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QUIT30 HUGE DATA PART1
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


ベースの音がゆるやかに流れ出て会場を満たし、シンセサイザーの音が身体に染み込むように響きます。流れ出すメロディは「SEVEN DAYS WAR」です。LEDスクリーンに映る男性はバトンを取り出し、放り投げます。潜伏者の一人がそれを拾い上げ、しばし眺めた後、どこかに向けて放ります。バトンは弧を描き、地球を巡って、潜伏者から潜伏者へと役割を伝えていきます。

光の束がTM NETWORKの三人を捕らえます。オープニングの映像とともに会場に流れていた「SEVEN DAYS WAR」は、ウツのボーカルを合図にして生演奏に切り替わります。ウツの左隣で木根さんがギターを弾き、反対側では、サングラスをかけた小室さんがショルダーキーボードを弾きます。

スクリーンの一部が開き、サポートのふたりが演奏している姿が見えます。ギターを弾く松尾和博(バンナ)さんは、2013年からTM NETWORKのサポートを務めており、『DRESS2』や『QUIT30』といったアルバムの録音にも加わっています。一方、ドラムとパーカッションを担当するRuyさんは2012年のライブ「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」から参加し、すべてのライブで演奏してきました。若手でありながら、回を重ねるにつれ、ベテランのミュージシャンに引けを取らないプレイを披露するようになりました。

***

多くのファンの記憶に残る曲は、それだけ多くの場面とともにリプレイされます。「SEVEN DAYS WAR」を聴いて、映画のワンシーンが蘇る人もいれば、TMNが終了した1994年のライブを思い出す人もいます。人によっては、2004年のライブにおけるギタリストの共演(松本孝弘、北島健二、葛城哲哉)を思い浮かべるのかもしれません。25年近い時間の積み重ねは、多くの人の記憶の集積でもあります。いくつものピースが集まって、それは曲の一部になっているとも言えます。

「SEVEN DAYS WAR」がリリースされたのは1988年。TM NETWORKの活動が軌道に乗り、プロジェクトの規模が大きくなっていく、その渦中でした。「GET WILD」、「RESISTANCE」、「BEYOND THE TIME」というようにタイアップした曲が並び、「SEVEN DAYS WAR」も映画『ぼくらの七日間戦争』の主題歌として世に出ます。さらに、小室さんは映画の音楽、サウンドトラックを手がけました。

1988年の終わりには、物語を軸にしたコンセプト・アルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』がリリースされます。「CAROL」というプロジェクトのポイントは音楽と物語の融合です。物語を軸にしたステージはTM NETWORKの初期から取り組んでいたことですが、プロジェクトの規模が最大になったのは「CAROL」ですね。デビューの頃から試行錯誤してきたことが、いくつかの流れを生み、「CAROL」として結実しました。小室さんが映画音楽を制作したことも、少なからず『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』に影響したと考えられます。

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「QUIT30」と「HUGE DATA」を組み合わせたロゴがスクリーンに表示され、向こう側に吸い込まれるようにして消えます。闇がスクリーンと会場を包むと、わずかな間の中で緊張感が高まります。張り詰めた空気を破壊するように、爆発音が鳴ります。差し込む光と立ち込めるスモークの中に、三つのシルエットが浮かびます。小室さんと木根さんが歩を進め、それぞれのブースに立ちます。小室さんは客席から見て左側、木根さんは右側です。

微細に刻まれるハイハットの音。その音に導かれるようにピアノの音が鳴り、組曲「QUIT30」の最初のパート「Birth」の始まりが告げられます。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」ツアーのときから音が整理され、ぎゅっと引き締まった印象を受けます。

今回のライブでは、組曲「QUIT30」は「Birth」だけが演奏されました。「SEVEN DAYS WAR」とともに、ツアーの記憶と今回のライブをつなぐように披露されます。スクリーンにはジャカルタやロンドンの一角が映し出されます。街の雰囲気も、人々の表情も異なる都市。異なる記憶、異なる体験をつなげると、「Birth」はその役割を終えます。小室さんはソフト・シンセでアコースティック・ピアノの音を呼び出し、コントローラーとしてつないだFantom G6で弾きます。最後は、ピアノの音がバンド・サウンドの余韻を呑み込みます。

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鳴り響くアコースティック・ギターのカッティング。ソリッドな音、硬くてクールな音が広い会場に響き渡ります。装飾的かつノイジーに鳴るエレクトリック・ギターと、ストリングス系のシンセサイザー・サウンドを背景にして、木根さんがかき鳴らすアコースティック・ギターの音が響きます。ウツはリズミカルなハンドクラップで加わります。音は「LOUD」を形成します。

アコースティック・ギターの音が満ちたステージで、ウツは「LOUD」を歌い始めます。バラードと錯覚するような、静かな雰囲気が漂います。サビに入る直前、歌と音が静止し、小室さんが鳴らすシンセサイザーの音をきっかけにして、サビのボーカルと強烈なリズム、特にキックの音が飛び出します。それまで蓄積したエネルギーが一気に放出され、照明もダイナミックにステージを照らします。間奏パートでも木根さんのアコースティック・ギターを中心とした音が展開され、ボーカルが入るとスネアとキックが力強く鳴ります。メリハリのきいたアレンジは、エレクトロやカントリーの空気を漂わせながらも、骨太なロックを感じさせます。

