RHYTHM RED BEAT BLACK/CHILDREN OF THE NEW CENTURY 2015
HERE, THERE & EVERYWHERE/SCREEN OF LIFE/Birth
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE/CAROL (CAROL'S THEME I)/GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II/IN THE FOREST/CAROL (CAROL'S THEME II)/JUST ONE VICTORY
INTERMISSION
月はピアノに誘われて/あの夏を忘れない/TETSUYA KOMURO SOLO -30th FINAL-/GET WILD 2015
WE LOVE THE EARTH/BE TOGETHER/I am/FOOL ON THE PLANET/ELECTRIC PROPHET
OUTRO

2016.07.05
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by mura-bito | 2016-07-05 21:35 | Music | Comments(0)
[PART2] Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"
Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"
2016-06-23 at NHKホール

awakening/IGNITE/幻影/GENESIS/ずっとそばで/ゆらり
JUMP!!!/AURORA/Close Friend/Quit/Lapse from Virtue
シューゲイザー/MEMORIA/ツナガルオモイ/アクセンティア
Bright Future/INNOCENCE/ラピスラズリ/シンシアの光
青の世界/HaNaZaKaRi/春~spring~/翼/サンビカ

[PART1] Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"

再び姿を現わした藍井エイルはライト・ブルーを基調とした衣装をまとっています。そして響くディストーション・ギターのリフ。「シューゲイザー」[*3] はギターの密度が大きく、一際存在感を放つ一方で、鍵盤の音が扇情的に響きます。ギターとピアノがせめぎ合う、スリリングな曲です。魂を吐き出すような歌もまた魅力的で、生命を燃やして輝くような、そんな危うさも感じられました。

デビュー曲「MEMORIA」を演奏した後、MCで彼女は「ライブに参加しているみんながひとつになってほしい」と語ります。その気持ちが、次に披露された「ツナガルオモイ」[*4] に反映されています。ステージを動き回り、力強い歌に乗せて、自ら綴った歌詞を届けます。曲の後半では、間奏のリズミカルなハンドクラップやコール・アンド・レスポンスによって、ステージと観客席がつながります。

◆◆◆

ライブは後半に入り、スピードを緩めることなく突き進みます。ツアー開始とともにリリースされて、全国を巡りながら成長してきたであろうシングル曲「アクセンティア」や、『D’AZUR』に収録された「Bright Future」が演奏されます。いずれもまっすぐに響くポップ・ロックです。ステージを照らす光も明るくて、会場全体が軽快に盛り上がります。そしてライブの定番曲「INNOCENCE」が、明るい盛り上がりを一段と強めます。

雰囲気は変わり、キック(ベースドラム)の音が際立つ「ラピスラズリ」[*5] が演奏されます。歌も重心が低くなり、バイオリンの音が印象的に響きます。そしてアップテンポの「シンシアの光」で駆け抜けます。リズムを四つ打ちに差し替えればエレクトロとしても成立すると思いますね。彼女の歌声はエレクトロニック・サウンドとも相性がいい気がします。ロックとエレクトロ、両方の熱を帯びた曲になりそうです。

興奮が冷めやらぬ中、彼女はゆっくりと移動し、登場したときと同じ立ち位置(ステージ後方の階段の上)に立ちます。ピアノの音が響きます。ヒートアップしていた会場の熱は、ピアノに吸い込まれるように消え、目の前には静謐に染まる青が広がります。ピアノの音に乗せて藍井エイルの歌が切々と響くバラード「青の世界」は、やがてバンドの厚い音に支えられます。気持ちを音に、歌にぶつけて、弾けて、ライブの本編が終わります。

◆◆◆

重なるアンコールの声に応え、ツアーTシャツに着替えた藍井エイル、そしてバンドのメンバーが登場します。アンコールは「HaNaZaKaRi」から始まります。この曲は盛り上がるポイントが分かりやすく、多くの人が耳にしているであろうあの曲(そして輝く…!)の要素がちらつきます。そして、Hysteric Blueのヒット・ソング「春~spring~」が演奏されます。

ツアーからドラムを担当して藍井エイルのサウンドを支えてきたのが、Hysteric Blueで叩いていた楠瀬拓哉です。その縁ゆえか、彼が作詞・作曲を担当した「春~spring~」がカバーされました。このカバー・バージョンはシングル「アクセンティア」で聴くことができます。1999年にリリースされてからいろいろと翻弄された曲ですが、再び新たな歌声を得ることで、新たな生命が吹き込まれます。

MCで11月の日本武道館公演が発表され、続いてリリースが近づいている新曲「翼」が初めて披露されます。言葉に次ぐ言葉、細かく刻まれた音符が矢のように飛び、観客を射抜きます。7月から始まるアニメ『アルスラーン戦記 風塵乱舞』(2015年に半年間放映されたシリーズの続編)のオープニング・テーマとして、毎週流れます。ライブの終演後にミュージック・ビデオの一部がYouTubeで公開されました。

◆◆◆

いよいよ「Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"」は最後の曲を迎えます。2枚目のアルバム『AUBE』に収録されている「サンビカ」で、ライブは幕を閉じます。バンド・メンバーとともに礼をした後、彼女はマイクを持たずに、ひとりステージに残ります。スピーカーを通すことなく、観客席に向けて声を投げかけます。感謝の言葉をダイレクトに届けると、名残惜しそうにステージを後にしました。

