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AVICII - TRUE
TRUE

TRUE

AVICII


スウェーデンのDJ/producerであるAVICIIのアルバム『TRUE』がリリースされました。EDM (Electronic Dance Music) を語る上では外せない存在ですが、意外にもアルバムはこれが初めてなんですね。AVICIIは2013年のEDMシーンを牽引していると言ってもよく、この作品も世界中で期待され、リリースが待ち望まれていました。

『TRUE』では、アコースティック・サウンドを混ぜたEDMサウンドやゲストの歌声を存分に楽しめます。僕はポップスとEDMがタッグを組んだアルバムだと思いますね。曲によってどちらに寄るかは異なりますが、トータルで見るとうまくバランスをとっている。「EDMって何?」と思う人も、とりあえずEDMのことは気にせず聴けると思いますよ。そして、EDMが好きな人にも絶対に響く。ジャンルを問わずかっこいい音楽を求める人には、問答無用で聴くことをお薦めします。

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AVICII - Dear Boy [feat. Karen Marie Ørsted]

「Dear Boy」では、ダブステップで使われるような歪んだ音が端々に登場します。それでいて全体のサウンドはとても綺麗に響き、特にシンセサイザーのメロディは胸を打ちます。無機質ともとれる四つ打ちで進みながら、途中でリズムが変わり、音が伸びやかになります。リズムとシンセのフレーズで泣かせるのはEDMの大きな特徴です。「泣き」の役割は歌、ギター、ピアノだったものが、EDM時代になってリズムにまで広がった、と言えるでしょうか。EDMを聴くことで得られた一番の収穫はそれかもしれません。なお、ボーカルをとるAudra MaeKaren Marie Ørstedの美しく力強い歌声も魅力のひとつです。ボーカルが泣かせ、リズムとシンセサイザーが泣かせます。何だか泣いてばかりですが、それだけ胸を打つメロディが連続して放たれるのです。



AVICII - Liar Liar [feat. blondfire and Aloe Blacc]

「Liar Liar」で聴ける、ピアノ、エレクトリック・ピアノ、オルガンの順にバトンが渡される鍵盤のレース。とてもかっこいい。すべてソフト・シンセで再現されているのかもしれませんが、いずれにしてもスリリングな音の展開は賞賛に値すると思います。また、この曲にはblondfireという兄妹デュオが参加しています。リード・ボーカルは妹のErica Driscollなのですが、ちょっと不思議な雰囲気をまとった声の持ち主です。それは無邪気な少女の声とも言えるし、感情を完全にコントロールしているクールな女性の声とも言える。あるいは艶っぽい輝きをちらつかせるているようにも聞こえる。声の記憶とともに、何か別のものが僕の中に残ります。それは残像のようでもあり、残り香のようでもあるし、あるいは指先に残る感触とも言えるかもしれません。



AVICII - Shame On Me [feat. Sterling Fox and Audra Mae]

「Shame On Me」はベースがとてもいい。ベースが入ってきて明らかに主役として鳴っているところはもう快感を覚えます(幸運なことに、その部分がYouTubeで聴ける)。その記憶が焼き付くと、ベースが抜けて、再び顔を出す瞬間も気持ちいい。ベースが曲のうねりを生み出している、とさえ言えますね。全体的にノリのいい、アップテンポの曲であり、ラップに近いボーカルが曲を盛り上げ、ボコーダー処理された声が混ざるのもいい。めくるめく音の展開やうねりに身を任せてみると、もう抜け出せなくなりますよ。酔います。



Hope There's Someone [feat. Linnea Henriksson]

ミディアム・テンポの「Hope There's Someone」は、アルバムの中でも異質な存在と言えるかもしれません。気持ちを抑制しているようなボーカルが印象的です。曲の進行とともに声も音も高揚していくのですが、EDMらしさのひとつであるアッパー系の音ではなく、やはりどこか憂いを帯びた感じのインストで終わっていきます。ためてためて爆発!というEDMの王道を…予感させながら、そうではなく重厚な、そして陰影のある音が曲を支配する。ベースとキックの音が、他の曲では気持ちを高める役割を果たしているのに対し、この曲ではとても内省的に響きます。モノクロームに染まる世界が目の前に広がります。

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マニアックな要素を含みつつポップスに寄ることで、いろんなクラスタに届くんじゃないでしょうか。ベーシックな部分はハウス系のEDMサウンドが構築して、そこに多彩なサウンドが組み込まれています。カントリー・ミュージック、ジャズ、ファンクの香りがする曲もあるし、70年代ロックの世界に誘うオルガンやファンキーに響くトランペット(あるいはトランペットに近いシンセの音)も外せないポイントです。

アルバムとして軸が定まっているのが、この作品の強みだと思います。EDMを軸としつつ、その枠を軽々と越えるアレンジのセンスは本当にすごいですよ。そして、心を揺さぶるメロディが曲に奥行きをもたらします。第一印象で突き刺さる魅力もあれば、聴き込んで音の世界に浸ることで身体に染み込む魅力もあります。素晴らしい音楽体験が、ここにあります。

2013.09.30

【追記】
フィーチャリング・ボーカルの方々の名前が思いっきり違っていました…。 「Dear Boy」はKaren Marie Ørsted、「Shame On Me」はSterling FoxとAudra Maeです。また、blondfireが参加している「Liar Liar」で太いシャウトを響かせるのは、兄弟のBruce Driscollかと思っていましたが、Aloe Blaccのようです。彼はシングル「Wake Me Up」で素晴らしいボーカルを披露していますね。

2014.02.02

【追記】
『TRUE』の国内盤がリリースされましたね。いくつかの曲が追加されており、同じものがiTunes Storeでダウンロードできます。「All You Need Is Love」はRuth-Anne Cunninghamというシンガーの歌が心に響く曲です。本当に彼は歌を大事にしますね…。声を活かして、曲のクオリティを一段も二段も上げる。鮮やかに輝くエレクトロニック・サウンドと、瑞々しく響く彼女のボーカルが絶妙のバランスで合わさっています。

「Always On The Run」はColdplayのChris Martinとの共作? それともカバーでしょうか? 細かいクレジットはよくわからず、おまけに誰が歌っているのかもわかりません。音の雰囲気は20世紀的というか、具体的に言えば1980年代から1990年代前半の音を、タイムマシンで2010年代に連れてきた感じですね。過去に存在した音のエッセンスを抽出して、現代の音に投与した、そんな音楽的実験室。ボトムを支えるベースの音が、とても気持ちいいですね。

「Long Road To Hell」の魅力はファンキーな音とAudra Maeのフックのあるボーカルですね。スリリングな雰囲気を醸すピアノで始まり、トランペットテナーの音源をもとに加工を加えたであろうシンセサイザー・サウンドが重なります。ピアノのフレーズがとてもファンキーでかっこよく、このままジャズ・クラブで流してもいいんじゃないでしょうか。ジャズ・ファンのハートも射抜くと思います。

「Canyons」は純然たるインストゥルメンタルです。静謐なピアノの音が流れたかと思うと、濃密なソフト・シンセの音が荒れ狂います。再びピアノが聴き手をクールダウンさせると、待ち構えていたかのようにソフト・シンセの音がカットインして、世界を一変させます。iTunes Festival 2013で「このフレーズはかっこいいな」と思っていた曲が、これですね。聴いたことがなくても聴き手に突き刺さり、身体を揺らせること必至の曲です。

2014.02.09
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by mura-bito | 2013-09-30 22:18 | Music | Comments(0)
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