ツアーで新たに加えられたアウトロは、今回のライブでも踏襲されました。テーマ・メロディのリフレインですが、繰り返せば繰り返すほどにその魅力を増すメロディです。ツアーではアウトロのソロをVirus Indigo 2 Redbackで弾いていましたが、今回はソフト・シンセに登録した音を使い、最後はVirus TI Polarで締めます。Virus TI Polarはベルのような音を出すことができます。柔らかい音ながら柔らかすぎず、硬さを含みながらも、受ける印象は優しい。音は余韻をかすかに残し、次の展開である「CAROL」の扉の前に観客を導いていきます。


SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)
GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.08.31
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by mura-bito | 2015-08-31 21:44 | Music | Comments(0)
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA (INTRO)
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


2015年2月に行なわれたライブ「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」のBD/DVDがリリースされました。1月まで続いたツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」の一部を踏襲するも、流れを汲むことはせず、曲目や演出を大きく変更したライブです。ツアーでつなぎ合わせた物語のピースをもとにして、時計の針を進めるように物語の続きを語ります。

2012年のライブ「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」から始まった物語のキーワードは「潜伏者」です。潜伏者は宇宙から地球に降り立ち、人間の営みを調査して報告するという任務を遂行しています。それは現代だけでなく過去も含まれており、人間として社会に溶け込んでいたり、時としてエキセントリックな存在として人間たちの思考や行動に影響を与えたりしました。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」では、多数の潜伏者が地球のあちこちに存在し、それぞれのミッションに沿って活動していることが語られました。

TM NETWORKも潜伏者として地球を調査してきました。人間の歴史でいえば1984年に地球にやってきて、その任期は三十年と定められていました。そのままミッションは終わるはずでしたが、終了を目前にして、ひとりが予期せぬ動きを見せます。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」では、2012年に始まって形を少しずつ変えながら続いてきた、潜伏者としてのTM NETWORKの物語を閉じます。

今回のライブにおいて重要なポジションを占めるのが「CAROL」という物語です。ロンドン、バース、そして異世界を舞台に、「キャロル」という名の少女が盗まれた音を取り戻すために戦います。記憶を巻き戻すと、この物語が生まれたのは1988年です。物語をコンセプトに据えたオリジナル・アルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』は、1988年にロンドンのスタジオで録音されました。大規模な全国ツアーも組まれ、「CAROL」は多くのファンの記憶に残る物語となりました。

『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』には物語に関連する曲と、その枠外の曲が収録されています。物語を構成する曲のうち、中心的なものを抽出して組み合わせたのが組曲「CAROL」であり、節目のライブで演奏されました。組曲「CAROL」は2014年の感性と技術で再構築され、オリジナル・アルバム『QUIT30』に収録されました。今回のライブでは、新たに録音された組曲を基にして、アルバムには収録されていない曲も組み込み、「CAROL」が描かれました。



TM NETWORK – QUIT30 (Sampler)

ステージ後方には巨大なLEDスクリーンが設置されています。スクリーンに映し出される映像のうち、とりわけ目を引くのがロンドンの街並みやその間を行き交う人々です。小室さんが自ら撮った映像も使われています。いつだったか、オリンピックの前後でロンドンの雰囲気は変わった、と小室さんは言いました。ビデオカメラでロンドンの姿を切り取りながら、アーティスティックな直感によって導き出したことなのでしょうか。

1988年の「CAROL」と2014年の「CAROL」の間には、二十五年という時間が横たわっています。テクノロジーの進化、ミュージシャンやプロデューサーとしての成熟といった、TM NETWORKを取り巻く変化は、「CAROL」という作品のテイストやクオリティに影響を与えています。1988年に生まれた「CAROL」を2014年にアップデートし、2015年にステージで表現する。これはもう単なる音源のリメイクではなく、異なる世界を生み出す行為です。

「CAROL」という物語は、2012年から始まった物語に組み込まれ、新たな役割を得ました。過去の記憶と記録がステージと観客席に渦巻く中、新たな記憶がインプットされ、そしてそれは新たな記録として残る。小室さんの言う、オリンピックによって変化したロンドンの空気に似ています。メロディは同じだけど、音や声の雰囲気は変わっている。それをノスタルジックに捉える人もいれば、ポジティブに捉える人もいます。

ストーリーテラーを務めるのは「キャロル」です。三年間の物語において、「キャロル」は異なる姿で登場し、異なる役割を割り振られました。「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」では、「CAROL」の記憶をサーチして呼び出すトリガー。「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」では、潜伏者を「生成」するプロセスを表現するための舞台装置。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」では、潜伏者の「役割」を伝えるためのガイド。

そして、「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」では、ひとりの女性が物語を進めます。彼女は、「CAROL TOUR '88~'89」というツアーで、物語の主人公「キャロル」を演じました。彼女もまた潜伏者のひとりであり、物語の中で「キャロル」という役割を与えられました。潜伏者の物語は「CAROL」も含んでいたのです。それは物語が物語をくるむ、アラビアン・ナイトのような世界。かつて「キャロル」という役割を担ったパニーラ・ダルストランドが再び登場し、2015年の「キャロル」として、2012年に始まったTM NETWORKストーリーの終幕を告げます。

