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[PART2] 音楽配信の売り上げがCDに並ぶ
2015年のIFPIレポートに関する記事が、Billboardからも2015年4月14日に配信されました。Richard Smirkeという人が記事を書いています。Reutersの記事よりも長く、少し細かいデータを使っていますね。こちらも和訳してみました。

Billboard – Global Record Business Dips Slightly, U.S. Ticks Upwards In IFPI's 2015 Report

***

ストリーミング市場の大きな成長はパッケージやダウンロードの落ち込みに対抗するには充分ではなかったが、音楽産業の経営者は未だ楽観視している。

ストリーミングやサブスクリプションは大きく成長しているものの、世界的な音楽の売り上げの落ち込みを抑えるまではいかなかった。

2014年の録音制作物の売り上げは0.4パーセント下がった149億7000万ドルだった。下落幅は緩やかなものの、2012年の0.3パーセントの上昇(1999年以降初めての上昇)の後、二回目の下落である。それはまるで偽物の夜明けだった。

Billboard – IFPI CEO Frances Moore Talks Global Release Day: 'People Have to Accept Change'

現実は少々複雑である。IFPIのレポートは、この転換期にあっても実に静かな業界に向けて、詳細な考察を投げかけている。

2014年のデジタル系の売り上げは6.9パーセント成長して68億5000万ドル。サブスクリプションだけで前年比39パーセント上昇して15億7000万ドルだった。しかしながら、パッケージの売り上げは8.1パーセント落ち、ダウンロードの売り上げが8パーセント落ちたことで、成長は相殺された。いずれも権利保有者にとって単価が高い項目である。デジタルとパッケージの売り上げがともに46パーセントとなり、初めて同じ比率になった。

ダウンロードはまだデジタル配信の大部分である52パーセントを占めている。しかし、サブスクリプション・サービスは23パーセントになり、2013年の18パーセントより上がった。定額制に加入したユーザーは4100万人に及び、前年の2800万人から増えている。データを集計し始めた2010年には800万人だった。

Billboard – U.S. Music Consumption Up 14 Percent in First Quarter, Streams Make Up Losses in Sales

韓国、スウェーデン、メキシコを含む37の市場では、ストリーミングによる売り上げはダウンロードを上回っている。一方で、広告型と定額制を組み合わせたストリーミングはデジタル配信の売り上げの32パーセントを占める。2013年は25パーセントだった。

興行権による収入も前年比8.3パーセントの伸びを見せ、合計9億4800万ドルだった。これは全体の6パーセントを占めている。

映画やテレビ番組におけるタイアップの売り上げはさらに伸びており、8.4パーセント増の3億5000万ドルだった。フランスは46.6パーセント増加、ドイツは30.4パーセント増加、日本は33.5パーセント増加しており、有意な成長を見せている。

世界最大の市場であるアメリカの売り上げは2.1パーセント増加して、合計49億ドルだった。デジタル配信は35億ドルにまで到達し、アメリカの音楽市場の71パーセントを占めた。

Billboard – Taylor Swift Named IFPI Global Recording Artist of 2014

しかしながら、IFPIのレポートの作成方法が変化したことが、成長を示した要因のひとつとして挙げられる。本年は、デジタル配信の売り上げをSoundExchangeによって集められた数字を集計した、初めてのレポートである。SoundExchangeには、興行権による収入は含まれない。

アメリカにおけるサブスクリプションの収入は前年比33.5パーセントの成長を示し、4億9000万ドルに達した。広告型ストリーミングの売り上げは21.4パーセント増の2億2000万ドルに達した。ダウンロードの売り上げは7.2パーセントの落ち込みを示したが、19億ドルは依然としてアメリカのデジタル音楽配信の55パーセントを占める。

ワーナー・ミュージックのStu Bergenは「根本的なテーマは、もはや地位などないということだ。産業として、絶え間ないイノベーションの状態にある。我々は変化に適応しているのではなく、変化を受け入れ、そして変化を起こしているのだ」と述べた。映像プラットフォームのInterudeやVessel、SnapchatのDiscoverとの取り引きについて語った。続けて「宣伝と販売のプラットフォームが集束することで、アーティストの発展を促進してきた。アーティストはどこからでも活動を始めることができ、どこでも成功することができる」と述べた。

Billboard – Rumors of a Major Funding Round for Spotify Continue, Valuing Company at $8.4 Billion

