EBook 2.0 Forumの「E-Book再考」というコラムを読んでいて、興味深い記述に出くわしました。テーマは「本はコモディティ(日用品)か」。あれだけ大きな会社がいくつも存在していて、流通のネットワークが張り巡らされている。それほど巨大な産業が成立しているのは、確かに、廉価な商品が流通してマーケットが成立しているからですよね。数百円~千数百円で本が買える…これを廉価と言わずして何なのか。他のものと比べて価格が下がっていないからコモディティ感を抱かないだけで、充分に手に入りやすいわけです。だから価格を下げなくていい、いや下げるべきだという議論はどれだけやっても平行線だと思いますが、おそろしいことにAmazonはもはや視点が違う。
アマゾンは本そのものよりは、本を選び、買い、読み、批評し、贈り、古書に売り…という本に絡んだ行為(活動)の<意味>に注目する。コトにフォーカスしたこのビジネスモデルは、コモディティを中心とした消費者の動的側面(意味)を把握することによって、一般商品に拡大できる。猫の本を買う人はほぼ必ず猫を飼っている。当然にも猫用品を必要とする、といった具合だ。猫の砂を買う人に猫の本を売ろうとするよりは効率がいい。アマゾンは商品の個別性、キングとクーンツの違い、という迷宮には入らず、個々の消費者の個別性に注目している。
鎌田博樹
E-Book再考(5):本はコモディティか? - EBook 2.0 Forum
Amazonは着々と整備を進めてきたeコマースのネットワークに、電子書籍をぽんと放り込みました。そのネットワークを維持・機能・拡大するためのパーツとして電子書籍は使われている。冷静に消費者を分析し、商品を提供する。ロングテールという言葉は単なるブームだったのかと思っていましたが、単に意識の下の方に潜り込んだだけで、きちんとネットワークを構成するノードのひとつになっています。
Amazonは目立ちはしないけれど、強固な骨組みを時間をかけて作り込む。Fire対iPadの競争なんて注目の優先度としては低くて、Fireの発売はAmazonの持つ目的を達成するためのマイルストーンなんですよね。Amazonに関連するニュースを読むたびに、これに対抗できる勢力はないと思うしかありません。まあ、勝ち負けよりも、Amazonのビジネス戦略が人々の思考をどのように変えていくかが気になるところです。とりあえず「本はコモディティである」ということを知らしめたのは大きい。叩き起こされて長い眠りから覚めた瞬間に口にするのは悲鳴か、歓声か。悲喜交々です。
2012.02.02