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

SEVEN DAYS WAR/QUIT30: Birth/LOUD
CAROL 2015 I
A DAY IN THE GIRL'S LIFE
CAROL (CAROL'S THEME I)
GIA CORM FILLIPPO DIA
CAROL 2015 II
IN THE FOREST
CAROL (CAROL'S THEME II)
JUST ONE VICTORY
STILL LOVE HER

LOOKING AT YOU/Always be there/WE LOVE THE EARTH
TETSUYA KOMURO SOLO -HUGE DATA-/GET WILD/I am/FOOL ON THE PLANET

2015.08.26
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by mura-bito | 2015-08-26 21:07 | Music | Comments(0)
AVICII – Waiting For Love (Remixes Pt. II)
AVICIIの「Waiting For Love」* のリミックス・シングル第2弾が公開されています。第1弾** はアコースティック的な解釈を含むバラエティ豊かなラインアップでしたが、今回はダンス・ミュージックの楽しさや気持ち良さを伝えるリミックスが並んでいます。

Waiting For Love (Remixes Pt. II)
Astma Rocwell Remix
Addal Remix
Fabich Remix

気の置けない仲間で盛り上がって騒ぎたくなる音の集まり。Astma Rocwell Remixが演出するパーティー感は、音楽の楽しさをシンプルに伝えるかのようです。ダンス・ミュージックはEDMだけではないのは当たり前ですが、シンセサイザーの音から生まれる表現は本当に多種多様ですね。ボーカルを活かしながら、きちんと曲の中でドラマをつくって、そして直感的に、ストレートに楽しいと思わせてくれるリミックスです。

◢ ◤

Addal Remixはストリングスとベースの音から始まります。ストリングスの音がじわりと心に沁み、さらにストリングスの裏で響くベースの音が心地好い。かと思えば、ぐいっとベースが前に出てきます。途中で再びストリングスが前に動き、裏でベースが鳴ります。そしてベースが前進して、力強く鳴るストリングスと並びます。ベーシストとヴァイオリニストが背中合わせで弾いている画を思い浮かべますね。

◢ ◤

さまざまなシンセサイザーの音を使って、表情をどんどん変えていくFabich Remix。音を重ねていったり、抜いて薄くしたり、音の層がグラデーションを描き、曲に起伏とドラマを与えています。中でもピアノ系の音がクールに弾けます。ピアノの音で生み出すリフは、それだけでもうエキサイトするんですよね。ユーロ・テクノかユーロ・トランスか、細かな区分けは難しいのですが、そのあたりの要素を感じます。

* inthecube: AVICII – Waiting For Love
** inthecube: AVICII – Waiting For Love (Remixes)

2015.08.23
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by mura-bito | 2015-08-23 16:39 | Music | Comments(0)
[PART2] Rolling Stone Japan Edition Vol. 101 小室哲哉インタビュー
Rolling Stone JAPAN EDITION VOL. 101

ローリングストーン日本版 2015年9月号

セブン&アイ出版


[PART1] Rolling Stone Japan Edition Vol. 101 小室哲哉インタビュー

表紙に躍る「小室哲哉、未来へ。」というコピー。未来は過去と現在を受け継ぎながら存在します。小室さんのインタビューは、1990年代のムーブメントの中で感じていたことを振り返ると、これからのことに話題が移ります。小室さんは「自分の砂時計はひっくり返っている」と言います。さまざまなことを考えて予測し、いくつかを形にしながらも、限りある時間の中で格闘し続けています。
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表紙では3人だったのが広告では5人に

ポップ・ミュージックの役割は10年前、20年前と変わっているのだろうと思います。好みや立場の違いに伴なって個人の中でも変遷しているでしょうし、聴き方やコンテンツの多様化に伴なって社会的にも変わっているはずです。けれども、ひとりひとりが考えていることは変わらないのかもしれません。「若者の○○離れ」とはノスタルジックな論評ですが、上の世代が親しんだツールやアイテムに惹かれないだけであり、感情的なところや何かを求める気持ちは、そうそう減じるものではないと思います。

メディアは情報過多で、いらない情報も全部とりあえず入って来るけど、実は変わらず、「あの子と仲良くなるにはどうしたらいいかな」とか「来月の給料日まで大丈夫かな?」とか思っているかもしれない。

小室哲哉
1万字インタヴュー 小室哲哉 – Rolling Stone Japan Edition Vol. 101

これは想像でしかないのですが、「うまく表現できない気持ちはあるけれど、別にそれを代弁してもらう必要はない」ということなのかもしれません。アートや音楽、文学によって表現してもらわなくてもいい。感情との折り合いは自分でつけている(と思っている)から、外的な要素で補完する必要はない。そう考えると、内面をえぐるような歌詞はほとんど届かず、共鳴は生まれないことになります。もっとライトなものでいい、むしろ意味なんてない方がいいと思われているのではないか。

