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音楽と物語に関する文章を書いています。
ワイルドじゃなくてもいいからタフになりたい
Want to become tough, not need to get wild.
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TM NETWORK『GET WILD SONG MAFIA』:30年目の創造的進化と現在進行形リミックス
TM NETWORKの活動は2015年のコンサート「TM NETWORK 30th FINAL」で区切られ、同じく「GET WILD」の進化も一度完結しました。しかし、『GET WILD SONG MAFIA』がリリースされたことで、新たな音、新たな「GET WILD」を聴く機会に恵まれます。小室さんは本作のために最新リミックス「GET WILD 2017 TK REMIX」を制作し、アルバムに先行して配信しました。イントロから響くベースの音はとても太く、それだけで心も身体も熱くなりますし、サビではボーカルの裏で鳴っているフレーズは新しい曲にも思えるインパクトを感じます。

2015年以降も、小室さんは自分のライブ・パフォーマンスで「GET WILD」をアップデートし続けていました。その証が「GET WILD 2016 TK LIVE @YOKOHAMA ARENA MIX」という、エイベックスのECサイト「mu-mo」でアルバムを購入すると聴けるバージョンです。2016年のパフォーマンスで使った音源、あるいはそれを調整したものかと思います。このバージョンは、2015年の「GET WILD 2015 -HUGE DATA-」を下敷きにしながら、随所で印象を変えています。特徴的だったアコースティック・ギターのカッティングを踏襲しつつも、2015ミックスがアグレッシヴな雰囲気だったのに対し、2016のサウンドでは抑制された印象に変わって味わい深くなり、渋さすら感じます。

終盤は誰も聴いたことがない展開を見せます。お馴染みの間奏が終わろうとした瞬間、サビが繰り返される…と思いきや、リズムががらりと変わり、哀愁漂うピアノの音がサビのメロディを切り取ってリフレインします。抽象的に表現するなら「余白の多い」アレンジ。最後のサビはライブでも一番盛り上がる部分ですが、それを逆手に取ったかのようなこのアレンジはチルアウトと言ってよいでしょう。興奮に興奮を積み上げてきた、メロディやサウンドを噛み締めてエンディングを迎え、ゆっくりとクールダウンする。そしてメインDJがステージを降りる姿が目に浮かびます。
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そして「GET WILD」の進化は2017年になっても続く…というよりむしろ加速します。『GET WILD SONG MAFIA』には「GET WILD 2017 TK REMIX」の他に、石野卓球によるリミックス「GET WILD -Takkyu Ishino Latino Acid Remix-」やSICK INDIVIDUALSのダブステップ・ミックス「GET WILD -SICK INDIVIDUALS Remix」も収録されています。三者三様のアプローチで、すなわち三者三様のエレクトロで2017年の「GET WILD」を聴くことができます。

石野卓球は説明するまでもなく電気グルーヴのトラック・メーカーですが、あるいはDJとしての活動の方が有名でしょうか。彼が手がけたTakkyu Ishino Latino Acid Remixでは、サビのボーカルがひたすらリフレインします。リズムは軽めの雰囲気を醸し、ホーンの音も聴くことができます。僕はあまりアシッド系の音は馴染みがないのですが、こういうものなのでしょうか。EDM的な起伏のある展開ではなく、中毒性の高いループに巻き込んでいく感じですね。聴くほどに頭の中が音で満たされ、いつの間にかぐるぐる回る音の中で自分が翻弄されています。

SICK INDIVIDUALSはオランダ出身のEDMデュオです。ダブステップ・サウンドで押していく、Hardwellの系譜とされています。エイベックスはEDMアーティストを引っ張ってくる日本における先駆者のようなところがありますが、今回のコラボレーションにも一役買ったのでしょうか。SICK INDIVIDUALS Remixによって「GET WILD」はダブステップらしいダブステップに再構成されました。そのような変化はまったく予想できませんでした。

同じオランダ出身のNicky RomeroやAfrojackは、小室さんのスタジオに遊びに来たことがあるので、その縁でリミックスをしてくれたら嬉しいですね。そうすれば “Get Wild Remixes” をacross the globeで配信できるかもしれません。かつては「GET WILD '89」でヨーロッパのサウンドと結びつきましたが(PWLのピート・ハモンドによるユーロビート・スタイル)、2010年代はEDMという文脈で、改めて世界とつながってほしいものです。