印象的だったのは、途中のMCで藍井エイルが発した「私やっぱり音楽好きだわ!」という言葉ですね。これだけストレートな言葉を聞くことは、なかなかない。驚くのと同時に、音楽に対するシンプルな衝動こそが彼女の原動力なのだと理解しました。キャリアは約5年、オリジナル・アルバムは3枚。これからどのような音楽を生み出していくのか、どのようなアプローチを見せてくれるのか。ライブを観て、この先の活動が楽しみになりました。期待は膨らみます。

[*3] inthecube: 藍井エイル – シューゲイザー (Music Video)
[*4] inthecube: 藍井エイル – ツナガルオモイ/Raspberry Moon
[*5] inthecube: 藍井エイル – ラピスラズリ (Music Video)

2016.07.03
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by mura-bito | 2016-07-03 08:13 | Music | Comments(0)
[PART1] Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"
Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"
2016-06-23 at NHKホール

awakening/IGNITE/幻影/GENESIS/ずっとそばで/ゆらり
JUMP!!!/AURORA/Close Friend/Quit/Lapse from Virtue
シューゲイザー/MEMORIA/ツナガルオモイ/アクセンティア
Bright Future/INNOCENCE/ラピスラズリ/シンシアの光
青の世界/HaNaZaKaRi/春~spring~/翼/サンビカ

観客席の照明が落ちると「awakening」の音が染み出し、開演を待ちわびる観客の飢餓感をさらに煽ります。青と黒の世界が蠢き、ノイジーなギターやソフト・シンセが暗闇をかき回します。そして差し込む白い光、照らされる白い衣装、勢いよく飛び出す歌声。「IGNITE」がライブに火を点け、会場をヒートアップさせます。

◆◆◆

藍井エイルのライブ「Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"」がNHKホールで開催されました。2015年6月にアルバム『D’AZUR』[*1] をリリースした後、海外でのライブ、2枚のシングル制作、初の武道館公演を間に挟み、2016年3月にライブハウスを巡る全国ツアー「D’AZUR-EST」が始まり、この公演がツアーを締め括りました。高い天井を活かしたセットや映像による演出を散りばめつつ、総勢7名のバンド・メンバーのサポートを受け、熱のこもったギター・ロックを披露しました。

『D’AZUR』の曲を軸にして、最近のシングル曲や、これまでのライブで成長してきた定番曲を挟みます。ボーナス・トラックを除く、最新アルバムの曲がすべて演奏されたため、主にこのアルバムを聴き込んだ僕にとっては嬉しいセット・リストでした。初めて聴く曲もあり、新たな魅力に気付くことができたライブでもあります。それでは、音の記憶を呼び出して、ライブの印象を書き残しましょう。

◆◆◆

インストゥルメンタルの「awakening」、藍井エイルの代表曲「IGNITE」[*2] に続き、ライブの序盤は『D’AZUR』に収録された曲、「幻影」、「GENESIS」、「ずっとそばで」、「ゆらり」、「JUMP!!!」が続きます。「GENESIS」以外はシングルではありませんが、シングル・カットされてもおかしくないほどのエネルギーを感じます。こうしてライブで立て続けに披露されると否が応でも気分は上がりますね。いずれの曲もアレンジは音源と大きな違いはありませんが、ライブの熱が曲をアンプリファイして、一回りも二回りも大きくします。

ライブならではの変化を楽しむことができました。「JUMP!!!」では ♪きっと♪ の歌い方が音源と少し違っていて、些細な変化なのに、はっとしました。また、「ずっとそばで」のラストは音が消えてボーカルだけで魅せます。静まり返った空間に、彼女の歌だけが響きます。音源でも震えたものですが、ライブではその何倍もの震えを覚えました。ライブでは広い空間に響く声を、直接受け取れます。3階からでもその声のタフさを肌で感じることができました。

◆◆◆

MCを挟み、初期のポップ・ロック「AURORA」、最近のミディアム・テンポの曲「Close Friend」と続きます。柔らかい雰囲気を飲み込むように、次の「Quit」では赤い光がステージを染め上げます。歌も艶っぽくなって、ざらざらした感触に変わります。ヘビー・ロックと言うべきかオルタナと言うべきか。藍井エイルの一般的なイメージとは異なるであろう、重くて厚く、のしかかるようなサウンドを聴かせてくれました。

「Quit」の雰囲気を継いで、緊張感を含む荘厳な音が響きます。NHKホールに常設されたパイプオルガンで、バンド・メンバーのひとりが扇情的な旋律を奏でます。ステージの各所に設置されたスクリーンには複雑な模様が映し出され、歌も重い雰囲気を醸します。これは「Lapse from Virtue」という曲ですが、演奏の比率が高く、音の端々からプログレッシヴ・ロックの香りが漂います。僕はとりわけPink Floydを思い出しました。アウトロで彼女は闇に吸い込まれるように姿を消し、バンドが演奏するインストがしばし響きます。最後にパイプオルガンが再び音を吐き出し、出し尽くしたところで光も消えます。

[*1] inthecube: 藍井エイル – D’AZUR
[*2] inthecube: 藍井エイル – IGNITE (Music Video)

[PART2] Eir Aoi EXTRA LIVE 2016 "D’AZUR-EST FINALE"

2016.07.01
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by mura-bito | 2016-07-01 21:26 | Music | Comments(0)

fujiokashinya (mura-bito)
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