一方で、IFPIのCEOであるFrances Mooreは、自らが述べた言葉「価値の溝」について話した。「価値の溝」は、YouTubeやDailyMotionのようなデジタル・プラットフォームが音楽コンテンツから得る利益と、プラットフォーマーが権利保有者やレコード会社に還元する、比較的知られていない収入との間に存在する。

Mooreは「立法環境に欠陥がある」と述べ、セーフ・ハーバーによる救済が、YouTubeやDailyMotionが中立的なホスティング・サービスとして認識されており、著作権法の特定の側面から免除されているとした。

Mooreは続けて「収益を上げ、流通や宣伝をおこなっているのにもかかわらず、自分たちは仲介業者に過ぎないと主張する企業によって、現状のセーフ・ハーバーは不正に使用されている。このことは明らかにすべきだと我々は思う」と述べた。

Billboard – Bertelsmann Posts Revenue Gains, CEO Talks BMG's Alibaba Deal: 'You Can't Make Money With CDs in China'

レポートによる地域ごとの分析は、似たような、複雑な状況を示している。

2014年に成長を示した他の市場は、世界における第三の市場であるドイツを含み、同時にブラジル、韓国、スペイン、中国、チェコ、インドネシアが挙げられる。

録音物の売り上げが前年比で落ちたのは、例えば、日本、カナダ、フランス、インド、イギリスである。ヨーロッパ全体では0.2パーセントの下落を示した。アジアもまた3.6パーセントの落ち込み、対してラテン・アメリカは7.3パーセントの成長を見せた。

SMEの会長兼最高経営責任者であるEdgar Bergerは「音楽産業にとって、デジタル配信が初めてフィジカルに並んだことは大きな転換点た。現在の軌跡を維持すれば、音楽産業は必然的に成長し、消費者が引き寄せられる市場を定額制こそが支配するだろう」と述べた。

Edgarは続けて「音楽産業は三つの転換を同時に対処している。フィジカルからデジタルへ、PCからモバイルへ、ダウンロードからストリーミングへ。そうした中で、音楽産業は効果的に振る舞っており、定額制モデルによってここにあるようなビジネスを構築していると私は思っている」と述べた。

[PART1] 音楽配信の売り上げがCDに並ぶ

2015.04.30
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by mura-bito | 2015-04-30 18:09 | Music | Comments(0)
[PART1] 音楽配信の売り上げがCDに並ぶ
IFPIのレポートによると、2014年に初めて、世界の音楽配信の売り上げがCDなどのパッケージに並びました。ロイターの日本語版では速報のような簡素な記事が配信されましたが、少し掘り下げたかったので英語版を訳してみました。原文の執筆者はミシェル・ロビーという方であり、配信日は2015年4月14日です。

Reuters – Streaming, digital music revenues matched CDs for first time last year

***

IFPIによれば、2014年に初めて、デジタル音楽配信の売り上げがCDのようなパッケージの売り上げと肩を並べた。

しかしながら、世界における音楽の売り上げは149億7000万ドルであり、2013年 [1] よりもわずかに減少した。

著作権侵害や無料配信サイトは、いまだデジタルへの転換の衝撃で揺らぐ産業にとって、大きな問題を残している。デジタルへの転換は、コピー、海賊版、無料配信のサイトを促進し、そしてそれは1999年の400億ドルからの大きな下落をもたらした。

IFPIのレポートは以下のように伝える。2014年の売り上げは前年比0.4パーセント減の一方で、ストリーミングとダウンロードを含むデジタル形式がついにパッケージ形式に並んだ。ともに市場のおよそ46パーセントに及んでいる。残りは興行権や、映画とそれに関連する売り上げである。

SMEの会長兼最高経営責任者であるEdgar Bergerは「全体として明るい材料だと捉えている。最大の市場であるアメリカは成長しているし、ドイツのような第三の市場も同じく成長している」と述べた。

Edgarは「現在の軌道を維持すれば、音楽産業は必然的に成長する」と言い、定額制のストリーミング・サービスが「重要な要素になるだろう」という見立てを付け加えた。

しかし、IFPIは音楽産業の前に広がる暗雲も記している。そこには、YouTubeやdailymotion.comのようなサイトを介した無料配信の音楽がもたらす衝撃や、中国の消費者による、無料で音楽を手に入れたいという要求がある。

業界団体はヨーロッパや、後に他の地域でも法改正を推し進めた。それにより、YouTubeやdailymotion、他の類似のサービスは、もはや自らを「セーフハーバー」[2] 、すなわち著作権違反から免除されると主張することはできないだろう。ユーザーは音楽や他のコンテンツを自分にポストするからだ。