今の30代に入る前くらいの、ゆとり世代とかギリギリのところの子たちの不満や不安は、何か形にしたいなって。

小室哲哉
1万字インタヴュー 小室哲哉 – Rolling Stone Japan Edition Vol. 101

とはいえ、僕も音楽や小説に自分を重ねたことはないし、自分が思いを代弁してほしいとも思わなかった。けれども、三十代をしばらく生きていますが、最近は少し変わったかなと思います。「自分が思っていることを他の人も思っていたのか」ということを知り、ふと気持ちが軽くなったことがあります。それは音楽や漫画にも言えることで、自分の一部がそこにあると思えたら、ぐっと好きになる。のりしろどうしが触れる感じでしょうか。

もっとボーダレスとかシームレスとかになって、ワールドワイドにみんなに瞬間で聴いてもらえるところまでひたすら進んじゃってほしい。分母がめちゃくちゃデカくなれば、上の分子も増えるので。それで、世界中の国々の独自なものを "わかるような気がする" という人も増えるかもしれない。

小室哲哉
1万字インタヴュー 小室哲哉 – Rolling Stone Japan Edition Vol. 101

最後に、小室さんの「世界中の国々の独自なものを "わかるような気がする" という人も増えるかもしれない」という言葉を引きます。これはリスナーの「拡張」と言えます。それぞれの感性で、自分が親しんできた文化とは違う文化と触れ合う。ほんのわずかでも理解して楽しめれば、それは感性の拡張です。10年や20年では実現しないかもしれません。ドメスティックなものを否定する必要はありませんが、閉じるより広がっていく方が、少なくとも文化的には健全なのではないか、と思います。

2015.08.17
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by mura-bito | 2015-08-17 20:40 | Music | Comments(0)
[PART1] Rolling Stone Japan Edition Vol. 101 小室哲哉インタビュー
Rolling Stone JAPAN EDITION VOL. 101

ローリングストーン日本版 2015年9月号

セブン&アイ出版


日本版『Rolling Stone』の2015年9月号の表紙を小室さんが飾っています。ネイビーに光るサテンのシャツを着て、RolandのシンセサイザーJD-XAとともに写っています。衝撃の恰好良さです。特集は1万字と銘打ったインタビューに加え、globeのマークやKEIKOの言葉も載せた、ボリュームのある企画です。あっ、木根さんが小室さんのことを愛を込めて語ったインタビューも掲載されていますよ。
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表参道の改札口に貼られた広告

小室さんのインタビューでは、globeのリミックス・アルバム『Remode 1』に絡めつつ、音楽に対する今の姿勢が明らかにされます。TM NETWORKの活動は区切りがついたので、globeを中心とした話が展開されます。KEIKOの状態が音楽活動をするには困難なので無理はできないと理解しつつも、その一方で彼女の声に乗せて今の言葉を届けたいという音楽家としての表現欲求を滲ませます。身体的な病気であれば時間がある程度は解決してくれますし、ライブは無理でもレコーディングならできる可能性はあります。しかし、本人に歌う意思がなかったり、歌い方の記憶を失くしていたりするそうです。夫として、音楽家として、さまざまな思いが錯綜していることが行間から読み取れます。思いの深さを外野から測ることはできませんが、決して浅くはないだろうということは容易に想像できます。

それまでの歌謡曲の大作家の先生の詞は、文芸から見たら素晴らしいけれど、演歌も含めて男目線というか、女性があまりにも可哀想だなという歌詞で、僕は納得していなくて。

小室哲哉
1万字インタヴュー 小室哲哉 – Rolling Stone Japan Edition Vol. 101

話は1990年代の音楽ブーム(CDブームであり、大規模コンサートの隆盛期)に及び、とりわけ小室さんが書いた詞にフォーカスします。読んでいて思い浮かんだのは「小室さんが歌を届けたかった人たちは、どのように受け取っていたのだろうか」ということです。みんなで盛り上がっていても、ひとりになると、ふと寂しさがやってくる。楽しいことは楽しいのだけど、その余韻は長く続かず、気づけば小さな孤独が目の前にぽつんと立っている。そんな気持ちを曲に乗せて届けていました。曲を聴き、歌詞の世界にダイレクトに触れていた方たちは、何を感じていたのでしょうか。層ではなく、個人として、何を思っていたのか、そして今は何を思うのか。

でも僕が書いてきたのは長い期間の孤独ではなく、"ここを出た後どうしよう" という切迫した孤独がテーマだったから。

小室哲哉
1万字インタヴュー 小室哲哉 – Rolling Stone Japan Edition Vol. 101

このロング・インタビューを読んだ後、ふと思い立って再生したのは『Remode 1』に収録されている「FACE」です。心に響くメロディだなあと思いながら、当時はほとんど意識していなかった歌詞に注目します。♪顔と顔を寄せ合い 慰め合ったらそれぞれ/玄関のドアを ひとりで開けよう♪という歌詞が心に残ります。見えない孤独とは、こういうことを言うのでしょうか。深いところにあるというより、すぐそこにあるのに捕らえきれない気持ち。小室さんが書いた詞の役割は、孤独を救うのではなく、孤独を「掬う」ことだったのかもしれません。

