inthecube
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ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
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QUIT30 HUGE DATA PART2
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


黒いジャケットを脱いだ木根さんは、青いシャツにアコースティック・ギターを下げ、ステージの真ん中に立ちます。ステージの後方でアコースティック・ギターを爪弾くバンナさんと、パーカッションを叩くRuyさんの音を従え、木根さんが「LOOKING AT YOU」を弾き語りで歌います。

「LOOKING AT YOU」は木根さんがTM NETWORKで初めてボーカルを担当した曲です。それまでバラード系の曲を書き、ステージでは演奏の他にパントマイムなどのパフォーマンスを担当していました。1990年にTM NETWORKがTMNにリニューアルすると、木根さんのバラードを書く役割はそのままに、ステージでの役割が変わります。リード・ボーカルをとったり、フォーク・ソングを歌ったりすることで、それまでの制約から解き放たれたかのように、ミュージシャンとして多彩な面を見せていきます。時にはベースを弾いたり、時にはアコースティック・ギターによるソロを披露したりしました。こうした木根さんの役割を拡張するきっかけとなったのが、1990年のオリジナル・アルバム『RHYTHM RED』に収録された「LOOKING AT YOU」です。

優しさが感じられる、木根さんらしいメロディが流れ出て、会場に満ちます。歌詞には弱い部分をさらけ出すような雰囲気もあり、木根さんのメロディと溶け合います。ソロではもっとタフな曲も書きますが、TM NETWORKでは一歩引いたポジションで、小室さんが書く曲とのバランスをとります。ふたりが書くメロディはTM NETWORKにおける両輪だと言っても過言ではありません。なお、デビューから三十年経ってリリースされたオリジナル・アルバム『QUIT30』でも、木根さんが書いた「STORY」というミディアム・テンポの曲を聴くことができます。

***

木根さんの演奏が終わり、ウツと小室さんが再びステージに姿を見せます。続いて演奏されるのは「Always be there」です。小室さんが詞曲ともに書いたバラード曲であり、『QUIT30』に収録されています。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」に続き、このライブでも披露されます。

地球に生きる人々を宇宙から俯瞰します。人々の生活、営みを客観的に見つめ、綴る歌詞は、まるで調査報告書です。潜伏者は地球に降り立ち、各地の人間と交わりながら、時にはすれ違いながら、体験したことをまとめ、地球の外に待つメインブレイン(司令部)に報告する。さまざまなシーンで体験した数々の出来事は、TM NETWORKが世に送り出した曲として残り、それらは同時に報告書でもあります。世に出なかった曲は、トップ・シークレットのような扱いの報告書なのかもしれません。

視点をミクロに絞れば大事な人に向けて送る言葉と捉えることができます。マクロに開けば、人間の業のようなものが目に入ってきます。1999年に発表した「10 YEARS AFTER」という曲で小室さんが綴った言葉に近いものがあります。地球を概観する視点と、地上でのささやかな心の触れ合いにフォーカスする視点が入れ替わる。ウツは「Always be there」を構成する言葉のひとつひとつを丁寧に歌い、積み上げていきます。

***

三十年間で蓄積した報告書の存在を開示することで、TM NETWORKの任務も最終段階を迎えます。終幕のための物語が進行する間にも、潜伏者から送られる報告書は増え続け、一方で世界を記録したデータのサイズも大きくなり続けています。積み上がって人々を、地球を呑み込まんとしているデータの中で、TM NETWORKの調査報告書は羅針盤のような役割を果たします。それは人々の営みから得たシンプルな記憶であり、そこにこそ航路があることを示唆します。

鳴り響くシンセサイザーの音、ミラーボールに反射して会場を輝かせる光、すべての観客がシンガロングするコーラスのリフレイン。「WE LOVE THE EARTH」のメロディが、音が会場を駆け巡ります。光の奔流とともに多彩な音があふれ、観客の上に降り注ぎます。1991年に発表された、ハウス・ミュージックの要素を混ぜ込んだポップスです。踊るもよし、歌うもよし。

