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[PART2] TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30
2014-12-9&10 at Tokyo International Forum Hall A


Seven Days War | QUIT30: Birth | Wild Heaven | Time To Count Down
QUIT30: The Beginning Of The End | QUIT30: Mist | Alive
君がいてよかった~月はピアノに誘われて/Looking At You~Session~君がいてよかった
Always be there | Still Love Her | QUIT30: Glow | I am | Get Wild
QUIT30: Loop Of The Life | QUIT30: Entrance Of The Earth | The Point Of Lovers' Night
Self Control | LOUD | QUIT30: The Beginning Of The End II | QUIT30: The Beginning Of The End III

[PART1] TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30

ステージでは組曲の続きが披露されます。曲は「Glow」。組曲を軸にして、演奏だけでなく、いくつかのパフォーマンスをはさみながらライブは進みます。

鋭角的なエレクトロニック・サウンドが会場をじわじわと覆い、呑み込みます。光が明滅します。密度の大きいキックがスピーカーを揺らし、EDMフェスのように響きます。スネアの音とともに「I am」が始まります。この曲はライブの度に音が進化していきます。あまりEDMという文脈では語られませんが、ボーカルが入るまではEDMと言ってもいいと思います。エレクトロニック・サウンドの乱舞。

小室さんにライトが集まります。ハードディスクから音を流し、ソフト・シンセの音を重ね、外し、また重ねる。用意していた音を、そのときの直感に従って呼び出し、重ねていきます。ソフト・シンセを導入してからはストックする音が増え、どのようなサウンドを構築するか、予測できません。音はカラフルに重なり、厚みを増していく。新たなフレーズが飛び出し、前回のツアーで使ったフレーズと混ざり合うと、アグレッシブな音となってステージを飛び出します。Ultra Music FestivalなどのEDMフェスやDJのライブの盛り上がりに匹敵する興奮が生まれます。そしてお馴染みのフレーズが響き、「Get Wild」が始まります。

「Get Wild」では、アウトロがイントロよりも激しくなります。小室さんのリミッターが外れのか、どんどん音が流れ出し、強烈になっていく。この曲はTM NETWORKの曲の中で最も有名ですし、テレビ番組で使われる場合はイントロやサビが流れます。けれども、この曲の進化はアウトロに色濃く見られるのです。原曲の雰囲気を微かに残しながらも、完全にEDMになっている。イントロで盛り上がり、歌で盛り上がり、そしてアウトロで興奮は頂点に達します。EDMスタイルにアレンジされたのは2013年からですが、ライブの度に激しくなっているのが分かります。ライブ・ツアーの最初と最後でも異なっています。この曲こそTM NETWORKの進化を体現する、と僕が常に言う理由がここにあります。

物語は後半に入り、終盤に向けて加速していきます。組曲から披露されるのは「Loop Of The Life」、そして「Entrance Of The Earth」。ハウス系エレクトロの音を響かせます。

青や紫の光がステージを染めます。シンセサイザーとギターが絡み合い、光と混ざり合います。曲は「The Point Of Lovers' Night」です。アルバム『RHYTHM RED』の最後に収録され、TM NETWORKがロック・スタイルに移行することを示してみせた曲です。ウツのボーカリストとしての色気が滲み出ます。アレンジの変化に合わせて明滅するライティングも気持ちを盛り上げてくれます。

四つ打ちのリズムが走り始めます。リプロダクション・アルバム『DRESS2』に収録されている、2014年版の「Self Control」です。そして、『DRESS2』と同時にリリースされたシングル曲「LOUD」が披露されます。2014年の活動の幕を開けた曲ですが、さわやかさを感じさせつつも、包み込むような壮大さを兼ね備えます。新曲であってもまるで何年も前からライブで聴いているかのようなフィット感がありますね。歌って、踊って、心の底から楽しめる。



QUIT30 Trailer PART2

物語は終盤を迎えます。車のシートに腰を下ろす女性は、三人の潜伏者について言葉を連ねます。「あなたたちはすでにわかっていると思うけれど…」と含みを持たせて、TM NETWORKの未来を暗示する言葉を残します。