SICK INDIVIDUALS Remixでは、♪ミ・レ・ドから始まるサビのメロディがソフト・シンセの特徴的な音で新しい姿に変貌しています。このリミックスを聴くと、「GET WILD」は世界的な音楽的トレンドに放り込んでも成立する可能性が充分にあると思えてきます。変わり続けてきた曲だからこそ、これからも、いくらでも変わっていいんですよね。僕は2015年の区切りをやむなしとしていましたが、今回の企画によって、むしろ「GET WILD」の進化は続けるべきだと思うようになりました。こうなったら「GET WILD」が、いつまで、どこまで変化するのか見届けてやろうと思います。
2017.04.21

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# by mura-bito | 2017-04-21 21:01 | Music | Comments(0)
TM NETWORK『GET WILD SONG MAFIA』:EDMを追求した2010年代モデル・チェンジの軌跡
TM NETWORKの「GET WILD」は名実ともにTM NETWORKの代表曲と言えます。オリジナルは30年前にリリースされました。アニメ『シティハンター』のエンディング・テーマに起用されたこともあり、最も高い知名度を誇っています。そのためか、リリース以降のほとんど(すべて?)のライブで演奏されました。TM NETWORKは、いくつもの曲をライブの度に新しいアレンジにして披露してきましたが、中でも「GET WILD」の変わりようには驚くばかりです。世界の音楽的傾向を読み、その要素を移植するということを繰り返してきたのが「GET WILD」です。

バンドではなく曲の30周年という珍しい切り口から、コンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』が企画され、4月5日にリリースされました。オリジナルはもちろんのこと、リミックスやライブ・テイク、カバー、計36曲を集めた4枚組のアルバムです。「GET WILDだけでTM NETWORKの変化の歴史を追う」というのは過言でしょうか。答えは「ノー」です。もちろんTM NETWORKの魅力を知るためには不足していますが、「TM NETWORKの音楽的スタイルの変遷」を振り返るのに「GET WILD」ほど相応しい曲はない、と断言できます。
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さまざまなスタイルに変化した「GET WILD」ですが、大きくはロックとエレクトロに分類されます。ライブではどうしてもバンド・スタイルになるため自然とロックに寄るものですが、特にロック成分が高めのパフォーマンスを披露しているのが1990年の「TMN RHYTHM RED TOUR」、2004年の「DOUBLE-DECADE TOUR FINAL "NETWORK"」でしょう。前者でのサポートは葛城哲哉、阿部薫、浅倉大介であり、後者はFENCE OF DEFENSE(西村麻聡、北島健二、山田わたる)です。

一方、エレクトロという括りで見ると、もともとオリジナルのアレンジは、ヨーロッパ発の世界的ダンス・ミュージックであるユーロビートを意識していました。とは言え、ダンス・ミュージックに大きく寄せることはできず、本来の構想が形になったのは2年後のリミックス「GET WILD ’89」です。『GET WILD SONG MAFIA』に掲載されたインタビューでは、小室さんは「『GET WILD』に人格があるとするなら正しい身なりになった。髪型から何からカチャってハマったのは『GET WILD ’89』だったんですよ」と語っています。ダンス・ミュージックとしての「GET WILD」が血肉を備えたのは1989年なのです。


GET WILD 2012-2015

00:00~ TM NETWORK CONCERT -Incubation Period- (2012)
05:19~ TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation- (2013)
11:45~ TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end (2014)
19:18~ TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA (2015)
26:44~ TM NETWORK 30th FINAL (2015)

その後は、2001年の「TM NETWORK LIVE TOUR "Major Turn-Round"」や2004年の「TM NETWORK DOUBLE-DECADE "NETWORK"」で、トランスの要素を移植する試みが行なわれました。そして再びダンス・ミュージックに大きく舵を切ったのが2010年代。EDMが世界の音楽シーンのメイン・ストリームに躍り出ると、再指導したTM NETWORKの活動で、小室さんは積極的に「GET WILD」をエレクトロに染めていきました。2013年の「TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-」でEDMスタイルにモデル・チェンジすると、2015年の「TM NETWORK 30th FINAL」まで改造を繰り返しました。

