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QUIT30 HUGE DATA PART4
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


わずかな空白をスネアの音が打ち破り、スペーシーなギターのリフが飛び出します。光がステージを、観客席を照らします。そして始まる♪Yes I am Yes I am Yes I am a human♪のコーラス。それは♪No I can't No I can't I can't lose the moments♪と続き、会場を満たします。シンプルな言葉のリフレインが、聴く人それぞれの生き方に重なるように響きます。

TM NETWORKの新たな代表曲とも言うべき曲「I am」は、この三年間の活動の核となり、バトンのようにライブとライブをつないできた曲です。TM NETWORKストーリーに当てはめて聴き、自分の中にピースをはめ込むように聴く。地球を俯瞰した潜伏者の調査報告にも聞こえるし、一人ひとりが自分と向き合うツイートのような独白として捉えることもできます。マクロにミクロに、物語的に現実的に移ろう視点は、人間を立体的に描きます。

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この曲は、譜割が流れるように変わります。その流れを捕らえて水先案内人のように歌を乗せ、丁寧に言葉を配置するのがウツの役割です。音が詰まったり間隔が空いたりする中で、ウツの歌は言葉をコントロールします。小室さんが書く曲の中でも、「I am」は特にメロディと歌詞の関係が密になっています。メロディに合わせて歌詞を変えるのではなく、あるべき言葉を伝えるために音の間隔を自在に変化させる。

音符の数に対して言葉の数が多い箇所は、必然的にラップに近い歌い方になります。メロディを無視するラップとは異なる、メロディに乗せたラップですね。平らな石を水面に平行に投げると、石が水面をジャンプするように跳ねますが、そういったイメージです。その一方で、ポップスらしく言葉をメロディに固着して歌うところもあります。テクノやトランスのように速いテンポではないのに、体感速度が高いのは、譜割で緩急をつけているからです。何度聴いても飽きずに、むしろ新鮮に感じられるのは、この緩急が大きな要因だと言えます。

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小室さんは黒いショルダーキーボード、KORG社のRK-100Sを下げ、エレクトリック・ギター系の音を鳴らします。ギターよりも丸みを帯びており、ハードディスクからデータで鳴らしている音に馴染みます。「I am」の間奏では、この音でソロをとりました。オリジナルでのMike Smithのギター・ソロとはまた異なる雰囲気が生まれます。シンセサイザーならではの拡散していく音が屹立して響きます。その音の終わりと重なるようにコーラス・パートが飛び出します。

キーボードブースの外に立てられたマイクスタンドに前に立ち、小室さんはコーラスに参加します。木根さんもギターを弾きながら歌い、それぞれの声がウツのボーカルと重なります。三人の声が三つの点を結び、三角形を生み出します。三十年前と変わらない三角形でもあるし、この三年で強固になった三角形でもあります。♪Yes I am Yes I am Yes I am a human♪のリフレインは続きます。大きな三角形が観客を包み込みます。

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時計の針は音を立てて進みます。オレンジ色と黄色と赤の光が混ざり合って差し込み、別の角度からは青い光が束になってステージを照らし、夕焼けのように三人を照らします。シンセサイザーの音で紡ぐ柔らかいフレーズの中、強烈なスネアの音が大きく響き、曲をダイナミックな姿に仕上げます。アコースティック・ギターの音が柔らかく響き、歌が地球上で生きる人々の姿を描きます。ライブの終幕を「FOOL ON THE PLANET」が告げます。

「FOOL ON THE PLANET」が描くのは、夢を抱いて、周りから冷めた目で見られようとも、行くべき道を進んでいこうとする人間の姿です。それは、宇宙から地球にやってきた潜伏者が最初に見た人間なのか。調査報告書の冒頭では、夢を抱いて生きる人々について書かれているのかもしれません。地球の時間で三十年をかけて、潜伏者たちはさまざまな時代や場所を巡り、調査を続けました。そして、最後のページに記した内容も最初と同じだったのかもしれません。

時が巡っても、場所が変わっても、言葉が違っても、人々はそれぞれの形で、大小さまざまな夢を抱きます。夢を追い続けることを諦めたり、夢を見ることすらできなかったりする中で、それでも愚直に、ストレートに夢を追う人々を目の当たりにして、その姿を潜伏者たちは調査報告書の最後に記します。

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赤、青、紫。三年前、地球に降り立った三つの色が、光の中に消えていきます。2012年から始まった物語が幕を閉じます。シンセサイザーが「ELECTRIC PROPHET」のメロディを繰り返します。静謐に美しく響く音は、時として形を変え、新たな音を加えながら、やがて夜空に瞬く星空と一体化します。宇宙から届けられた音が宇宙へと帰っていきます。

これで物語のすべての章が綴られ、紙幅は尽きたのかと問われれば、否と答えます。そこにはまだいくばくかのスペースが残っており、三人の潜伏者には、もうひとつ重要な任務が残っています。わずかなインターバルを挟み、三年に渡るミッションにおけるタスク・リストの最後の項目を遂行すべく、三人は地球に降り立つこととなります。音が消えると同時に、ミッション完了までのカウントダウンが始まりました。


2015.10.04
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by mura-bito | 2015-10-04 07:36 | Music | Comments(0)
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