組曲「QUIT30」も最終段階に入ります。ボーカルの入る「The Beginning Of The End II」が終わると、バンナさんとRuyが中心になって「The Beginning Of The End III」を演奏します。TM NETWORKの三人は、三枚のパネルの向こう側に消えます。パネルには三人の姿が映し出されます。ギター・ケースを肩にかけて歩き去るウツ。車を停めてノートPCに表示されたメッセージを見る木根さん。アジアのある国の都市の一角を歩いていく小室さん。音が吸い込まれるように、消え去ります。

ツアーは東京国際フォーラムでの公演が千秋楽となる予定でしたが、追加公演が決まりました。年が明けるとツアーが再開され、福島県での公演がホール・ツアーの最後を飾ります。『CAROLの意味』を読んでいると、ツアーが横須賀から始まったこと、福島県でライブを行なうことの意味が見えてきます。小室さんは明確に語ることはありません。明示されたいくつかのピースを合わせ、ときに自らピースを想像してはめこんでいく。福島県で行なうライブはただのホール・ツアー最終日ではないのかもしれない。そして、一ヶ月後に開催するアリーナ規模のライブでは、ツアーを通して描き、積み重ねた物語の仕上げにかかるのかもしれません。

2012年から綴り始めた物語は過去と未来を巻き込み、当時は想像もしていなかったところに着地する気がします。描く本人にも想像していなかったもの。三人の潜伏者は宇宙と地球を行き来します。イデオロギーを示すわけではない。調査して報告する。その報告書を通して地球のことを知る。誰が知るのでしょうか。報告書を受け取り、内容にアクセスしているのは、一体誰なのか。何なのか。目の前で動く三枚のパネルは、以前のライブにも登場したモノリスなのでしょうか。モノリスを見ている潜伏者たち、それを見ている僕ら。

スクリーンにはライブに関わった人々の名前が映し出されます。映画のエンドロールのように、次から次へと名前が現われ、消えていく。エンドロールを眺めていると、多くの人間が関わり、ライブを作り上げていることを実感します。会場には「Alive」のリミックスが流れています。これだけ大きな会場のスピーカーでTM NETWORKの音を聴く機会もそう多くはないため、じっくりと堪能してきました。

2014.12.28

※セット・リストを修正して、一部を書き直しました。

2015.01.15
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by mura-bito | 2014-12-28 14:37 | Music | Comments(0)
[PART1] TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30
2014-12-9&10 at Tokyo International Forum Hall A


Seven Days War | QUIT30: Birth | Wild Heaven | Time To Count Down
QUIT30: The Beginning Of The End | QUIT30: Mist | Alive
君がいてよかった~月はピアノに誘われて/Looking At You~Session~君がいてよかった
Always be there | Still Love Her | QUIT30: Glow | I am | Get Wild
QUIT30: Loop Of The Life | QUIT30: Entrance Of The Earth | The Point Of Lovers' Night
Self Control | LOUD | QUIT30: The Beginning Of The End II | QUIT30: The Beginning Of The End III

2014年の音でリプロダクトされた「Seven Days War」が流れ、ステージの奥に設置された大きなスクリーンには穏やかに佇む景色が映し出されます。太いソフト・シンセの音が響き渡り、僕らは音の世界に入り込み、物語はゆるやかに始まります。ひとりの女性が現われ、自らがストーリーテラーであることを告げます。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」の幕が上がります。

2014年春のライブ・ツアー「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」が終わり、五ヶ月という短いインターバルで新たなライブ・ツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」が始まりました。このツアーの開始と同時にアルバム『QUIT30』がリリースされ、ツアーの途中で『CAROLの意味』が出版されました。『CAROLの意味』は小室さんが書いた小説ですが、ふたつのツアーと新作『QUIT30』とともに、物語を構成する要素として機能します。