2013~2015年のモデル・チェンジの要素は、2015年の「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA」に凝縮されており、この音源は『GET WILD SONG MAFIA』にも収録されています。トータルで19分を超えるこのバージョンは、4つのセクションに分解できます。すなわち、「GET WILD」の前に披露された小室さんのパフォーマンス、2014年から加わった新たなイントロ、歌を含むオリジナルの要素を残した部分、2015年に追加された新たなアウトロです。

小室さんはハードディスクの音を鳴らしながら、ソフト・シンセを中心に自分をぐるりと取り囲むシンセサイザーを駆使して音を重ねたりミュートしたりしながら、予測不能のサウンド・インスタレーションを織り上げます。パフォーマンスではワブル・ベースなどダブステップ系の音も加えて、新しいイントロやアウトロではEDMらしいキラー・フレーズのリフレインで攻めます。このときの音の組み合わせこそが最もEDM的であり、2013年から始まったモデル・チェンジの集大成だったと思います。
2017.04.16

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# by mura-bito | 2017-04-16 17:08 | Music | Comments(0)
SPRING2017: Spring Days, Spring Colors
Spring has come, spring has blossomed.
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Hear spring song, meet new spring.

2017.03.31
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# by mura-bito | 2017-03-31 22:33 | Photograph | Comments(0)
LINKIN PARK – Battle Symphony
LINKIN PARKが新曲「Battle Symphony」を公開しました。先月から配信している「Heavy」とともに、新たなアルバム『One More Light』に収録されています。音源はApple Musicで聴くことができ、そしてYouTubeにはリリック・ビデオが上がっています。

音がぎゅっと詰まっていて、「凝縮」という表現が似合う曲です。緩めのテンポは、駆け抜けるというよりは、ゆっくり歩いていく感じでしょうか。重心が低くて安定しています。レゲエのようなリズムが印象的です。
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デビューの頃はスクリームが注目されていたChesterの歌声ですが、デビュー・アルバム『Hybrid Theory』から、その美しい歌は存在感を放っていました。「Battle Symphony」では、ミディアム・テンポのリズムに乗せて、密度の大きいボーカルがタフに響きます。ナレーションのように淡々と歌うVerse。そしてChorusの最初と最後で歌われる ♪Battle Symphony♪ のフレーズは、それぞれに美しく、とても滑らかであり、しなやかであり、タフでたくましい。



LINKIN PARK – Battle Symphony (Lyric Video)

2月に「Heavy」、3月に「Battle Symphony」、5月にアルバム発売…ということは4月のどこかでもう1曲がドロップされそうですね。成熟したバンドは、どのような音を聴かせてくれるのでしょうか。アルバムの姿が少しずつ明らかになっていくそのプロセスは、1ヶ月に1度の楽しみでもあります。
2017.03.26

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# by mura-bito | 2017-03-26 15:45 | Music | Comments(0)
[PART3] 村上春樹『騎士団長殺し』:秋川まりえの三角形と彼女が受け取ったもの
PART2: 重なる三角形と最後に受け取った存在】途中から登場して存在感を放つ「秋川まりえ」は、脇役のひとりとするにはあまりにも惜しい、とても重要な位置に立っています。フォーカスの対象を主人公から変え、彼女に当ててみると、角度が変わって対象物の印象が変わるように物語の表情が変わります。

前回と同様に点を結び、三角形を描いてみましょう。「免色渉」が主人公に語った「秋川まりえ、秋川まりえの母親、免色渉」というファクターは物語に根を張り、謎めいた三角形として息をし続けます。免色という謎のキャラクターを生々しく語る核であり、秋川まりえの存在の重要性を際立たせるスポットライトのようでもあります。