ダンス・ミュージックとして最適なテンポ、濃密なリズム。ベースとキックの音が絡み合い、とてもとても心地好い。クリアなピアノの音とテクニカルに歪んだエレクトリック・ギターの音がリズムに絡み、曲の密度を、解像度を高めています。縦に横に編まれた、隙間のない音のエリア。小室さんはソフト・シンセをマウスで操作して、さまざまな音を出します。ファースト・インプレッションの向こう側に意識を集中させると、多彩な音が有機的に組み合わさって構築された立体的なサウンドが見えてきます。丸い地球も地上まで降りてみれば山や森、湖や海という凸凹があるように、俯瞰から細部へのフォーカスにシフトしてみると、曲をもっと楽しむことができます。


2015.09.29
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by mura-bito | 2015-09-29 22:03 | Music | Comments(0)
CAROL2015 PART4
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


異世界から戻り、そこで起きた出来事を思い出しながら、その記憶を大事にして日常に戻っていくキャロル。一枚のレコードを拾い上げ、ジャケットに印刷された三人の姿に、先刻まで同じ時間を過ごしていた三人を重ねます。レコードをそっと胸に抱え、ともに音を取り戻した時間に想いを馳せます。その表情はとても美しく、優しく、そして力強い。

スネアの力強い音を合図にしてシンセサイザーとギターの音が飛び出します。演奏されるのは「CAROL」の終幕を飾る「JUST ONE VICTORY」です。TM NETWORKの曲の中でもタフな雰囲気を出す曲であり、ライブで演奏されるときはとりわけロック寄りにアレンジされます。そのエネルギッシュな音は、魔王ジャイガンティカから音を取り戻したキャロルたちを祝福します。

曲は終盤で、アルバム曲のひとつである「CHASE IN LABYRINTH」の一節を鳴らします。その中でウツは、裾の長い、黒く煌めくジャケットを脱ぎ、赤いシャツになります。「CHASE IN LABYRINTH」がフェイド・アウトすると同時に「JUST ONE VICTORY」が戻り、ウツは高らかに人差し指を天に向け、力強く歌声を会場に響かせます。テンポが上がり、坂道を一気に駆け上がるかのごとく、曲はクライマックスを迎えます。

***

CAROL2015の余韻を包み込むようにして、「STILL LOVE HER」が演奏されます。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」ではクールダウンするために中盤に配置された曲ですが、このライブではCAROL2015からQUIT30 HUGE DATAへ戻るレールとして機能します。ポイントを切り換え、物語と物語をつなぐその道を通過する中で、もう少しだけ残された未来に向けたヒントを観客は受け取ることとなります。

ステージでは、木根さんの演奏するダブル・ネックのアコースティック・ギターと、間奏で吹くハーモニカが曲に温かみを与えます。ウツは赤いエレアコを弾きながら歌い、小室さんはソフト・シンセでストリングス系の音を重ねます。イントロが鳴る中で小室さんは黒地に大きな白い格子がデザインされたジャケットを脱ぎ、紫色のシャツになって演奏します。

「STILL LOVE HER」はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』の最後に収録され、物語とは離れたポジションに位置していました。それと同時に、歌詞に織り込まれたロンドンの風景が「CAROL」と結びつき、アルバムを締めくくります。物語としての結びつきはないものの、その背景として描写されたロンドンの情景の一部に、「STILL LOVE HER」は組み込まれています。街角の寒々とした空気に触れることができそうなくらいにビビッドで、そしてエモーショナルな言葉とメロディの組み合わせを体験することができます。

***

「STILL LOVE HER」の終盤で、パニーラはメッセージを送ります。二人の潜伏者に、そして観客に。彼女は潜伏者のひとりであり、「キャロル」という役割を与えられ、三人の潜伏者とともに調査にあたりました。パニーラとして、小室さん、ウツ、木根さんと結びつき、キャロルとして、マクスウェル、フラッシュ、ティコと結びつきました。そして潜伏者のひとりとして、三人の潜伏者が遂行しようとしている最後のミッションを見守ります。

パニーラから観客に向けたメッセージは、思い出話でもなく、別れの挨拶でもありません。それは、潜伏者のひとりから託されたものです。メッセージは抽象的であり、予告のように響きます。この時点では、その意味を知ることはできません。パニーラの言葉が輪郭を伴い、像を結ぶためには、もう少し時間を進める必要があります。

鐘の音が鳴り響きます。それはビッグ・ベンから聞こえてくるのでしょうか。音が徐々にほどけ、消えると同時にCAROL2015もゆっくりと幕を閉じていきます。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.09.27
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by mura-bito | 2015-09-27 08:24 | Music | Comments(0)
TM NETWORK – HERE, THERE & EVERYWHERE (from TM NETWORK 30th FINAL)