[PART2] Rolling Stone Japan Edition Vol. 101 小室哲哉インタビュー

2015.08.16
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by mura-bito | 2015-08-16 22:18 | Music | Comments(0)
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/The Beginning Of The End III
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


潜伏者のひとりは「キャロル」に向かって、君には特別な力がある、と言いました。太陽が昇る音が聞こえる。月の石が鳴る音が聞こえる。「キャロル」は、潜伏者たちが集めたピースをつなぎ合わせてみましょう、と語りかけます。潜伏者たちにも特別な力があります。それは創造力であり、情熱、そして想像力。けれども、あなたたちにも特別な力があるのです。それを目覚めさせるものこそ、音楽なのです。それを忘れないように。最後に "Good luck." と口にして、「キャロル」の役割は終わります。

三人の潜伏者が姿を現わします。ひとりは、白地に黒い線で模様が描かれたTシャツ、ダークグレーのジャケットを着て、サングラスをかけている。ひとりはネクタイを締め、スーツに身を包み、いつものサングラスをかけている。そして、もうひとりは赤を基調としたブルゾンを着て、少し大きめの濃い色のサングラスをかけている。

スネアの音がトリガーとなって「The Beginning Of The End II」の演奏が始まります。このパートは組曲「QUIT30」の終幕の開始を意味します。組曲の前半パートで使った言葉を集めて、新たな言葉と組み合わせて歌います。深く沈み込むベースの音と輝きを放つシーケンス・サウンドが背中を押すように曲を進めます。音が積み重なるにつれ、物語のエンディングが近づいてくる。

電源マークが緑色に光り、ゆっくりと明滅します。曲は、組曲「QUIT30」の最後に位置するパート「The Beginning Of The End III」にシフトします。記録されたベースの音と女性のコーラスとともに、ギターとドラムがテクニカルに音を刻みます。音は物語の背景として、エピローグの進行を見守ります。やがて、電源マークの色が変わり、赤く光り始めます。

三人の潜伏者が集まり、いくつかの言葉を交わします。小さくうなずき、ひとりがその場を去ります。潜伏者は港の側に建つバーに入ります。客のいない真昼の店で、店主と何事かを話しています。やがて席を立ち、ドアを開けて外の世界に踏み出します。ギターケースを下げ、空を見上げています。この潜伏者は、これからロック・ミュージシャンとして潜伏し続けるのでしょうか。

もうひとりの潜伏者が歩き去ります。どこかでバトンを拾い、車の運転席に乗り込みます。アクセルを踏み、夜の道を進んでいきます。車を停めると、おもむろにノートパソコンのような装置を起動させます。モニターに表示されたのは "Next mission is commanded." という文字列。この潜伏者はサラリーマンの顔を持ちながら潜伏を続け、いつか、駅のプラットフォームで少女からiPodを渡されるのかもしれません。

最後の潜伏者が姿を消します。人と物がひしめく建物の中を歩きます。アジアらしい混沌とした雰囲気を醸す、どこかのバザール。売り物にあふれる狭い通路や物置のような一帯を通り抜け、人をかわして前に進みます。何かを探しているのか、誰かを探しているのか、あるいは行くべき場所はすでにプログラムされているのか。歩みは止まらぬまま、やがてその姿は消えて見えなくなります。

黒地に白抜きの線で描かれた世界地図が目の前に広がります。三つの電源マークが地図の上で赤く光ります。ひとつはニューヨーク、もうひとつはジャカルタのあたりで光ります。そして、残るひとつの電源マークが表示されているのがロンドンです。この古都に、TM NETWORKの物語を語る上で欠かせない人物がいます。増え続ける大量のデータとともに、物語の舞台はロンドンに移ります。


2015.08.15
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by mura-bito | 2015-08-15 08:29 | Music | Comments(0)
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


粘り気のあるキック、赤と青が絡みつくライティング、扇情的に鳴るエレクトリック・ギター。ステージは眠らない夜の一部を切り取ります。ゆったりとしたテンポで演奏されるのは「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」です。シンセサイザーの音も重なり、ギターとのアンサンブルが夜の闇を一層濃くします。

この曲は1990年にシングルとしてリリースされました。この後、TM NETWORKは名称をTMNと変え、大幅にロックに寄せたオリジナル・アルバム『RHYTHM RED』を発表します。デビューから変遷してきたTM NETWORKのサウンドの中でも、これだけの変化は突然変異と言っても過言ではありません。TMNとはただの改称ではなく、TM NETWORKの存在理由すら変えてしまう出来事でした。このアクションを彼らは「リニューアル」と呼び、グループの大きなターニング・ポイントとなりました。

フィクショナルな存在から、生身の人間にシフトしたのが1990年だと言えます。翌年のアルバム『EXPO』を含め、この時期に漂っていた色気は尋常ではありません。歌詞やライブのパフォーマンスはフィジカルな魅力に満ちていました。サウンドやメロディも、爽やかというよりは、艶があったり陰を感じるものが多くを占めました。今回のライブでは、当時とは異なる、重ねた時間が醸す色気がウツから感じられました。「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」で見せたマイクスタンドを操るパフォーマンスは実に躍動的であり、視覚的に鮮やかです。ロック・ボーカリストとしてのカリスマ性を全身から放ちます。

