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09. THE POINT OF LOVERS' NIGHT/SELF CONTROL/LOUD
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA

TM NETWORK


粘り気のあるキック、赤と青が絡みつくライティング、扇情的に鳴るエレクトリック・ギター。ステージは眠らない夜の一部を切り取ります。ゆったりとしたテンポで演奏されるのは「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」です。シンセサイザーの音も重なり、ギターとのアンサンブルが夜の闇を一層濃くします。

この曲は1990年にシングルとしてリリースされました。この後、TM NETWORKは名称をTMNと変え、大幅にロックに寄せたオリジナル・アルバム『RHYTHM RED』を発表します。デビューから変遷してきたTM NETWORKのサウンドの中でも、これだけの変化は突然変異と言っても過言ではありません。TMNとはただの改称ではなく、TM NETWORKの存在理由すら変えてしまう出来事でした。このアクションを彼らは「リニューアル」と呼び、グループの大きなターニング・ポイントとなりました。

フィクショナルな存在から、生身の人間にシフトしたのが1990年だと言えます。翌年のアルバム『EXPO』を含め、この時期に漂っていた色気は尋常ではありません。歌詞やライブのパフォーマンスはフィジカルな魅力に満ちていました。サウンドやメロディも、爽やかというよりは、艶があったり陰を感じるものが多くを占めました。今回のライブでは、当時とは異なる、重ねた時間が醸す色気がウツから感じられました。「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」で見せたマイクスタンドを操るパフォーマンスは実に躍動的であり、視覚的に鮮やかです。ロック・ボーカリストとしてのカリスマ性を全身から放ちます。

イントロやサビで鳴り響くフレーズは、今回のアレンジの特徴ですね。オリジナルで使ったフレーズの一部を切り取り、ループしています。イントロではギターが前に、サビではシンセサイザーが前に出て、この印象的なフレーズを奏でる。重みのあるキックを土台にして、泣かせるフレーズのリフレインが観客の心を揺さぶります。最後はドラマチックに音が絡み合って、厚くなり、膨張し切ったところで弾けるように終わります。弾け飛んだNord Lead 3の音がノイジーに鳴り続けます。やがて異なる雰囲気のベースが混ざり、次第にテンポが上がって、四つ打ちのリズムが走り始めると「SELF CONTROL」が始まります。

キックの勢いに乗って飛び出すシンセサイザーのリフが、観客のボルテージをぐんぐん上げます。1987年にリリースされた曲ですが、2014年のライブでは音が厚みを増しています。1980年代の曲を2014年の音と声でアップデートしたアルバム『DRESS2』に収録されており、リフも厚みのある音で再構築されています。発表直後のツアー「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」に続き、『DRESS2』を下敷きにしたエレクトロ系のアレンジを今回のツアーも踏襲しています。

キャッチーなリフは、ステージも観客席もまるごと興奮の渦に呑み込みます。小室さんもYAMAHA社の真っ赤なショルダーキーボードを下げ、右に左にステージを移動し、鍵盤を叩き、観客を煽ります。今回のライブの特徴は、いくつかの曲で、お馴染みの要塞(キーボードに囲まれたブース)から飛び出し、観客に近づいていたことですね。さすがにショルダーキーボードを破壊することはなかったものの、「SELF CONTROL」ではステージを飛び出して、観客の手の届きそうなところまで来ており、躍動感にあふれていました。

「SELF CONTROL」の歌詞が綴るのは「自分を縛るものからの解放」です。「セルフ・コントロール」は大人として必要な機能ですが、それに縛られ過ぎる、あるいは縛られ続けることで抑圧され、自分自身を表現できなくなります。この曲名を表題にしたアルバムを1987年に発表したとき、「TM NETWORKの音楽で、聴く人それぞれのセルフ・コントロールから解き放つ」という趣旨のステートメントを歌詞カードに記しました。

セルフ・コントロールこそが人間たる所以と言うこともできますが、コントロールを自ら打ち破る力もまた人間らしさと言えます。四六時中解放を謳うわけにはいかないにしても、致命的につぶれる前に気持ちの発露はあった方がいい。続いて演奏された「LOUD」でも、もっとエモーショナルでいい、と歌います。自分が持っているもの、抑えているものを表出しようじゃないか、と。若手として駆け抜けた1980年代の気持ちとは異なっていたとしても、大人になって言い切れないことが増えたとしても、それでもエモーショナルに叫ぶことは悪いことじゃない、という結論に達したのかもしれません。

「LOUD」には、盛り上がるポイントがいくつもあり、ダイナミックな起伏のサイクルを見せます。終盤には♪LOUD LOUD, LOUD♪と繰り返しシンガロングするところで、盛り上がりは最高潮に達します。ウツがメロディに合わせて観客席のあちこちを指差し、観客は呼応します。今回のライブではこの部分の尺が倍になり、シンガロングを繰り返すほどに気持ちが解放されていきます。

2012年の夏には「LOUD」の原型はできていて、当時、限られた数の潜伏者が「35.664319, 139.697753」に集まり、デモ音源を聴くことができました。潜伏期間を経てアレンジも変わり、2014年にシングルとして世に出ます。この曲のリリースによって、三年に渡るプロジェクトにおける最後の一年の幕が開きました。アルバム『QUIT30』にはスネアを強調したミックスが収録されています。ミュージック・ビデオは宇宙船の内部をイメージしたセットで撮影され、そのコンセプトはそのまま「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」に受け継がれました。

「LOUD」は変化し続けます。過去の曲だけでなく、比較的新しい曲もアレンジを変えていくのがTM NETWORKです。アウトロが追加され、テーマとも言うべきメインのフレーズが繰り返されます。小室さんはVirus Indigo 2 Redbackでテーマ・メロディを弾きます。濃紺の筐体に包まれたアナログ・シンセサイザー。音を視覚化できるとすれば、ビームのような光の束と言えます。小室さんの指が鍵盤を叩くたび、太い音が放出されて聴き手を貫きます。ロックに欠かせないエレクトリック・ギターやスネアと遜色ないプレゼンスを示します。


2015.08.14
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by mura-bito | 2015-08-14 20:35 | Music | Comments(0)
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