TM NETWORK – HERE, THERE & EVERYWHERE
(from TM NETWORK 30th FINAL)

2015年3月に行なわれたライブ「TM NETWORK 30th FINAL」のBD/DVDが11月にリリースされます。これは3年に渡って積み上げてきたTM NETWORKの活動(デビューから30年を迎えるにあたり、「30年」をモチーフにした物語やコンセプトを設定した活動)を総括するライブです。「RHYTHM RED BEAT BLACK」* に続き、「HERE, THERE & EVERYWHERE」の映像が公開されています。

* inthecube: TM NETWORK – RHYTHM RED BEAT BLACK (from TM NETWORK 30th FINAL)

「HERE, THERE & EVERYWHERE」は1987年に発表されました。『Self Control』というアルバムの最後に収録されています。優しく手を握るような温かみのあるメロディは、冬の夜空をモチーフにした歌詞と一体化し、心の隅々まで満ちていきます。音符がひとつひとつ身体に染み込み、芯から温かくしてくれますね。天を仰げば満天の星空が広がり、空を横切る流れ星まで見える。きっと聴く人を冬の夜空のもとに連れていってくれることでしょう。

アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターがそれぞれの持ち味を発揮し、シンセサイザーを軸としたサウンドの中でも存在感を放っています。シンセサイザーの音の中で響くギターは、多面的なサウンドを形成します。また、スネアの音を効かせつつパーカッションを加えたリズムはサウンドを支えつつ、聴き手の心をほぐし、サウンドに溶け込ませます。良質なポップスは、構えることなく音に身を委ねることができますね。メロディの魅力を噛みしめ、味わい、歌詞の世界に没入できます。

[PART1] TM NETWORK 30th FINAL
[PART2] TM NETWORK 30th FINAL
[PART3] TM NETWORK 30th FINAL
[PART4] TM NETWORK 30th FINAL

2015.09.26
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by mura-bito | 2015-09-26 11:06 | Music | Comments(0)
[PART2] Azumino Autumn Aster
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2015.09.24
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by mura-bito | 2015-09-24 18:21 | Photograph | Comments(0)
[PART1] Azumino Autumn Aster
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2015.09.23
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by mura-bito | 2015-09-23 08:51 | Photograph | Comments(0)
CAROL2015 PART3
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


狂騒的な夢を見ていて、はっと目が覚めたかのようです。時空と次元を越えたカーニバルによって上昇した温度は、音の収束とともに、すっと下がります。余韻のように残る熱を、僕らは肌で感じつつ、目の前の世界が移り変わっていくのを眺めます。キャロルの記憶が時間を越えて現在の物語を綴ります。過去の物語をトレースしながら、同時に今の物語がリアルタイムで進行している。

パニーラは観客をタイムマシンに乗せ、時間を巻き戻します。時間というものはすべての人間に平等に降り積もります。チャーミングな皺として刻まれた時間は、新たな物語を語り、新たな記憶を生み、そして新たな記録となっていきます。時間が経過したからこそ、時間を巻き戻すことができるし、記憶をマッシュアップすることができる。そういう意味において、降り積もった時間は財産でもあるのです。

***

森の中を走るキャロルが観客の目の前に浮かび上がります。曲は「IN THE FOREST」。1988年のアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に収録されたときは「君の声が聞こえる」というサブタイトルが付けられていました。異世界の森の中を走るキャロル。彼女を探す仲間たち。光の届かない暗闇の中、入り組んだ迷路のような森の中、物語はスリリングな展開を見せます。声は届けど、姿は見えない。闇と木々に翻弄されるキャロルの姿を「IN THE FOREST」は歌います。孤独や絶望の中でも、希望は消えないことを表わすかのような明るいメロディが響きます。

スクリーンを背に歌うウツ。ステージ上でリアルタイムに歌う姿と、物語のアクターとして歌う姿が交錯します。当時の記憶をよみがえらせる観客もいれば、そうではない観客もいます。後者は、当時の記録として現在の記憶に組み込みます。それぞれ異なる形ではありますが、このライブの中で「CAROL」という物語にアクセスしています。配電盤として過去と現在をつなぐのが、現在のTM NETWORKです。スクリーンに映る過去と、ステージに存在する現在。スクリーンの中で歌うTM NETWORK、ステージの上で歌うTM NETWORK。