IFPIのチーフ・エグゼクティブであるFrances Mooreは「配給やマネタイズ、宣伝の役割を果たす会社は『セーフハーバー』には属していない」と述べる。

Francesは付け加える。SpotifyやDeezeeなどのストリーミング・サイトは権利を所有するレコード会社に対価を払い、約1億4000万人のユーザーを基盤にして約16億ドルの売り上げに貢献している。一方で、10億人のユーザーがいる無料配信のサイトが還元するのは6億4100万ドルだった。

SMEのEdgerは、著作権侵害に関して重要なのは中国で争うことだと述べ、中国は音楽の売り上げに関して世界で19番目の地域であるが、著作権侵害をなくすことでトップ5になり得るとした。

[1] 訳注
Billboardによれば2013年は150億ドル、2012年は156億ドル。
Billboard – IFPI Music Report 2014: Global Recorded Music Revenues Fall 4%, Streaming and Subs Hit $1 Billion

[2] 訳注
セーフハーバー:制定法の規定が概括的な場合に規則等に抵触しないための安全ルール(またはガイドライン)をいう。
Weblioより引用:リンク

[PART2] 音楽配信の売り上げがCDに並ぶ

2015.04.27
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by mura-bito | 2015-04-27 22:25 | Music | Comments(0)
TM NETWORK – JUST LIKE PARADISE 2015
TM NETWORKの30thプロジェクトは2014年4月21日に始まり、2015年4月20日に終わりました。と思いきや、その直後に新たな音が届けられました。その曲は「JUST LIKE PARADISE 2015」といいます。3月のコンサート「TM NETWORK 30th FINAL」[1] のオープニングで映像とともに流れ、観客をいきなりヒートアップさせました。「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」[2] 、「CHILDREN OF THE NEW CENTURY -FINAL MISSION-」[3] とともにiTunes Storeなどで配信されています。

「JUST LIKE PARADISE」のオリジナルは『EXPO』[4] というアルバムに収録されています。リリースされたのは、TMNという名称で活動していた1991年です。アルバムの曲の半分ほどがハウス系の音でアレンジされており、中でも「JUST LIKE PARADISE」はハウス・ミュージックの色が濃い曲です。

「TM NETWORK 30th FINAL」の開催前、このコンサートを小室さんは「エレクトロ・サーカス」と称しました。それに倣えば、「JUST LIKE PARADISE 2015」は、まさしく四分間のエレクトロ・サーカス。宙を舞い、天と地が逆さまになり、目眩く世界の変化に、ただただ心を奪われます。踊らせることがプライオリティ。

二十年の時を越えてモデル・チェンジした「JUST LIKE PARADISE 2015」は、シンセサイザーの音を巻き込んだプロペラ音から始まります。絶妙な厚さのキックがカット・インしてテイクオフします。細かく刻むスネアが曲に絡みつきます。ピアノ系の音のリフが聴き手を絡め取り、シンセサイザーの世界に引きずり込む。1991年に書いたメロディを2015年の音で鳴らし、そしてアンプリファイすることで、TM NETWORKのEDMとは如何なるものかをプレゼンテーションします。ソフト・シンセの音はネットワークを介して、短いスパンで更新されていると聞きます。太くて厚い音、きらきらと輝く音、スクラッチ・ノイズのような音。音は層を成し、重なりながら、ひとつひとつが屹立します。

「TM NETWORK 30th FINAL」のオープニング・ムービーは、小型ジェットから見た空を映します。雲を切り裂き、空を舞います。シートに座る小室さんはバトンを取り出し、窓の外に放り投げます。グラフィカルに描かれた空をグラフィカルなバトンが舞います。バトンは何処かに向かって落ちていく。音は鳴り続きます。

コーラス・パートは ♪Just like paradise♪ と ♪Gonna take you to paradise♪ を交互に歌います。その間を縫うように ♪That's right!♪ が繰り返し飛び出します。感情にフィルターをかけたような声は、クールなエレクトロニック・サウンドに組み込まれます。この声と音の絡み合いは、大人の色気と気怠さを漂わせますね。

ベタついていないのに、とはいえあっさりとしているわけでもなく、曖昧な空気の中を漂います。霧のような雰囲気はオリジナルよりも濃くなり、聴き手を包みます。男性の声が ♪Baby dance with me through the night♪ と誘うと、女性の声は ♪When you hold me close it's paradise♪ と、誘いに乗るような、ひらりとかわすような言葉を返す。体温を感じるくらいに近い距離で交わすサインは、交差するのか、すれ違うのか。