組曲「QUIT30」のイントロダクションである「Birth」が始まります。小室さんはシンセサイザーの音を幾重にも被せます。ウツはひとつひとつの言葉を丁寧に旋律に載せます。木根さんのコーラスがウツの声と交互に響きます。舞台裏ではバンナさんがギターを弾き、Ruyがドラムを叩きます。バンドが生み出す「うねり」からは、ダンス・ミュージックともポップスとも異なるダイナミズムを感じます。音が放つエネルギーを、観客は全身で受け止める。

リズムは四つ打ちに変わり、速度を上げていきます。三十年間の活動を通してTM NETWORKが追究してきたテーマはダンス・ミュージック。ユーロビート、ハウス、テクノ、トランスなどのサブ・カテゴリーを取り込んできましたが、その現在形がEDMです。1991年にシングルとしてリリースされた「Wild Heaven」はロックにハウス系の音を組み込んでおり、1993年のリミックスではヨーロッパの色が強く出たテクノ・サウンドに変貌していました。2014年の音は強烈なリズムを土台にしてソフト・シンセの音で固めたROCK AND EDM。懐かしさよりも分厚い音の乱舞に心躍ります。その勢いを受けて、「Time To Count Down」が会場をヒートアップさせます。TM NETWORKからTMNと改称した1990年、ハード・ロックを標榜したアルバム『RHYTHM RED』をリリースしました。その一曲目に収録されていたのがこの曲ですね。2004年にはトランスに衣替えしましたが、それから10年後、EDMスタイルで駆け抜けます。

ステージは物語を呼び戻します。組曲から「The Beginning Of The End」、続いて「Mist」が披露されます。「The Beginning Of The End」でギターとシンセサイザーが奏でるフレーズは、儀式のように繰り返されます。本当に何かを祈るのではなく、シアトリカルなものですが、別の次元に向けて捧げる音と言ってもいいでしょう。1970年代の音楽、例えばLed ZeppelinやYesを感じます。



QUIT30 Trailer PART1

スクリーンに夜のハイウェイが映し出され、一方で三つの白い三角形が回転しながら動きまわります。スクリーンの前には、三枚のパネルが吊るされ、近づいたり離れたりします。このパネルにも映像が流れます。曲はアルバム『QUIT30』の一曲目に収録されている「Alive」です。口ずさみやすいメロディ、イメージを刺激する歌詞が魅力的ですね。1980年代のTM NETWORKらしさを漂わせつつ、2014年の音を貫きます。ライブでは音に厚みが生まれ、ソフト・シンセの音が咆哮するアウトロが特にいい。

続いて「君がいてよかった」が披露されます。2012年のシングル「I am」に収録されています。曲は途中で途切れ、アコースティック・ギターを抱えた木根さんがひとり、ステージの最前面に腰を下ろします。スポットライトの中、木根さんはギターをかき鳴らすと、おもむろに歌い出す。初日は「月はピアノに誘われて」を歌います。1991年のアルバム『EXPO』のテーマとも言える曲であり、静謐なラブソングです。二日目には「Looking At You」が披露されました。こちらは『RHYTHM RED』で聴くことができます。いずれも木根さんがリードボーカルをとった曲です。

弾き語りを終えると、木根さんはエレクトリック・ギターに持ち替え、歪んだ音を鳴らします。ショルダーキーボードを下げた小室さんがステージに戻ってくると、木根さんのギターに呼応して、鍵盤を弾いてギター音を出します。二人はハード・ロックのライブさながらに、音の応酬を見せます。ひとしきりパフォーマンスを披露すると、ウツが登場し、「君がいてよかった」を再び演奏します。

感謝の気持ちを綴るような歌詞が印象に残る「Always be there」。2011年に国際連合のプロジェクト「Friend's Whistle」のために書いた曲です。ウツのボーカルで録音したものがアルバム『QUIT30』に収録されています。アルバムを聴いたときは書き下ろしの新曲だと捉えており、感謝の気持ちを綴る手紙のような歌詞だと思いました。曲の成立過程、そして前述の『CAROLの意味』をふまえると、聴き方が変わり、視点が変わります。個人と個人の間で交差する気持ちをいくつも包む、大きなスケールで語る言葉として捉えることもできる。思い浮かべるものによって、目の前の言葉は印象を変え、姿を変えます。