***

裾の長い服をひらりと羽織るように、音の雰囲気がするりと入れ替わります。メロディは柔らかさと憂いを帯び、テンポは緩くなります。「CAROL (CAROL'S THEME II)」と題したバラードは、「IN THE FOREST」と共通するメロディと歌詞を含みながら、異なる角度から光を当ててキャロルの姿を描きます。

アルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に収録された13曲のうち、「CAROL」という物語に関係するのは7曲です。その中の4曲、すなわち「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」、「CAROL (CAROL'S THEME I)」、「IN THE FOREST」、「CAROL (CAROL'S THEME II)」から構成された組曲は、「CAROL」のエッセンスが凝縮されており、「CAROL」をステージに蘇らせる役割を果たします。

四つの曲をつないでみると、浮かび上がるのはキャロルという少女の姿です。物語の鍵を握る特殊な存在としてのキャロル、平凡な日常の中で日々を過ごすキャロル、まったく予期しなかった世界を駆け巡るキャロル、疲れ果ててその場に崩れ落ちそうなキャロル。ひとりの少女をさまざまなメロディやアレンジで多面的に表現する組曲。キャロルは聴き手の中に生まれ、躍動します。物語はステージや小説で補完され、それでも生じるいくつもの隙間からは受け取った人々のイメージが湧き出し、各々の記憶と混ざり合い、物語は各々の独自性をまといます。

***

「CAROL」を思い浮かべるとき、人々の脳裏には何が映し出されるのでしょうか。ウツの歌が蘇るのか、小室さんが弾くピアノの音が蘇るのか、木根さんが宙を舞う姿が蘇るのか。あるいはしなやかに踊り、ステップを踏むパニーラの姿を思い出すのかもしれません。かつてリアルタイムで刻んだ記憶は、どのような形で2015年に呼び戻され、像を結んだのだろう?

オリジナルと2015年の「CAROL」が混ざり合い、記憶は刷新されます。オリジナルを体験した観客の数だけ、その記憶のピースの数だけ、記憶のマッシュアップは存在します。混ぜるための記憶を持ち合わせない人々は、2015年の「CAROL」を記憶の土台とします。リアルタイムで積み上がる記憶の中に、スクリーンに広がる記録が混ざっていく。TM NETWORKが2015年に「CAROL」を再び演奏することで、観客の記憶はそれぞれに刷新され、新たな時間が堆積します。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)

GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.09.22
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by mura-bito | 2015-09-22 15:43 | Music | Comments(0)
JOZENJI STREETJAZZ FESTIVAL 2015
去る日曜日、定禅寺ストリートジャズフェスティバルを観てきました。仙台駅から少し離れた勾当台公園市民広場にて行なわれた「JSF Finale」。1時間ほどしか観られなかったものの、どの演奏も素晴らしく、時に激しく、時に静かに心を揺さぶられました。音楽が鳴っている街というのは、実に心地好い。良いね。

ZUNDADA ORCHESTRA
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ウィリアムス浩子(Vo.)
馬場考喜(Gt.)/名雪祥代(As./Ss.)
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Atoa.
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2015.09.16
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by mura-bito | 2015-09-16 21:43 | Music | Comments(0)
にがくてあまい レシピ69 ビーツのリゾットとビーツとバナナのジュース
『にがくてあまい』の69話「ビーツのリゾットとビーツとバナナのジュース」が配信されています。68話* で一区切りついた物語は、69話から新たな展開を見せます。コメディとシリアスの掛け合いが軽快なテンポで進み、さらりとした手触りの中にも、よく噛んで味わって飲み込みたいトピックの存在を感じることができます。

http://comic.mag-garden.co.jp/eden/58.html

62話までの数話で主に描かれたのは、仕事の面で迷い続ける「マキ」の姿でした。63話** では「マキ」が迷いから抜け出した証を見せるように企画を書き上げ、その企画は69話で実行されます。

こうした時間差の展開はこの漫画では以前にも見られました。例えば、57話(10巻の最初に収録)で展開したエピソードが、時間差で11巻のメイン・テーマにつながりました。69話でも似たような展開を見せており、11巻の最初に収録される63話で打たれた布石がここで活きてきます。