主人公、秋川まりえ、秋川笙子」から「秋川まりえ、秋川笙子、免色渉」へのシフトや、重要な絵を共有した「主人公、秋川まりえ、騎士団長殺し」も意味のある三角形です。そして、免色渉の家に忍び込んだ彼女はクローゼットに隠れ、張り詰めた緊張感の中で「秋川まりえ、サイズ5の花柄のワンピースの持ち主、免色渉(あるいは免色渉ではない何か)」という三角形が描かれます。特に免色の家で起こった出来事は、彼女を主役に据えた短篇小説のようであり、彼女の行動や思考が活き活きと描かれています。
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秋川まりえは「主人公がたどった道を別の角度から表現している」のでしょう。主人公が穴の中の世界を旅している間、彼女は免色渉の家に忍び込み、そして騎士団長に導かれて時を過ごします。同じタイミングでそれぞれにエキセントリックな体験を経て、それぞれのゲートをくぐって、誰も傷つけることなく帰還してくる。

では、帰還した先で彼女が受け取ったものとは何なのでしょうか。それは「彼女の肖像画の中に秘められていたもの」ではないかと僕は思います。彼女の母親から彼女に受け継がれたものなのか、彼女自身に与えられたものなのか、それは想像の余地が大きいところですが。主人公は肖像画を描くことで、言葉では語ることの難しいそれの存在に気付きます。そしてそれを表に出すべきではないと考え、肖像画の中に留めました。肖像画を未完成のまま彼女に進呈することで、それの存在を彼女自身に託します。

主人公が免色に彼女の肖像画を渡さなかったのは、それこそが彼の求めていたものだからかもしれません。だから主人公は解き放ちかけたそれを絵の中に戻し、彼女以外の人間が触れることのないよう手を尽くした。そして、肖像画を受け取った彼女は、いずれ、肖像画の中のそれと向き合う時が訪れるのかもしれません。『騎士団長殺し』に続編があるとすれば……秋川まりえがそれと対峙し、新たな謎に包まれる物語を読んでみたいと思います。【PART1: 異世界からの帰還とその資格を得るための旅

2017.03.22
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# by mura-bito | 2017-03-22 21:20 | Book | Comments(0)
[PART2] 村上春樹『騎士団長殺し』:重なる三角形と最後に受け取った存在
PART1: 異世界からの帰還とその資格を得るための旅】『騎士団長殺し』の登場人物や重要な小道具を、場面ごとに点で結んでいくと、あちらこちらで三角形が浮かび上がります。それらは直接会話を交わすだけではなく、場にはいなくとも重要な存在として描かれる場合もあります。いくつもの三角形が浮かび上がり、重なり、離れながら物語は進みます。ひとつの方向に進んでいるかと思えば、別の三角形に焦点を当てると、別の道筋が見えてきます。三角形という見方をすることで、物語が立体的に、多面体として立ち上がってくるのです。

物語の主軸となり得る三角形は最も重要な三人を結んだ「主人公、免色渉、秋川まりえ」でしょうか。一番大きい三角形として、物語の輪郭を浮かび上がらせます。東北地方と北海道を回る旅で描かれた「主人公、女、白いスバル・フォレスターの男」は、その後も主人公の影のように付いて回ります。また、「主人公、雨田具彦、雨田政彦」の三角形からは、雨田家に降りかかった出来事を通して、歴史に刻まれた暗い暴力の存在が不気味に鎌首をもたげます。「秋川まりえ」のスケッチを描いた後には、彼女と妹の「小径」が結びついて「主人公、秋川まりえ、小径」が三角形を作り上げ、主人公と秋川まりえとの結びつきが強固なものとなります。

主人公は穴の中に身を投じ、非現実の世界を歩きます。穴を開けるための儀式として「主人公、雨田具彦、騎士団長」から「主人公、雨田具彦、顔なが」に至るプロセスも欠かせません。穴の中では、旅人と案内人という関係で「主人公、顔のない男、ドンナ・アンナ」が存在し、そこをくぐり抜けるときには「主人公、小径、ドンナ・アンナ」がキーとなります(その伏線として、風穴における「主人公、小径、叔父」があったのか)。そして、これらを経て帰還した先に、新たな三角形が生まれます。
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いくつもの三角形が織り成す物語は、ひとつの三角形に収斂していきます。そのプロセスを追っていると「受け取る」という行為が見えてきます。悪や巨大な存在から何かを勝ち取るのではなく、あとに残ったものを受け取る。失うこともなく、通り過ぎることもなく、かたちあるものが手のひらに残る。与えられた「ギフト」を受け取り、大事に守る。