優しい雰囲気を引き継ぎ、「Still Love Her」の心地よいメロディがいくつもの笑顔を生みます。ロンドンで目にした風景を歌詞に刻み込んだ曲であり、1988年のアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』の最後を飾っています。アニメ「シティハンター」のエンディング曲として記憶に残っている人も多いかと思います。この曲の見せ場は間奏で吹く木根さんのハーモニカです。ウツが木根さんの近くに歩み寄ると、小室さんもショルダーキーボードを下げて近寄ります。三人が集まる姿に胸が熱くなります。小さな三角形が見える。

[PART2] TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30

2014.12.27
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by mura-bito | 2014-12-27 21:55 | Music | Comments(0)
小林ユミヲ – にがくてあまい
にがくてあまい

にがくてあまい 9

小林ユミヲ


このところ、小林ユミヲの『にがくてあまい』という漫画をよく読んでいます。各回のタイトルには料理名が使われており、ポイントは野菜を使った料理だということです。ストーリーも野菜をモチーフにしています。食材や料理法が、象徴的な小道具として登場人物の気持ちを表現することもあれば、あくまでも助演として人々をそっと見守る存在にもなる。ラブコメと言えばラブコメなのですが、本人が言う「ハートフル&インチキラブコメ」という表現が合う物語ですね。ゆるやかに交わる人々の暮らし、生き様が描かれています。

現在は、マッグガーデン・コミックオンラインで第60話「れんこんと干し椎茸の塩きんぴら」が公開されています。ひとつひとつの表情に訴えてくるものがありますね。シリアスな顔、コミカルな顔、考え込む顔、照れ隠しの顔、高い空を見上げる顔。自分の思いに向き合う顔、気遣いに感謝する顔、遠い未来に思いを託す顔、優しくたしなめ、受け入れる顔。ふたりの主人公をはじめとした登場人物の思いが滲み出て、混ざり合い、分かれ、再び重なります。最終ページに描かれたマキの表情がとても好きですね。

http://comic.mag-garden.co.jp/eden/58.html

物語はいくつかの軸を持って進んできました。主人公たちの関係性に加え、それぞれの家族との交流が立体的な関係を生みます。それぞれの過去への固執、変化、そして未来。ふたりを取り巻く人々の人生も丁寧に描かれ、世界は閉ざされることなく、むしろ広がり、新たな姿を見せてくれます。みんなはこの世界に存在していて、今もあの長屋で生活している気がします。「リアル」という表現は的を得ていません。北千住あたりの路地に入り込み、そこを抜けると目の前に広がっているかもしれない。つながっていないけれど、何かの拍子につながるかもしれない世界。

物語に感化されたのか、それとも自然と湧き上がってきたのか。野菜を食べるとき、ほんの少し、野菜のことを考えるようになりました。「野菜を食べている」という実感があるのです。言葉を知るとその言葉を耳にする機会が増えるように、アンテナの感度が上がりました。考える機会が増え、触れる機会が増える。それはすなわち楽しみが増えることを意味します。とは言え、苦さを甘さに変えるには、まだまだ未熟ですが、それもまた生きる楽しみのひとつですね。熟成は少しずつ進む。

2014.12.13
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by mura-bito | 2014-12-13 22:23 | Visualart | Comments(0)
西尾維新対談集 本題

西尾維新対談集 本題

西尾維新(著)・木村俊介(構成)