イントロやサビで鳴り響くフレーズは、今回のアレンジの特徴ですね。オリジナルで使ったフレーズの一部を切り取り、ループしています。イントロではギターが前に、サビではシンセサイザーが前に出て、この印象的なフレーズを奏でる。重みのあるキックを土台にして、泣かせるフレーズのリフレインが観客の心を揺さぶります。最後はドラマチックに音が絡み合って、厚くなり、膨張し切ったところで弾けるように終わります。弾け飛んだNord Lead 3の音がノイジーに鳴り続けます。やがて異なる雰囲気のベースが混ざり、次第にテンポが上がって、四つ打ちのリズムが走り始めると「SELF CONTROL」が始まります。

キックの勢いに乗って飛び出すシンセサイザーのリフが、観客のボルテージをぐんぐん上げます。1987年にリリースされた曲ですが、2014年のライブでは音が厚みを増しています。1980年代の曲を2014年の音と声でアップデートしたアルバム『DRESS2』に収録されており、リフも厚みのある音で再構築されています。発表直後のツアー「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」に続き、『DRESS2』を下敷きにしたエレクトロ系のアレンジを今回のツアーも踏襲しています。

キャッチーなリフは、ステージも観客席もまるごと興奮の渦に呑み込みます。小室さんもYAMAHA社の真っ赤なショルダーキーボードを下げ、右に左にステージを移動し、鍵盤を叩き、観客を煽ります。今回のライブの特徴は、いくつかの曲で、お馴染みの要塞(キーボードに囲まれたブース)から飛び出し、観客に近づいていたことですね。さすがにショルダーキーボードを破壊することはなかったものの、「SELF CONTROL」ではステージを飛び出して、観客の手の届きそうなところまで来ており、躍動感にあふれていました。

「SELF CONTROL」の歌詞が綴るのは「自分を縛るものからの解放」です。「セルフ・コントロール」は大人として必要な機能ですが、それに縛られ過ぎる、あるいは縛られ続けることで抑圧され、自分自身を表現できなくなります。この曲名を表題にしたアルバムを1987年に発表したとき、「TM NETWORKの音楽で、聴く人それぞれのセルフ・コントロールから解き放つ」という趣旨のステートメントを歌詞カードに記しました。

セルフ・コントロールこそが人間たる所以と言うこともできますが、コントロールを自ら打ち破る力もまた人間らしさと言えます。四六時中解放を謳うわけにはいかないにしても、致命的につぶれる前に気持ちの発露はあった方がいい。続いて演奏された「LOUD」でも、もっとエモーショナルでいい、と歌います。自分が持っているもの、抑えているものを表出しようじゃないか、と。若手として駆け抜けた1980年代の気持ちとは異なっていたとしても、大人になって言い切れないことが増えたとしても、それでもエモーショナルに叫ぶことは悪いことじゃない、という結論に達したのかもしれません。

「LOUD」には、盛り上がるポイントがいくつもあり、ダイナミックな起伏のサイクルを見せます。終盤には♪LOUD LOUD, LOUD♪と繰り返しシンガロングするところで、盛り上がりは最高潮に達します。ウツがメロディに合わせて観客席のあちこちを指差し、観客は呼応します。今回のライブではこの部分の尺が倍になり、シンガロングを繰り返すほどに気持ちが解放されていきます。

2012年の夏には「LOUD」の原型はできていて、当時、限られた数の潜伏者が「35.664319, 139.697753」に集まり、デモ音源を聴くことができました。潜伏期間を経てアレンジも変わり、2014年にシングルとして世に出ます。この曲のリリースによって、三年に渡るプロジェクトにおける最後の一年の幕が開きました。アルバム『QUIT30』にはスネアを強調したミックスが収録されています。ミュージック・ビデオは宇宙船の内部をイメージしたセットで撮影され、そのコンセプトはそのまま「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」に受け継がれました。

「LOUD」は変化し続けます。過去の曲だけでなく、比較的新しい曲もアレンジを変えていくのがTM NETWORKです。アウトロが追加され、テーマとも言うべきメインのフレーズが繰り返されます。小室さんはVirus Indigo 2 Redbackでテーマ・メロディを弾きます。濃紺の筐体に包まれたアナログ・シンセサイザー。音を視覚化できるとすれば、ビームのような光の束と言えます。小室さんの指が鍵盤を叩くたび、太い音が放出されて聴き手を貫きます。ロックに欠かせないエレクトリック・ギターやスネアと遜色ないプレゼンスを示します。


2015.08.14
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by mura-bito | 2015-08-14 20:35 | Music | Comments(0)
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


夜を通り抜け、「キャロル」が姿を見せたのは昼下がりの港です。彼女は黒いスーツに身を包み、海と陸地を隔てる柵に腰かけて独白します。語るのは三人の潜伏者についてです。彼らはそのミッションを終える予定だった。ところが、潜伏者のひとりが行動を起こした、と。ミッションが続くことになったのか、予定通りにミッションは終わるのか、あるいは新たなミッションが始まろうとしているのか。形の定まらない未来を、行間から読み取ることは難しそうです。それでも物語に組み込まれた時計の針は動き続けます。

