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QUIT30 suite: Birth/The Beginning Of The End/Mist
QUIT30

QUIT30

TM NETWORK


TM NETWORKのアルバム『QUIT30』の表題曲はおよそ20分に渡る組曲です。「QUIT30」は8つのセクションから構成され、各セクションは独立した曲として収録されています。前半は3つ、後半は5つのセクションから成ります。

組曲「QUIT30」には「The Beginning Of The End」と題した曲が含まれており、三部作になっています。第一部は組曲の前半に配置され、第二部と第三部は並んで組曲の最後を飾ります。素直に受け取れば、三部作であること、トラック・タイムの長さからして、この曲が組曲の軸になっていると考えられます。「The Beginning Of The End」という曲名は2014年春のライブ・ツアーのタイトルと同じです。その事実は何かしらの関連を示唆しているのでしょうか。曲名、歌詞、サウンドの裏に張り巡らされたミッシング・リンクを探ります。アルバムだけでは見えてこないつながりが、10月から行なわれているライブ・ツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」に隠れているのかもしれません。さて、アルバムに詰め込まれた情報で、どこまでイメージは広がるのでしょうか。

◇◇◇

組曲は「Birth」という曲から始まります。ビッグ・バンによって宇宙が生まれる瞬間を自分なりにイメージしてみます。静かな雰囲気で音が生まれ、広がり、メロディを形づくっていきます。ソフト・シンセを含むシンセサイザーの音に、三人のミュージシャンがそれぞれの音を重ねます。マーティ・フリードマン、美久月千晴、村石雅行。マーティは曲によってエレクトリック・ギターとアコースティック・ギターを弾き分けます。

「QUIT30」では、ネットワークの功罪、すなわちネットワークが人間に貢献すること、人間を縛ることを歌います。人と人のつながりであれ、ソーシャル・メディアのようなインターネットによるつながりであれ、その形は一定ではなく、表の姿、裏の姿がある。光と影という関係でもあります。ソーシャル・メディアの興亡を思い浮かべます。最初に世界を席巻したのはMySpaceでしたね。日本ではmixiでしょうか。その後、TwitterやYouTubeが勢力を拡大し、それを呑み込むようにFacebookが世界を支配しました。やがて、限定されたサークルでメッセージを交わすLINEが、閉じたネットワークを無数に生み出します。今、帝国と呼べるような版図を持つSNSはあるのでしょうか。未来を予測するには、あまりにも状況は複雑であり、多彩であり、ひとつの尺度で測ることはできない。

ソーシャル・メディアで情報が交差するほどにリアルな人間関係がクローズ・アップされ、時に両者は対立する存在として扱われます。電子書籍と紙の本がそうだし、アマゾン・ドット・コムと実店舗を構える書店がそうです。ネットは冷たい、リアルは温かい。そんな二元論が幅をきかせることもあります。けれども、ソーシャルとリアルは合わせ鏡のように並び立っています。鏡は互いに映せない姿を映し出しますが、映している対象は同じですよね。ソーシャルであれリアルであれ、ネットワークの中にいる自分の姿が映っているわけで、片方が善で片方が悪ということではありません。両方とも肯定すべきもの。いくつもの、いろいろなネットワークの中でいろいろな姿を見せればいい。人間は多面体ですよね。

◇◇◇

「The Beginning Of The End」では、TM NETWORKとしては珍しいアプローチが見られます。ギターとシンセサイザーで奏でるフレーズはバグパイプのような雰囲気を醸します。滑らかに流れるフレーズは螺旋を描き、聴く人を別の場所に導きます。バグパイプといえばアイルランドやスコットランドでしょうか。この曲の構成に、もはや歌モノのセオリーはどこにもありません。ループするフレーズは少しずつ姿を変えて、淀みなく流れ、祝祭のような雰囲気を帯びます。空に向かって音を捧げる。土地が変わり、言葉が変わる。地球を巡り、人と人をつなぐネットワークを体現する音。ぐるぐる回る音は、地球のあちこちを巡る。

TM NETWORKは「QUIT30」のような長大な組曲を2000年にも制作しました。それは、インディー・レーベルからリリースしたアルバム『Major Turn-Round』の表題曲になりました。「MAJOR TURN-ROUND」は三部作になっており、それぞれFirst Impression、Second Impression、Third Impressionという名称がつけられています。アルバム・タイトルのロゴはYesの『Close To The Edge』、三部作のタイトルはEmerson, Lake & Palmerの『Brain Salad Surgery』の影響が見受けられます。アルバムのコンセプトはPink Floyd、音はGenesisからインスパイアされています。

2000年はインターネットが一般化しつつあった頃ですが、「MAJOR TURN-ROUND」を含むアルバムの曲のいくつかはネット配信されました。今でこそ一般的なダウンロードという行為も、当時は時間のかかる、非効率なものでした。「QUIT30」を制作した2014年、インターネットもダウンロードもそしてストリーミングも当たり前のものになっています。いくつものソーシャル・メディアが興り、人々がコミュニケーションをコンテンツとして消費します。「MAJOR TURN-ROUND」のテーマには、やはりネットワークが含まれていました。小室さんは「音楽配信が当たり前の時代が来る」と主張する人のひとりでしたし、それを実践してもいました。インターネットを介して音楽が行き来する。ネットワークの良いところがあり、そこにはリスクも潜む。それらを歌詞で、音で表現していました。おそろしいくらいに大きな存在となったネットワークを、もう一度音楽で表現したのが「QUIT30」なのだろう、と。

◇◇◇

組曲の前半は「Mist」という曲で終わります。「The Beginning Of The End」のループ・サウンドが生み出したうねりを、霧が呑み込みます。霧の中にいくつもの人間の顔が浮かび、消えます。形のないスクリーン。「Mist」の歌詞はアダムとイヴから始まり、人間の変遷を歌い、最後はすぐそばにいる恋人たちの姿を綴ります。世界も人間もループするのか、あるいはどこにも行かず、定点に留まっているのか。それが本質か。


2014.12.03
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by mura-bito | 2014-12-03 22:39 | Music | Comments(0)
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