きっかけはTwitterのタイムラインに流れてきた、いくつかの言葉。おもしろいに違いない、という直感が閃きます。tweetを読んだのは昼ですが、夜には本屋で手に取り、購入していました。帰りの電車の中でページを繰る。本の題名は『西尾維新対談集 本題』。西尾維新が小林賢太郎、荒川弘、羽海野チカ、辻村深月、堀江敏幸と言葉を交わした、その記録です。コント、漫画、小説。誰も見たことのない物語を生み出し、世に示す活動を行なっている人々。西尾維新は物語を創造する人として、それぞれの世界を創造する人々と向き合い、その言葉を聴き、語ります。

僕は西尾維新の小説を読んだことはないし、どのような人物かはまったく知らなかった。本書に書かれたプロフィールを読んで初めて同世代だと知ったくらいですから。それでもその名前は知っていました。いつだったか、深夜のテレビで流れていた『化物語』のアニメーションを偶然目にして、「これはいったい何なのだろう?」と思った記憶があります。コンテンポラリー・アートのようだが、そのようなものを地上波で放送するのだろうか。iPhoneを初めて触ったときに匹敵する違和感と驚き。それが西尾維新という人の世界を垣間見たときの印象です。

対談は互いの作品を認め合いながら進み、創作への思いを交換します。相手がグローブを構えたところにボールを投げるようなキャッチボール。話を引き出すのではなく、流れのままに生まれる話をつないでいく。話す内容はあるていど決めていたとは思いますが、こうして活字になったものを読む限り、何が生まれるか分からないまま、その分からないことを楽しんでいる節が見受けられる。純然たるビジネス・パーソンのインタビューや対談とは異なる空気が伝わってきます。

本書の構成を担当したのは木村俊介さんです。対談にも立ち会い、目の前で交わされた幾多の言葉を活字にまとめ上げました。彼の職業はインタビュアーであり、相手の話を引き出すプロフェッショナルです。僕は彼の著作のうち、幾人かの書店員へのインタビューをまとめた『善き書店員』という本を読んだことがあります。インディペンデントな書店の経営者や大型書店で働く人々が吐露するさまざまな思いに触れることができます。

木村さんは「おわりに」と題した章で、どのような考えを持って対談をまとめたかということを綴ります。かつてインタビューした記憶をたどり、西尾維新の佇まい、彼と編集者の関係性から生まれる創作への姿勢を見て取ります。その姿勢が反映された構成を心がけた、と語ります。それは読者には見えないものかもしれません。読者には見えないものを拾い上げ、はっきりとは読者に見えないものの目を凝らせば見えてくる形で伝える。見えるものと見えないものの間に存在するもの。飛び交う言葉、その言葉を発した人間の熱を感じた後に、ふっとその跡を見ると、そこに編集者の影を見る。不思議な感触を残す本です。

2014.12.08
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by mura-bito | 2014-12-08 22:13 | Book | Comments(0)
QUIT30 suite: Glow/Loop Of The Life/Entrance Of The Earth/The Beginning Of The End II/III
QUIT30

QUIT30

TM NETWORK


ぼんやりと光る何か。「Glow」というタイトルは、遠くに見える小さな光を表わすのでしょうか。組曲「QUIT30」の後半が始まります。歌詞に登場するのは海を渡る船乗り。海は陸で生きる人たちをつなぐネットワークでもあります。陸に沿って遠くの地域に人や物を運び、やがて遠くの大陸を目指して海を渡り、人々が交わり、世界が広がり、つながります。船乗りたちは海の上で、はるか遠くの陸に残してきた家族を思います。

◇◇◇

彼女は地球を守る、と歌う「Loop Of The Life」。最初にこの曲を聴いたとき、キャロルの姿を思い浮かべました。地球に送り込まれた生命体、それはイギリスで生を受け、キャロルという名前を与えられる。「CAROL」という物語とは別の、あるいはパラレル・ワールドのように、もうひとつの物語が存在したのかもしれません。異世界に行くキャロル、地球で潜伏者として生きるキャロル。両者の物語は交わるのか、平行するのか。地球を守る、それは『アルマゲドン』のような劇的なものではなく、人々が気づかないところで何かと戦うことを意味しているのでしょうか。あるいは、異世界で音を盗む魔物を倒したキャロルのことを指しているのか。物語は錯綜して、イメージも錯綜します。

