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CAROL SUITE (PART 1) – TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-
TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-

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CAROL SUITE (PART 1)

25年前にロンドンで生まれたメロディが空気を震わせ、観客を包み込みます。そのメロディは、今の物語——あるいは過去にとっては未来の物語——に引き寄せられたのか。それとも、過去に綴られた物語が、新たな物語を書いたのかもしれません。先ほどまで観客が目にしていた物語の奥には、過去の物語が潜伏していたのでしょうか。「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」の幕間に、1991年のイギリスを舞台にした物語「CAROL」がリワインドします。物語の幕を上げる曲は「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」です。音がにじむように広がり、霧のように観客を覆い隠して、物語の中の物語に誘われていきます。

イギリスはバースという小さな町に住む少女キャロルは、ある日、ロンドンまで足を運びます。彼女の頭の中にあるのは、GABALL SCREEN(ガボール・スクリーン)という3人組のグループが4月21日にリリースした最新アルバムです。グループは数々のヒット曲を生み出しており、最新作も絶賛の声に包まれる…と思いきや、そうではなかった。曲を聴いた誰もが酷評する始末。けれども、彼らの新曲をラジオで耳にしたときから、彼女の胸の奥には、何か表現しようのないものが渦巻いていました。その正体をつかめぬまま、キャロルはアルバムを求めてピカデリー・サーカス駅の近くにあるレコード店に向かいます。

ロンドン・フィル・ハーモニーの一員である父親を、そしてそのチェロの音色をキャロルは誇りに思っています。彼女は、GABALL SCREENのアルバムを聴いてから、ヨーロッパ・ツアーから帰ってきた父親の表情が晴れないことが気にかかります。同時に、彼の部屋からチェロの演奏が聞こえてこないことに思い至りました。そして、日曜日の新聞に書かれた、ビッグ・ベンの鐘の音が鳴らなくなったという記事が彼女の心をざわつかせます。壊れてもいないのに、音が鳴るべき瞬間に音が鳴らない。誰もその謎を解くことができず、ロンドンの人々は答えのないミステリーを見上げては、不思議そうに通り過ぎていきます。

GABALL SCREENの曲は、別の世界からのメッセージでした。そうとは知らずに、キャロルは音を通じてメッセージを受け取り、導かれるままに異世界に紛れ込みます。そこは音が失われ、荒廃した世界です。悪魔の群れがその世界の音を盗み、さらにはキャロルが住む世界の音も奪い、消してしまおうとしています。残すはキャロルが持っている音のみ。キャロルは、悪魔たちの野望に抵抗せんとする3人(ティコ、フラッシュ、マクスウェル)と出会い、ともに戦います。最後の音を守るため、奪われた音を取り戻すため。そして苦闘の末、たったひとつの勝利を手にします。彼らの世界に音と光がよみがえり、キャロルの父親が奏でるチェロの音も、ビッグ・ベンの鐘の音も元の場所に戻ってゆくのでした。

ステージにはミュージカルのような時間が流れます。これまでIPや保安官を演じてきたキャストたちが、一旦仮面を脱ぎ、別の人格としてステージに立ちます。アルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』の中から、物語の骨格ともいうべき曲で構成された組曲が披露され、観客は物語の記憶を巻き戻します。小室さんが自らを取り囲むあらゆるシンセサイザーを弾き、音を重ねていきます。Sledgeを弾き、Indigo Redbackを弾き、ソフト・シンセでいくつもの音色を弾き分ける。

CAROL組曲はこれまでに何度か披露されてきました。中でも、1996年に行なわれた小室さんのソロ・プロジェクト「tk-trap」は雰囲気が異なります。海外で活動するミュージシャンがサックスやパーカッション、コーラス隊として参加しており、ファンクの匂いが漂うバンド・サウンドでCAROL組曲を聴けました。コーラス隊によるタフな歌声は、すべて英語で披露され、その点でもTM NETWORKで演奏されるCAROLとは一味違いました。

「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」は物語のプロローグにあたる曲です。物語が動き出す前のイントロダクションかもしれないし、あるいはメッセージを携えたGABALL SCREENの曲とも捉えられます。キャロルという少女は、彼女の住む世界では別段秀でているわけではなく、世界を動かし、変えることなんて想像したこともない。他の人々と異なっていたのは、音に対する感受性が高く、誰もが顔を背けたGABALL SCREENの新曲を受け入れたことです。彼女はメッセージを受け取っていました。特別な存在であること、それは彼女自身も意識していないけれど、キャロルに備わっているのだ、と。「A DAY IN THE GIRL'S LIFE」は歌います。

曲の途中で木根さん(の姿をした潜伏者)が姿を見せ、そこにいる人々と軽く挨拶を交わしながら椅子に座り、おもむろに新聞を広げます。これは「CAROL」と関係があるのか、ないのか。おそらく関係ないでしょう。これは先ほどまでの物語「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」に連なるピースなのではないか、と想像してみます。「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」と「CAROL」が入れ替わりに顔を出し、交差するのではないか。この後もふたつの物語は、境界線を分かち難く進みます。

2014.02.09
by mura-bito | 2014-02-09 17:07 | Music
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