[1] inthecube: [PART1] TM NETWORK 30th FINAL
[2] inthecube: TM NETWORK – GET WILD 2015 -HUGE DATA-
[3] inthecube: TM NETWORK – CHILDREN OF THE NEW CENTURY -FINAL MISSION-
[4] inthecube: TMN – EXPO

2015.04.23
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by mura-bito | 2015-04-23 21:52 | Music | Comments(0)
井浦新と崇徳院
エッセイ集『井浦新の日曜美術館』* では、井浦新さんが「日曜美術館」で司会を務める中で感じたことを綴っています。本作には短いコラムがいくつか掲載されており、「日曜美術館」に直結しない話題も含まれています。

コラムのひとつに、井浦さんが大河ドラマ『平清盛』で演じた崇徳院の話が登場します。悲運の人生を送った崇徳院の最期を描いたシーンは、脚本、台詞回し、衣装、メイク、所作のいずれもが力がこもっていました。清盛たちが平家納経を作り、奉納するために厳島神社へ向かっている頃、讃岐では崇徳院が血を吐き、呪詛の呻きをあげ、風貌が変わって人間ではなくなっていきました。

「ひとつの神事を、芝居をもってみんなで行った、そんな気持ちでした」と井浦さんは語ります。歌川国芳の浮世絵に描かれた怨霊を真っ向から演じることで、「想いを乗せすぎるくらいの気持ち」を込めました。エッセイを読みながら、強烈な印象を残した『平清盛』の映像を思い起こします。

高松放送局の特設サイトには、井浦さんのインタビューが掲載され、この回のことを語っています。井浦さんは崇徳院を演じ、その人生を共有することで、「崇徳院が怨霊になって後々の世にまでたたったということは、絶対にない」と思うようになりました。「極端な怒りや悲しみだけになってしまった『生き霊』としての崇徳院」を表現するために、極端なかたちで演出したそうです。容姿だけではなく、身体、思考、そして心までもが壊れるような状態を、全身全霊で演じた。それを彼は「突き抜ける」と表現します。中途半端にしないで突き抜けることで、それまで積み重ねてきた点を結び、線に変えた、と。

また、Twitterの番組公式アカウントを借りて、「怨念の世界で生きていた崇徳が解放されて、鳥のさえずりや子供の声が朝の光とともにようやく感じることができた。人間として崩御していく様を表現しました」と書き残しました。強烈なビジュアルと、戦慄すら感じる動きと呻きが物語を揺さぶり、息を呑んで見守る視聴者を揺さぶります。嵐が去り、最後の場面では穏やかな朝が訪れます。太陽の光を見つめる彼の表情はとても安らかです。伸び放題の髪と髭の中に埋もれた顔には、鬼の形相も血の涙もなく、安らかな寝顔だけが浮かんでいました。

* inthecube: 井浦 新 – 井浦新の日曜美術館

2015.04.20
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by mura-bito | 2015-04-20 22:38 | Visualart | Comments(0)
Steve Aoki – Darker Than Blood [feat. LINKIN PARK]


Steve Aoki – Darker Than Blood [feat. LINKIN PARK]

LINKIN PARKをフィーチャーしたSteve Aokiの新曲「Darker Than Blood」が公開されています。音のシャワーが噴き出す中、Chester Benningtonの歌声が響きます。歌声が退くと、シンセサイザーの音が前に飛び出します。Mike ShinodaはChesterの裏でコーラスを重ねます。

以前、両者がコラボレートした「A LIGHT THAT NEVER COMES」* は、DUBSTEPの要素を含む重厚なサウンドで構成されていました。強い磁力を放ち、聴き手を吸い寄せる。今回の「Darker Than Blood」は、重いというより、駆け抜けるHOUSEでしょうか。爽やかな風というよりは、強めの潮風のような、吹き付ける向かい風。作り手と聴き手のせめぎ合いから生まれる、奇妙な、ヘビーな高揚感。

終盤になると、Mikeの声が前に出てきます。エレクトロに合わせて、淡々と言葉を連ねます。そこにシンセサイザーが吐き出すフレーズが重なると、音の層は厚みを増します。そしてChesterの美声が舞うように加わり、層は多彩になります。sing-alongできるフレーズはシンセサイザーが担当し、二人の声はサウンドを構築する重要なパーツと化します。この構成はEDMならでは、と言えるでしょう。

