津田大介さんが情報との付き合い方を綴った本です。Twitterを中心としたソーシャルメディアの活用方法としても読めますが、大きく捉えて、情報を取り込んで発信することの意義を読み手が考えて実践するためのガイドブックと言えます。すでにマスメディアともソーシャルメディアとも自分なりの軸を定めて付き合っている人には、新しい発見はないでしょう。ソーシャルメディアの良さがわからないと思っている人には、さまざまな発見があると思います。
目的があってこその道具。目的に近づくためにいくつもの目標があり、その目標を達成するための道具です。そう考えれば、どのようなことも目的になり得ます。個人ジャーナリズムも、音楽で生計を立てることも、学生時代の仲間とのコミュニティを維持することも、いわゆるママ友ネットワークを充実させることも。そのためにどのようなツールを選択して活用するか、どのように情報を吸収して、提供して、具体的な行動を実現するか。自分の目的を実現するために、ソーシャルメディアが活きるかどうかはやってみてから考えればいいですよね。
栄村にはNPO(NPO栄村ネットワーク)が入って村の情報をブログでこと細かく発信しているのですが、その情報発信がとてもうまかった。とりわけブログがよくできていました。被害状況や復興の課題が見やすくまとめられているのが、その最大の特徴です。そのおかげで、この小さな村に義捐金が9億円近くも集まりました(2011年12月現在)。福島・南相馬市の場合は依然として3億5千万円くらい(2011年10月現在)なので、その差はとても大きい。
情報発信で関心を惹きつけ、シンプルな仕組みでお金を集める。だから「情報の血流」をよくすることはローカルコミュニティにとって死活的問題になっていくでしょう。まずはマスコミでは報じられていない事実を発信し続けることが第一です。5W1Hを明確にして、伝えてくれそうなところに押し付けがましくなく発信する。
津田大介『情報の呼吸法』
これから特に重要になっていくのは、地域コミュニティによる情報発信です。ホームページがあるだけ、ブログがあるだけ、ツイッターやフェイスブックのアカウントがあるだけではほとんど意味を成さない。コミュニティではありませんが、僕がおもしろいと思っているのがNHK(@NHK_PR)やニッセン(@nissen)です。中の人のパーソナリティと企業の情報がそれぞれのやり方で組み合わさって人気を博しています(そういえば「まんべくん」もあったよな…)。もちろん、キャラクターを押し出すものがすべてではありません。『情報の呼吸法』では「NPO法人栄村ネットワーク」の例が紹介されていました。
NPOだろうが地方行政であろうが、情報発信の目的を明確にすることが求められます。目的を明確にして適切なツールを選択して組み合わせて発信する。個人レベルでも組織レベルでも、情報を受信・発信することの目的を明確にできれば、無駄な対立はなくなると思います。例えば世代間闘争だとか、公務員バッシングだとか、マスコミ陰謀論だとか。そんなことにエネルギーを費やしている時間がもったいなくなる。組織における当事者意識の醸成というのは、まずは個人で、自分の興味のあるジャンルを軸にして情報をINPUTそしてOUTPUTするところから始まります。情報発信の経験をメンバーがそれぞれに持っていれば、組織であっても発信の目的は共有できるんじゃないかなと思っています。
★参考
NPO法人栄村ネットワークのブログ「栄村復興への歩み」
http://sakaemura-net.jugem.jp/また、栄村への支援やその使い道については、津田さんのメルマガで知ることができたので、以下のページに転載しました。
inthecube:
長野県栄村の支援状況調査(津田大介の「メディアの現場」 vol.18より)2012.01.29