聴き手の身体をぐるぐると縛るように、エレクトロニック・サウンドがループします。回り回る音は生命の始まりと終わりと、そしてまた始まりを描きます。「QUIT30」の一部である「Loop Of The Life」と題したパートが演奏されます。ベーシックとなる音に、小室さんがソフト・シンセから呼び出したピアノの音を重ねます。その音は一際大きく響き、それはライブの終わり、すなわち物語の終わりに向けて踏み込むアクセルのようです。

カメラは潜伏者のひとりを捕らえます。彼が降り立ったのは、東南アジアにある大都市です。先進国に追いつかんと発展に発展を重ねる熱気は、元から漂うプリミティブな空気と混ざり合います。洗練と伝統、統制と混沌が危ういバランスで拮抗する。スマートな都市計画を元に設計された街並みも、その範疇から一歩外に出れば、発展する前の原風景が広がります。

音は鎖のようにつながり、同じく組曲「QUIT30」を構成する「Entrance Of The Earth」が始まります。組曲のサウンドは全体としてロック系にカテゴライズできますが、その中で、このパートが鳴らすエレクトロ系の音は異彩を放ちます。四つ打ちの上に乗ってループするシンセサイザーの音は、ハウス・ミュージックが持つ中毒性を感じさせます。ライブではさらに鋭く響くシンセサイザーの音が加わり、明滅する光とともにシャープな印象を与えます。ここだけ切り取ればスタジアムで観客を熱狂させるEDMにもなり得ます。

高層ビルが建ち並ぶ都市部を抜け、すぐそこに存在するスラム街を歩く。表と裏、光と影。相反する要素はどこか遠くにあるのではなく、すぐ近くにあり、時として自らの中に潜みます。潜伏者が調査するのは人間の営みです。急速な繁栄と引き換えに矛盾を抱え込む都市を、そこに生きる人間の姿を介して記録します。功罪を問わず、そこにある出来事を俯瞰するように観察して、記録する。

潜伏者はバトンを手にして歩き去ります。この都市に姿を見せたのは、別の潜伏者からバトンを受け取るためでしょうか。そのバトンは、次はどこに向かうのでしょうか。動き出した潜伏者は何も語らず、行動から意図を読み取ることもできません。迷いを見せることなく、どこかに向かって、歩を進めます。

01. QUIT30 PART1: Birth
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
04. Alive/君がいてよかった
05. Always be there/STILL LOVE HER
06. QUIT30 PART3: Glow
07. I am/GET WILD
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/III

2015.08.13
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by mura-bito | 2015-08-13 21:35 | Music | Comments(0)
07. I am/GET WILD
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


「I am」のオリジナルは2012年にリリースされました。一年が経って二種類のリミックス(「I am 2013」、「I am -TK EDM Mix-」)が発表され、その一年後には、アルバム『QUIT30』にアルバム用に音のバランスを変えたバージョンが収録されました。このアルバム・ミックスを手がけたのがマーティ・フレデリクソンです。オリジナルのインストゥルメンタルも含め、それぞれに異なる印象を受けました。

ライブでは2013年のリミックスをもとにしつつ、イントロがエレクトロに寄ったり、間奏でソフト・シンセの音を押し出したりしてきました。そして、今回のライブで披露された「I am」について特筆すべきは、オリジナルで使われたギター・ソロが再現されていることでしょう。マイク・スミスが弾いていたフレーズです。

「I am」では、三人がマイクに向かって歌う姿が印象に残ります。重なる三人の声。こうして彼らが声を重ねる姿を見ると、TM NETWORKを象徴する曲であると強く感じます。2012年に再び走り始めたTM NETWORKというプロジェクトの核となり、リスナーを含むTM NETWORKというネットワークをアクティベートしました。アクシデントに見舞われたり、ストーリーの修正があったりする中でも、プロジェクトを貫く軸であり続けました。

♪Yes I am Yes I am Yes I am a human♪のフレーズは物語を綴るストーリーテリングの役割を果たしつつ、ステージと観客席をつなぎます。それはまるで、人と人をつなぐバトンのようです。ネットワークの中を飛び回り、点と点を結ぶ。「I am」がシグナルとなって、TM NETWORKというネットワークが活性化し、関わるすべての人々をつないできました。

「I am」の最後の音を継ぐように、新たな音が重なり、混ざり、そしてまた新たな音にシフトします。ステージで小室さんがひとり、光の中でソフト・シンセのモニターと向き合います。音を選び、重ね、省き、混ぜ、馴染ませる。ソフト・シンセに加え、Virus TI Polar、Virus Indigo 2 Redback、Nord Lead 3といったハード・シンセの音を加えて、サウンドを構築していきます。

ソフト・シンセをコントロールするために使われているのは二台のYAMAHA社のMOTIF XF6です。それぞれにモニターが設置されていますが、それらは透明のパネルです。床に置いたプロジェクターからアプリケーションの画面を投影しています。遠目にはモニターがあるようには見えず、画面が宙に浮いているように見えました。