* inthecube: LINKIN PARK x Steve Aoki – A LIGHT THAT NEVER COMES (Music Video)

2015.04.19
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by mura-bito | 2015-04-19 22:11 | Music | Comments(0)
植田正治・金子隆一 – 植田正治 私の写真作法
植田正治 私の写真作法

植田正治 私の写真作法

植田正治・金子隆一


2013年12月、Eテレの「日曜美術館」では、植田正治という写真家が特集されました。彼のモノクロ写真は無駄な要素を排してミニマルになりつつ、徹底的に演出され、作為的なものが堂々と埋め込まれています。写実的に見えて、作り込まれた世界を感じさせる演出的作品です。代表的なシリーズ「砂丘モード」は、白い砂の上で人間の姿が黒く浮かび上がり、絵筆で描いた世界のように見えます。司会の井浦新さんも鳥取砂丘に赴き、「砂丘モード」の一枚を再現しました。『井浦新の日曜美術館』* では、そのことも書かれています。

放送をきっかけにして、「生誕100年!植田正治のつくりかた」展を観るため、東京駅の東京ステーションギャラリーに足を運びました。本展では彼の作品が数多く飾られ、そのモノクロームの表現にくぎ付けになったものです。中でも、子供が狐の面をかぶり、ひょいと飛び跳ねた瞬間をとらえた「小狐登場」という作品に引きつけられました。小狐の背後に広がるのは怪しげな暗雲。それでいながら小狐の様子はコミカルで、おどろおどろしいというよりは、間違って飛び出したかのようです。誰かを脅かそうとして待ち伏せていたら、物音か何かに驚いて思わず飛び上がったのかもしれません。

展覧会では『植田正治 私の写真作法』という本を買い求めました。植田正治が雑誌に寄稿していたエッセイを、金子隆一という写真史家が編集してまとめた本です。写真やカメラに対する植田正治の思い、考えを知ることができます。彼の為人をすべて知ることはできないかもしれませんが、それこそ写真を撮るように、彼の一部を切り取り、その世界を深く知ることができるでしょう。

ファインダーを覗いて被写体と向き合う行為について、彼は以下のように書きました。

「裸眼レンズから目をはずすまでは、私だけの世界で、話ができるなんて、写真する幸せみたいなものがファインダーの中に棲みこんでいるということを、いまさらのように実感として感じるようになりました」

彼の作品は芸術性も大衆性も備えていますが、カメラを構えてファインダーを覗くときは、ごく個人的な幸せに満ちているのですね。ファインダーの中にある「写真する幸せ」は、すべての写真愛好家に共通するものなのかもしれません。そう思うのは、僕も一眼レフカメラを使い始めたからなのでしょう。一眼レフカメラを構えると、コンパクトデジカメでは得られない昂りが湧き上がる。ファインダーを覗くと、世界はぎゅっと絞られ、被写体との対話が始まるのです。

* inthecube: 井浦 新 – 井浦新の日曜美術館

2015.04.17
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by mura-bito | 2015-04-17 21:52 | Visualart | Comments(0)
Paramore – Brick By Boring Brick -Live at Red Rocks-


Paramore – Brick By Boring Brick -Live at Red Rocks-

「Brick By Boring Brick」のライブ音源が、アルバム『Paramore』のデラックス版に収録されています。この曲は三枚目のアルバム『Brand New Eyes』* に収録されました。情感豊かに鳴るギターが特徴的、そして魅力的な曲です。ロック・スタイルに満ちた音の上で流れるメロディは、とても美しい。

ライブではTaylorのギターやJeremyのベースがうねり、ロックの気持ちよさを存分に体感できます。ボーカルのHayleyは、♪Ba da ba ba da ba ba ha♪というsing-alongできるフレーズで観客を煽ります。僕はライブ・ストリーミングやYouTubeで視聴するだけで、実際にライブでParamoreを観たことはありませんが、楽しくて満足できることは確信しています。この曲は本当にライブで聴いてみたい。

ロックらしく骨太で密度が大きいバンド・サウンドの中にも、涼しげな風が吹き抜けるように、鉄琴(あるいはヴィブラフォン)の可憐な音が入ります。Hayleyのボーカルも雰囲気を変え、語りかけるような、内省的なような、凪の状態になります。そして勢いは再び増して、曲はエンディングまで突っ走ります。最後は観客を巻き込んだフレーズの合唱で加速して、一気に駆け上ります。