***

伏線を回収すると、物語は新たな展開、新たな気持ちの錯綜を見せます。「マキ」はかつて自分を打ちのめし、迷走するトリガーとなった「ギルバート」と再会します。広告プロデューサーとして憧れ、少しでも近づけたかと思った矢先に突き付けられた圧倒的な力の差。それが迷いを増幅させることになりました。しかし今度は少し異なる様子を見せます。

「ギルバート」がライバルとして目の前に立ちはだかる…と反射的に「マキ」は思い、その圧倒的な力の前に膝を屈しそうになります。しかし彼は「マキ」の作ったCMに対抗できるものを作りたいのだ、と語ります。彼は言葉を継ぎ、自らが抱く不安、そしてそれを打ち消すためのアクションを語ります。彼は彼なりにもがき、少しでも前に進もうと手を尽くしていたのです。それは決して絶対的な存在ではありません。かつて呑み込まれた暗闇に捕らわれることなく、どこかふっきれた表情を見せながら、彼女はおいしそうにビーツのリゾットを頬張ります。

***

「ものをつくる」ということに対する誠実さと言うべきか、敬意と言うべきか。目には見えないけれど有ると無いとでは、できあがるものかわ大きく変わるであろう姿勢。敬う姿勢。「マキ」がつくったCMに対して挑みたい、そのCMに張れるものをつくりたい、と「ギルバート」は言います。そこにあるのは戦いではなく、互いに影響し合う関係です。プロフェッショナル同士の中にあるのは相手との上下ではなく、丁々発止にも似たスリリングな相互作用なのかもしれません。

それはそれとして、今回は「ギルバート」の魅力が詰まった話でしたね。「ギル美」に始まり、人懐っこさ、ドMキャラ全開、ものづくりへの敬意、そしてお約束のオチ。それほど古参のキャラクターではありませんが、他の登場人物と充分に張り合えるだけの個性を持ち、独自のポジション(ドM)を確立しました。「オトナ気ない大人を描くほど楽しいものはありません」とは、1巻のあとがきで小林ユミヲさんが書いた言葉です。この漫画は「オトナ気ない大人」のオンパレード。「ギルバート」も然り、ですね。だが、それがいい。

* inthecube: にがくてあまい レシピ68 ドライカレーと豆苗とザーサイの胡麻サラダ
** inthecube: にがくてあまい レシピ63 大和芋のとろろ鍋

2015.09.15
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by mura-bito | 2015-09-15 22:31 | Visualart | Comments(0)
TM NETWORK – RHYTHM RED BEAT BLACK (from TM NETWORK 30th FINAL)


TM NETWORK – RHYTHM RED BEAT BLACK
(from TM NETWORK 30th FINAL)

トーキング・モジュレーターで歪ませたギターの音が響く響く。音は空間まで歪ませ、観客を赤と黒の世界に引きずり込みます。この独特の音が示す曲はTM NETWORKにおいてただひとつ、「RHYTHM RED BEAT BLACK」です。1990年にリリースされ、その後もアプローチの異なるリミックスが発表され、ライブでも頻繁に披露されました。

この曲はライブの序盤に配置されることが多く、アクセルをぐっと踏み込んでトップスピードに持っていく役割を担います。節目のライブでも重宝され、1994年の「TMN 4001 DAYS GROOVE」、2004年の「TM NETWORK DOUBLE-DECADE "NETWORK"」で披露されました。そして、30周年企画のクロージングとなるライブ「TM NETWORK 30th FINAL」のセット・リストに名を連ねました。トーキング・モジュレーターで変化させたギター・サウンドが鳴った瞬間に、会場全体がヒートアップします。

オリジナルはギターやスクラッチによるノイジーな音をスパイスにして、キックやベースのループが色気を醸すハウス系のダンス・ミュージック。ライブで登場する度に、基本的なアレンジは共通するものの、重なるシンセサイザーの音が曲を新鮮なものにアップデートします。2015年はソフト・シンセの音が曲を飾り立てます。小室さんは三方に配置したソフト・シンセをコントロールし、時に背後のハードウェア・シンセサイザーを弾きます。YouTubeで公開されているビデオはサビの直前で終わっていますが、そこで弾いているのがRoland社のJD-XAですね。Access社のVirusシリーズにも似た、太く厚く、密度の大きい音を出します。