◇◇◇

「Loop Of The Life」の音を絡め取りながら「Entrance Of The Earth」というハウス系のインストゥルメンタルが流れます。地球への入口。宇宙船が大気圏を通過し、地球に到達する場面を思い描きます。2012年の「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」からTM NETWORKが展開している物語では、「地球に潜伏する生命体」という存在が鍵になっています。幾多の潜伏者が地球のさまざまな時代や場所に存在して、文明の進歩に寄与した。天才と呼ばれた人物は潜伏者であり、人類の発展に影響を与えてきた、と。そうした場面が「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」で示唆されました。地球への入口。今もなお潜伏者は存在して、さらに新たな潜伏者が生を受けて育っているのかもしれません。「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」では、生命体を生成する過程を描き、地球に向けて送り出しました。地球への入口。ダブステップの破片のような音が混ざります。紙に滲む水彩絵の具のように、目の前に音が広がります。

◇◇◇

ループするエレクトロニック・サウンドから一転して、スネアの音が新たな曲の始まりを告げます。厚みのあるベースが曲を包み、温かみを与えます。「The Beginning Of The End II」のイントロが響くと、それは豊かに実る大地を思わせます。重心があり、しっかりと両足で大地を踏みしめて立つ。身体の軸が定まり、多少のことでは揺らがない頑強さを感じさせる音です。音に乗せて三人の歌声が響きます。三人の声は線で結ばれます。声は重なると同時に、三角形を描くのです。

◇◇◇

「The Beginning Of The End II」の後を継ぎ、長大なインストゥルメンタルである「The Beginning Of The End III」が演奏されます。三部作を完結させ、同時に組曲「QUIT30」の幕を下ろす曲です。組曲を締めるのに相応しく、広がりがあり、壮大に響きます。女性の声で織り上げたコーラスが、終幕に向かう曲を盛り上げます。Mellotronの音に包まれた記憶が蘇ります。組曲「MAJOR TURN-ROUND」がライブで披露されたとき、曲の最後を飾ったのがMellotronという楽器です。内蔵されたテープには1960~70年代のコーラスやストリングスが吹き込まれており、鍵盤を押すとそれらの音が再生されます。長大な曲に幕を降ろす、ダイナミックな音が印象に残っています。組曲の終わりを目の前にして、さまざまな記憶が再生され、重なり、混ざります。

これまで奏でた音、綴った言葉を記憶から引き出して、再び鳴らし、紡ぎます。「QUIT30」が語り、示唆し、黙したものを思い浮かべてみましょう。それは言葉が語り、音が暗示し、空白に浮かび上がります。聴き手の数だけ解釈や思いはある。関わり方、アクセスの仕方によっても変わる。聴き手が能動的に関わることで補完され、変化して、新たな像を結ぶ。聴き手のアクションも曲を構成するピースです。本を読むように、絵を描くように音楽を聴く。目を凝らして見ることで浮かび上がるものが、ある。

音と言葉とイメージが交錯する先に、まだ見ぬ音楽の姿があるのかもしれません。作り手にも見えていなかった世界が広がっている。目に見える尺度では測れない価値がありますね。いくつもの山谷を持った長大な組曲には、のりしろが存在します。組曲の楽しみ方に似ているものとして、長編小説が挙げられます。長編小説にはさまざまな展開があり、数日に分けて読んだとしても、読者に集中力を求めます。物語が長くなると、短編小説よりもイメージを働かせる余地、のりしろが生まれます。時間をかけてコミットすることで、読者は物語の世界に入っていける。組曲を聴くとき、聴き手が自ら選択して関わり、自分なりにその音楽に含まれる要素をつなぐ。能動的な姿勢があればこそ聞こえる音があるし、心躍る体験ができる。その記憶が次の体験を求め、そして記憶は再生産されます。