* inthecube: Paramore - Brand New Eyes

2015.04.16
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by mura-bito | 2015-04-16 20:40 | Music | Comments(0)
井浦 新 – 井浦新の日曜美術館
井浦新の日曜美術館

井浦新の日曜美術館

井浦 新


2013年4月から、井浦新さんはEテレの「日曜美術館」の司会を務めています。それまでの司会者とは異なり、美術館で収録している場面をよく目にします。もちろんスタジオで座って話す方が多いのですが、作品に顔を近づけて見入っている印象が強い。司会を始める前の2012年には「日曜美術館」の特別版に出演して、佐賀県に住む葉山有樹という陶芸家を訪ねていました。そのときに映し出された、作品を鑑賞している表情は、司会を担当するようになって二年が経った今でも変わりませんね。

2014年の夏に、井浦さんは『井浦新の日曜美術館』を著しました。司会として番組に携わった軌跡をまとめた著作です。2013年に放送された回から十数本を取り上げ、番組に出演する中で感じたこと、それぞれの内容を振り返って改めて思うことを綴ります。作品のひとつひとつと丁寧に、そして作家のひとりひとりと真摯に向き合っていることが窺い知れます。

僕は写真家の植田正治を特集した回が印象に強く残っていますが、本作でも触れています。この回では、井浦さんが鳥取砂丘を訪れ、植田正治のシリーズ「砂丘モード」のひとつを再現する様子が流れました。写真の中の彼は、タキシードでびしっと決めていながら、顔にはコミカルな面をかぶっている。頭上にはシルクハットがぽつんと浮かんでいます。オリジナルと同じ格好、同じポーズ、そして同じ演出で撮影された一枚です。シャッターが切られた後、面を取った彼の目に飛び込んできたのは、釣竿から垂れた糸とその先につながっているシルクハット。宙に浮いたシルクハットは、上から吊るされていたのです。トリックを知って笑みを浮かべる井浦さんの姿をカメラはとらえました。意外と単純な仕掛けだったことに驚きを隠せず、その気持ちを本作に記しています。

「日曜美術館」の司会者は、美術愛好家のひとりとして、自分の言葉で作品の魅力を表現したり、自らの思いを説明したりします。井浦さんは時間を費やして言葉を選び、少しずつ積み上げます。美術の評論家や研究家の流暢な解説も歯切れがよくていいのですが、井浦さんのような語り口も魅力があります。作品から受け取ったエネルギーが大きいほど、感じたものを言葉にして表出することは、効率的にはできません。絞り出すように言葉を継ぐ姿に、作品に魅せられた人間のリアリティ、鑑賞者としての誠実さを見出だします。

2015.04.15
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by mura-bito | 2015-04-15 21:45 | Visualart | Comments(0)
Paramore – Escape Route


Paramore – Escape Route

Paramoreの「Escape Route」という曲は、オリジナル・アルバム『Paramore』* のデラックス版にボーナス・トラックとして収録されています。デラックス版では、他の未発表音源、デモ音源、ライブ・テイクを聴くことができます。なお、オリジナル盤の曲やデラックス版のボーナス・トラックはYouTubeで公開されています。

『Paramore』は2013年にリリースされました。ソング・ライティングの中心だったメンバーが抜け、バンドが三人になってから初めて制作したアルバムです。それまでに発表した三枚のアルバムとは雰囲気が異なります。ストレートを多用していた投手が、変化球を主体にして攻める感じでしょうか。その変化をすべての古参のファンが受け入れたかどうかは分かりませんが、新たなファンを呼び込んだことは確かでしょうね。アルバムの収録曲を中心に組まれたコンサート・ツアーは、北米が多いものの南米やヨーロッパも回り、各地で盛り上がりを見せています。そしてHayleyの髪の色は変わり続ける。

「Escape Route」では、Hayleyの歌がポップなメロディに乗って、テンポよく流れます。軽やかにステップを踏むダンサーのようですね。アレンジや歌詞の乗せ方には、バンドが三人になる前のスタイルを感じます。『Paramore』には、ポップさはありつつも、さらりと呑み込むには引っかかりがある曲が多く収録されています。この曲がアルバムのアウト・テイクになったのは、過去のイメージから離れるためかもしれません。

* inthecube: Paramore - Paramore

2015.04.14
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by mura-bito | 2015-04-14 18:34 | Music | Comments(0)
SPRING2015 PART3
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SPRING2015 PART1
SPRING2015 PART2

2015.04.12
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by mura-bito | 2015-04-12 18:24 | Photograph | Comments(0)

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