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QUIT30 HUGE DATA PART2
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


黒いジャケットを脱いだ木根さんは、青いシャツにアコースティック・ギターを下げ、ステージの真ん中に立ちます。ステージの後方でアコースティック・ギターを爪弾くバンナさんと、パーカッションを叩くRuyさんの音を従え、木根さんが「LOOKING AT YOU」を弾き語りで歌います。

「LOOKING AT YOU」は木根さんがTM NETWORKで初めてボーカルを担当した曲です。それまでバラード系の曲を書き、ステージでは演奏の他にパントマイムなどのパフォーマンスを担当していました。1990年にTM NETWORKがTMNにリニューアルすると、木根さんのバラードを書く役割はそのままに、ステージでの役割が変わります。リード・ボーカルをとったり、フォーク・ソングを歌ったりすることで、それまでの制約から解き放たれたかのように、ミュージシャンとして多彩な面を見せていきます。時にはベースを弾いたり、時にはアコースティック・ギターによるソロを披露したりしました。こうした木根さんの役割を拡張するきっかけとなったのが、1990年のオリジナル・アルバム『RHYTHM RED』に収録された「LOOKING AT YOU」です。

優しさが感じられる、木根さんらしいメロディが流れ出て、会場に満ちます。歌詞には弱い部分をさらけ出すような雰囲気もあり、木根さんのメロディと溶け合います。ソロではもっとタフな曲も書きますが、TM NETWORKでは一歩引いたポジションで、小室さんが書く曲とのバランスをとります。ふたりが書くメロディはTM NETWORKにおける両輪だと言っても過言ではありません。なお、デビューから三十年経ってリリースされたオリジナル・アルバム『QUIT30』でも、木根さんが書いた「STORY」というミディアム・テンポの曲を聴くことができます。

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木根さんの演奏が終わり、ウツと小室さんが再びステージに姿を見せます。続いて演奏されるのは「Always be there」です。小室さんが詞曲ともに書いたバラード曲であり、『QUIT30』に収録されています。「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」に続き、このライブでも披露されます。

地球に生きる人々を宇宙から俯瞰します。人々の生活、営みを客観的に見つめ、綴る歌詞は、まるで調査報告書です。潜伏者は地球に降り立ち、各地の人間と交わりながら、時にはすれ違いながら、体験したことをまとめ、地球の外に待つメインブレイン(司令部)に報告する。さまざまなシーンで体験した数々の出来事は、TM NETWORKが世に送り出した曲として残り、それらは同時に報告書でもあります。世に出なかった曲は、トップ・シークレットのような扱いの報告書なのかもしれません。

視点をミクロに絞れば大事な人に向けて送る言葉と捉えることができます。マクロに開けば、人間の業のようなものが目に入ってきます。1999年に発表した「10 YEARS AFTER」という曲で小室さんが綴った言葉に近いものがあります。地球を概観する視点と、地上でのささやかな心の触れ合いにフォーカスする視点が入れ替わる。ウツは「Always be there」を構成する言葉のひとつひとつを丁寧に歌い、積み上げていきます。

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三十年間で蓄積した報告書の存在を開示することで、TM NETWORKの任務も最終段階を迎えます。終幕のための物語が進行する間にも、潜伏者から送られる報告書は増え続け、一方で世界を記録したデータのサイズも大きくなり続けています。積み上がって人々を、地球を呑み込まんとしているデータの中で、TM NETWORKの調査報告書は羅針盤のような役割を果たします。それは人々の営みから得たシンプルな記憶であり、そこにこそ航路があることを示唆します。

鳴り響くシンセサイザーの音、ミラーボールに反射して会場を輝かせる光、すべての観客がシンガロングするコーラスのリフレイン。「WE LOVE THE EARTH」のメロディが、音が会場を駆け巡ります。光の奔流とともに多彩な音があふれ、観客の上に降り注ぎます。1991年に発表された、ハウス・ミュージックの要素を混ぜ込んだポップスです。踊るもよし、歌うもよし。

ダンス・ミュージックとして最適なテンポ、濃密なリズム。ベースとキックの音が絡み合い、とてもとても心地好い。クリアなピアノの音とテクニカルに歪んだエレクトリック・ギターの音がリズムに絡み、曲の密度を、解像度を高めています。縦に横に編まれた、隙間のない音のエリア。小室さんはソフト・シンセをマウスで操作して、さまざまな音を出します。ファースト・インプレッションの向こう側に意識を集中させると、多彩な音が有機的に組み合わさって構築された立体的なサウンドが見えてきます。丸い地球も地上まで降りてみれば山や森、湖や海という凸凹があるように、俯瞰から細部へのフォーカスにシフトしてみると、曲をもっと楽しむことができます。


2015.09.29
by mura-bito | 2015-09-29 22:03 | Music
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