◇◇◇

バンドの演奏とコーラスがフェイド・アウトしていきます。エンドロールの終わった映画に似て、曲がゆっくりと消えます。音は呑み込まれたのか、どこかに仕舞い込まれたのか。そして、何かが素早く飛び去ったような音が短く鳴り、さまざまなイメージと記憶を呼び起こした組曲「QUIT30」が終わります。からっぽの空白が残され、不思議な静寂が漂います。


2014.12.07
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by mura-bito | 2014-12-07 13:26 | Music | Comments(0)
AVICII – The Nights (Lyric Video)


AVICII – The Nights (Lyric Video)

"Day turns night" とは、AVICIIのツイート。「The Days」に続き、「The Nights」という新曲が僕らのもとに届きました!アコースティック・ギターとキックとシンセサイザーの音が入り乱れる。音の乱舞ですね。コーラスの重なりやアコースティック・ギターやスネアの音に、祝祭を思わせる響きを感じます。音楽フェスのような祭りではなくて、豊穣を祝う土着の祭りのイメージですね。「The Nights」に限らず、AVICIIの曲は祝祭的かもしれません。2013年以降の「Wake Me Up」や「Hey Brother」にも祝祭的な雰囲気があります。

「The Nights」のキックはEDMなのですが、パーカッシブなスネアがエレクトロとは違う感じで身体を揺らします。シンセサイザーのソロ・プレイがAVICIIらしく聴き手を煽る煽る。アウトロでは、伸びやかに鳴るシンセサイザーの音が気持ちよさに拍車をかけます。音が心と身体を包み、その手触りがとても心地良い。スプレー、ライト、タイポグラフィーが織り成す芸術的なリリック・ビデオとともに、音の乱舞を楽しみましょう。

2014.12.04
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by mura-bito | 2014-12-04 21:54 | Music | Comments(0)
QUIT30 suite: Birth/The Beginning Of The End/Mist
QUIT30

QUIT30

TM NETWORK


TM NETWORKのアルバム『QUIT30』の表題曲はおよそ20分に渡る組曲です。「QUIT30」は8つのセクションから構成され、各セクションは独立した曲として収録されています。前半は3つ、後半は5つのセクションから成ります。

組曲「QUIT30」には「The Beginning Of The End」と題した曲が含まれており、三部作になっています。第一部は組曲の前半に配置され、第二部と第三部は並んで組曲の最後を飾ります。素直に受け取れば、三部作であること、トラック・タイムの長さからして、この曲が組曲の軸になっていると考えられます。「The Beginning Of The End」という曲名は2014年春のライブ・ツアーのタイトルと同じです。その事実は何かしらの関連を示唆しているのでしょうか。曲名、歌詞、サウンドの裏に張り巡らされたミッシング・リンクを探ります。アルバムだけでは見えてこないつながりが、10月から行なわれているライブ・ツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」に隠れているのかもしれません。さて、アルバムに詰め込まれた情報で、どこまでイメージは広がるのでしょうか。

◇◇◇

組曲は「Birth」という曲から始まります。ビッグ・バンによって宇宙が生まれる瞬間を自分なりにイメージしてみます。静かな雰囲気で音が生まれ、広がり、メロディを形づくっていきます。ソフト・シンセを含むシンセサイザーの音に、三人のミュージシャンがそれぞれの音を重ねます。マーティ・フリードマン、美久月千晴、村石雅行。マーティは曲によってエレクトリック・ギターとアコースティック・ギターを弾き分けます。

「QUIT30」では、ネットワークの功罪、すなわちネットワークが人間に貢献すること、人間を縛ることを歌います。人と人のつながりであれ、ソーシャル・メディアのようなインターネットによるつながりであれ、その形は一定ではなく、表の姿、裏の姿がある。光と影という関係でもあります。ソーシャル・メディアの興亡を思い浮かべます。最初に世界を席巻したのはMySpaceでしたね。日本ではmixiでしょうか。その後、TwitterやYouTubeが勢力を拡大し、それを呑み込むようにFacebookが世界を支配しました。やがて、限定されたサークルでメッセージを交わすLINEが、閉じたネットワークを無数に生み出します。今、帝国と呼べるような版図を持つSNSはあるのでしょうか。未来を予測するには、あまりにも状況は複雑であり、多彩であり、ひとつの尺度で測ることはできない。