「GET WILD」の音は、ライブを重ねる度に変化します。イントロ、Bメロ、間奏、アウトロと必ずどこかが変わります。シンセサイザーを使った小室さんのパフォーマンスと一体化することもあり、また1987年のリリース以降、数々のリミックスやライブ・アレンジが披露されました。「GET WILD」は変わり続ける宿命を背負った曲と言えます。

2013年のライブがトリガーとなり、「GET WILD」はEDMへの道をひた走ります。今回のライブではイントロが大きく変わり、エレクトロの疾走感が増します。と、不意に音が変わり、光とカメラが別の場所を捕らえます。鳴り響くのはアコースティック・ギターのカッティング。木根さんがアコースティック・ギターを激しくかき鳴らすと、それに呼応するように、前回のツアー「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」で組み込んだフレーズが飛び出します。小室さんがコントロールするソフト・シンセの音も激しさを増していき、二人のプレイが生み出す音が火花を散らします。

一瞬のエア・ポケットを抜け、響き渡るのはオリジナルの「GET WILD」のイントロ。歌が始まってからも、曲の変化は随所に感じられます。Bメロにおいてリズムの間隔が空き、ボーカルやシンセサイザーの音が強調されるようになったのは2013年からです。最初はダブステップで使われるワブル・ベースでしたが、今回のライブではストリングス系の音に変わり、ドラマチックな雰囲気を漂わせます。

ここで体験した「GET WILD」の変化は最終型ではありません。この時は予想もしなかった変化が、未来で待っています。きっと変わるだろうと思っていても、具体的な音は観客の想像の範疇にはなく、驚きと興奮をもって迎えられることになります。2014年型の「GET WILD」はこのツアーで完成しましたが、近い未来、2015年型が登場するのです。

01. QUIT30 PART1: Birth
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
04. Alive/君がいてよかった
05. Always be there/STILL LOVE HER
06. QUIT30 PART3: Glow
07. I am/GET WILD
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/III

2015.08.12
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by mura-bito | 2015-08-12 21:19 | Music | Comments(0)
06. QUIT30 PART3: Glow
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


ひとりの女性がアパートメントの窓から顔を出し、外を見回している。部屋からストリートに出ると、彼女はタクシーを止め、乗り込みます。彼女も固有のIDを持った潜伏者です。大都市の中に潜み、調査を続けています。宇宙に浮かぶ母船は、潜伏者がどこに潜んでいるか、すべて把握しているようです。

「キャロル」が再び語り始めます。潜伏者はさまざまな姿で地球のどこかにいて、そして今も存在している。歴史上の人物ですら潜伏者だった可能性について、彼女は否定しません。潜伏者は必ずしも善悪二元論で語れるような正義の味方ではない。人間にとっては負の歴史であったとしても、潜伏者は報告書に記録します。人間にとって潜伏者は敵なのか、味方なのか。彼女は表情を少し変えたり、言葉に含みを持たせたりしながら、潜伏者の立ち位置について語ります。

TM NETWORKは組曲「QUIT30」の中間に位置する「Glow」を演奏します。ソフト・シンセに重ねるVirus TI PolarとVirus Indigo 2 Redbackの音が、聴く人の心にさざなみを立てます。重く、絡みつくような音がステージを、そして観客の記憶を支配します。組曲はパートを移ろうたびに表情を変え、音も言葉も異なる印象を与えます。

歌詞に出てくるのは、家を離れ、どこか遠くの海を航海する船乗り。ぼんやりと浮かぶ光に何を思うのか。家族で囲む灯りか、目指していた大陸の存在を示す灯台か、それとも幻を見ているのか。茫漠とした海原は、よく人生に喩えられます。いつ終わるとも知れぬ航海、荒れる海面、太陽や星の動きだけを頼りに進む海の道、人間のような存在などたやすく呑み込む嵐。

映像は大都市を空から捉えます。ビルが建ち並び、その間を車が行き交う。人間も歩いているはずですが、その姿を捕らえることはできません。母船は潜伏者の場所を示します。先ほどの「キャロル」の言葉が蘇ります。この物語を見届けている観客のすぐ近くにいる人が潜伏者かもしれない。あるいは、ということも充分に考えられます。観客は常に物語の外にいるとは限りません。さて、潜伏者はどこにいるのでしょうか。

TM NETWORKが奏でる音は、海の持つ大きなうねりのようなものを表現するかのように、ダイナミックになっていきます。音が音を絡め取り、どんどん大きくなって、波打って、やがて静かになり始め、凪となります。浮かぶ船の上で目にするのは昇る太陽か、頭上に広がる星空か。

01. QUIT30 PART1: Birth
02. WILD HEAVEN/TIME TO COUNT DOWN
03. QUIT30 PART2: The Beginning Of The End/Mist
04. Alive/君がいてよかった
05. Always be there/STILL LOVE HER
06. QUIT30 PART3: Glow
07. I am/GET WILD
08. QUIT30 PART4: Loop Of The Life/Entrance Of The Earth
09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
10. QUIT30 PART5: The Beginning Of The End II/III

2015.08.11
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by mura-bito | 2015-08-11 21:33 | Music | Comments(0)

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