最後に登場する三角形が「主人公、柚、室」です。これまでにも家族や家庭を描いた物語はありましたが、これほどまでに重みを感じている描写は初めてではないかと思います。例えば『国境の南、太陽の西』では捨ててもいいとさえ思われていた家族(妻と娘)という要素が、この物語ではむしろ守るべきものとして描かれています。その手をしっかりと握っていようと思える存在。

僕は「主人公は受け取ったギフトの重みをしっかり感じている」と思いますし、それは村上春樹らしくないとも思い、同時に興味深いとも思います。暗示的に匂わすものはなく、シンプルに、形、重み、そして温かみがあるものとして、その存在の尊さを感じている。物語の終わりとして明確に句点を付けた、そう思える結末です。【PART3: 秋川まりえの三角形と彼女が受け取ったもの

2017.03.21
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# by mura-bito | 2017-03-21 21:35 | Book | Comments(0)
[PART1] 村上春樹『騎士団長殺し』:異世界からの帰還とその資格を得るための旅
長編としては前作『1Q84』から7年ほどのインターバルを挟み、2017年2月に村上春樹の小説『騎士団長殺し』が刊行されました。前後編に分かれており、それぞれ「第1部 顕れるイデア編」、「第2部 遷ろうメタファー編」と題し、彼にしては珍しい要素も含みつつ、体幹のしっかりした筆致で新たな物語を描きます。

新たな小説を読んで新たな世界に飛び込むことができるのは、新たなアルバムを聴くときと同じくらい素晴らしい体験です。書店で実際に手に取ったときは、2冊併せて1000ページを超える紙の重みを感じながら、これからどのような世界に導かれるのか、期待に胸を膨らませました。ページを繰って物語に一度没入すれば、ワンダーランドに紛れ込んだアリスのように、ユニークなその世界を旅します。

ファースト・リーディングは、まるで真っ白なキャンバスに輪郭を描くようです。読み終えると心地好い読後感が残りました。そして再び冒頭に戻り、ページを繰ります。再読では物語の中を捉え、線を確かなものにして、色を乗せてしっかりと描きます。二回読んで感じたことをいくつか書き残しておきます。物語の世界は読者の数だけ存在しますが、僕にとっての『騎士団長殺し』もまた独自の存在として眼前に広がっています。物語を自分の中に取り込み、自分というフィルターを通してテーマをあぶり出してみたい。
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余韻に浸りながらぼんやりと考えを巡らせていて、頭に浮かんだのは「異世界からの帰還」という言葉です。最初に第1部を読み終えたとき、ふと「主人公は異世界の住人なのではないか」と思いました。その考えが頭の片隅に残っており、第2部を読む間に「帰還」という言葉と結びつきました。換言すれば「主人公が抱えていた闇を、いくつかの体験を通して浄化する物語」というところでしょうか。

僕の意識に強く印象付けられたのが「移動」という要素です。物語の序盤から中盤にかけて北国への旅が語られ、そして終盤では「穴から穴への旅」が繰り広げられます。現実と非現実の違いはあれど、どちらも移動であり、一対の行為なのではと思えます。そしてそれらは異世界から帰還する資格を得るためのプロセスなのではないか、と。現実の旅と非現実の旅を通過儀礼的に行ない、向こう側の世界から、こちら側の世界に戻ってくる。

これまでの作品に見られた「現実世界から非現実世界に向かい、何かを討ち果たして戻る」展開とは異なり、「成長」でもなければ「勝利」でもない。教えられるものでも勝ち取るものでもない。旅をすることで浄化し、レールのポイントを切り換えて、新たなルートに沿ってその世界から帰ってくる。そして帰還を果たした先には、これまた意外な結末が待っています。【PART2: 重なる三角形と最後に受け取った存在

2017.03.20
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# by mura-bito | 2017-03-20 15:07 | Book | Comments(0)

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