[PART1] TM NETWORK 30th FINAL
[PART2] TM NETWORK 30th FINAL
[PART3] TM NETWORK 30th FINAL
[PART4] TM NETWORK 30th FINAL

2015.09.12
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by mura-bito | 2015-09-12 18:29 | Music | Comments(0)
CAROL2015 PART2
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


不意に静寂が破られ、音が戻ってきます。ロンドンの人々も何事もなかったかのように動き出します。音が止まる前と同じような、どこか違うような。一度音が消えた地球は、その永遠の一瞬の中で、歯車ひとつほどの違いなのかもしれませんが、何かが変化して、再び回り始めます。

軽快に刻むリズムが悪魔たちのカーニバルを引き寄せます。異世界に紛れ込んだキャロルは、音を盗み、呑み込んで世界を支配しようとする怪物、ジャイガンティカによって囚われます。ライーダと呼ばれる手下の悪魔を使って、ジャイガンティカはこの世界を蹂躙していきます。仲間と引き離され、ジャイガンティカの居城に連れてこられたキャロル。不気味な色の月が光る夜空のもとで音を盗む儀式が始まり、「GIA CORM FILLIPPO DIA」という呪文が響き渡ります。

「GIA CORM FILLIPPO DIA」は物語「CAROL」の一幕を描く曲のタイトルでもあります。キックとハイハットとパーカッションで構築されたリズムに、小室さんがソフト・シンセを、木根さんがアコースティック・ギターを重ねます。オリジナルではパーカッションの音が走る中でシンセサイザーの音が重なり、からりとした、明るい印象を受けます。その一方で歌詞は頽廃的な言葉が並び、悪魔が熱狂するカーニバルを表現します。音や歌詞のモチーフとして、The Rolling Stonesの「Sympathy For The Devil」を意識していたのかもしれません。「CAROL」における悪魔はファンタジーにおける悪役というくらいの存在なので、宗教的なトピックとしての悪魔ではありませんが。

***

スクリーンには1988年から行なわれたツアーの様子が映し出されます。巨大な目と牙を持って音を呑み込むジャイガンティカの前で、無数のライーダが踊り狂います。音を盗み、世界を破滅に導かんとするカーニバル。黒っぽく浮かび上がる体に、鈍く光る二つの眼が不気味な雰囲気を生み出します。ライーダに扮したダンサーたちは槍を使った殺陣の演舞を披露したかと思えば、興が乗ったか調子に乗ったか、ブレイクダンスまで飛び出します。

色とりどりの光が縦横無尽にステージを、そして観客席を駆け巡ります。かつては緑色に限定されていたレーザー照明は、今やどのような色も作り出せます。赤、青、白、黄色。光の乱舞は、否応なしに観客のボルテージを上げます。ポップスのライブでも使われており、ファーストラインと言ってもいいのかもしれません。大きな会場に多彩な色の橋を架ける。その中にいると思うだけで気持ちは盛り上がります。光が人の心を支配する。功罪はありつつも、光はエンタテインメントに欠かせない要素でしょう。

***

小室さんはソフト・シンセにボーカロイドのような声を設定して、ボーカルのメロディを奏でます。細切れに響くボーカロイド音声に加えて、ダブステップ系の音が混ざり、カラフルなレーザー光が乱舞することで「GIA CORM FILLIPPO DIA」はファナティックな色彩を帯びます。それを塗り固めるように、新たな色を重ねるように、アコースティック・ギターの扇情的な音が響きます。小室さんが指し示すと、光が木根さんに集まり、その演奏はさらに熱を帯びます。

木根さんがアコースティック・ギターでロックを感じさせる激しいプレイを披露する姿は「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」の「GET WILD」を想起させます。アコースティック・ギターを弾くのはデビュー当時からの役割ですが、サウンドにおけるつなぎとして使われたり、バラード調やフォーク調の曲で爪弾いたりコードを弾いたりするのがメインでした。ギタリストとしての木根さんの役割は、この一年で広がりを見せます。従来のようにサウンドの内部に組み込まれるパーツでありながら、時に外装を構成するパーツにもなる。ギターを高く掲げてかき鳴らし、このエレクトロ・カーニバルを盛り上げます。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)

GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.09.06
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by mura-bito | 2015-09-06 15:56 | Music | Comments(0)

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