inthecube
音楽と物語に関する文章を書いています。
ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
Want to become tough, not need to get wild.
ブログトップ
QUIT30 suite: Glow/Loop Of The Life/Entrance Of The Earth/The Beginning Of The End II/III
QUIT30

QUIT30

TM NETWORK


ぼんやりと光る何か。「Glow」というタイトルは、遠くに見える小さな光を表わすのでしょうか。組曲「QUIT30」の後半が始まります。歌詞に登場するのは海を渡る船乗り。海は陸で生きる人たちをつなぐネットワークでもあります。陸に沿って遠くの地域に人や物を運び、やがて遠くの大陸を目指して海を渡り、人々が交わり、世界が広がり、つながります。船乗りたちは海の上で、はるか遠くの陸に残してきた家族を思います。

◇◇◇

彼女は地球を守る、と歌う「Loop Of The Life」。最初にこの曲を聴いたとき、キャロルの姿を思い浮かべました。地球に送り込まれた生命体、それはイギリスで生を受け、キャロルという名前を与えられる。「CAROL」という物語とは別の、あるいはパラレル・ワールドのように、もうひとつの物語が存在したのかもしれません。異世界に行くキャロル、地球で潜伏者として生きるキャロル。両者の物語は交わるのか、平行するのか。地球を守る、それは『アルマゲドン』のような劇的なものではなく、人々が気づかないところで何かと戦うことを意味しているのでしょうか。あるいは、異世界で音を盗む魔物を倒したキャロルのことを指しているのか。物語は錯綜して、イメージも錯綜します。

◇◇◇

「Loop Of The Life」の音を絡め取りながら「Entrance Of The Earth」というハウス系のインストゥルメンタルが流れます。地球への入口。宇宙船が大気圏を通過し、地球に到達する場面を思い描きます。2012年の「TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-」からTM NETWORKが展開している物語では、「地球に潜伏する生命体」という存在が鍵になっています。幾多の潜伏者が地球のさまざまな時代や場所に存在して、文明の進歩に寄与した。天才と呼ばれた人物は潜伏者であり、人類の発展に影響を与えてきた、と。そうした場面が「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」で示唆されました。地球への入口。今もなお潜伏者は存在して、さらに新たな潜伏者が生を受けて育っているのかもしれません。「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」では、生命体を生成する過程を描き、地球に向けて送り出しました。地球への入口。ダブステップの破片のような音が混ざります。紙に滲む水彩絵の具のように、目の前に音が広がります。

◇◇◇

ループするエレクトロニック・サウンドから一転して、スネアの音が新たな曲の始まりを告げます。厚みのあるベースが曲を包み、温かみを与えます。「The Beginning Of The End II」のイントロが響くと、それは豊かに実る大地を思わせます。重心があり、しっかりと両足で大地を踏みしめて立つ。身体の軸が定まり、多少のことでは揺らがない頑強さを感じさせる音です。音に乗せて三人の歌声が響きます。三人の声は線で結ばれます。声は重なると同時に、三角形を描くのです。

◇◇◇

「The Beginning Of The End II」の後を継ぎ、長大なインストゥルメンタルである「The Beginning Of The End III」が演奏されます。三部作を完結させ、同時に組曲「QUIT30」の幕を下ろす曲です。組曲を締めるのに相応しく、広がりがあり、壮大に響きます。女性の声で織り上げたコーラスが、終幕に向かう曲を盛り上げます。Mellotronの音に包まれた記憶が蘇ります。組曲「MAJOR TURN-ROUND」がライブで披露されたとき、曲の最後を飾ったのがMellotronという楽器です。内蔵されたテープには1960~70年代のコーラスやストリングスが吹き込まれており、鍵盤を押すとそれらの音が再生されます。長大な曲に幕を降ろす、ダイナミックな音が印象に残っています。組曲の終わりを目の前にして、さまざまな記憶が再生され、重なり、混ざります。

これまで奏でた音、綴った言葉を記憶から引き出して、再び鳴らし、紡ぎます。「QUIT30」が語り、示唆し、黙したものを思い浮かべてみましょう。それは言葉が語り、音が暗示し、空白に浮かび上がります。聴き手の数だけ解釈や思いはある。関わり方、アクセスの仕方によっても変わる。聴き手が能動的に関わることで補完され、変化して、新たな像を結ぶ。聴き手のアクションも曲を構成するピースです。本を読むように、絵を描くように音楽を聴く。目を凝らして見ることで浮かび上がるものが、ある。

音と言葉とイメージが交錯する先に、まだ見ぬ音楽の姿があるのかもしれません。作り手にも見えていなかった世界が広がっている。目に見える尺度では測れない価値がありますね。いくつもの山谷を持った長大な組曲には、のりしろが存在します。組曲の楽しみ方に似ているものとして、長編小説が挙げられます。長編小説にはさまざまな展開があり、数日に分けて読んだとしても、読者に集中力を求めます。物語が長くなると、短編小説よりもイメージを働かせる余地、のりしろが生まれます。時間をかけてコミットすることで、読者は物語の世界に入っていける。組曲を聴くとき、聴き手が自ら選択して関わり、自分なりにその音楽に含まれる要素をつなぐ。能動的な姿勢があればこそ聞こえる音があるし、心躍る体験ができる。その記憶が次の体験を求め、そして記憶は再生産されます。

◇◇◇

バンドの演奏とコーラスがフェイド・アウトしていきます。エンドロールの終わった映画に似て、曲がゆっくりと消えます。音は呑み込まれたのか、どこかに仕舞い込まれたのか。そして、何かが素早く飛び去ったような音が短く鳴り、さまざまなイメージと記憶を呼び起こした組曲「QUIT30」が終わります。からっぽの空白が残され、不思議な静寂が漂います。


2014.12.07
[PR]
by mura-bito | 2014-12-07 13:26 | Music | Comments(0)
<< 西尾維新対談集 本題 AVICII – The Ni... >>

fujiokashinya (mura-bito)
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新の記事
[PART2] LINKIN..
at 2017-07-30 08:25
[PART1] LINKIN..
at 2017-07-29 09:39
ORESAMA「Trip T..
at 2017-07-26 22:10
Zedd & Liam Pa..
at 2017-07-20 21:58
藍井エイル「シリウス」:一等..
at 2017-06-04 21:19
[PART4] Sound ..
at 2017-05-31 21:53
[PART3] Sound ..
at 2017-05-29 22:13
以前の記事
記事ランキング
カテゴリ
タグ
ライフログ
TM NETWORK

























TETSUYA KOMURO




quasimode


Linkin Park


Paramore

Immigrant'sBossaBand

Ryu Miho

AVICII


Krewella

Zedd

藍井エイル






Gacharic Spin


梨木香歩

村上春樹



京極夏彦



Book





Comic






Music


ブログジャンル