ソーシャル・メディアで情報が交差するほどにリアルな人間関係がクローズ・アップされ、時に両者は対立する存在として扱われます。電子書籍と紙の本がそうだし、アマゾン・ドット・コムと実店舗を構える書店がそうです。ネットは冷たい、リアルは温かい。そんな二元論が幅をきかせることもあります。けれども、ソーシャルとリアルは合わせ鏡のように並び立っています。鏡は互いに映せない姿を映し出しますが、映している対象は同じですよね。ソーシャルであれリアルであれ、ネットワークの中にいる自分の姿が映っているわけで、片方が善で片方が悪ということではありません。両方とも肯定すべきもの。いくつもの、いろいろなネットワークの中でいろいろな姿を見せればいい。人間は多面体ですよね。

◇◇◇

「The Beginning Of The End」では、TM NETWORKとしては珍しいアプローチが見られます。ギターとシンセサイザーで奏でるフレーズはバグパイプのような雰囲気を醸します。滑らかに流れるフレーズは螺旋を描き、聴く人を別の場所に導きます。バグパイプといえばアイルランドやスコットランドでしょうか。この曲の構成に、もはや歌モノのセオリーはどこにもありません。ループするフレーズは少しずつ姿を変えて、淀みなく流れ、祝祭のような雰囲気を帯びます。空に向かって音を捧げる。土地が変わり、言葉が変わる。地球を巡り、人と人をつなぐネットワークを体現する音。ぐるぐる回る音は、地球のあちこちを巡る。

TM NETWORKは「QUIT30」のような長大な組曲を2000年にも制作しました。それは、インディー・レーベルからリリースしたアルバム『Major Turn-Round』の表題曲になりました。「MAJOR TURN-ROUND」は三部作になっており、それぞれFirst Impression、Second Impression、Third Impressionという名称がつけられています。アルバム・タイトルのロゴはYesの『Close To The Edge』、三部作のタイトルはEmerson, Lake & Palmerの『Brain Salad Surgery』の影響が見受けられます。アルバムのコンセプトはPink Floyd、音はGenesisからインスパイアされています。

2000年はインターネットが一般化しつつあった頃ですが、「MAJOR TURN-ROUND」を含むアルバムの曲のいくつかはネット配信されました。今でこそ一般的なダウンロードという行為も、当時は時間のかかる、非効率なものでした。「QUIT30」を制作した2014年、インターネットもダウンロードもそしてストリーミングも当たり前のものになっています。いくつものソーシャル・メディアが興り、人々がコミュニケーションをコンテンツとして消費します。「MAJOR TURN-ROUND」のテーマには、やはりネットワークが含まれていました。小室さんは「音楽配信が当たり前の時代が来る」と主張する人のひとりでしたし、それを実践してもいました。インターネットを介して音楽が行き来する。ネットワークの良いところがあり、そこにはリスクも潜む。それらを歌詞で、音で表現していました。おそろしいくらいに大きな存在となったネットワークを、もう一度音楽で表現したのが「QUIT30」なのだろう、と。

◇◇◇

組曲の前半は「Mist」という曲で終わります。「The Beginning Of The End」のループ・サウンドが生み出したうねりを、霧が呑み込みます。霧の中にいくつもの人間の顔が浮かび、消えます。形のないスクリーン。「Mist」の歌詞はアダムとイヴから始まり、人間の変遷を歌い、最後はすぐそばにいる恋人たちの姿を綴ります。世界も人間もループするのか、あるいはどこにも行かず、定点に留まっているのか。それが本質か。


2014.12.03
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by mura-bito | 2014-12-03 22:39 | Music | Comments(0)

fujiokashinya (mura-bito)
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